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貿易事務とは?仕事内容や年収、役立つ資格、目指せる大学の学部も紹介

2023.04.05

カテゴリー:
港を眺める貿易事務員の後ろ姿

貿易事務員は、海外から品物を輸出入するために必要な書類を用意したり、飛行機や貨物船の予約を取ったりする事務の仕事です。海外との取引に欠かせない数多くの事務をこなし、貿易を支えています。

本記事では、貿易事務員の仕事内容や年収、将来性、役立つ資格や目指せる大学の学部などを紹介します。 貿易事務を目指せるおすすめの大学が知りたい人は、「JOB-BIKI(ジョブビキ)」をチェックしてみてください!貿易関係の有名企業とそこで働く先輩の出身大学も併せて確認できるので、進路選びの参考になるはずです!

貿易事務員の仕事の内容

担当する案件について関係者と話し合う貿易事務員

貿易事務員は、海外との取引を行う企業に所属して、外国語を使いながらさまざまな事務を行います。主な仕事内容は、海外の企業との電話やメールでのやり取り、輸出入の手続きに必要な書類の作成、飛行機や貨物船での輸送の手配、輸送スケジュールの管理などです。一般的な事務職とは異なり、外国との取引が仕事の中心となり、輸出入に関する法律や国際情勢などの知識も求められます。

貿易事務の仕事内容は大きく輸出と輸入に分けられます。それぞれの仕事内容を見ていきましょう。

輸出業務

輸出業務における、貿易事務の仕事内容は以下のとおりです。

契約相手と交渉・価格や納期、決済条件などの条件を輸入者と決める
売買契約・合意した内容をもとに契約書を作成する
信用状(L/C)の確認・輸入者から発行された信用状※1が、事前に取り決めた売買契約と完全に一致しているかどうかをチェックする
船積の準備・商品の出荷に必要な書類(インボイス※2やパッキングリスト※3)などを作成する
・これらの書類を物流会社(フォワーダー)に提供し、商品の船積みや通関手続きを依頼する
輸出通関手続き・輸出される商品の税関申告書類を作成し、税関に提出する。税関は書類と実際の商品を確認し、輸出許可を出す
代金の回収商品引取に必要な書類(B/Lやインボイス、パッキングリスト等)を銀行に提出し、商品代金を回収

※1 信用状(L/C):Letter of Creditの略で、輸入者の支払いを銀行が保証する書類

※2 インボイス:商品の詳細な情報(品名、数量、金額など)が記載されている売買契約書のようなもの。インボイスがあることで、代金の請求や支払いがスムーズに行える

※3 パッキングリスト:輸出する商品の梱包内容を詳しく記載した書類。パッキングリストにより、輸入企業が荷物の内容を確認しやすくなる。

輸入業務

輸入業務における、貿易事務の仕事内容は以下のとおりです。

契約相手と交渉・価格や納期、決済条件などの条件を輸出者と決める
信用状(L/C)の開設・売買契約に基づいてL/C開設依頼書を作成し、商品代金を支払うための証書を銀行に作ってもらう
船積書類の確認と代金支払い・輸出者が発行した船積みに関する書類(船荷証券やインボイスなど)を慎重に確認し、商品代金の支払いを行う
輸入通関手続きと貨物の引取・物流会社(フォワーダー)に船積書類やその他必要書類を提供し、通関手続きを依頼する
・船会社から到着通知が届いたら、フォワーダーにその情報を伝えて、輸入通関と貨物の引取を依頼する

貿易事務の1日の流れ

貿易事務の一般的な1日の流れを確認しておきましょう。

9:00・メールチェック
・輸出先の船会社へ商品情報を伝える、書類作成・送付(輸出業務)
・書類や商品情報の提供を求めるメールを送る(輸入業務)
・貨物の到着連絡を受けたら、内容物の確認や出庫手続き、配送の段取りなどを行う
12:00・お昼休憩
13:00・船積書類(インボイスやパッキングリスト)の作成・確認
・信用状(L/C)の確認作業
・通関書類の作成
15:00・顧客との連絡・調整(納期調整や配送指示など)
・文書や郵便物の管理、伝票の処理など
17:00・ヨーロッパ圏の人が出社する時間なので、メールや電話で打ち合わせを行う
・書類整理、明日の業務の準備
18:00・退勤

貿易事務の仕事は、時差のある海外とのやりとりが中心です。朝のメールチェックから始まり、午前中は緊急案件に対応。午後は船積資料の作成や信用状の確認など、書類の精査に集中します。

貿易事務員の仕事のやりがい

貿易事務員は、自分が身に付けた語学力を活かして、世の中に広く貢献できる仕事です。生活に欠かせない食べ物や衣服など、あらゆる品物の輸出入に関わり、たくさんの人の暮らしを支えています。外国語のスキルを活かせる仕事に憧れるなら、貿易事務員を目指してみては?

貿易事務員の想定年収

貿易事務員の年収は全国平均で464.4万円です。月額の求人賃金は全国平均で22.2万円となっています。日本国内で貿易事務員として働いている多くの人は、商社や通関業者などの企業に就職しています!高い語学力が求められる専門的な仕事であるため、一般的な企業の事務職と比較して、高い報酬が期待できるでしょう。

【参考】職業情報提供サイト(日本版O-NET)
URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/439

貿易事務の将来性

貿易事務の仕事は将来性があると言えるでしょう。その理由は主に2つあります。

ひとつは、日本の輸出入総額は年々増加しており、今後も増加が予想されるからです。日本は資源が乏しく、エネルギーや食料の多くを輸入に頼らざるを得ない状況があります。また、日本の高品質な製品への海外需要は依然として高く、新興国の経済成長により新たな市場も広がっているためです。

もうひとつの理由は、貿易事務の仕事は、AIで代替えできない部分が多いためです。人間の判断力や柔軟性が必要な場面が多く存在するのです。

たとえば、以下のような仕事はAIには難しいでしょう。

  • 異文化間のコミュニケーションや複雑な交渉
  • 急な変更への対応
  • 法規制の解釈と適用

これらの業務では、人間の経験や直感、そして状況に応じた柔軟な判断が不可欠です。そのため、AIと人間が協力しながら業務を進める形態が今後も続くと予想されます。AIが定型的な作業を効率化する一方で、人間はより高度な判断や創造的な問題解決に注力することになるでしょう。

貿易事務員に求められる資質やスキル

国際電話で書類の内容について確認をする貿易事務員

貿易事務員の仕事には、どんな能力が必要なのでしょうか?仕事で求められる資質やスキルをご紹介します。

ビジネスレベルの外国語力

貿易事務員の仕事には、外国語でコミュニケーションできる能力が必須です。日常会話やビジネスで通用する読み書きができることはもちろん、貿易に関する専門用語の語彙までカバーできる高度な外国語力が求められます。グローバルに使われる英語はもちろん、中国語や韓国語をはじめとして、取引先に合わせた外国語が使えると良いですね。

英語力を活かせる仕事は、貿易事務以外にもいろいろありますよ。興味がある人は、以下の記事も参考にしてみてください!

英語を活かせる仕事17選!必要な英語レベルや進路選びのコツも紹介 (gyakubiki.net)

貿易取引に関する幅広い知識

海外との取引に携わる貿易事務員の仕事では、海外輸送の手続きから各国の法律や税金まで、専門知識が問われます。特に法律に関しては、知識が不足すると違法な輸出をしてしまうリスクも!就職後は単に事務処理のやり方を覚えるだけでなく、現場で経験を積みながら覚えていくべき関連知識が多い仕事だといえます。

スケジュール管理能力

輸出入した品物をお客様と約束した期日までに届けるには、貿易事務員が正確に手配しなければなりません。貿易は長距離の輸送となるため、途中で遅延が発生する可能性があります。なかには賞味期限がある食品のように、遅延により大きな被害を受けてしまう品物もあるでしょう。海外輸送ならではの事情を考慮した上で、スケジュールを管理できる能力が求められます。

コミュニケーション能力

貿易事務員は、海外の取引先から社内の営業担当者まで、言語や立場の違う多様な人たちと連携しながら仕事をこなします。多くの人と関わりながら、輸出入に関する数多くの手続きをミスなくこなすためには、正確に意思疎通ができるコミュニケーション能力が欠かせません。

貿易事務員になるには?

貿易事務員を目指す大学生たち

貿易事務員になるために必須の資格はなく、一般的には大学や短大を卒業した後に、新卒採用で企業へ入社することになります。ただし、外国語や事務職に関する資格を取得しておくと、貿易事務員に求められる語学力やPCスキルなどを証明できるようになり、採用で有利になるでしょう!

ここでは、貿易事務員になるためにおすすめの学部や必要な資格について紹介します。

貿易事務員になるためにおすすめの学部

貿易事務員の仕事では高い語学力が求められるので、大学では外国語や国際コミュニケーションに関する学部を選ぶのがおすすめです。たとえば、ビジネスシーンで活躍の場が多い英語を学ぶなら、文学部や外国語学部の英語科・英米語学科などが挙げられます。文学部の中国語専攻、韓国語専攻などで第二外国語のスキルに磨きをかけても良いでしょう。ほかにも、さまざまな外国語でのコミュニケーションや国際学の教養を身に付けられる国際教養学部も、語学力に磨きをかける環境が充実していますよ。

語学力は短期間で鍛えるのが難しいからこそ、コツコツと勉強を続けることが大切!大学には海外から学びに来た留学生も身近にいるので、在学中は外国語でコミュニケーションを取る経験をたくさん積めるでしょう。進路ではこれらの学部を目指してみてはいかがでしょうか?

【貿易事務員になりたい人におすすめの大学・学部・学科】

貿易事務に役立つ資格

貿易事務に特別な資格は必要ありません。ただし、関連する資格を取得しておけば、就活時のアピール材料になります。

ここでは、貿易事務に役立つ資格を4つ紹介します。

  • TOEIC
  • 日商ビジネス英語
  • 貿易事務検定(R)
  • マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)

TOEIC

貿易事務の世界では、TOEICが重要な資格として認識されています。貿易事務の求人情報では、TOEICスコアの目安として550~600点が示されることが多いです。これは大学生の平均点である588点※とほぼ同じ水準です。つまり、この目標は特別に高いハードルではありません。大学生活を通じて計画的に学習すれば、十分に達成可能なスコアといえるでしょう。

※参考:TOEIC Program DAA2023(和文)2023年8月版 (iibc-global.org)

日商ビジネス英語

日商ビジネス英語検定は、ビジネスで実際に使用する英語力を測定する試験です。三級から一級まであり、各級でライティング、リスニング、スピーキングの能力が総合的に評価されます。

試験内容の一例は以下です。

  • ビジネスメールの作成
  • 国際取引実務
  • 貿易規則

貿易事務の実践的なスキルも身につくので、就職時にアピールしやすいでしょう。

日商ビジネス英語は、年齢や職業に関係なく誰でも受験できるので、3級から挑戦してみるのはいかがでしょうか。

日商ビジネス英語 | 商工会議所の検定試験 (kentei.ne.jp)

貿易実務検定

貿易実務検定は、貿易実務の知識とスキルを証明する資格です。C級からA級まであり、出題科目は以下の3つです。

  • 貿易実務(貿易書類や通関知識など)
  • 貿易マーケティング
  • 貿易実務英語(商業英単語や英文解釈など)

貿易事務を目指す人にとって、実務に直結する知識を体系的に学べる試験です。受験資格に制限はないので、高校生のうちから勉強を始めるのもいいですね。

貿易実務検定®について | 貿易実務検定®の紹介 | 貿易実務検定(R) (boujitsu.com)

マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)

Microsoft Office Specialistは、Word、Excel、PowerPointなどの実務スキルを証明する資格です。具体的には、以下のような試験内容になります。

取得することで、貿易事務に必要な文書作成、データ分析、プレゼンテーション能力をアピールできます。試験では、実際のソフトウェアを使用してさまざまな課題を解決する実践的な問題が出題されます。たとえば、複雑な表の作成や関数の使用、効果的なスライドの作成などです。

受験資格に制限はないため、高校生でも挑戦可能です。MOS公式サイト-マイクロソフト オフィス スペシャリスト (odyssey-com.co.jp)

貿易事務員が働く場所とキャリアプラン

貿易事務員を目指す大学生たち

貿易事務員の主な就職先や、将来の働き方についてお伝えします。仕事でどんな風に活躍できるのか、ぜひチェックしてみてください!

貿易事務員が働く場所

貿易事務員はさまざまな職場で活躍しており、職場によってメイン業務が異なります。

貿易事務員が働く場所メイン業務
・商社※1
・メーカー
・海外取引先との交渉と契約管理
・輸出入商品の受発注業務
・国際輸送の手配と管理
・通関業者※2・輸出入通関書類の作成と申告
・関税や消費税などの税金計算と納付手続き
・税関との連絡調整や必要書類の準備
・フォワーダー
・船会社
・国際輸送の最適ルート設計と提案
・運送会社や船会社との調整および交渉
・貨物の船積み手配と必要書類の作成
・航空会社
・海運会社
・国際貨物の予約管理と輸送スケジュールの調整
・輸送に必要な書類(航空貨物運送状など)の作成と確認
・顧客や税関との連絡調整および輸送状況の報告

※1商社:世界中にビジネスの幅広いネットワークを持っている企業のこと。売り手と買い手をつなげて、取引を仲介する

※2:品物の輸出入をサポートする企業のこと。外国から輸入する品物に課される税金(=関税)の手続きや、輸出入する品物の検査や許可などの手続きを代行する

貿易事務が活躍している詳しい就職先が知りたい人は、「JOB-BIKI(ジョブビキ)」をチェックしてみてください!貿易関係の有名企業とそこで働く先輩の出身大学も併せて確認できるので、進路選びの参考になるはずです!

貿易事務員のキャリアプラン

貿易事務員の仕事は専門性が高いことから、海外と取引のある多くの企業で求められています。そのため、仕事を一通りこなせるようになったら、その後は就職先の選択肢が広がるのが魅力です!中途採用の求人情報では、経験者を募集していることがほとんど。実務の知識とスキルを証明できる「貿易実務検定」の資格を取得しておくと、転職などのキャリアアップでも役立つでしょう。

また、貿易事務員と近い職種である「通関士」の国家資格を取得して、活躍の場をさらに広げる人もいます。通関士は、通関業者に所属して、税関での手続きを代行する専門職です。海外との取引に携わる業界で、事務職以外の仕事にも挑戦してみては?

通関士とは?仕事内容や将来性、なる方法やキャリアプランを紹介 (gyakubiki.net)

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貿易事務員の仕事についてご紹介しました。貿易事務員を目指すなら語学力が必須といえます。語学力を高めるには、長期的に勉強を続けることが大切。外国語や国際コミュニケーションを学べる大学に進学すると、外国語を専門的に学んだり、一緒に学ぶ仲間たちと外国語で交流したりしながら、着実に語学力に磨きをかけられるでしょう!貿易事務員を目指せる大学が気になったら、ぜひ「JOB-BIKI」を使って調べてみてくださいね。検索画面の就職先検索で「小売・卸売」から「総合卸売・商社・貿易」を選ぶと、貿易事務員が活躍する業界の情報を調べられます。先輩たちの進学先情報をチェックしてみましょう!

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