DTPオペレーターになるには?仕事内容や年収、なり方について解説
2023.04.25
高校生の皆さんのなかには、DTPオペレーターという名前を聞いたことはあっても仕事内容について詳しく知らないという人もいるでしょう。DTPオペレーターはパソコンでデータを加工・調整・修正する仕事で、デザイン系の技術や知識を必要とします。この記事では、DTPオペレーターの具体的な仕事内容や必要なスキル、なり方について解説します。DTPオペレーターについて詳しく知りたい人は参考にしてみてください。
目次
DTPオペレーターとは?
DTPオペレーターは、デザイナーが作成した原案をもとにデータを加工・調整・修正して、印刷物を完成させる仕事です。
DTPは「DeskTop Publishing」の頭文字で、「机にあるもので印刷物を完成させる」「机上/卓上出版」とも訳されます。専用のソフトも「DTPソフト」と呼ばれています。
DTPオペレーターとDTPデザイナーの違い
DTPオペレーターが依頼に従ってデータを加工・編集するのに対し、DTPデザイナーはデザインがメインです。フォントやカラー、写真の選定などはDTPデザイナーの仕事で、レイアウトの調整など最終的な仕上げがDTPオペレーターの仕事です。両方できる人はDTPオペレーターとDTPデザイナーを兼任することもあります。
DTPオペレーターとグラフィックデザイナーの違い
DTPオペレーターの仕事はデータの加工・調整・修正がメインです。元となるデータを作成し、DTPオペレーターに依頼するのがグラフィックデザイナーです。グラフィックデザイナーはデータを印刷物に完成させるための明確な指示書を作成し、DTPオペレーターに依頼します。
グラフィックデザイナーについてもっと詳しく知りたい人はこちらの記事も読んでみてください。
グラフィックデザイナーになるには?求められる資質・能力などを紹介
DTPオペレーターの仕事内容
DTPオペレーターの仕事は、クライアントの依頼に従ってデータを加工・調整・修正し、印刷物を完成させる仕事です。データの加工や編集にはソフトを使用しますが、完成させる印刷物によって下記のように使い分けています。
Adobe Illustrator(イラストレーター)
イラストやグラフ、図などの作成や、文字・画像のレイアウトができます。グラフィックデザインでよく使われているソフトで、DTPオペレーターは主にチラシの作成で使用します。
Adobe Photoshop(フォトショップ)
写真やイラストなどの画像データを加工できるソフトウェアです。機能性が高くさまざまな場面で活用できるため、広く知られています。写真の合成やCG、イラストなどに使えます。
Adobe InDesign(インデザイン)
書籍のようなページ数が多いものに使用するDTPレイアウトソフトウェアです。原稿どおりに文字や図をページに配置する作業を組版といい、組版専用のソフトウェアとして知られています。IllustratorやPhotoshopとの互換性があります。
QuarkXPress(クォークエクスプレス)
長く使われてきたDTPレイアウトソフトウェアです。安定度が高く使いやすいため、長く使用している企業もあります。
DTPオペレーターの仕事のやりがい
DTPオペレーターのやりがいは、多くの人の目に触れる印刷物・出版物を作成できることです。
元のデザインはグラフィックデザイナーが考えたものですが、最終的なレイアウトの調整はDTPオペレーターの技術によるものです。デザイナーからの指示書はあるものの、細部はDTPオペレーターのセンスに任されているところもあります。いかに人の目を引き、記憶に残る印刷物・出版物を作成できるかが自分の腕次第、という点でやりがいを感じられる仕事といえるでしょう。
自分が仕上げを担当した印刷物・出版物が街中に飾られ、人々の行動や生活に影響を与え、貢献できることにも価値を感じられます。
また、さまざまなソフトが使えるようになることや、色彩の微細な違いなど、印刷物ならではの知識を得られることも、やりがいのひとつといえます。
DTPオペレーターの仕事の流れ
DTPオペレーターの仕事の流れを簡単に紹介します。決まった流れがあるわけではありませんが、基本的には下記のような流れになることが多いです。
1.ひな形を作成する
クライアントから依頼を受け取ったら、印刷フォーマットどおりのデザインになるよう、ひな形を作成します。ここの作業が後半の工程に大きく影響するため、慎重におこないます。
2.原稿データをひな形に流し込む
印刷物に反映させるため、クライアントから受け取ったライター原稿や写真をひな形のデータに流し込みます。
3.レイアウトを加工・調整・修正する
印刷物・出版物ごとに決められたDTPルールに従い、文字詰めや行間、禁止事項に触れている部分に対しレイアウトの加工・調整・修正をおこないます。
4.校正・修正作業を担当者に依頼する
校正・修正作業はほかの担当者に依頼します。自分で見るより第三者に確認してもらったほうが、違和感や間違いに気づけるからです。校正と修正作業を繰り返し、印刷物・出版物のデータとして完成に近づけていきます。
5.納品
このまま印刷・出版しても大丈夫といえるレベルまでブラッシュアップし、完成させたものをクライアントに納品します。
DTPオペレーターの年収
DTPオペレーターの平均年収は、厚生労働省のデータによると403万円程度です。DTPオペレーターの技術力を上げ、DTPデザイナーやグラフィックデザイナーの領域まで業務の幅を広げたり、フリーランスとして独立したりすると年収は上がるでしょう。
働き方は正社員のほか派遣社員やアルバイトも 多く、安定的に収入を得やすい仕事といえます。
DTPオペレーターに必要な資質と能力
DTPオペレーターに必要な資質や能力は、主に下記の3つです。
1.集中力が高い
DTPオペレーターの仕事は、パソコンでの単純作業が続くため、集中力が高い人に向いています。レイアウトの修正はこまごましたものが多く、何度も微修正したり校正したりを繰り返す必要があります。美術や図画工作の授業で、絵を描いたりものをつくったりする作業に熱中した経験のある人に向いているかもしれません。
2.小さなミスに気づける繊細さがある
DTPオペレーターの仕事は、小さなミスが許されません。印刷物や出版物は、一度仕上げたら大量の枚数を印刷するので、印刷後に万が一間違いが見つかってしまうと修正できません。刷り直すことになれば会社としては大きな損失になってしまうので、避けたいところでしょう。不測の事態にならないよう、納品前に小さなミスにも気づける繊細さを持った人は、DTPオペレーターに向いています。
3.コミュニケーション力・読解力が高い
DTPオペレーターの作業はパソコン作業ですが、クライアントからの依頼に正しく応えるには、クライアントとコミュニケーションをとって認識を合わせる必要があるため、コミュニケーション力が 求められます。また、作業の多くはクライアントからの指示が記載された指示書をもとにおこないます。指示書にある指示を的確に反映させるために、内容を正しく読み取る読解力があることも大切です。
DTPオペレーターになるための方法とは?
DTPオペレーターは未経験からでも挑戦できる仕事です。必ず学んでおくと良い、というものはありませんが、DTPオペレーターになるうえで役に立つスキルや学べる大学をご紹介します。
DTPオペレーターの世界の現状
DTPオペレーターの数は、全体的に減少傾向にあるといわれています。インターネットの普及によって「活字離れ」「書店離れ」が続き、紙媒体の広告・書籍よりWeb媒体のものが求められるようになってきました。そのため、DTPオペレーターからWeb系に転向する人は増え、DTP専門で仕事をするオペレーターは減ってきているようです。
しかし印刷物がなくなることはないため、DTPオペレーターも需要がある仕事といえます。一方で簡単な編集ソフトが登場し、誰でも印刷物のレイアウトや作成が可能になりました。今後のDTPオペレーターは、いかに 質の高いものをつくれるか、という点がポイントになるでしょう。
DTPオペレーターになるための勉強ができる大学・学部
DTPオペレーターになるために必要な資格は特にありません。未経験からでもなれますが、下記のような学問を学んでおくとDTPオペレーターの仕事で活かすことができ、他の人と差別化を図ることができるでしょう。
メディア学
メディアの役割や可能性について、多角的に学ぶ学問です。メディアが現代社会で与えている影響や作り出している現象について、さまざまな学問を頼りに追求します。新聞や広告などの紙媒体が社会に与える影響や人の心が動く心理を知れば、DTPオペレーターの仕事にも役立つでしょう。
学部レベルでメディア学を専門に学べる大学はほとんどなく、人文学部や社会学部などに学科や専攻、コースとして組み込まれていることが大半です。学科名に反映されていないことも多いので、どんな講義があるのか内容を詳しく見て判断しましょう。
メディア学が学べる大学の一例は下記のとおりです。
・東京工科大学(メディア学部 メディア学科)
・北海道情報大学(情報メディア学部 情報メディア学科 デザイン専攻)
・名古屋学芸大学(メディア造形学部 デザイン学科)
・城西国際大学(メディア学部 メディア情報学科)
・山梨英和大学(人間文化学部 人間文化学科 メディア・サイエンス領域)
・宝塚大学(東京メディア芸術学部 メディア芸術学科)
画像工学
画像工学は、衛星画像やDVD映像、デジタルカメラの画像などを研究対象とする学問です。画像を「認識する」「表現する」2つの分野から成り立っており、「認識する」分野はカメラの顔認証機能やATMなどの指紋認証システムに役立ちます。「表現する」分野はデータの加工技術がメインで、DTPオペレーターに役立つのは特に「表現する」分野です。
画像工学は情報工学から分かれた研究領域となるため、多くの場合工学部などに組み込まれています。画像工学が学べる大学の一例は下記のとおりです。
・東京都市大学(情報工学部 情報科学科)
・甲南大学(知能情報学部 知能情報学科)
・京都工芸繊維大学(工芸科学部 情報工学課程)
DTPオペレーターに必要な資格や受験すべき試験
DTPオペレーターになるためにおすすめの資格をいくつかご紹介します。必須ではありませんが、視覚勉強を通じてDTPオペレーターになったときに役立つ知識を得られるでしょう。
DTP検定
コンピューターの知識やアプリケーションの使用スキルを中心に問われる検定試験です。DTPワーク全般を見る企画・編集・広報向けの「ディレクション」、ドキュメント作成に特化した社内外の資料作成に役立つ「ビジネス」の2種類があります。
DTPエキスパート
DTP関連業務全般において習熟していることを示す資格です。公益社団法人日本印刷技術協会がおこなう試験で、DTPオペレーターだけでなくDTPデザイナーの領域も習得できるでしょう。出題範囲は「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の5つで構成されています。
色彩検定
色彩検定は色に関する幅広い知識や技能を問われる試験です。特にクリエイティブ職の人は配色やレイアウトに役立てています。DTPオペレーターとしても魅力的なレイアウトを作成するうえで活かせるでしょう。
アドビ認定プロフェッショナル(ACP)
IllustratorやPhotoshopなど、アドビ製品の基本的な操作ができることを証明する資格です。独学でも取得できるので、DTPオペレーターを目指す人は受験してみると良いでしょう。世界で通用する国際資格ですが、日本語で受験できます。
DTPオペレーターになるために目指すべき就職先
DTPオペレーターになるためには、出版物・印刷物の制作にかかわる企業に就職すると良いでしょう。主に下記のような企業がDTPオペレーターを募集しています。
・デザイン事務所
・編集プロダクション
・印刷会社
・広告代理店
DTPオペレーターのみ専門職として募集することもあれば、デザイナーと兼任で募集することもあります。
DTPオペレーターになった後のキャリアプラン
DTPオペレーターのキャリアとしては、実績を重ねてフリーランスとして独立する道があります。
一方で、DTPオペレーターはクリエイティブ職の入門といえる仕事なので、経験を重ねてWebデザイナー、グラフィックデザイナーになる人も多いようです。
DTPオペレーターを「JOB-BIKI」で検索しよう
DTPオペレーターは、人の心を動かす出版・印刷物の仕上げを担う重要な役割を持っています。誰でも手軽に扱えるソフトも増えてきたため、より質の高いセンスのある制作物に仕上げる技術が求められるでしょう。そのためにはメディア学で人の心理を学んだり、画像工学でデータ加工技術を学んだりすると、仕事にもプラスになります。
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