画家になるには?仕事内容や年収、必要な資質や能力について解説
2023.04.21
高校生の皆さんのなかには、過去に芸術作品の影響を受けたなどの経験から画家を目指したいと考えている人もいるでしょう。絵の種類や発信方法も広がり、画家の活躍できる場は広がりつつあります。この記事では、画家の仕事内容や気になる年収、必要な資質や能力について解説します。画家になりたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
画家とは?
画家は、自分のつくる絵を通じて人々に感動を与える仕事です。ときには社会現象を引き起こすほど大きな影響力を持つこともあり、歴史に名を残す可能性もあるでしょう。
画家の分類は様々で、大きく文化で分けて「日本画家」「洋画家」に分類したり、絵の具の材料で分けて「油彩画家」「水彩画家」などに分類したりすることができます。
デジタル技術が発展した近年では、パソコンやタブレットを使用して描く「デジタル絵画」をメインに扱う画家もいます。
画家とイラストレーターの違い
画家と同じく絵を描く仕事に、イラストレーターがあります。
主に自己表現のために絵を描き、個展などで売って収入を得る人を画家と呼ぶことが多いです。クライアントから依頼を受けて描くこともありますが、そう多くはありません。
一方でイラストレーターは、出版社や広告代理店といった企業の依頼を受けて描くことが多いです。
自己表現のために描くこともありますが、収入のほとんどは企業の指定を受けて描いたイラストになります。
イラストレーターについてもっと詳しく知りたい人は、こちらの記事も参考にしてみてください。
画家の仕事内容
画家の具体的な仕事内容は、自分の得意とする絵画技術で描いた絵を売って収入を得ることです。基本的な絵画技術は下記の3つです。
水彩画
水彩絵の具を用いて描く絵を水彩画といいます。透明水彩絵具と不透明水彩絵具を使用し、絵の具と水の量を調節して絵に表情をつけます。淡く優しいタッチと透明感のある絵が特徴です。
油彩画
油絵具を用いて描く絵を油彩画といいます。油絵具は岩石や鉱物などの顔料粉末を亜麻仁油などで練ってつくります。それをさらに揮発性油で溶かしたものをつかって、麻や綿の布を張ったキャンバスに絵を描きます。力強いタッチと鮮やかな色が特徴で、洋画によくつかわれます。
デジタル絵画
デジタル絵画は、パソコンやタブレットをつかって描く絵です。ベースとなるのは水彩画と油彩画の技法で、画像編集ソフトを用いて作成します。CGイラストや3Dモデルなど従来の伝統絵画ではできない表現を出すことができ、ゲームやアニメの背景やグラフィックデザインに活用されることが多いです。
画家として収入を得る方法は、主に下記のようなものがあります。
● 画商や画廊による代理販売
● プライマリー・マーケット(一次市場)への出品
● コンクール、アートフェスティバルへの出品
● 個人で直接販売
基本的には絵画を売る専門家の画商や絵を飾る画廊(ギャラリー)と契約して、代理で自分の絵を販売してもらいます。
コンクールやアートフェスティバルに出品し、賞を受賞して賞金を得ることもできます。必ず入賞できるとは限りませんが、博物館などに芸術品を保管する学芸員(キュレーター)や画商の目にとまる可能性もあるので、定期的に出品するという画家もいます。
腕を磨いて知名度が上がれば、個展を開いて直接作品を販売すると大きな利益を得られるようになります。近年ではネットショップやSNSを活用して自分で絵を販売する画家も増え、値段のつけ方は人によって異なります。自分の実力や努力次第で収入を左右できる仕事といえるでしょう。
画家の仕事のやりがい
画家の仕事のやりがいは、大きく分けて3つあります。
1.自分の好きなことを仕事にできる
画家になる人は、何かを表現したい、自分の手でつくり出すことに喜びを感じる人が多いです。
自分の好きなことが収入になり、仕事にできることはこの上ない喜びであり、やりがいといえるでしょう。
2.作品が評価される・後世に名を残せる
画家の描いた作品は、芸術として世間に評価されて初めて値段がつきます。自分のつくった作品が多くの人の目に触れ、評価を得られれば、より良い作品をつくりたいという思いも高まるでしょう。
また、ときには作品が社会に大きな影響を与え、後世に名を残すこともあります。自分の生きた証として、作品と名前を歴史に刻むことができれば、何ものにも代えがたい喜びになるでしょう。
3.人々の生活に彩りを添えられる
絵画は人々の暮らす空間に、彩りを添えてくれます。自分の描いた絵が人々の生活に彩りを添えられることに、やりがいを感じられるでしょう。
画家の仕事の流れ
画家は自由業であり、仕事の流れは人によって異なります。各々の制作ペースや仕事の量によって左右されるでしょう。
自由業とはいえ、画家として収入を得るためには注文を受けて仕事をしたりコンクールに出品したり、個展を開いたりする必要があります。その場合はコンクールや個展の開催に合わせて絵を描くことになる ので、具体的な仕事の流れ はコンクールの締め切りや個展のスケジュールに合わせて決まることが大半です。
画家の収入だけで生活できる人は限られており、現実的には副業として絵画教室の講師やデザイナーの仕事を手がける人もいます。そうした副業がある場合には、副業の時間を軸にして自分の描く時間をスケジューリングすることになるでしょう。
画家の年収
画家の年収は、人によって異なるため統計がほとんど出ていません。
画商や画廊による代理販売や市場への出品では、絵のサイズによって販売価格が決められます。絵の額のサイズを表す単位を「号」といい、「号」あたりいくら、というランク 設定が価格の基準 です 号あたりの単価は画家本人が決めるか、契約している画廊との取り決めによって決められます。例えば1号あたり3万円のランク の画家が10号の絵を1枚売った場合、価格は30万円になります。そこから画材の費用などを差し引いた金額が利益です。大半の画家は、複数の絵を販売することで収入を得ています。
一方、海外にも知られるほど有名な画家となると、海外のオークションに出品して日本円で数億円単位の売上を出すこともあります。
画家に必要な資質と能力
画家に必要な資質は、絵画に対する情熱です。
画家の仕事は、前述したとおり収入が安定するわけではありません。それでも絵を描き続ける忍耐強さ、創作への飽くなき欲求が求められます。たとえ収入にならなくても根気よく絵を描き続けることができる、絵画への情熱があれば画家として活躍していけるでしょう。
画家として仕事をするために必要な能力は、技術とセンスです。画家には、自分の表現したいもの、あるいは依頼されたものを的確に表現する技術力が求められます。人と同じものを描いても画家として評価されにくいので、独創的なセンスも必須の能力といえるでしょう。技術やセンスは、画塾で学んだり芸術作品に多く触れたりすることで身につけることもできます。
画家になるための方法とは?
画家になるために必要な資格、勉強しておいたほうが良いことをまとめました。大学や進路を選ぶときの参考にしてみてください。
画家の世界の現状
現状として、画家の仕事は収入が不安定で本業として活躍できている画家は少ないです。
しかし、近年は都内のみならず地方にも美術館が増え、美術品が多くの人々を魅了しています。百貨店などでも、徐々に個人の作品を販売する機会が増えてきました。海外に比べると日本の絵画市場はまだ小さいですが、だからこそ海外に追随して今後拡張していく余地があります。
また、インターネットやSNSの普及で作品の認知を広げやすく、個人で販売しやすくなってきています。画家の仕事は今後も必要とされ続けるでしょう。
画家に必要な資格や受験すべき試験
画家になるために必要な資格や試験はありません。ほとんどの場合学歴を問われることもありませんが、美大に通っておくと絵を描く技術やセンスを磨くことができるでしょう。
画家になるために、とっておくと便利な資格をご紹介します。
色彩検定
色彩検定は、色彩検定協会が実施する試験です。色は感性によるものと思 う人もいるかもしれませんが、 知識や技能を理論的・体系的に学ぶことで、色をより実践的に活用できます 。1~3級があり、基本的に誰でも参加できます
美術の教員免許
画家の道を目指しながら、絵画の技術を教える教員の仕事に就くという方法があります。教員であれば安定した働き方ができ、絵の技術を教えることで自分の絵画の勉強にもなります。
画家になるための勉強ができる大学・学部
画家になるうえで学歴はあまり重視されませんが、美術・芸術系の大学や短大に進学すれば画家の仕事に役立つ知識や技術を学べます。
美術分野は大きく「ファイン系」「デザイン系」の2つにわかれます。美大に進学するなら、この2つのどちらに進むかを選ぶ必要があります。
ファイン系
油絵や彫刻、日本画などの「純粋芸術」のことをいいます。作家活動をしていきたい人が学ぶのに適しています。
<ファイン系の学科・専攻がある大学の一例>
武蔵野美術大学(造形学部/油絵学科・日本画学科)
東京藝術大学(美術学部絵画科/油絵専攻・日本画専攻)
広島私立大学(芸術学部美術学科/油絵専攻・日本画専攻)
京都精華大学(芸術学部造形学科/日本画専攻・洋画専攻)
佐賀大学(芸術地域デザイン学部芸術地域デザイン学科/日本画・西洋画)
女子美術大学(芸術学部美術学科/日本画専攻・洋画専攻)
東京造形大学(造形学部美術学科/絵画専攻領域)
大阪芸術大学(芸術学部美術学科/油絵コース・日本画コース)
東北芸術工科大学(芸術学部美術科/日本画コース・洋画コース)
星槎道都大学(美術学部デザイン学科/アート専攻絵画コース)
デザイン系
実用的なものや商業的なものにかかわる芸術全般を指します。たとえばスマートフォンや家具、家電製品などの「形=デザイン」を考える仕事に就くことができます。
<デザイン系の学科・専攻がある大学の一例>
倉敷芸術科学大学(芸術学部デザイン芸術学科/デザイン領域・アート領域)
北翔大学(教育文化学部芸術学科/美術分野)
成安造形大学(芸術学部芸術学科/イラストレーション領域・美術領域)
画家になるにはファイン系の学部を選べばいい、というわけではありません。デザイン系の学部出身者でも画家として活躍する人もいるので、自分にとって必要な知識を学べる学部を選ぶと良いでしょう。
画家になるために目指すべき就職先
画家は基本的に個人事業となるため、決まった就職先はありません。多くの場合、自宅をアトリエとして使用したり、画家を目指す仲間同士で場所を借りたりして制作に臨むようです。
画廊によっては、画家の育成のために専属・所属画家を募集しているところもあります。画廊と契約できれば、継続的に個展やオークションへの出品ができるため、画家として活動しやすくなるでしょう。
画家になった後のキャリアプラン
画家としてキャリアを積んでいくには、個展やコンクールなどで積極的に作品を発表していく必要があります。下記のような活動を精力的におこなっていけば、世界的に有名な画家になれるかもしれませんね!
オルタナティヴ・スペースで絵を展示する
オルタナティヴ・スペースとは、美術館や画廊とは異なる非公式のアートスペースです。主に使われなくなった倉庫や店舗を再利用して絵を展示するスタイルで、一般客が気軽に足を運びやすいため、自分の作品がどの程度評価されるのか試してみることができます。
コマーシャル・ギャラリーで作品を発表する
ギャラリー(画廊)と画家が契約して作品を展示・販売する場をコマーシャル・ギャラリーといいます。前述したプライマリー・マーケットやオークションを開催することができ、そこで自身の作品を発表して評価を得ることができます。
オークションに出品する
大手のギャラリーに所属すると、オークションに出品することができます。オークションに出品すると、海外のギャラリーにも見てもらえるようになり、画家としての活動の幅が広がる可能性があります。
画家を「JOB-BIKI」で検索しよう
画家の仕事は、絵を描くことが好きな人にとっては好きなことで収入を得られ、人や社会に影響を与えられる可能性のある仕事です。インターネットの普及や芸術作品の必要性の高さから、今後も画家の活躍する場は広がっていくでしょう。
画家になるために学歴は不問ですが、美術系の学部・学科で知識や技術を学べば画家としての活躍の幅が広がります。「JOB-BIKI」で著名な画家の名前を検索すると、出身大学を知ることができますよ。画家になりたいと思う方はぜひ活用してみてください。