テーマ 環境・防災 里山保護
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どんな分野?
「里山」とは、山村や集落など人間が暮らす地域(里)の近隣にあり、人間が保護しながら利用してきた山や森のこと。本来の意味での「自然」とは異なり、人の手が加わることで、生態系やそこに生きる動植物を含めた環境が守られている。
近年、特に地方においては、過疎化や林業の衰退によって里山の管理に手が回らず、荒廃が進んでいる地域が増えている。里山の荒廃は自然生態系の破壊だけでなく、土砂崩れなどの災害を引き起こす原因になるため、行政や住民、NPOなどが連携して保護活動を始めている。一方、都会の郊外に残った里山も、住宅開発や道路建設などの危機にさらされており、人々が気軽に立ち寄って自然に親しめる場としての保存が望まれる。
活躍の舞台
この分野に関する職業としては、まず自然環境を調査する環境アセスメント系の仕事が挙げられる。測量や観察などによって得たデータを分析し、自然に配慮した開発の計画を立てる。また、自然公園などで一般の人たちに動植物とのふれあい、自然への親しみ方などを伝える職種もある。たとえば、国立・県立公園に公務員として就職するか、あるいは環境保護を目的としたNPO団体といった職場が考えられる。
山林で樹木の生育を管理し、木材を生産する林業の仕事も選択肢となる。代表的な就職先としては、地域で山林を管理している森林組合や林業会社などがある。樹木を伐採し木材に加工するほか、均質な木材を生産するための間伐や下草刈り、苗木の植林などの業務を担当する。
学問へのアプローチ
この分野を大学で研究するには、森林の環境と資源利用について総合的に学べる農学系統「森林科学」を選ぶのがおすすめ。森林を構成する樹木の生物学的な特徴を理解し、効率的な森の育て方、木材の伐採、加工などの利用方法を実践的に学ぶ。また、里山の環境や生態系を研究し、里山の自然と人間が共存できる方法を探る。同じ農学系統には、里山とも関連の深い農地の開発や管理、さらに、農村の環境や社会的な問題を研究テーマとする「農業工学」もある。
理学系統「生物学」では、里山に生きる動植物の生態について専門的に研究する。さらに、里山の問題を地理的条件や地域社会、歴史の面から総合的に研究する人文科学系統「地理学」からのアプローチも考えられる。
このキーワードについて学べる学問分野
歴史学・地理学
人間の文化や社会を「時間」で切り取る歴史学、「空間」から捉える地理学。最近のブームの“文化学”との関連性のなかで考えると捉えやすい。が、地理学は理系色もあり、やや異質
森林科学
木材など森林資源の利用と森林環境の保護を研究する分野。森林の管理のみならず、森林の景観づくり、水資源の管理と有効利用、土砂崩れや山火事など山林災害の防止対策等がテーマ
農業工学
農業生産に関する工学的テーマを扱う学問で、農業用地の開発や管理、農機具に関する研究が中心。農業の生産環境と農村社会そのものについて研究し、農業の未来の姿を構想する分野
生物学
生物の構造や営みに共通で見られる《法則性・普遍性》と、それがさまざまに分化して生みだす《多様性》を抽出。その神秘に満ちた<生命活動>を理論的に説明できる体系を打ち立てる