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弁理士とは?年収や資格の難易度、目指せる大学の学部を紹介

2023.01.16

カテゴリー:
相談を受け付ける弁理士

日本の技術を支えているのは、特許に代表される知的財産です。弁理士は、その知的財産権の申請を支える役割を担っています。「具体的にどのような仕事をしているのか?」と気になっている高校生の方も、多いのではないでしょうか?

この記事では弁理士の仕事内容や必要なスキル、弁理士になるための方法について解説します。大学の学部や学科など、弁理士になるための進路についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね!

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弁理士とは?

弁理士の主な仕事は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得したい人 のために、特許庁への出願手続きの代理を行うことです。

弁理士法第1条(弁理士の使命)には、「弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする」と記載されています。

そのため、特許庁への出願手続きの代理のみでなく、知的財産権の取得の相談、模倣品への対策、他社・他者権利の侵害がないかの相談などのコンサルティングも弁理士の仕事です。さらに特許権などの知的財産権の侵害訴訟では、弁護士の補佐として訴訟代理人として参加することもあります。

弁理士とほかの士業との違い

弁理士のように「○○士」と呼ばれる職種は士業と呼ばれ、難易度の高い専門職種を指します。名前が似ているものもありますが、それぞれ扱う分野が異なります。

弁理士は、技術やブランド、デザインをめぐる権利を扱う「知的財産の専門家」であるのに対し、ほかの士業は、以下のような分野を扱います。

弁護士

人のあいだに起こるトラブルや企業と企業のあいだの取引を扱う法律の専門家。技術的な知識が問われる分野では弁理士に、それ以外の法的手続きでは弁護士に相談するのが一般的です。

社会保険労務士

社会保険労務士は労働関係に関する手続き、社会保険、労働保険、雇用関係の専門家です。従業員の労働環境や社会保険などに関することを扱います。また労務管理といって、従業員の労働時間管理や賃金の見直しなどを行うことも。従業員の雇用に関わる総合的なサポートを行う職種です。

行政書士

行政書士は、さまざまな行政手続きの手続代理人です。会社設立時や建設業や運送業の許可申請時などに、官公署に提出する書類を作成し、国や自治体への各種申請手続きを行います。

税理士

税理士は、法人税、所得税、相続税、消費税などの税務全般を扱う職種です。企業や個人に対して、納税のアドバイスや税務書類の作成・手続きを行います。 

司法書士

司法書士は、債務整理、契約書作成、簡裁裁判の代理など、一般の民事法務を広く扱う法務の専門家です。

土地家屋調査士

土地家屋調査士は、土地や建物の所有者に代わって不動産の登記手続きを行う専門家です。土地・建物の測量や調査を行い、土地の正確な境界を確定させて図面にまとめ、法務局に提出します。これにより、隣接する土地の所有者との争いを避けられたり、不動産の購買や売却がスムーズに行えたりします。

海事代理士

海事代理士とは、海に関係する法的手続きや相談業務を行う「海の法律家」です。船舶の登録やモーターボート・ヨットに乗る人の免許更新のサポートなどを行い、さまざまな書類作成を代行します。

弁理士は文系と理系どちらが多い?

士業は文系出身者が多い傾向にありますが、弁理士は、理系が多いと言われています。令和5年度の弁理士試験の合格者は、理系が76.1%を占めており、文系は18.6%※しかいません。

令和5年度弁理士試験の結果について|特許庁 工業所有権審議会

弁理士は特許権や実用新案権などの知的財産権を扱うなかで最先端技術に触れることも多く、理系出身者に向いた仕事です。文系出身者は特許よりも意匠(デザイン)や商標登録あるいは訴訟問題などを扱うケースが多くなります。

弁理士の仕事内容

弁理士のバッジ

弁理士は大きく分けて以下2つの仕事をしています。それぞれの仕事内容について詳しく見ていきましょう。

・知的財産権の申請・取得業務
知的財産権の申請・取得業務では、企業や個人事業主 が新たに発明・考案した特許、意匠、商標、実用新案などの知的財産権を特許庁に申請します。

・知的財産権による争いを解決する業務
特許権などが他社・他者に侵害された場合に起こる争いを解決します。また争いが起こる前に、他社・他者の特許権などを侵害していないか確認するのも弁理士の仕事です。

こうした業務を行うためには、弁理士資格 が必要です。知的財産法や著作権法、不正競争防止法などの国内法規はもちろん、国際的な案件ではパリ協定やジュネーブ協定などの国際条約まで幅広い法律知識が必要になります。特に特許権では、科学・工業の専門的知識が要求されます。

弁理士の仕事のやりがい

弁理士が大きなやりがいを感じられるのは、特許が認められ権利化したときでしょう。
特許取得には短くて1年、長い場合は10年 を要するケースもあります。特許庁から拒絶査定を受けて、再申請のためにクライアントと協力して追加資料を作成したり、申請内容を見直したりと、苦労を重ねて権利化にこぎつけることも少なくありません。
権利化されたことでクライアント企業などの業績拡大に貢献できた場合など、感謝を伝えられることもあります。

また、特許化の準備としてクライアントの資料をもとに特許申請資料を作成しますが、曖昧さが残っていたり、クライアントの頭の中にのみアイデアがあり、資料化されていなかったりすることもあります。 こうした問題を協力して解決し、申請資料が完成したときも大きなやりがいを感じられる瞬間です。

このほか、企業・大学・研究機関などが特許化を希望するということは、まだ世の中にない最先端の技術である場合が多くあります。新しい技術が生まれ実用化されるプロセスを、クライアントとともに 体験できるのも魅力のひとつでしょう。

弁理士の仕事の流れ

弁理士の代表的な業務である「特許権取得」までの仕事の流れは以下のとおりです。

  1. 既存の知的財産はないか確認
  2. 申請書の作成・出願
  3. 再審査に臨む

それぞれ詳しく解説します。

1.既存の知的財産はないか確認

弁理士は知的財産の権利化の依頼を受けると、まず事前調査として既存の知的財産と似ていないかを確認します。また、権利化する必要性が明確なのかなど、権利化できる見込みがあるかも事前に確認すべき事項です。

2.申請書の作成・出願

次に申請書の作成に入ります。申請する技術の内容を明確にするとともに、権利化した後に知的財産権を侵害されないよう、注意深く申請書を作成し特許庁に出願します。出願後、特許庁は申請内容を審査しますが、審査には少なくとも1年以上を要します。

3.再審査に臨む

2.で申請が通れば良いのですが、審査中に特許庁から拒絶理由通知書が出されるケースも少なくありません。その場合、意見書や補正書などの追加書類を作成し、再審査に臨みます。無事に権利化できれば完了となりますが、他社・他者からの権利侵害への対応が必要となる場合も 。

弁理士の年収

クライアントと話し合う弁理士

厚生労働省の職業情報提供サイトによると、弁理士の平均年収は約971.4万円です。難易度の高い国家資格が必要となることから、一般的な給与水準を大きく超えます。しかし一方で、受注が思うように伸びず300万~400万円の人もいるなど、実力によって大きな差が出るのも事実です。実力が収入に直結する厳しい世界でもあります。

参考:弁理士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (mhlw.go.jp)

弁理士の将来性

弁理士の世界は競争率が激しくなっているのが現状です。弁理士の数は増加している一方で、仕事の件数は減少しているからです。

しかし、国内の特許出願数は減少している一方で、世界の特許出願数は高い水準を維持しています。2010年には199.7万件であった世界の特許出願数は、2019年には322.4万件 と顕著な増加傾向にあります。世界的に見れば、弁理士の需要は増加しているといえるでしょう。

また、スタートアップ企業やベンチャー企業は今までにないアイデアや技術を武器にしますが、知的財産部門を社内に有していないことが多く、ここにも弁理士が活躍するフィールドがあります。

弁理士になる3つのメリット

弁理士になる3つのメリットは以下のとおりです。

  • 高収入を得やすい
  • 多様な分野で活躍できる
  • 国際的な仕事に従事できる

順番に解説します。

高収入を得やすい

弁理士の平均年収は971.4万円です。国税庁によると、令和4年度の日本の平均年収は458万円なので、弁理士は、平均を大幅に上回っていることがわかりますね。ちなみにほかの士業の平均年収は、以下のとおりです。

参考:令和4年度 民間給与実態統計調査|国税局

多様な分野で活躍できる

弁理士は、知的財産に関わるさまざまな分野で活躍できる仕事です。たとえば、以下のような分野があります。

  • バイオ分野(遺伝子工学、医療機器など)
  • 電子工学分野(半導体、電子回路、通信技術など)
  • 機械工学分野(自動車、ロボット、生産設備など)
  • 化学分野(新素材、高分子化合物、医薬品など)
  • コンピュータ/ソフトウェア分野(AI、ビッグデータ、セキュリティなど)

これらの分野では、それぞれ高度な専門知識と経験が求められ、弁理士の役割が重要になっています。

国際的な仕事に従事できる

弁理士の将来性でもお伝えしたとおり、海外への特許申請(PCT国際出願)は増加傾向にあるため、国際的に仕事をしたい人には、メリットのある仕事です。

PCT国際出願を日本から行う場合、基本的な手続きは英語で行う必要があうため、英語力や国際的な特許法の理解が必要になります。

弁理士に必要な資質と能力

腕を組む弁理士

弁理士にはどのような資質や能力が求められるのでしょうか。ここでは、特に重要な資質と能力についてご紹介します。自分が弁理士に向いているのかどうか、ぜひ参考にしてくださいね!

コミュニケーション力

弁理士の仕事では、クライアントとのコミュニケーションが不可欠です。クライアントが伝えたい内容や意見、表現 を引き出すには、高いコミュニケーション力が必要となります。

提案力

クライアントが作成しようとする資料や手続きが、適切でない場合があります。クライアントの望みを理解した上で、適切な方針に路線変更を提案することも弁理士の役割です。

素直さ

特許には専門的な知識が要求されますので、わからないこともあります。そのまま曖昧にして進めると大きな問題に発展するので、わからないことをクライアントに尋ねる素直さも大切です。

このほか、弁理士に必要な資質として以下のものもあります。

・柔軟な対応
先入観やプライドに邪魔されず、相手の意見・考え・指摘などを柔軟に受け入れられる対応力が必要です。

・体力
年末や年度末に向けて特許出願が集中する場合があり、このようなときには体力勝負になります。

・知的好奇心
弁理士は最新技術や法改正への対応など、新たな知識を習得する必要があります。新たな知識 に関心を持って学べる姿勢は大切な資質です。

・地道な作業ができる
弁理士白書によると、特許事務所の68%は 弁理士が1人で運営しています。 特許出願までには既存特許と比較して類似性がないか、新規性があるかの調査から出願資料作成まで1人で行うことが多く、「地道な作業ができる」というのも大切な資質になります。

弁理士になるための方法とは?

弁理士になるには、具体的にどのようなルートがあるのでしょうか?ここでは、弁理士の世界の現状と併せて解説します。

弁理士になるための勉強ができる大学・学部

弁理士は、法律の知識と理工系の知識のどちらも必要なので、学部選びの際は法学系と理工系どちらも選択肢になり得ます。ただし、弁理士の仕事は理系よりの知識を活用する機会が多いことや、就職の際に理系出身のほうが有利と言われることから、理工学系の学部で学ぶ人がおおようです。実際の試験合格者をみても、約7割が理系出身者です。

弁理士を目指せる主な学部・学科は、以下のとおりです。

・法学部 法学科、法律学科、ビジネス法学科、国際ビジネス法学科、現代ビジネス法学科、政治学科
・知的財産学部
・理工学部
・理学部 化学科
・先端理工学部 応用化学課程
・経済学部 経済学科
・経済学部 経営学科
・政治経済学部

弁理士に必要な資格や受験すべき試験

弁理士になるためには国家試験の弁理士試験に合格し、弁理士登録する必要があります。受験資格に制限はありません。

毎年1回行われる弁理士試験は5月に短答式試験(1次) 、7月に論文式試験(2次)、10月に 口述式試験(3次)の3段階があり、2次試験は1次試験合格者、3次試験は2次試験合格者のみが受験できます。
令和5年度の試験では受験者数3,417人 、合格者数188人で合格率は6.1%と狭き門になっています。試験合格後に実務修習を修了することで弁理士資格を取得できます。

参考:令和5年度弁理士試験の結果について|特許庁

弁理士になるために目指すべき就職先

弁理士バッジと特許に関わる資料

弁理士の代表的な勤務先は、特許事務所です。100人以上の大手事務所もあれば個人経営の事務所もあります。
ほかにはメーカーなど、一般企業の法務部や知的財産部に就職する方も多くいます。

弁理士の資格を取得する前でも、弁理士サポートの事務スタッフとして特許事務所に就職し働きながら弁理士試験を受験し弁理士を目指すこともできます。大手特許事務所では特許のほか意匠や商標など幅広く対応しているので、多くの経験を積むことができるでしょう。

また、小規模特許事務所では得意分野に絞って専門性を高めることができます。特許事務所に就職後、経験を積んで実務能力・専門能力を高めれば、独立して特許事務所を設立する道も。
メーカーなどの企業では、研究開発の初期段階から深く関わることで特許をビジネスに活かすための経験を積めます。

弁理士になった後のキャリアプラン

弁理士としてのキャリアプランとしては、特許事務所でパートナー弁理士になる、企業内で昇進する、独立開業し得意分野で活躍するなどが考えられます。

パートナー弁理士

パートナー弁理士とは、特許事務所の代表とともに 特許事務所経営に参画する人です。大手特許事務所ではシニア・ミドル・ジュニアなどと階級が分かれています。
パートナー弁理士は、クライアントの新規開拓や特許事務所内の人事など経営に関わる業務が中心です。パートナー弁理士となるためには仕事を1人で完結できる能力、マネジメント能力、交渉力などのスキルが求められます。

弁理士の就職先として一般的な特許事務所。具体的にはどんなところがあるのか気になる人は、「JOB-BIKI(ジョブビキ)」で調べてみましょう。各特許事務所で活躍している人の出身大学も知れるので、進路選びの参考になりますよ!

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一般企業内での昇進

企業の知的財産部では、必ずしも弁理士の資格が必要なわけではありません。しかし、資格を取得していれば、社内評価につながり年収アップや資格手当につながりやすいです。

また、一般企業の知的財産部などで企業内弁理士として働くケースでは、知的財産以外の業務を依頼されるケースもあります。この場合、経験を積むことで管理職を目指すキャリアが見えてきます。

独立開業

独立開業するには、クライアントの新規開拓、業務の進捗管理、業務量の調整、事務所内外の問題解決能力、提案力などの多様なスキルが必要となります。しかし、得意分野を中心に自分の裁量で経営して高収入を目指すことができるのは大きな魅力です。

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弁理士は専門的な知識と国家資格を活かして、産業の発展に貢献できる職業です。技術分野で先進性を発揮する日本の産業の発展・拡大に貢献する、とてもやりがいのある仕事です。

弁理士には国家資格が必要ですが、受験するのに制限はありません 。弁理士への近道としては、弁理士を目指せる学部・学科の大学で知識を習得することです。高校生のうちから情報収集しておけば、スムーズに進学できるでしょう。
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