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家政学とは?家政学部・学科の特徴や進学のメリット・デメリットを解説

2023.09.11

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ファッションや食べ物、インテリアや子育てなどに興味がある高校生もいるでしょう。そんな人におすすめなのが「家政学部」です。家政学部とは私たちの生活に関するさまざまな専門知識とスキルを学び、よりよい生活を追求する学部です。この記事では、家政学部の学部・学科の特徴や進学するメリット・デメリットのほか、主な就職先などについてご紹介します。

家政学部とは生活全般を学びよりよい暮らしを追求する学部

家政学部とは、生活の基盤となる「衣・食・住」や育児などを科学的に探究する学部で、大学によっては「生活科学部」と呼ばれることもあります。

家政学は人々の生活を科学的に研究し、より良い暮らしを実現するための知識や技術を学ぶ学問です。研究領域としてはおもに「食物学」「被服学」「住居学」「児童学」の4つに分けられます。それぞれの分野を専門的に学び、関連する職業に就くのが一般的です。

大学の家政学部と短大・専門学校との違い

大学の家政学部で学べる内容は、短大や専門学校でも学べることが多いです。ただし、カリキュラムや修業年数、学費には違いがあります。大学・短大・専門学校の一般的な違いは、以下のとおりです。

 大学短大専門学校
カリキュラム一般教養から専門分野まで幅広く学べる一般教養から専門分野まで幅広く学べる(履修できる科目は大学より少ない)就職に必要な技術や知識に特化して学べる
修業年数4年2~3年2~3年
学費約250~400万円約200万円約240万円

短大や専門学校は、大学に比べ短い期間で集中的に学べます。また、一般的に大学に比べ学費が安いのも特徴です。ただし、就職要件に大卒を掲げている企業もあるため、就職先の選択肢を多く持てるという意味では、大学のほうが有利と言えるでしょう。

進路を選ぶ際は、将来的なキャリアも視野に入れることが大事です。

家政学部の学科の種類

子どもと遊んでいる大学生

家政学部の学科には、おもに以下の4つがあります。それぞれの学科の特徴をまとめたので参考にしてみてください。

被服学(被服学科、服飾美術学科など)

服飾の専門学校は「服を作ること・売ること」を中心に学びますが、家政学部の被服学科は、被服について総合的に学べる学科です。高校生の皆さんは被服学科と聞くと「裁縫が得意でないといけない」と思うかもしれません。しかし、服を作ることは被服の1分野であり、被服学科で学べることは他にもたくさんあります。

たとえば「服が作られ社会に流通し、どのように消費されるか」や「SDGsを意識した社会や環境に負担の少ない服のあり方」「文化を豊かにするための服のあり方」などが挙げられます。

具体的には、以下の内容に焦点を当てた教育が行われます。

  • ファッションデザイン
  • テキスタイル製造技術
  • 衣料品製造
  • ファッションビジネス
  • 服飾文化

服の素材やデザイン、快適性、品質管理などを幅広く学び、被服業界で求められる実践的なスキルの習得を目指します。

食物学(食物学科、食物栄養学科など)

家政学部の食物栄養学科は、食品学と栄養学、調理学をバランスよく学べます。食品学は食品の中に含まれる成分や栄養素について、調理学では実習をとおして高度な調理技術を習得し、調理によっておこる素材の化学変化などを学びます。栄養学では、健康的な生活を送るために必要な食事について学びます。

具体的には、以下の内容に焦点を当てた教育が行われます。

  • 栄養学の基本原理
  • 栄養素の役割
  • 食品の調理技術
  • 食品安全と衛生

栄養学科と聞くと、調理のイメージがある人も多いと思います。実際は、化学や自然科学的な内容も多く含まれており、家政学部の中では研究に重点をおいた学科と言えるでしょう。

児童学(児童学科、児童・幼児教育学科など)

家政学部の児童学科は、子どもの発達や保育に関して幅広い視点で学べます。保育や教育現場での実践力を養い、安全な環境で適切なケアや教育を提供する能力を育成します。

具体的には、以下の内容に焦点を当てた教育が行われます。

  • 心理学や教育学の基礎
  • 子どもの身体的・感情的・社会的な成長過程
  • 子どもの特性に合わせた適切な指導法やコミュニケーション技術
  • 児童文学・児童文化
  • 音楽・体育

実際に幼稚園や保育園を訪れて職員の方や子どもの様子を観察したり、実際に子どもと関わったりする「フィールドワーク」も多く、実践的な学びを得られます。

住居学(住居学科、住環境学科など)

家政学部の住居学科では、住空間の計画・デザインに関する専門知識とスキルを学びます。「住居学は建築学とどう違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。どちらも人がより快適に住むこと・暮らすことを追求する学問ですが、アプローチする視点が異なります。

建築学は、機能的で合理的な建物を建築するための「技術」を中心として学びます。対して住居学は、技術面はもちろん、ライフスタイルや生活文化など、その空間を使う人の視点にたって多角的にアプローチする方法を学びます。建築学は工学部、住居学は家政学部に分類されることが多いです。

具体的には以下のような内容に焦点を当てた教育が行われます。

  • 建築学やインテリアデザインの基礎
  • インテリア素材の選定(色彩・照明・家具配置など)
  • 住宅のエネルギー効率や持続可能性にも配慮したデザイン方法

住居学科では、居住者のライフスタイルやニーズを理解し、魅力的で快適な住空間を創造するための能力を身につけます。

家政学部に進学するメリット

栄養士を目指している大学生

家政学部は、人々の生活や暮らしに関わる重要な分野を学べる学部です。家政学部に進学するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、メリットから確認していきます。

自身の適正に合った専門分野を選択できる

家政学部には大きく分けて4つの学科があると説明しましたが、1〜2年生のうちは共通のカリキュラムを履修する大学もあります。この場合、家政学部が提供するさまざまな学科や専攻の内容を理解し、3年時に自分の興味や適性に合った学科を専攻できます。

「将来なりたい職業がハッキリとは決まっていない」という人でも、1~2年生のうちに学びながら適正にあった専門分野を見つけられるのが魅力です。また、方向転換できる余地があるのも家政学部ならではです。たとえば「最初は栄養士になりたいと思って入学したけど、学ぶうちに児童学に興味を持った」という場合でも、進路変更が可能です。

学びが職業に直結しやすい

家政学部で学べる分野は専門性が高いため、将来の職業が明確になりやすいのもメリットです。たとえば、児童学科なら幼稚園教諭や家庭科の先生などが挙げられます。実習が多いため、現場で働くイメージも持ちやすく、スキルを習得する機会に恵まれているのも魅力です。

たとえば児童学科の実習では、実際に幼稚園や保育施設を訪れて、子どもたちとのコミュニケーションや遊び、保育スキルなどを学びます。それも1回、2回ではなく卒業までに何度か機会があるため、実際に現場に出た時に使えるスキルが得られます。

また、就職に有利となるさまざまな資格を取得できる場合が多いです。

各学科で一般的に取得できる資格をまとめたので、参考にしてみてください。

学科取得可能な資格
被服学科・衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)
・中学校・高等学校教諭一種(家庭)
・学芸員
食物栄養学科・栄養士
・管理栄養士国家試験受験資格
・中学校
・高等学校教諭一種(家庭)
児童学科・幼稚園教諭一種免許状
・保育士
・小学校教諭
・児童指導員(任用資格)
・認定絵本士資格
住居学科・インテリアコーディネーター
・宅地建物取引士
・インテリアプランナー

それぞれの学科で、専門性の高い資格を多く取得できることがわかります。これらの資格を取得しておくことで、就職に有利になるでしょう。

生きていくうえで役立つ知識や技術を学べる

学びを日常に活かしやすいのも、家政学部の魅力です。

家政学は、生活の質を向上させるための学問です。どの学科も、私たちの生活に身近なものを素材としており、生きていくうえで役立つ知識やスキルを学べるでしょう。

家政学部に進学するデメリット

家政学部は専門性が高いゆえに大変な点もあるようです。ここでは、家政学部に進学するデメリットについて見ていきましょう。

ほかの分野への転向やキャリアチェンジがしにくい

家政学部の学科は大きく分けて4つあり、どれも専門性が高く将来の職業もある程度決まっています。そのため「ほかの分野を学びたい」「キャリアチェンジをはかりたい」と思っても難しい面があるでしょう。

後悔しないためには、家政学部で学べる専門分野や卒業後の進路を詳しく知っておく必要があります。また、1~2年生のうちは学科を選ばず共通カリキュラムで学ぶ大学も多いため、その間にしっかり自分の適性や興味を見極めて進路を選ぶと良いでしょう。

実習や資格試験の取得で忙しい

家政学部はどの学科も実習が多く、資格試験の勉強で忙しいです。とくに4年生になると実習、就職活動、学科によっては国家試験の対策に追われるため、かなり忙しくなるでしょう。

家政学部に向いている人

家政学部は、家事や料理、被服、保育などの分野に焦点を当てているため、これらの分野に興味を持っている人に向いています。ほかにも家政学部に向いている人は、以下のような特徴があります。進路選びの参考にしてみてください。

将来なりたい職業が明確な人

前述のとおり、家政学部は選んだ学科によって将来の職業はある程度決まります。そのため、将来なりたい職業が明確な人には向いています。家政学部のおもな就職先をよく確認してみてください。

実践的なスキルを磨きたい人

家政学部は座学だけではなく、実習を通して実践的なスキルを磨きます。たとえば、被服学科の実習では実際に浴衣を手縫いで制作しながら衣服の構造を学んだり、児童学科では、幼稚園や保育園での実習があったりします。就職した際に現場で活きる実践力を身につけられます。

創造性を発揮したい人

ファッションデザインや住居デザイン、料理の創作など、家政学部の学科は創造性を発揮する機会が多いです。人と同じではつまらない、創造性を重視し自分で新しいものを生み出すのが好きな人には向いているでしょう。

人とのコミュニケーションが好きな人

家政学部の学科は、人々の生活や暮らしに直接関わるため、コミュニケーション能力が重要です。保育士や栄養士、ファッションコーディネーターなどは、とくに人と関わることが多いため、コミュニケーションが重要とされます。

「スタビキ」で家政学についてもっと知ろう

スタビキは大学でどんな研究をしているか調べられるサービスです。

例えば「被服」で検索すると「被服材料」や「着心地」などより詳細な研究テーマが表示されます。家政学がどういったことを研究する学問なのか、ぐっと理解が深まることでしょう。

じぶんがどんな研究に興味があるのか、それをどの大学で学べるのかわかります。ぜひ使ってみてください。

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家政学部の就職先

家政学部は専門性が高いため、就職率は高い傾向にあります。就職先は学問分野(学科)によって異なるため、かなり幅広いです。ここでは、各学問分野別のおもな就職先を紹介します。

被服学分野の就職先

就職先内容
一般企業・服飾メーカー
・百貨店
・商社
・セレモニー関連企業(ブライダルなど)
・クリーニング業界
・生地の試験
・検査機関
教員・中学校教員(家庭科)
・高校教員(家庭科)

食物学分野の就職先

就職先内容
一般企業・ドラッグストア ・食品メーカー ・大手飲食店
病院・福祉施設・栄養士 ・管理栄養士

児童学分野の就職先

就職先内容
一般企業・玩具メーカー
福祉・保育士 ・児童相談・支援員 ・児童養護施設職員
教員・幼稚園教諭

住居学分野の就職先

就職先内容
一般企業・ハウスメーカー ・建築事務所

家政学部で「衣・食・住」のスペシャリストを目指そう

家政学部は、人の生活の基盤となる「衣」「食」「住」を深く学べる学部です。家事や料理、被服、保育などの分野に興味がある人はもちろん「人と接することが好き」「資格を取得して手に職をつけたい」という人にも合うでしょう。

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