看護師の年収と月収は?年齢や都道府県別での違い、就職率が高い大学を紹介
2023.08.02
看護師は、医療の現場で病気やケガに苦しむ人をケアし、患者さんやその家族から感謝されることも多く、やりがいのある仕事のひとつです。一方で、「看護師の年収ってどのくらいなの?」という疑問を持つ人も多いでしょう。
そこで本記事では、看護師の平均的な年収や月収、どうやって看護師になるのかなどについて紹介します。また、看護師の就職率が高い大学も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
看護師の平均年収・月収は?
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、全国の看護師の平均年収は約508万円、月収約35万円、ボーナス約86万円となっています。なお、平均年収は、12ヵ月分の基本給や年間ボーナス、残業代、各種手当を含んだ総額です。
看護師の月収には、基本給のほかに携わった業務に応じて「手当」が支給されます。看護師の手当には、下記のようなものがあります。
<専門業務に関する手当>
・特殊業務手当:救命救急センターや結核病棟といった危険を伴う部署に勤務する場合に支給
・手術室勤務手当:専門的なスキルがあり手術室看護師として勤務する場合に支給
・ドクターヘリ搭乗手当:フライトナースとなりドクターヘリに搭乗した場合に支給
・オンコール・待機手当:救命救急センターや手術室看護師など、緊急の呼び出しに備えて自宅待機する場合に支給
・危険手当:手術室や放射線科などの危険・危害が及ぶ可能性が高い場合に支給
入院施設がある病院や、入居者がいる施設に勤務する場合は、看護師には交代制の夜勤があります。夜勤をすると「夜勤手当」が支給されますが、これは病院や施設ごとに任意で支払われる手当です(労働基準法で定められている深夜手当とは異なります)。夜勤手当は1回あたり、3交替制の準夜勤で4,000円程度、深夜勤で5,000円程度になり、2交替の場合の夜勤は1万円前後のため、多く夜勤に入ると収入も変わってきそうです。
一方、看護師とほとんど同じ業務をする「准看護師」という職種がありますが、こちらの平均年収は約400万円です。看護師よりも平均年収が低いのは、看護師が国家資格であるのに対し、准看護師は都道府県知事が発行する免許のためです。また、准看護師は、療養上の世話や診療の補助を行う場合、医師や看護師の指示が必要で、自身の判断で業務を行ってはいけないなどの違いがあります。
看護師の年代別の平均年収
年代別の平均年収は、20代は約400万~480万円、30代は約480万~500万円、40代は約530万~570万円となっています。ピークは50代後半で580万円となっているのは、現場で管理職などのリーダー的なポジションになることが多いのが理由です。
看護師の都道府県別の平均年収
勤務先の都道府県によっても平均年収は異なります。厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、都道府県別の平均年収トップ3とワースト3は下記のようになっています。
■都道府県別・平均年収トップ3/ワースト3
順位 | 都道府県名 | 平均年収 |
1位 | 東京都 | 約564万円 |
2位 | 奈良県 | 約546万円 |
3位 | 兵庫県 | 約542万円 |
… | … | … |
45位 | 大分県 | 約433万円 |
46位 | 宮崎県 | 約427万円 |
47位 | 鹿児島県 | 約396万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
1位の東京都と最下位の鹿児島県では、約160万円もの差があります。つまり、どの地域で働くかによって、平均年収は大きく左右されるのです。
年によって、平均年収の都道府県ランキングは変動があるものの、都市部が平均より年収が高く、四国・九州地方は平均より低い傾向があります。
看護師の病院規模別の平均年収
大規模な勤務先になるほど、平均年収が高くなる傾向があります。
■病院規模別・平均年収
職員の人数(規模) | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人以上 |
年収 | 約460万円 | 約485万円 | 約556万円 |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
大きな規模の勤務先では、救急対応や緊急入院の対応などが多くあり、時間外労働も増えると考えられます。大学病院や総合病院では、年収が高く多くの経験を積めることは大きなメリットです。
しかし、年齢やライフステージによっては、柔軟に勤務できる病院やクリニックなどを勤務先として選択するのもいいかもしれません。
看護師の男女別の平均年収
男性と女性で、看護師の平均年収は異なります。それぞれの平均年収は、下記のとおりです。
■男女別・看護師の平均年収
平均収入 | 男性看護師 | 女性看護師 | 男性・女性看護師の収入の差額 |
平均年収 | 約523万円 | 約506万円 | 約17万円 |
平均月収 | 約36万円 | 約35万円 | 約1万円 |
平均ボーナス(年間) | 約91万円 | 約86万円 | 約5万円 |
平均年齢 | 37.9歳 | 41.1歳 | – |
出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
上記のデータのとおり、男性看護師の年収のほうが約20万円高くなっています。女性看護師は子育てや介護などによって時短勤務などの制限があることが理由のようです。
また、男性看護師は、大規模の病院で勤務する傾向があり、家族手当がつくことが影響していると考えられます。
看護師の仕事に就く方法
看護師として仕事に就くには、看護系の学科を卒業し、国家試験を受験する必要があります。受験までの流れや学校の種類について見ていきましょう。
1. 大学・短大の看護系学科で受験資格を得る
看護師になるには、大学や看護系の3年制の短大、または3年制の看護学校を卒業する必要があります。これらの学校を卒業することで、看護師国家試験の受験資格が得られます。
しかし、高校卒業後に、どのタイプの学校に進学したらいいのかよくわからない人も多いでしょう。そこで、4年制大学、3年制短大、3年制の看護学校それぞれの特徴と取得可能な国家試験受験資格、向いている人を見ていきましょう。
■看護学校の種別と特徴
学校種別 | 特徴 | 取得可能な国家試験受験資格 | 向いている人 |
4年制大学 | 看護以外に一般教養科目も充実しているため幅広い教養を身に付けられる。また、看護師のほかに保健師、助産師の国家試験受験資格があり、職業の選択肢が幅広い。 | ・看護師 ・保健師 ・助産師 など | ・看護についてじっくり学びたい人 ・学問としての看護を学びたい人 ・自分で考えるチカラを重視する人 |
3年制短大 | 短い期間で実践的なスキルが身に付く。4年制より1年早く国家試験が受けられるが、看護短大は学校数も少なく、また選ぶ人も減少傾向にある。 | ・看護師 | ・自宅近くに短大がある人 ・学費を低く抑えたい人 ・できるだけ早く現場に出たい人 |
3年制専門学校(看護学校) | 短い期間で実践的なスキルが身に付く。4年制より1年早く国家試験が受けられ、学費も抑えられる。4年制より学校数も多いため選択肢が豊富。 | ・看護師 | ・自宅近くに専門学校が複数あって選べる人 ・学費を低く抑えたい人 ・できるだけ早く現場に出たい人 |
看護師だけでなく、保健師・助産師の国家試験受験資格も取得したい場合には、看護系の4年制大学に進学するのがオススメです(なお、保健師・助産師になるには、看護師国家試験の合格が条件となっています)。
上記のほかに2年制の看護系学科・コースもありますが、看護師ではなく「准看護師」を目指すことになります。ただ、基本的に准看護師の仕事内容は看護師と大きく変わりませんが、自分の判断ではできない業務が多くなることと、現場では今まで以上に専門的な知識が必要とされているため、最初から4年制の大学を選ぶ人が増えている傾向にあるようです。
2. 看護師国家試験を受験する
看護系の学校を卒業後、看護師国家試験を受験します。合格率は例年90%前後で、大学や短大などの看護師養成過程でしっかり勉強すれば、合格を目指せるでしょう。
看護師の就職実績が高い大学
看護師国家試験に合格することはもちろん大切ですが、同時に実習や就職先のことを考えなくてはならず、大学のサポートも重要となってきます。ここでは、看護師の就職実績が高い大学を、5大学紹介します。
自治医科大学(栃木県下野市)
自治医科大学は、全国の都道府県の共同によって1972年に設立された私立大学です。「へき地に住む人々に医療を提供し、健康を守ること」を理念とし、キャンパス内などにある附属病院とへき地を含めた地域での実習を実施しています。
看護学部では、看護師や保健師、助産師の国家試験受験資格が取得可能。実習では、卒業生の現役看護師などから指導を受けられます。卒業後の進路は、看護師になることがほとんどですが、大学院へ進んで管理者や研究者を目指す道も開かれています。
京都橘大学(京都府京都市)
京都橘大学も、多くの看護師を輩出している大学のひとつです。看護の本質を追求し「人によりそう看護」を実践できる看護師の育成に取り組んでいます。
実習のカリキュラムが充実しており、シミュレーション教育や臨地実習(病院実習)などで応用力を磨きます。看護師や保健師、助産師の国家試験受験資格など、各種資格取得に向けたサポートも手厚く、目指す看護師像に近づける環境といえるでしょう。
神戸女子大学(兵庫県神戸市)
神戸女子大学看護学部の特徴は「学びのグループゼミ」です。グループゼミとは、1~4年次が同じ教室で病院実習での体験を発表・共有するゼミのこと。これにより、看護の知識を高めるだけでなく、人にわかりやすく伝えるコミュニケーション能力を養えます。さらに、ゼミ内で共有した体験を、次の病院実習で活かすと、より充実したものになるでしょう。
カリキュラムでは看護師、保健師、助産師の国家試験受験資格などが取得可能。学部内に「国家試験対策室」があり、1~4年次までの全学生を対象にした国家試験のサポートを行っています。
安田女子大学(広島県広島市)
安田女子大学看護学部では、高度な専門知識や技術を身に付け、患者さんに寄り添う優しい心やコミュニケーション能力の育成にチカラを入れています。
また、総合大学であることから、管理栄養学科との連携や薬学の科目受講が可能。看護分野だけではなく、幅広い医療の基礎知識を学べます。取得できる免許や資格は、看護師、助産師、保健師の国家試験受験資格のほか、第一種衛生管理者、養護教諭二種免許状です。
国際医療福祉大学(栃木県大田原市・千葉県成田市など)
国際医療福祉大学は、1995年に日本初の医療福祉の総合大学として開学しました。全国に5つのキャンパスがありますが、看護が学べる学部は「保健医療学部」「成田看護学部」「小田原保健医療学部」「福岡保健医療学部」の4つのキャンパスにあります。
最新のシミュレーション・ラボが備えられ、病室やナースステーションを模した設備などでの実習が可能です。取得可能な免許・資格は、看護師、助産師、保健師の国家試験受験資格などがあります。
看護師のキャリアアップの方法
看護師のキャリアアップには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、「認定看護師」「専門看護師」「管理職」の3つの方法について紹介します。
認定看護師
認定看護師とは、特定の看護分野において熟練した看護技術・知識を持っていることを公益社団法人日本看護協会より認められた看護師のことです。より高度な専門知識による看護ができることから、スペシャリストとして活躍できるでしょう。
認定看護師には、主に下記3つの役割があります。
<認定看護師の役割>
・実践:水準の高い看護の実践
・指導:後輩の指導・育成
・相談:看護者などに対するコンサルテーションの実施
認定看護師になるには、まず「認定看護師認定審査」を受けることが必要です。認定審査を受けるには、看護師免許を持っていることが前提で、通算5年以上の実務経験が必要となり、その内3年以上は希望の認定看護分野での実務経験が求められます。
また、認定審査までに認定看護師教育機関での教育課程の修了が必須です。教育課程は、6ヵ月・615時間以上と長期間。仕事を続けながらの取得も可能ですがハードなスケジュールとなり、平日に教育機関へ通う人は休職や長期出張扱いで調整をするようです。それが完了し、認定試験の合格を経て、ようやく認定証の交付となります。
なお、日本看護協会の2022年の調査によると、認定看護師の資格手当は月平均で8,556円でした。
専門看護師
専門看護師とは、特定の分野において専門性の高い看護能力を持っていることを公益社団法人日本看護協会より認められた看護師のことです。専門看護師は、大学病院や訪問看護ステーションなど、活躍できる場所がより広くなります。専門的な知識・技術が身に付くことで、スキルアップできるでしょう。
専門看護師には、下記の6つの役割があります。
<専門看護師の役割>
・実践:卓越した水準の看護の実践
・相談:看護者に対するコンサルテーションの実施
・調整:保健医療福祉に携わる人のコーディネーション
・倫理調整:個人や家族、集団の権利を守るため、倫理的な問題や葛藤の解決を試みる
・教育:看護者に対してケア向上の教育的役割
・研究:専門知識や技術の向上・開発を目的とした現場での研究活動
専門看護師になるには、「専門看護師認定審査」の受験が必要です。受験条件は、看護師免許を持っていることが前提で、日本看護系大学院で修士課程を修了し、加えて通算5年以上の実務研修があり、そのうち3年以上は取得を目指す専門看護分野での実務研修であることが条件となっています。
修士課程を修了するには、大学院に2年間通学する必要があります。長期履修学生制度など就労と履修を両立できる制度が大学院にある場合もありますが、簡単な道のりではないため、職場を休職または退職するパターンもあるようです。
日本看護協会の2022年調査によると、専門看護師の資格手当は月平均で1万1,566円となっています。
管理職
病院内で昇格して管理職になる方法もあります。看護師には主に、下記のような役職があります。
■看護師の役職と業務内容
役職 | 業務内容 |
看護部長 | ・施設運営 ・看護部業務計画の作成 ・院長・副院長と現場の調整 ・全看護師の総括・看護業務 |
看護師長 | ・担当病棟のマネジメント ・看護師の育成 ・患者のクレーム対応・危機管理 |
看護主任 | ・新人看護師の管理・サポート ・病棟の運営状況の改善 ・看護師長の補佐 |
看護師長以上の管理職になると現場の看護から離れて、職場環境の管理や整備、業務改善などが主な仕事になります。昇格する条件は病院によって異なりますが、資格取得や研修受講などが条件になることがあるようです。
管理職になることで責任が重くなる一方で、業務範囲が広がりやりがいも大きくなるでしょう。
看護部長になると年収は600~700万円、職場によっては1,000万円近くになるようです。
看護師への第一歩として大学や学部・学科を探してみよう
看護師は平均年収が高く、キャリアアップすることで高収入を期待できる職業です。看護師になるにはまず、大学などで看護師の国家試験受験資格を取得する必要があります。
そこで、看護師になる第一歩として、看護師を目指せる大学・学部を見つけることが大切です。逆引き大学辞典では、看護学を学べる大学の検索が可能です。早速、気になる大学を見つけてみましょう。