テーマ 医療 生命倫理
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どんな分野?
DNAの解明よって生命の本質が明らかになりつつある今、生物の細胞の中で治療に役立つ特定の物質を作ったり、1つの細胞から別の個体を生み出すなど、生物の遺伝子を直接操作する新技術が次々に開発されている。こうした生命科学の目覚ましい進歩により、人間が長い歴史の中で培ってきた“生命を利用する技術”は、新たな段階に入ったといえる。
医療の現場でも、遺伝子によってかかりやすい病気を診断する技術や、遺伝子技術を応用した治療法が実用化されつつあり、改めて医療の「倫理性」を問う声が起きている。高度な先端技術には、難病の克服や長寿の実現、不妊治療などの期待も大きいが、人間はどこまで生命を操作してよいのか、という難しい問題が突きつけられている。
活躍の舞台
生命と倫理の問題を研究するには「哲学」「心理学」系の学部に進学するのが一般的なコース。「哲学」の分野には、人間存在とはなにか、生命の価値は普遍的か、人間にとっての正義をどのように実現するか、といった本質的なテーマを研究する「倫理学」という学問領域がある。また、人間の心の働きを分析する「心理学」、人間の発達過程を研究する「教育学」からのアプローチも有効だ。
さらに、総合・学際系統には、人間そのものを総合的な視点で研究する学問として「人間科学」がある。人間の心や身体のしくみをはじめ、人間が発展させた文化と歴史、人間社会における規範の問題など、多角的に人間を捉え、人間の本質的な問題に迫ることを目指す。
学問へのアプローチ
生命倫理に関する問題を大学で専攻した人に適した職種として、医療の専門家と患者の橋渡し役を務め、最新の治療技術や施設を紹介する「医療コーディネーター」という専門職がある。病気の現状や治療法についてメリットやリスクを含めて十分な説明を行い、患者の納得のもとに治療を受けてもらう仕事だ。
脳死による移植医療や臓器提供、病気の遺伝子治療、人工授精と精子バンクなど、倫理の観点から社会的議論になっている医療技術は数多い。したがって、生命倫理についての深い見識を備え、生命に対する尊敬の念をもつことは、医師や看護師などの医療スタッフや福祉の仕事を目指す人にとっても、非常に重要な条件といえる。