学芸員(キュレーター)になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介
2023.01.16
学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示および調査研究、およびこれらに関連する事業を行う職業です。これは博物館法でも定められており、博物館における専門的職員といえます。高校生の皆さんの中にも、博物館の展示物に興味があり、学芸員を志している方もいるのではないでしょうか?
この記事では、学芸員の仕事内容や必要なスキル、学芸員になるための方法について解説します。学芸員になるための勉強ができる大学・学部についてもご紹介しますので、ぜひ進路選択に役立ててくださいね!
目次
学芸員とは?
学芸員は、国家資格である学芸員資格認定を取得した専門的職員です。博物館法 第4条第3項においては、「博物館に専門的職員として学芸員を置く」とされています。
学芸員は美術系、自然史系、天文系、人文系などの専門分野に分かれ、職務は研究・調査・収集・展示普及、保管・管理などがあります。展示普及においては、社会教育施設における教育従事者としての立場も含まれます。
学芸員と学芸員補の違い
学芸員補は、学芸員の職務を助けるための職務です。学芸員は国家資格である学芸員資格認定を取得した専門的職員ですが、学芸員補になるためには、特別な資格は必要ありません。大学に入学できる者(学校教育法 第九十条一項 一般的には高校卒業)であれば、誰でも学芸員補を目指すことができます。
学芸員の仕事内容
学芸員の仕事は、博物館法に定める文化施設(美術・科学・動物・直物など)で施設内に保管する資料などを収集し、研究、保管、展示を行い学術の振興や文化の向上に貢献することです。
専門的知識や運営能力を発揮して、この役割を果たせる資格が学芸員資格認定です。学芸員となった後も知識を深め、経験を積むことが要求されます。欧米ではキュレーターと呼ばれ細かく専門が分かれていますが、日本の学芸員はいろいろな業務を行うのです。例えば、以下のような内容です。
・資料の収集や保存
文化施設のテーマに沿った資料の収集や整理を行います。個人所蔵やほかの文化施設にある場合は、借入れの交渉を行い輸送の管理も担当します。収集した資料のリスト作成やデジタルアーカイブ化のほか、標本や複製の作成、修理を行う場合もあります。また、貴重な資料なのでダメージを受けないよう適切に保存することも大切です。
・展示の企画
来館者にわかりやすく展示し、普及・啓蒙するためにコンセプトを考えます。企画立案から始まり、展示計画の作成から展示のデザイン作成、設営、搬入までを行います。また、広報資料を作成し世間に周知することも大切な仕事です。
・展示の案内
来館者に楽しく見てもらえるよう、文化的・学術的な理解を助けるために案内や解説を行います。ときには文化施設の外に出て展示物の説明や講演を行うこともあります。
学芸員の仕事のやりがい
学芸員のやりがいは、好きな分野の仕事に携われることです。好きなことであれば努力も苦にならないでしょう。学芸員は専門的な知識を活かして学術・文化面から社会に貢献できます。来館者から「おもしろかった」「勉強になった」「これからも興味を持って見続ける」などの感想が寄せられると、やりがいを実感できますね!
学芸員の仕事の流れ
学芸員はどのような一日を過ごしているのでしょうか?ここでは一例として、学芸員の代表的な職場である美術館と、フリーランスとして活動するキュレーターの1日のタイムスケジュールをご紹介します。
美術館
地方公共団体が運営する公立美術館でのタイムスケジュールは、例えばこのようなものになります。
・8:15
出勤
・8:30~10:00
まず初めにメールをチェックするのは、普通の職場と同様です。学芸員は広報業務を兼務する場合が多いので、雑誌・新聞・自治体広報・フリーペーパーなどの掲載予定メディアの記事の校正作業を行います。
・10:00~11:00
美術館の多くは学芸会議を開催しており、ほかの美術館からの作品貸与、次の企画展の検討や提案、来館者からの意見反映など美術館の運営方針を決定していきます。
・12:00~13:00
お昼休み
・13:00~18:00
企画展や展覧会の前には、準備のため会場レイアウトをもとに施工業者と打合せや立会いを行います。企画展や展覧会開催中には、案内や説明を行うのも仕事です。作品の借入れまたは貸出の場合は、双方の美術館の学芸員が立会って作品に傷などがないか確認します。
キュレーター(フリーランス)
フリーランスのキュレーターのタイムスケジュールは、例えばこのようなものになります。
・9:00~13:00
まずは展示会を開く会場を手配するところからスタートします。ほかにも、芸術家と作品展示のスケジュール調整をするなど、さまざまなことを自分で行う必要があります。
・14:00~19:00
展示会開催前は会場設営、借り入れ品の傷の確認、展示会終了後は会場撤去や借入品の返却などを行います。展示会の会場はその都度変わるので、時間は一様ではありません。
・20:00以降
メールチェック、事務作業、調べものなどデスクワークを行います。
学芸員の年収
学芸員の収入は、所属により大きく異なります。一般的には月給15万~20万円、年収250万~400万円が平均といわれています。
地方自治体が運営する美術館などの場合は、地方公務員となります。2021年度の「地方公務員給与の実態(総務省)」によると、地方公務員の平均給与月額(平均給料月額に平均諸手当月額を加えたもの)は約41万円です。年収に換算すると、約681万円になります。
ただし、学芸員の採用数は若干名であり公務員としての採用は非常に競争率が高くなっています。このため、実際には非正規雇用で働いている学芸員も多くいます。
学芸員に必要な資質と能力
学芸員には、どのような資質や能力が求められるのでしょうか?特に重要な資質・能力について見ていきましょう。
学芸員としての道を極める探求心
学芸員として成長し続けるためには、関心のある分野の研究を続ける熱意が必要です。また、ほかの博物館や展示会の展示方法を勉強することも大切でしょう。研究会への参加など知識を深める努力が求められます。
さまざまな業務に対応できる柔軟性
展示の開催に際して、展示計画、チラシ・ポスターの作成、展示の説明パネルの作成、事務業務など多くの業務があります。これらに対応するために、学芸員には柔軟性が必要です。また、外部スタッフともスムーズに仕事を進めるためには、コミュニケーション力も必要となります。
情報発信
博物館は教育機関でもあるため、研究成果を多くの人にわかりやすく伝え続けることが大切です。同様に、来館者からの質問に答える能力も必要となり、そのためには展示物の歴史的背景や作者の視点などを養っておく必要があります。
学芸員になるための方法とは?
学芸員になるには、以下のいずれかの方法があります。
- 学士の学位を所有し、大学で「文部科学省令の定める博物館に関する科目」の単位を修得する。
- 大学に二年以上在学し、「博物館に関する科目の単位」を含めて62単位以上を修得した人。かつ三年以上学芸員補の職歴があること。
- 文部科学省令で定めるところにより、上記1.2.と同等以上の学力および経験を有すると認めた者(学芸員資格認定に合格する)。
次に、学芸員資格認定について解説していきます。学芸員認定には筆記試験と学識や業績の審査があり、受験資格は以下のとおりです。
1. 試験認定
1) 4年生大学を卒業している(学士の学位を所有している)
2) 大学に二年以上在学して62単位以上を修得し、二年以上学芸員補の職歴がある
3) 教育職員の普通免許状(教育職員免許法第二条第一項に規定する)を有し、二年以上教育職員の職歴がある
4) 四年以上学芸員補の職歴がある
5) その他文部科学大臣が上記1)~4)と同等以上の資格を有すると認めた者
2. 審査認定
1) 学位規則による以下の学位を有する者で、二年以上学芸員補の職歴がある
イ 修士
ロ 博士
ハ 専門職
2) 大学において博物館に関する科目(生涯学習概論を除く)に関し二年以上、以下の職にあった者でかつ二年以上学芸員補の職歴がある
イ 教授
ロ 准教授
ハ 助教
二 講師の職
3) 次のいずれからに該当し、都道府県の教育委員会の推薦する者
イ 学士の学位を有する者で四年以上学芸員補の職歴がある
ロ 大学に二年以上在学し62単位以上を修得した者で六年以上学芸員補の職歴がある
ハ 学校教育法第九十条第一項の規定により大学に入学できる者で八年以上学芸員補の職歴がある
ニ その他十一年以上学芸員補の職歴がある
4)その他文部科学大臣が上記1)~3)と同等以上の資格を有すると認めた者
学芸員資格を受けるには、毎年7月中旬から8月下旬の出願期間中に出願書類を提出する必要があります。試験認定については12月初旬に資格認定試験を実施し、審査認定については翌年1月に審査を行います。
学芸員の世界の現状(業界)
文化庁によると、日本にある博物館は2018年10月時点で5,738館と平成初期の頃から大きく増加しています。公立私立ともに博物館、美術館、水族館、動物園などいろいろな施設が誕生しており、これに伴い学芸員数も増加傾向です。
文化庁発表の学芸員数の推移によると、1993年には4,000人未満でしたが2018年10月時点では約8,400人へと増えています。また、博物館への入館者総数は1995年以降ほぼ横ばいで推移していましたが、2017年以降は増加しています。
学芸員になるための勉強ができる大学・学部
学芸員を目指せる学校は、2022年4月1日現在で国立大学54校、公立大学22校、私立大学210校、公立短期大学1校、私立短期大学5校と多くあります。博物館の種類が多くあるので学部も多岐に渡りますが、芸術学部や、文学部などの文科系学部が多くを占めます。具体的には以下のとおりです。
● 芸術学部
● 人文学部
● 教育学部
● 外国語学部
● 心理学部
● 経済学部・経営学部
● 建築学部
● 造形学部
● 服装学部
学芸員に必要な資格や受験すべき試験
学芸員資格認定は、学芸員となるために必要な学識や業績を有するかを判定する試験です。学芸員資格認定は筆記試験の試験認定と、学識や業績を審査する審査認定で構成されています。学芸員資格認定に合格すると、晴れて学芸員として活動することができます。
学芸員になるために目指すべき就職先
学芸員の就職先は、博物館法に規定される博物館が中心となります。博物館といっても美術館のほか歴史博物館、科学博物館などいろいろな種類があり、さらに国公立と私立に分かれます。国公立は公務員、企業などが運営している場合は会社員となります。
学芸員になった後のキャリアプラン
学芸員としてのキャリアプランには、博物館内での役職を得る、大学の教員になる、独立してキュレーターになるなどが考えられます。
公立の博物館の中で県運営を例にとると、基本的に勤続年数に応じて職位が上がっていきます。学芸員のリーダーである学芸係長、さらに学芸課長、主任学芸員、学芸部長、館長補佐、副館長、館長と多様です。
そのほか、研究内容や展覧会の実績をもとに外部の芸術祭のディレクターや専門誌での執筆で活躍し、希望する職場を目指すというキャリアプランもあります。また難度は高いですが、独立してキュレーターを目指すというキャリアプランもありますよ!
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学芸員は専門的な知識と資格を活かして文化・芸術などの発展に貢献できます。長い歴史と文化を誇る日本の学術の発展・継承に貢献できる、とてもやりがいのある仕事です。
学芸員になるには、学芸員資格認定資格が必要です。学芸員への近道としては、学芸員を目指せる学部・学科の大学で知識を習得することでしょう。高校生のうちから情報収集しておけば、スムーズに進学できるはず!
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また、人物検索で「学芸員」で検索してみると有名な学芸員のことがわかると思うので、ぜひ検索してみてくださいね。