考古学者になるには?大学や学部の選び方、求められる資質を解説
2023.05.12
高校生の皆さんの中には、考古学者になって古い歴史や文化を発見したいと考えている人もいるでしょう。考古学者は過去に生きた人々の文化を理解するため、発掘調査や発掘されたものを研究するのが仕事ですが、具体的な働き方や年収はイメージしにくいと感じる人もいるでしょう。
この記事では、考古学者の具体的な仕事の流れや年収、考古学者になるための方法についてまとめています。進路を選ぶときの参考にしてみてください。
目次
考古学者とは?
考古学者は、発掘調査等で見つかった出土品をもとに古い歴史や文化を研究する歴史の専門家です。ときに人類の歴史における重要な発見をすることもあり、論文や学会を通じて世間に発表することもあります。
考古学者と歴史学者の違い
考古学者が物質的な資料をつかって人類の歴史を研究する仕事であることに対し、歴史学者は主に文字で書かれた史料を研究する仕事です。歴史学者は特に人間の文化や知識の歴史を深掘りすることができますが、考古学者は文字が誕生する以前の時代のことや、文献に記されていない人々の生活など、歴史学だけでは調べきれない部分まで研究できる可能性があります。
考古学者と学芸員の違い
考古学者は発掘調査による出土品から人類の歴史や文化を研究する仕事です。博物館に展示される資料の収集や研究をおこなう学芸員は考古学者と混同されることがありますが、学芸員は考古学に限らず天文学や美術学を専門とする人もいるという違いがあります。また考古学者になるために資格は必要ありませんが、学芸員は国家資格が必要になります。
学芸員についてもっと詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
学芸員になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介
考古学者の仕事内容
考古学者の仕事は、発掘された遺跡や遺物などの出土品をもとに、人類の歴史や文化を研究する仕事です。調査対象は土器や石器のほか城や遺跡も含まれ、数世紀前の時代からごく近代まで幅広く研究します。
出土品や遺跡の形の変化や、周辺地域で見つかった遺物との違いを専門知識や特殊な技術で調べ、生活や文化の変化を浮き彫りにしていきます。過去にあった社会像や文化像を明らかにし、わかったことを論文や学会、学術誌などで発表することもあります。
考古学者の仕事のやりがい
考古学者の仕事には、下記のようなやりがいがあります。
人類の歴史の未知なる領域に挑戦できる
考古学者は人類の歴史や文化について研究する仕事です。長い人類の歴史は明らかにされていないことも多く未知の領域に挑戦する感動を得られるため、「歴史をもっと詳しく知りたい」と考える人にとっては知的好奇心を満たすことができ、やりがいを感じられるでしょう。
発掘調査においては事前に下調べもおこないますが、まったく予想外の発見がある可能性もあります。自分の研究が「世紀の大発見」につながるかもしれません。
多くの人と一緒に物事を成し遂げられる
考古学者はもくもくと研究に打ち込む仕事という印象があるかもしれませんが、多くの人とかかわる仕事です。発掘調査の際には地域住民や関係者とのすり合わせが必要になりますし、発掘作業や出土品の調査などはチームでおこなうこともあります。新しい発見があれば協力してくれた地域住民に還元することができ、同じく考古学を志す仲間はもちろん世界にも影響を与えられる可能性があります。
さまざまな立場の人と一緒に大業を成し遂げられる、達成感を得られる仕事といえるでしょう。
考古学者の仕事の流れ
考古学者の仕事内容は人によって異なるため決まった流れはありませんが、主に下記のような仕事をすることが多いようです。
発掘
考古学者は1つの遺跡に対しチームで発掘作業にあたることが多いです。土を掘る人や指示を出す人など役割を決め、お互いにコミュニケーションをとりながら発掘調査を進めます。
事前に発掘調査すべき場所を特定するのも考古学者の仕事で、航空写真や地理の調査データ、史料をもとに場所を特定します。調査の際には周辺住民の生活に負担がかからないよう、周辺住民とも充分にコミュニケーションをとります。
発掘するときに誤って遺物や遺跡を壊してしまえば、もとに戻すことはできません。発掘するときは丁寧でこまやかな作業が求められます。
記録
発掘調査によって見つかった遺物については、都度記録していきます。発掘中も現場を記録・監督して、遺物の記録が正しいかどうか、遺物に破損があれば発掘中に壊れた可能性はないかがわかるようにします。
調査の結果何も遺物が見つからなかったとしても、その課程を記録する必要があります。大きな遺跡であれば後日また掘り進めるときに、どこから再開すべきかがわかるからです。
保管
発掘調査で見つかった遺物は、さまざまな手続きを経て収蔵庫などに保管されます。出土した遺物は、詳細な調査をおこなう前の時点では持ち主が不明です。そのまま持っていると「占有離脱物横領罪」になってしまうため、発掘から1週間以内に警察に「埋蔵物発見届」を提出しなければなりません。
書類関係の手続きが完了してから、泥を落としたり乾燥させたりして、なるべく綺麗な状態にして保管します。破損や欠損があれば、接着剤や科学技術を駆使して可能な限りもとの状態になるよう修繕します。
報告・展示
研究結果を発表するため、遺物を展示したり報告書に詳細を書いて関係各所に提出したりします。展示場所は考古学者の勤務先によって決められるため、博物館や大学の研究室などさまざまです。
また、発掘した遺物については分析データに基づいて科学的な仮説を立て、理論を検証したり遺跡や地域の理解を深めていきます。
考古学者の年収
考古学者の年収は、勤務先によって大きく左右されます。考古学者の勤務先は大学や企業、教育委員会などです。大学に勤務した場合、教授になると平均年収は1072万円ほどです。
調査対象が限られますが、考古学者は企業や教育委員会に所属する場合は「文化財調査員」と表記されることがあります。企業に所属する文化財調査員の平均年収は約480万円ほどです。
また、遺跡発掘作業のみを企業が募集していることもあります。遺跡発掘作業スタッフの平均年収は約300万円前後になるようです。
【参考】職業情報提供サイト(日本版O-NET)
URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/184
考古学者に必要な資質と能力
考古学者には、下記のような資質と能力が求められます。
探求心・好奇心
考古学者の仕事は、人類の歴史における未知の領域を切り拓いていく仕事です。新しい発見のために、気になることはすぐに調べる、積極的に情報を取りに行くなど探求心・好奇心旺盛な人に向いているといえるでしょう。
体力・フットワークの軽さ
考古学者はデスクワークとフィールドワーク両方で活動するため、フットワークが軽い人に向いています。特に外での発掘作業は気温差が激しい場所や足場が不安定な場所に行くこともあるため、気候や地理に負けない体力が求められるでしょう。
コミュニケーション力・語学力
考古学者の調査はチームでおこなわれるため、チームメンバーとの円滑なコミュニケーションが重要になります。周辺住民に調査の理解を得るうえでも、コミュニケーション力は必要になるでしょう。また考古学の調査の幅が広がれば、日本に限らず海外の文献を読んだり現地で調査したりする可能性も出てきます。語学力が身についていれば、考古学者としてより幅広い研究を進められるでしょう。
粘り強さ・辛抱強さ
考古学者の仕事は、粘り強く辛抱強い人に向いています。発掘調査は地道な作業の繰り返しであり、発掘すれば必ず遺物が見つかるとも限りません。研究の精度を上げるためにはこまめな記録も必要ですし、遺物の扱いにも繊細になる必要があります。研究成果のために繊細で地道な作業を根気よく続けられる、粘り強さや辛抱強さが求められるでしょう。
考古学者になるための方法とは?
考古学者になるために、特別に必要な資格はありません。しかし最低限四年制大学を卒業している必要があります。考古学者になるための大学や学部の選び方をご紹介します。
考古学者の世界の現状
考古学自体は人類が存在する限り、必要とされ続ける学問です。その考古学を追求する考古学者は、今後も需要が見込まれる仕事といえるでしょう。
就職においても、大学や地方自治体が運営する公的研究機関、企業での募集があります。
考古学者になるための勉強ができる大学・学部
考古学者を募集している仕事の多くは、四年制大学で考古学または人類学、歴史学、言語学など類似の研究分野の修了を条件としています。考古学者として歴史的な人工遺物を専門的に評価するためのスキルを学べる大学を選ぶと良いでしょう。
<考古学を学べる大学の一例>
駒澤大学(文学部 歴史学科 考古学専攻)
奈良大学(文学部 文化財学科 考古学コース)
國學院大学(文学部 史学科 考古学コース)
愛知学院大学(文学部 歴史学科 考古学コース)
別府大学(文学部 史学・文化財学科 考古学・文化財科学コース)
考古学者に必要な資格や受験すべき試験
考古学者になるために必要な資格や試験はありません。
考古学者として生計を立てていくには、大学の研究室に入って学会などで研究成果を発表する、教育委員会の発掘調査部門や考古学の研究機関、博物館などに就職する、といった方法があります。
それらの場所に所属するには現地調査の経験や研究テーマへの深い知見が求められるので、研究者のアシスタントや発掘調査のアルバイトを経験するとより早くキャリアを積んでいけるでしょう。
考古学者になるために目指すべき就職先
考古学者の就職先には、下記のような仕事があります。
大学
考古学の教員として大学に就職できます。自身の研究テーマを継続しながら、学生に講義をおこなうこともあるでしょう。この場合、講義で給料をもらいながら他の時間を考古学者の活動にあてることになります。
発掘現場
発掘調査員を募集しているところに就職すると、発掘の監督と作業に携わることができます。世界中の至るところに発掘調査に行くこともあり、長期滞在が発生する可能性もあるでしょう。単なる作業員として就職する分には学歴不問としていますが、考古学者として就職するのであれば大学卒業以上が応募対象となります。
研究所
科学技術や専門の機械で修復した人工遺物の評価・研究をおこないます。遺物の詳細を知るために現地調査に行くこともあります。
博物館
博物館に就職すると、収蔵品の検証と分析に携わることができます。展示の構想や展示物の説明、来場者向けに発信する文章の原稿作成などをおこなうこともあります。
民間企業
考古学者の民間企業での仕事は、歴史的な遺跡が壊れる危険性がある場合の発掘現場の予備調査です。直接現地に行き、発掘によって遺跡が壊れる可能性があるかどうかを調べます。また工事や新しく建物を建てるとき、近くに遺跡があった場合に工事をしても問題ないかを調査する仕事もあります。
埋蔵文化財センター
埋蔵文化財センターは、日本各地の遺跡など埋蔵文化財の調査・研究・展示などをおこなう施設です。地方自治体などが運営しており、公務員試験のような筆記試験などがあります。正規職員としての募集枠は非常に少ないですが、パートやアルバイトの募集をしていることもあります。
考古学者になった後のキャリアプラン
考古学者のキャリアプランには、下記のようなものがあります。
博物館の館長になる
博物館の学芸員に考古学者として就職する場合、経験を積めば博物館の館長になれる可能性があります。博物館の学芸員は、雇用形態が正社員から契約社員、パートやアルバイトなど幅広くありますが、館長へのステージアップを希望するなら正社員のほうが館長になれる可能性が高いでしょう。
大学で教員になる
大学で教員の職につくということは、その分野に精通していることを意味します。大学で考古学の教員として活躍できるようになれば、考古学者のひとつのゴールといえるでしょう。
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考古学者は、発掘調査で得た遺物をもとに人類の歴史や文化を研究する仕事です。新たな発見ができれば人や世界に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。考古学者になるには基本的には四年制大学を卒業している必要があり、在学中に考古学をはじめとする関連の学問を学ぶのが一般的です。
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