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農学系統

水産学の分野

水産学の分野

海洋や河川、湖沼に暮らすあらゆる動植物を対象に、水産物の漁獲や増殖、加工、流通の方法、さらには海洋環境の保護、水産物の資源としての利用方法について実践的に研究する分野

分野の特徴

漁獲と養殖の技術、水産物の流通過程を研究する

 水産学は、魚介類や海草など“水から収穫できる産物”を研究対象とする学問分野です。
 海に囲まれた日本では、古くから水産業が盛んに行われており、漁場に出て魚を捕らえる漁獲の技術を中心に、魚種に応じた養殖法、海草の栽培法などの技術が、伝統的に蓄積されてきました。
 海洋学では、こうした実用学としての水産業の技法を科学の眼で検証し、水産品の加工や流通、海洋環境の保護などのテーマを実践的に研究します。また、海洋生物や海洋環境について総合的に研究する実践学として「海洋科学」の一分野となっています。
 日本は現在も、世界でも有数の魚の消費地ですが、地球規模の乱獲による漁獲高の減少が懸念されており、また産地偽装などによる品質への信頼性の低下が大きな問題になっています。そこで、水産資源の安定供給と環境保護のバランスをとりつつ、水産物の品質を高めることが、水産学のこれからの役割といえます。

海水、淡水を含む「水圏」の環境保護も大きなテーマ

 水産学の研究領域には幅広いテーマを含みますが、大きく4つに分けることができます。
1. 「水産資源学」…漁業(主に漁獲)に関する幅広い技術を研究します。漁場や漁法、海上気象のほか、魚類の資源探査と予測など水産資源の管理といったテーマを扱います。
2. 「海洋環境学」…海の環境について研究します。動植物の生態調査、海水の成分や水質と生産力の分析、といったテーマがあります。
3. 「水産増養殖学」…魚類の養殖や繁殖、品種改良の技術、海草の栽培といったテーマがあります。
4. 「水産化学」…水産物の加工や保存技術を研究します。水産物の成分の化学分析、水産品の食品以外の利用法(医薬品、工業材料)といったテーマがあります。
 なお、水産学、海洋科学には、河川や湖沼など「淡水」の水圏を対象とした研究領域も含まれます。水辺の環境分析のほか、淡水魚や水辺の動植物の生態などが研究テーマとなります。

何を学ぶ

海や水辺における環境と、生き物を総合的に研究

 水産学では、生物学や化学の基本的な研究手法を修得しながら、海洋や河川などの水辺の自然環境とそこに暮らすさまざまな生物について、幅広い知識を修得します。魚類や貝・エビ・カニなど水産資源としての生物のほか、海洋の環境と深く関連するクラゲ、プランクトンなどの浮遊生物、さらに水族館で飼育される水生の哺乳類(クジラ、イルカ)やは虫類(カメ)などの動物も対象となります。
 こうして水生生物と環境の多様性を理解したうえで、主に魚介類の身体構造や機能、生理的な特性について詳しく学びます。発生学や遺伝学、系統進化学などの生物学系の科目のほか、「解剖学」「薬理学」といった医学・薬学系の科目も履修します。
 実習も豊富で、漁船に乗り組んで漁獲の現場を体験したり、水産加工品の工場見学、水辺の生物の採集や水質調査、さらに水族館見学、多彩な角度から水産資源と環境について学ぶことができます。

水産業、水族館、環境保護など進路ごとに科目選択

 専門課程では、漁業のさまざまな技術を学ぶ「漁業工学」、海の環境と水生生物について学ぶ「海洋生態学」、水産生物の殖やし方・育て方を学ぶ「水産増養殖学」、水生生物の栄養成分を理解し、食品加工法を学ぶ「水産化学」という、4つの領域の基本科目を履修したうえで、いずれかのジャンルに重点を置いて、さらに深く学びます。
 たとえば、水産業(漁業、養殖業)に関わる場合は、水産資源学および水産増養殖学を中心に、水産物の育種(繁殖)や、病理、衛生管理などの科目も学びます。
 また、水族館や海洋環境保護の業種に進むには、水産資源学と海洋環境学の領域がメインとなり、海洋公園、沿岸(干潟や浅瀬)の環境、および海洋土木工学などについても学びます。そのほか、大型海洋動物の身体のしくみと行動、さらに海流や気候などの地学系の科目も履修します。また、水産加工業や食品業では、水産像養殖学と水産化学を中心に学びます。