工学部とは?学部・学科の特徴や進学のメリット・デメリットを解説
2023.07.31
数学や物理、生物、化学が好きな人の中には、それらの知識を駆使する工学部に興味がある人も多いかもしれません。工学部とは、ものづくりや仕組みづくりに必要な技術・知識を学び、より豊かな社会のために新しい製品やサービスなどを生み出す研究をしている学部です。
この記事では、工学部の学部・学科の特徴や進学するメリット・デメリットのほか、主な就職先などについてご紹介します。
目次
大学の工学部とは社会に貢献する新しいものづくりを学ぶ学科
工学部とは、社会に役立つものや仕組みを作るために、数学や物理学、化学、生物学などの知識をもとに、実験や分析を繰り返し実践的な手法を学んでいく学部です。
皆さんが日常的に利用するスマートフォンを例に考えてみましょう。スマートフォンのデザインや機能は、多くの人にとって使いやすいように工夫されていますよね。それらはいずれも、工学の技術によるものです。
ほかにも、電車や住宅、家電、インターネットといった生活に欠かせないものには、工学の技術が取り入れられています。つまり、工学はものづくりに必要な技術の総称であり、新たなものやサービスを作り、私たちの社会を豊かにするための学問なのです。
また、「今ある社会の課題」や「新しいものが人や社会に与える影響」なども学ぶことで、ものづくりに携わる人の心構えや倫理観を培っていきます。
大学の工学部と専門学校・高等専門学校との違い
工学を学べる学校は、大学だけでなく専門学校や高等専門学校もあります。専門学校は仕事に就くためにより実践を重視したカリキュラムとなっていて、2・3年制の学校が多く、早く就職することが可能です。学費を抑えつつも、専門職に就職できることがメリットでしょう。
また、高等専門学校は5年制の工業系の学校で、中学卒業後に入学可能です。そのため、大学よりも早い時期から専門的な知識を身に付けられます。卒業後には就職するか、大学に編入するか選択が可能です。
工学部の学科の種類
新しいものや仕組みを生み出す工学は、もの自体の材料のほか、システムを動かす電気やエネルギー、プログラムなど、さまざまな知識が必要となります。そのため、工学部で学べる分野は多岐にわたり、学科がいくつかに分かれています。主な学科の特徴は、下記のとおりです。
情報系
情報系の学科では、コンピューター技術やソフトウェア理論などを学びます。情報系の学科で学ぶ範囲には、ロボットやシステムに続々と活用されているAI(人工知能)の研究なども含まれます。コンピューターの幅広い知識を学ぶことで、将来成長が期待される分野で活躍できる可能性が広がるでしょう。
電気・電子系
電気系の学科では、電気回路や半導体の仕組み、インターネットなど情報の伝達技術、電気エネルギーの活用法など、電気に関して幅広く研究します。
一方、電子系の学科では、生活家電や通信機器など電子機器の仕組みを理解して、ものづくりの技術を学びます。いずれも生活に欠かせない電気・電子を研究することで、新たな技術や製品を生み出すチカラを身につけていきます。
建築系
建築系では、設計や構造など建築の知識はもちろんのこと、材料から工法、環境、設備、都市・地域の開発のほか、インテリア外観といったデザイン面まで、快適な住環境と丈夫な建物を実現するための幅広い知識を学びます。建物自体の知識だけでなく、災害などの社会課題に取り組むことや、芸術的なセンスも求められます。
応用化学系
応用化学系の学科では、原子や分子を取り扱うことで新しい物質を開発し、生活に役立つ製品へと実用化するところまでが研究の対象です。生活を豊かにする物質を開発すると共に、再生利用可能な物質の開発や、化学物質による環境汚染防止などの研究にも取り組みます。食品や衣料から薬品、医療まで、生活におけるあらゆる分野への活用が期待されています。
機械系
機械系の学科では、設計や加工に必要な技術や力学などを中心に学び、利用者が快適・安全に使える機械を研究します。機械の種類はカメラや時計などの身近な機器から自動車や航空機、生産機械、医療機械まで多種多様。設計から材料の加工、実際の使用方法まで幅広い範囲を学び、生活や産業で役立つ機械を生み出すチカラを身につけます。
工学部の設置されている大学
工学部が設置されている大学の一部をご紹介します。
他にも、八戸工業大学、千葉工業大学、愛知工業大学、中部大学、東北学院大学、久留米工業大学、大阪電気通信大学、大阪産業大学、西日本工業大学、第一工科大学などに設置されています。
工学部に進学するメリット
科学知識を応用して人や社会を豊かにすることを学ぶ工学部ですが、工学部に進学するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、メリットから確認していきます。
学びが職業に直結しやすい
工学部の卒業後は、大学で学んだことをそのまま企業などの研究職や開発職に活かせます。大学で身につけた知識やスキルが仕事に活かせるため、卒業後に活躍したい場所を具体的に想像しやすい学部です。
メーカーなどの就職に有利になる
ものづくりに関する知識・技術が身に付くため、メーカーやインフラ系企業などの就職に有利になります。なぜなら、工学部で学ぶ内容は専門性が高く、仕事に直結しやすいからです。
また、日常的に「仮説を立ててデータを考察する」といった論理的思考力が身に付くことから、企業が求める人材にフィットしやすいでしょう。研究室によっては「教授推薦」で企業の就職試験を受けられ、合格率が高くなることも!就職が有利になるのはうれしいですね。
大学院を修了すると就職に有利になる
工学部を卒業し大学院に進学すると、より就職に有利になることがメリットです。というのも、企業は採用条件を「修士以上」と限定している場合もあり、より専門性の高い学生を求めているからです。
工学部の大学院進学率は約4割で、大学によっては8割を超えることもあります。2022年度の文部科学省「学校基本調査」によると、大学院への進学率は全体で1割程。工学部は大学院への進学率が高いことがわかりますね。
「大学院がわからない」という人は、下記のコラムをぜひ読んでみてください。
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好きな研究に集中できる環境がある
理系の学部には必ず研究室があり、集中して研究できる環境が整っています。研究室によっては高価な機械があり、最先端の研究やニッチな研究も可能です。
このような環境で研究することで、思いもよらない発見や研究結果を導けるかもしれませんね!
工学部に進学するデメリット
工学部で学ぶことは多岐にわたり、課題の量や評価の厳しさなど大変な点もあるようです。ここでは、工学部に進学するデメリットについて見ていきましょう。
実験やレポートなどが多く忙しい
工学部の学生は、文系の学生に比べて忙しいといえます。というのも、工学部では実験科目があり、1回実験するごとにレポートの提出が必要だからです。大学によっては50ページ程のレポートの提出が求められることも…。さらに、研究室に入ると、研究発表や実習の準備も必要です。
もちろん、大学や研究室によって差はありますが、工学部に進学するときには、実験やレポートなどで忙しくなることを覚悟しておきましょう。
理系以外の就職は難しい
工学部の卒業生が就職するのは、「メーカー」「エネルギー業界」「IT業界」「建築業界」「公務員(化学系・農学系・土木系)」などが中心です。学部で学んだ専門知識と直結した就職先が多く、総合職を目指す場合は他学部の学生と同じように対策が必要となります。
中には、技術職ではなく営業職などに就く人もいますが、工学部での学びを活かせるセールスエンジニアに就くことが多いようです。
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工学部に向いている人
数学や物理など、理系教科の知識をもとに、仮説と実験・分析を繰り返す必要がある工学部では、学び続ける根気強さが求められます。工学部は具体的に、どのような人に向いているのでしょうか。
ものづくりが好き、研究が好き
ものづくりや研究が好きな人には、工学部が最適です。工学部では日常的にものづくりに関する実験や研究があり、多くの時間をかけて専門分野を突き詰めていきます。
人の役に立つ、まだ世の中にない新しいものを作りたいという人は、工学部に入ることで充実した学生生活を送れるでしょう。
どのような研究があるのか、工学部の研究とはどういったものか知りたい人は「スタビキ」で検索するのがオススメ。
スタビキは大学でどんな研究をしているか調べられるサービスです。
「工学」で検索すると「組織工学」や「代謝工学」、「制御工学」などより詳細な工学の分野が表示されます。工学部でどういったことを研究しているのか、ぐっと理解が深まることでしょう。
じぶんがどんな研究に興味があるのか、それをどの大学で学べるのかわかります。ぜひ使ってみてください。
数学や物理・化学が得意
高校で数学や物理、化学が得意な人は、工学部への進学がオススメです。工学部の講義では、数学や物理、化学など、理系の知識が必須になることが多いからです。ただし、理学部よりも実験や実践的な研究が多いのが工学部の特徴。理系の中でも新しいものを創り出したい人向きといえるでしょう。
なりたい職業が明確に決まっている
ものづくりに関する職業に就きたいと明確に決めている場合は、工学部に進学するといいでしょう。「宇宙開発技術者になりたい」「新世代の電気自動車を開発するエンジニアになりたい」といった具体的な職業だけでなく、「自動車やロボット、エネルギーの分野に関わる仕事がしたい」という場合もOK!
工学部にはさまざまな学科があるので、興味のある職業・分野に関連する学科をよく調べて入ることで、なりたい職業に一歩近づけるはずです。
工学部の就職先
工学部の卒業生は、メーカーやエネルギー業界、IT業界などに就職することが多い傾向です。ここでは、それぞれの就職先の特徴をご紹介します。
メーカー
メーカーへの就職は、研究開発や設計、生産管理などに携わることになります。メーカーは、工場や建設現場などで利用する機械を製造する機械メーカーのほか、家電や通信機器などの電機メーカー、自動車メーカーなど多様です。電気・電子系の学科だけでなく情報系学科も需要があり、多くの工学部の学生がメーカーに就職しています。応用科学系では、化粧品や医薬品などのメーカーへの就職も人気です。
エネルギー業界
電気やガス、石油などのエネルギー業界に就職する工学部の卒業生も多くいます。就職先は、発電所などのエネルギー開発をメインにする企業や、精製・加工する企業、流通・販売する企業とさまざまです。
人々の生活を支えるインフラとなるエネルギー業界は、やりがいのある仕事といえるでしょう。
IT業界
インターネットやハードウェア、ソフトウェアなどのIT業界に就職する人も多くいます。ITは社会に広く浸透しており、最近ではAIの活用が積極的に行われています。そのため、IT業界では多くの人材が必要なため、ITエンジニアの需要が高い傾向です。
建設業界
建築系の学科では、ゼネコンや建築設計事務所、ハウスメーカーなどへの就職が人気で、インテリアや家具メーカーなども選択肢としてあるようです。建築系の学科を卒業することによって、就職先で必要とされる「木造建築士」「二級建築士」「一級建築士」の受験資格を得られます。
公務員
工学部の学生の就職先として、国家公務員や地方公務員も人気です。少し意外に思う人もいるかもしれませんが、公務員には「技術職」があり、建築や土木、化学などの専門知識を活かす仕事があるのです。
国家公務員としては、国土交通省や経済産業省、総務省、特許庁などに就職する人が多くなっています。一方、地方公務員としては建築や土木の技術職があり、都市開発や街づくり、災害対策などに関わることが可能です。
工学部でものづくりや研究にチャレンジしよう
工学部は、興味のある分野を突き詰めて研究できる環境です。ものづくりや研究が好きな人のほか、数学や物理、化学が好きな人は、ぜひ工学部にチャレンジしましょう!
もし、「自動車メーカーに就職して開発エンジニアになりたい」「エネルギー会社で再生可能エネルギーの研究に取り組みたい」という場合には、なりたい職業から学部を決める方法もあります。JOB-BIKIでは、なりたい職業から大学の検索が可能です。ぜひチェックしてみてくださいね。