系統別学問内容リサーチ
農学系統
農業経済学の分野
農作物の生産、流通、消費の過程を主に学習し、食糧の安定供給と安全性の確保のための方策を研究する分野。世界の食糧流通を検証し、食糧危機の解決や途上国の開発援助にも取り組む
分野の特徴
農作物の流通、供給から、世界食糧問題まで研究
農業経済学は、農業の産業としての側面を、主に経済学的なアプローチから研究する学問です。農産物を商品として供給するための市場経済システム(生産・流通・販売のルート)を研究すること、そして、食糧の国内自給率を一定に保ちつつ、国内農業の保護を実現することが大きなテーマです。
国民の命を支える食糧を確保することは、国の重要な政策です。食糧の供給を国外からの輸入に頼りすぎる現状には、食べ物の安全性の面からも、また国の安全保障の面からも、大きな疑問がわき起こっています。そこで、政府の補助金に頼るのではなく、商品としての競争力を高めたり(ブランド農作物など)、流通網の見直しにより、国際競争に対抗しようという農業経営の新しい取り組みが始まっています。
農業経済学では、社会科学(経済学、経営学、政治学)の視点で農産物の安定した供給、品質と安全性の確保、食糧市場の適正化など、あらゆる「食糧問題」について、解決策を探ります。
海外での農業指導や開発援助も大きなテーマ
国際社会では今、人口の急激な増加による食糧不足が懸念されています。
また、発展途上地域では、農業開発のための森林の伐採、商品作物をつくるための無理な土地利用による生産力の低下など、自然環境の悪化も進んでいます。砂漠化や土地の荒廃で、住めない(利用できない)土地が急速に広がっていて、食糧危機とともに深刻な問題となっています。
こうした難題に悩んでいる国々において、自然保護に配慮しながら安定した食糧の供給をめざすこと、農地開発によって、着実に経済が発展するよう支援することが、農業経済学のもう一つの課題です。
農業生産や農地についての知識とともに、経済学、統計学など社会科学系のアプローチが大切な学問分野で、地域の特殊な事情を知るための現地調査や、各国の経済実態や市場のデータ分析が重視されます。さらに、海外での活動のため、外国語によるコミュニケーション能力も欠かせない要素となります。
何を学ぶ
農作物の流通・供給から、世界の食糧問題までが対象
農業経済学は、農学の一分野というより経済学の一分野。そのため、はじめに経済学・経営学・社会学など、社会科学の学理と研究手法を学びます。当然、数学や統計学、数理科学などで、経済学でのデータ収集法と整理法、分析法、数値の取り扱い方などを修得します。これらは、流通市場や農業経営のデータ分析に関する専門技法で、現地調査や市場調査の実施法、生産実績の計量的分析、さらに経営者の財務分析などに使われます。
これらの基本知識と手法を土台として、農産物の流通の基本的なしくみ、消費者ニーズや生活スタイル、農業制度や政策、食品加工・製造をはじめとする産業など、食品経済や農業問題に影響を与えるさまざまな要素と、農業に起因する社会問題について、主に講義科目で学んでいきます。
一方、農業の現場や流通市場の実態を身をもって体験するための実習科目もあります。農作現場での体験実習、農村や市場での調査実習などの科目がそれです。
食糧流通や経済協力など、国際的な課題に取り組む
農学的色彩が強まるのは専門課程に入ってから。たとえば「農政学」「農業経営学」「農業統計学」「農業開発論」「農村市場論」といった、農業と経済についての理論科目が多くなります。大きく分けて、効率のよい農業経営戦略のための情報分析法を学ぶ分野と、農業の流通と経済について幅広い視野で学ぶ分野があり、この両者をバランスよく履修することが大切です。
最終的には、農業と経済に関わる領域から専攻テーマを選んで、深く学習していきます。たとえば《食糧と国際協力》に関しては、各国の農業と食糧事情を把握して、農産物貿易のルール、農業開発のあり方などを学びます。「国際地域社会論」「比較農村社会論」「国際農業協力論」などがあります。また《農業資源と環境》というテーマでは、農山村の環境保護、農業開発と資源保全対策について、実態調査を交えて学びます。「地球環境資源論」「環境保全農業論」「地域共生システム論」などの科目があります。
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グローカルな視点で食・農を学ぶ <食農ビジネス学科>
人が生き、社会活動を行ううえで欠かすことができない「食」と「農」について、経済・ビジネス・マーケティングなどの観点から、その仕組みや課題、解決方法について、基礎理論から実践までを学びます。グローカルな視点から「食」と「農」に関わる専門知識と実践力を身につけ、地域社会と国際社会の両方で活躍できる人材を養成します。
摂南大学 農学部