外交官(外務公務員)になるには?外交官の仕事の内容ややりがい、気になる年収や必要な資格を解説
2023.03.13
高校生の皆さんの中には、外交官の仕事に憧れている人もいるでしょう。外交官は日本を代表して他国と交渉にあたる役割で、世界を相手に仕事をするイメージもあるかもしれません。この記事では、外交官の仕事内容や年収、外交官になるための資格などについてご紹介します。
目次
外交官とは?
外交官は、外務省で働く国家公務員です。
国家公務員については下記を参照してください。
国家公務員になるには
海外の大使館で働くイメージがありますが、外交官の仕事は幅が広く、国内での仕事もあります。
安全保障や条約などの法律に関する仕事もあれば、会計や事務の仕事もありますよ。
外交官と外務公務員の違い
外交官は「外務公務員(外交官)」と表記されることがあります。外務公務員は「外務省で働く人」を意味するので、外務公務員と外交官は同じです。
ただ、外務省で働く人全員を「外務公務員」、その中でも特に海外の大使館で働く人を「外交官」と使い分けていることが多いです。
外交官の仕事内容
外交官の仕事は、外務公務員の中でも海外の大使館、総領事館、そして政府代表部などの在外公館に勤務し、国際社会における日本国民の利益を追求することです。世界各国には日本の大使館や総領事館、政府代表部などの在外公館が200ほどあります。
赴任する在外公館を拠点として、担当地域や国際機関において、日本の代表として外交の最前線で業務にあたります。
他国政府との調整や交渉、情報収集、日本人の保護を含む領事業務、日本企業の支援、広報文化活動など多岐にわたります。
外交官の仕事のやりがい
外交官の仕事は、日本と海外との交流をサポートする仕事です。自分の仕事が国際社会における日本の位置づけを決めるということはプレッシャーを感じるかもしれませんが、世界を舞台に活躍することは誇らしい仕事といえるでしょう。
海外で暮らす日本人の力になれたり、他国に日本の良さが伝わったりしたときには、自分が日本と海外との架け橋になれたという実感も得られます。
外交官の仕事の流れ
外交官の仕事は採用先や持っているスキルによっても異なりますが、多くの場合ほぼ半分を海外で暮らすことになります。外務省の幹部候補生や特定の分野に通じた専門職として採用されると、在外公館勤務と外務省本省勤務を交互にこなすことが多いようです。
在外公館で働く外交官のスケジュールの一例
8:30 | 出勤 出勤時間は赴任先の国によって異なります。 |
9:00 | メールや報道をチェック 前日のうちに溜まっている世界中のニュースを確認します。 |
9:30 | 館内会議 職員全員で集まり、当日の業務内容などを確認します。 |
10:00 | 滞在国の自治体、国会との意見交換・情報収集 |
12:00 | 昼食休憩 |
13:00 | 地域の学校 やイベントの視察 |
15:00 | 本省への報告書作成 |
17:00 | ほかの職員と業務の進捗や、意見交換して得た情報などを共有する。 |
18:00 | 赴任国の歓迎パ―ティーに出席。 |
何事もなければ日本と同様に夕方で業務が終わりますが、自然災害など不慮の事態に見舞われた際には、深夜まで業務が続くこともあります。日本ほど整備されていない国では、常に何かしらのトラブルが起きている可能性も高く、緊急で対処する必要もあるでしょう。
外交官の年収
公務員である外交官には、国家公務員の給与を定める行政職俸給表が適用されます。基本的な月収は通常の公務員やサラリーマンと大差なく、18〜21万円前後です。人事院の調査によると、令和4年度の平均年収は約668万円となっています。
しかし外交官は海外赴任手当などが発生するため、それよりも高くなる傾向にあります。基本的には「在勤基本手当」「住居手当」、配偶者が一緒に海外赴任する場合は「配偶者手当」、子どもに海外の教育を受けさせる場合は「子女教育手当」があります。少なくとも月に50万以上は多くもらえる計算です。
外交官に必要な資質と能力
外交官に求められるのは、下記のような能力です。
● 柔軟な思考力
● コミュニケーション能力
● 交渉能力
● 社交性、適応力
コミュニケーション能力はどの仕事でも重要ですが、外交官の場合は外国語でのコミュニケーションなうえに日本国を代表している立場。高いコミュニケーション能力が求められます。
海外は日本とは文化も常識も大きく異なるので、異文化を柔軟に受け止める思考力、社交性や適応力が必要になります。また、万が一にも妥協したりしないよう、交渉力は非常に重要です。交渉の場面で言葉や文化が異なるからと妥協してしまえば、国際社会で日本が不利な状況になってしまうかもしれません。他国を尊重しつつ、日本の国益につながることはきちんと主張し、交渉する力が必要です。
外交官になるための方法とは?
外交官は公務員なので、人事院がおこなう採用試験を受ける必要があります。
学歴問わず採用試験は受けられますが、試験の難易度は高く、難関大学卒業者でも合格は難しいとされています。大学で憲法や経済、国際法などの試験科目について学ぶのがベストです。
外交官の世界の現状
国際社会において、日本の外交官が果たす役割は大きくなってきています。
日本は経済力が上がり国際社会での地位も向上してきたため、より世界に向けて積極的に貢献することを求められています。在外公館での業務もより複雑になり、総合的な仕事も専門的な仕事も必要とされるようになってきました。勤勉な日本人の海外での働きが期待されています。
外交官になるための勉強ができる大学・学部
外交官になるために役立つ勉強ができる大学を一覧にしました。ごく一部のみなので、自分の近くの地域についても調べてみてください。大学名をクリックすると、逆引き大学辞典の大学ページが開きます。
神田外語大学 | グローバル・リベラルアーツ学部 ・グローバル・リベラルアーツ学科 |
立教大学 | 異文化コミュニケーション学部 ・異文化コミュニケーション学科 法学部 ・国際ビジネス法学科 |
京都産業大学 | 国際関係学部 ・国際関係学科 外国語学部 ・英語学科 ・アジア言語学科 |
中央大学 | 法学部 ・国際企業関係法学科 経済学部 ・国際経済学科 総合政策学部 ・政策科学科 |
南山大学 | 国際教養学部・国際教養学科 |
山梨学院大学 | 国際リベラルアーツ学部 ・国際リベラルアーツ学科 |
拓殖大学 | 国際学部・国際学科 |
金沢星稜大学 | 人文学部 ・国際文化学科 |
名古屋外国語大学 | 世界共生学部 ・世界共生学科 |
名城大学 | 外国語学部 |
外交官に必要な資格や受験すべき試験
外交官になるためには、公務員試験を受ける必要があります。外交官になるための採用試験は下記のとおりです。
● 国家公務員採用総合職試験
● 外務省専門職員採用試験
● 国家公務員採用一般職試験(大卒・技術系、高卒程度)
● 国家公務員経験者採用試験
試験は区分によって難易度が異なります。特に「国家公務員採用総合職試験」は将来幹部候補として、「外務省専門職員採用試験」は地域分野のスペシャリストとしての活躍をそれぞれ期待されます。その分これらの試験は難関といわれています。国家公務員採用総合職試験については特に難易度が高く、倍率が20倍近くなることも少なくありません。
外交官になるために必要な資格はなく、基本的に学歴も問われません。英語力が問われることもありませんが、TOEFLまたはIELTS、得意言語の試験のスコアは提出を推奨しています。
採用試験の受験資格には年齢制限があり、満21歳以上30歳未満となっているので注意しましょう。
外交官になるために目指すべき就職先
外交官は外務公務員なので、就職先は外務省になります。配属先によって、業務にも違いがあります。
・総合職
本省と在外勤務を繰り返しながら、政策立案・企画の中枢や外交の最前線で、外交活動に携わります。
将来的に幹部職員になる候補として採用されます。
・専門職
主に外交の最前線で地域・言語・専門分野のスペシャリストとして活躍します。
・一般職(大卒・技術系)
主に情報通信業務、建築物の建築や修繕、模様替えをおこなう営繕業務、画像情報分析業務を通じて、技術面で日本外交を支える任務のスペシャリストになります。
・一般職(高卒程度)
主に会計、営繕、通信、領事業務など外交の幅広い業務を支えます。将来的に外務省での事務や会計を務める可能性もあります。
また、業務の違いを表にまとめました。
総合職 | 英語をはじめとする8言語の中から1言語の希望・適正を配慮したうえで配属が決まります。 ・入省後約2年間本省にて実務研修 ・3~5年目に在外研修 ・5~7年目に在外勤務 |
専門職 | 40あまりの言語から希望・適正を配慮したうえで専門言語が決まります。 ・入省後約1年間は本省で実務研修 ・2年目以降2~3年間は在外研修 ・在外公館勤務 その後は5〜6年ごとに本省と在外公館の勤務を繰り返します。 |
一般職(大卒・技術系) | ・入省後約2~3年間本省勤務 (1~3年は英語研修) ・3年目以降に1年間の在外語学研修 ・4~5年目から在外公館勤務 その後は5〜6年ごとに本省と在外公館の勤務を繰り返します。 |
一般職(高卒程度) | ・入省後約4年間本省勤務 (会計、営繕、文書管理、通信、秘書的業務等) ・2〜3年目に英語研修 ・4年目に専門語研修 (英、仏、西、中、露、ポルトガル語のうち1言語) ・5年目から在外公館勤務 各種語学研修で優秀な成績を収めた職員については、半年から1年間の在外語学研修を受講できる制度もあります。 その後は5〜6年ごとに本省と在外公館の勤務を繰り返します。 |
外交官になった後のキャリアプラン
外交官は、本人の希望に加え適正などを見て配属先が決まり、その先のキャリアも大まかに決まっています。外務省本省や在外公館で一等書記官、参事官などとして専門業務に携われる可能性もあります。
外交官を「JOB-BIKI」で検索しよう
外交官は海外を舞台に活躍する仕事です。グローバル化が進む今日、国際社会における日本の地位を高めるために総合的な能力も専門的な能力も求められます。国家公務員という安定した収入を得ながら、人生の多くを海外で過ごす、非常に魅力的でやりがいのある仕事です。外交官になるための試験はハードルが高いですが、勉強できる大学や短大も多岐にわたります。外交官への道を目指したいと思ったら、「JOB-BIKI」の「就職先検索」で「外務省」を検索すると、入省している大学別の人数がわかります。また、「人物検索」で「外交官」と検索してみてください。著名な外交官の出身大学を知ることができますよ。