政治家になるには?気になる年収ややりがい、必要な資格やスキルについて解説
2023.03.07
政治家は、政治に携わる職業で、主に首長や議員を指します。 地域や住民の生活に直接影響を与える仕事であり、世の中をもっとよくしたい、人のお役に立ちたい、と考えて政治家を目指したいと思う人もいるでしょう。
この記事では、政治家の具体的な仕事内容ややりがい、政治家になるための方法や必要な資質についてまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
政治家とは?
政治家とは、人々の代表として政治に携わる人のことです。
主に下記のような職業があります。
国会議員:国の予算や法律を決める
地方議会の議員(県議・市議):担当する地方の予算や条例について決め、行政について話し合う
都道府県知事、市区町村長:担当する地域を代表し、政治全般に責任を持つ
基本的に地域の行政を担うのが役割で、地域の範囲ごとに名前がわかれています。
政治家と官僚の違い
政治を行うのが仕事でも政治家とは呼ばれないのが官僚です。違いについて説明します。
政治家は国を代表する国会議員や地域を代表する地方議会議員などを指す「議員」、各地域の行政のトップである都道府県知事や市区町村長を指す「首長」のことです。住民の代表としてそれぞれの議会で法律や予算について話し合います。
一方官僚は、国会で議論される法案などをまとめて国会に提出し、国会議員が決定した内容に則って国の行政に関する実務をこなすのが仕事です。政治家の中でも国会議員はかかわりがあっても、地方議会議員や都道府県知事、市区町村長はかかわりがないかもしれません。
政治家は住民の選挙によって選ばれますが、官僚は国家公務員なので試験に合格すればなれます。官僚になるには国家公務員採用試験(Ⅰ種~Ⅲ種)の受験が必要です。特にⅠ種は難易度が高く、合格すれば中央官庁に「キャリア官僚」として採用されます。
政治家の仕事内容
政治家の仕事は、主に国民や地域住民の代表として法律や制度を整えるため、有識者と行政とをつなぐことです。
政治家には様々な種類があり、それぞれ役割も異なります。
国会議員
国会議員は、国家を運営していくうえで必要な決定を下す仕事です。
国会議員は国会に所属しています。 国会は立法府と呼ばれる法律をつくる機関なので、国会議員の最も重要な役割は法律の制定です。ほかにも予算の使い道を決めたり、外国との条約の承認、政策の立案にも対応します。内閣の総辞職や総理大臣不在の場合には、内閣総理大臣を選ぶのも国会議員の仕事です。法律の知識を増やすために、日頃から積極的に勉強会に参加することもあります。
地方議会議員(都道府県議会議員、市町村議員)
地方議会議員は、市区町村など地域の地方公共団体における議会に住民の代表として参加するのが仕事です。
地域でおこなわれる地方議会は議決機関にあたるため、条例の制定・改定や予算の決定が主な仕事になります。ほかにも住民の声を各地域 の行政に意見書として提出する役割 や、地方自治体の仕事の精査、住民の声を法律や制度に反映するのも仕事です。
地方自治体の首長(都道府県知事、市区町村長)
日本の地方自治体は「首長制」という制度をとっているため首長という表現をしていますが、「知事」 「市長」「町長」というとわかりやすいかもしれません。各地方自治体のトップにあたるのが首長です。
都道府県知事の仕事は予算案や条例案の策定、議会への提出、地方税や地方交付税交付金の使い道を決めるのが主な仕事です。ほかにも地域の商業・工業・農業の活性化や、雇用促進も仕事に含まれます。
市区町村長も予算案や条例案の制定が主な仕事です。ほかにも税金の課税と徴収、保健福祉、環境、道路、上下水道、教育など、住民の暮らしに直結する分野に責任を持ちます。
地方自治体の首長になるには住民の投票を集める必要があります。都道府県知事は満30歳以上、市町村長は満25歳以上の被選挙権を持つ日本国民であれば誰でも立候補できます。
政治家の仕事のやりがい
政治家の仕事は、法律や制度を整え、国民・地域住民の生活に影響を与える仕事です。法律や制度を変えるには議会 で何度も議論を重ねたり、他の議員を味方につけるよう努力したりすることもあります。簡単にできることではないですが、国や社会の未来のために力を尽くすことにやりがいを感じられるでしょう。
また、政治家は国民・地域住民の投票によって決められます。住民の応援や感謝の言葉がモチベーションアップにつながる のはもちろん、投票してくれた住民の期待に応えること、自分の信じる世の中を実現するために貢献することは、政治家ならではのやりがいといえます。
政治家の仕事の流れ
政治家の仕事のメインは議会に出席して意見を交わすことなので、仕事の流れは議会の日程が基準になります。議会以外の時間の使い方 は政治家本人が決めます。
国会の会期日数は年間150日、地方議会の会期日数は平均85日とされています。 他の時間で政策をまとめたり、関係者や関係団体と交流したり、勉強会に参加したりします。
選挙の種類
政治家は住民の選挙によって決められます。主な選挙を下記にまとめました。
内容 | 立候補(被選挙権)の条件 | |
衆議院議員総選挙 | 衆議院議員を選ぶための選挙。 衆議院議員の任期満了(4年)、もしくは衆議院の解散によっておこなわれる。 | 日本国民で満25歳以上 |
参議院議員通常選挙 | 参議院議員の半数を選ぶための選挙。 参議院には解散がないため、6年の任期満了によっておこなわれる。 | 日本国民で満30歳以上 |
一般選挙(地方議会) | 都道府県や市区町村(地方自治体)の議会議員全員を選ぶための選挙。 4年の任期満了や議会の解散によっておこなわれる。 | 都道府県議会議員 :日本国民で満25歳以上 その都道府県議会議員の選挙権を持っていること。 市区町村議会議員 :日本国民で満25歳以上 その市区町村議会議員の選挙権を持っていること。 |
地方公共団体の長の選挙 | 都道府県知事や市区町村長などを選ぶための選挙。 4年の任期満了、住民の直接請求(リコール)による解職、失職の場合におこなわれる。 | 都道府県知事 :日本国民で満30歳以上 市区町村長 :日本国民で満25歳以上 |
設置選挙 | 新たに地方自治体が設置されたときにおこなう選挙 | |
再選挙 | 投票日の後で、当選者の死亡や当選の無効があり、繰り上げ当選しても当選人が不足する場合におこなわれる。 | |
補欠選挙 | 議員の不足を補う選挙。 当選人の死亡や退職により議員の定数が不足する場合におこなわれる。 ※都道府県知事や市区町村長が死亡した場合は一般選挙。 | すでに議員であること |
増員選挙 | 任期中に議員の定数を増やしておこなう地方公共団体の議会選挙。 |
立候補の流れ
政治家として地域住民に選ばれるために、まずは立候補する必要があります。立候補するときの流れを簡単にご紹介します。
- 立候補の届出
国や地方公共団体に「立候補の届出」をします。
「政党届出」「本人届出」「推薦届出」の3つの方法があり、立候補する選挙によって利用できる方法が異なります。 - 通称使用の申請
立候補の届出には戸籍の本名を記載しますが、本名以外に広く知られている通称があれば、選挙で使えるように申請することができます。 - 供託
立候補するとき、候補者ごとに供託金を預ける必要があります。
供託金は、売名行為で勝手に立候補する人を防ぐための制度で、一定額の現金または国債証書を法務局に預け、証明書を提出します。
候補者や政党などの得票数が規定の数に達しなかったり、候補者が辞退したりした場合には、供託金の全額もしくは一部が没収されます。
- 立候補届の受理
立候補の届出に問題がなければ、選挙長が受理し、立候補が完了します。
立候補の注意点
政治家に立候補するときには、いくつか注意点があります。
届出期間
立候補の届出期間は、選挙の期日の公示または告示があった日の1日間のみです。受付時間は午前8時30分から午後5時までで、平日も休日も同様です。
辞退
立候補の届出期間中のみ辞退することができます。辞退するときは選挙長に文書で届け出る必要があります。
禁止と制限
被選挙権を持っていない場合、立候補することはできません。
候補者の異動
届出を提出後、候補者が死亡したり選挙権がないことがわかったりすると、立候補届は却下され、候補者名簿から除名されます。
政治家の年収
政治家の年収は、国会議員と地方議員とで異なります。下記に年収の一例を記載しているので、参考にしてみてください。
国会議員の年収
国会議員の年収は、およそ2,200万円と言われています。
国会議員に支払われる給料のことを「歳費」と言い、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」で月額129万4,000円と規定されています。期末手当が加わって年収2,200万円ほどになることが多いようです。
地方議員の年収
地方議員の年収は、各自治体で条例によって決められています。
町村の議会議員だと年収210万円前後ですが、市議会議員だと400万円前後、都道府県議会議員だと810万円前後になると言われています。期末手当もつきますが、こちらも各自治体によって異なります。
首長の年収
首長の年収も、各自治体によって異なります。
2022年の総務省調査「知事(市区町村長)・副知事(副市区町村長)の平均給料月額」によると、知事・市区町村長の平均月収は79.5万円、年収に直すと954万円になります。地域によっては月収100万円前後のところもあるようです。
政治家に必要な資質と能力
政治家は、「世のため」「人のため」に仕事をしたいという人に向いています。法律や制度を変えるために朝から晩まで働き続け、土日も活動することがあります。世の中や人のために、という情熱があってこそできる仕事です。
法律や制度をより良い方向に変えたいと思って提案しても、議会には賛成意見の人もいれば反対意見の人もいます。法案を通すために意見をまとめて調整する力や、議会を進めていく判断力が求められるでしょう。
国民・地域住民の代表として意見を通す責任があるので、そのプレッシャーに耐えうるタフさも必要になります。普段から政治家同士の交流はもちろん、応援してくれる住民との関係性を築くなど、繊細な対応も求められます。
また、政治家は国民・地域住民の投票で決められるため、応援されるような人としての魅力も問われます。普段からこまめに交流を重ねたりするだけでなく、国民・地域住民の代表としてふさわしい人柄やふるまいに気を使うことが重要です。
政治家になるための方法とは?
政治家になるのに必要な資格はなく、国民・地域住民の投票によって選ばれれば誰でも政治家になれます。しかし立候補して選ばれるには、住民との関係性や政界とのつながりを築いておく必要があります。そのため、政治塾に通ったり他の分野で知名度を上げてから立候補したりして政治家を目指す人が多いようです。
政治家の世界の現状
前述したように、政治家は国民・地域住民の代表として期待を背負う仕事です。ちょっとした不祥事があればすぐに好感度が下がってしまうので、プレッシャーの強い仕事といえるでしょう。近年政治家に対する世間の目は厳しく、給料が上がりにくくなっているとも言われています。
一方で、政治家が自身の票を集めるには選挙活動 が必要ですが、それにはお金がかかります。支援者との関係を築くために地方に赴くときの交通費などは自費なので、比較的給料が高いとされる政治家でもお金がない、と悩む人が増えているようです。
また、今後の世の中のために若年層や女性の政治家の活躍が求められるようになってきました。投票できる年齢を18歳に引き下げ、既婚で子供もいる女性も働きやすい環境を整えるために、まずは政治家から変えていく必要がある、との認識が広まっています。
政治家になるための勉強ができる大学・学部
政治家になるために資格は不要ですが、政治家になるために役立つ勉強ができる大学や学部を選ぶといいでしょう。
法学部・経済学部・政治学部などの、政治にまつわる内容を学べる学部がおすすめです。
法学部:法律の解釈や、運用方法などを学びます。具体的な事例をもとに、法律を使ってどのように解決していくかというポイントを学べることもあります。
経済学部:経済学全般を学びます。経済理論や経済の歴史、金融分野なども経済学部で学べます。
政治学部:政治に関する分野全般を学べます。選挙における投票者の行動分析や、政治思想、国際情勢についても学べることが多いです。
経済学と政治学両方を学べる「政治経済学部」を設置している大学もあります。
また、政治家の仕事の範囲も教育・福祉・医療など多様化してきているので、自分の興味のある分野に特化しておくという選択肢もあります。日本はもちろん、海外の情勢についてもアンテナを張れるようにしておくといいので、国際系の学部に進学するのも効果的です。
政治家になるうえで学歴が影響することはほとんどないので、有名大学にこだわる必要はありません。ただし有権者が投票するにあたり、学歴を重視する場合 があることは覚えておきましょう。
下記は、政治家になるための勉強ができる大学の一例です。
経済学部がある大学
明治大学(政治経済学部)など
政治家に必要な資格や受験すべき試験
政治家に必要な資格や試験はありません。
しかし政治家に立候補するには、日本国籍であることが第一条件です。また、「衆議院議員」「地方議会議員」「市町村長」への立候補は満25歳以上、「参議院議員」「都道府県知事」への立候補は満30歳以上であることが条件となります。
政治家になるために目指すべき就職先
政治家になるためには、学部を卒業してすぐに選挙に立候補、当選という道を進むわけではありません。地域住民の信頼を得たり、政界とのコネクションをつくったりするなど実績をつくるためにも、下記のような就職先を選ぶのが一般的です。
公務員
公務員として官公庁や役所・役場に勤務してから、政治家に立候補するという方法があります。公務員は国民・地域住民の生活に密着する仕事なので、今後政治家として地域に対して何をすべきかを知ることができ、選挙に必要な関係性を築くこともできます。
政治家秘書
政治家の秘書として政治家の仕事や政界の知識を得て、経験を積んでから政治家に立候補する道もあります。政治家秘書にも特別な資格はありませんが、政治に関する知識や臨機応変なふるまいが求められるでしょう。政治家秘書になるには、議員事務所の募集やボランティアへの応募、知人からの紹介が主な方法です。
政治家になった後のキャリアプラン
政治家になった後のキャリアプランは、どこから政治家としてスタートするかによって異なります。
市区町村の地方議会議員としてスタートした人は、都道府県議会議員、国会議員へのステップアップが可能です。市議や県議が市長や知事のような首長を目指すパターンや、国会議員であれば任期を重ねることで幹事長などの重要なポストを任される場合もあるでしょう。各省庁の大臣、ゆくゆくは総理大臣という道に進める可能性もあります。
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政治家になるには特別な資格や試験は不要ですが、法律や行政に関する知識や世のため・人のためになる仕事をしたい、という情熱を持っていることが必要です。国民・地域住民からの支持が得られれば誰でもなれますが、そのための関係づくりなど基盤を整える必要があります。法律や政治学を学べる大学への進学や政治塾への入塾、公務員や議員秘書への就職を視野に入れておくといいでしょう。
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