電子工学とは?電気工学との違いや学ぶ種類と内容、活用できる職業を解説
2023.10.10
理系の大学進学を考えている高校生は「電子工学」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。電子工学とは何か、大学で学べる電子工学の内容について解説します。併せて、電子工学を学べる学部や、電子工学の知識を活かせる職業についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
電子工学とは
電子工学とは、エレクトロニクスとも呼ばれ、情報の伝達処理における電子の流れについて研究する学問です。
私たちが日常で使っているスマートフォンやタブレットは、電子工学の成果のひとつで、これらのデバイスは電子回路とセンサーが連携しています。スマートフォンの画面をタッチすると、内部の電子回路が指の動きを感知し、アプリケーションを起動する仕組みです。Wi-FiやBluetoothを使ってデータを無線で送受信するのも電子工学の技術が使われています。
また、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などの家庭用電化製品も電子工学の技術により電子センサーと制御回路を備えています。これにより、温度や湿度などの環境条件を検知し、適切に作動するわけです。
さらに、自動車業界でも電子工学が重要な役割を果たしています。エンジン制御、エアバッグ、自動運転技術など、多くの機能が電子技術に依存しています。
電子工学は私たちの身近なデバイスやシステムの背後にある鍵となっており、私たちの生活や産業に欠かせない分野なのです。
電気工学との違い
電子工学と電気工学の違いを、スマートフォンを例に見てみましょう。スマートフォンのカバーを外すと「電子回路」と「バッテリー」が入っています。電子回路はスマートフォンを動かすのに必要な電子工学の分野で、バッテリーは電気エネルギー源なので、電気工学の分野になります。
簡単に言えば、電子工学は電子デバイスの設計と情報処理を担当し、電気工学は電力供給と電力インフラを担当します。電子工学と電気工学の技術は私たちの生活に欠かせないものとなっているのです。
情報工学との違い
情報工学は、コンピュータ技術を暮らしに役立てる研究を行う分野です。電子工学と情報工学の違いをロボット製作を例に解説します。 電子工学は、ロボットの動作を制御できるように、ロボットの脳である電子回路を設計する分野です。
ロボットを動かすためには、設計した電子回路に指示を出すアルゴリズムが必要です。そのアルゴリズムを開発する分野が情報工学になります。アルゴリズムとは、問題を解決するための手順やルールを指します。たとえば、お掃除ロボットが障害物を避けながら動けるのは、障害物回避アルゴリズムが搭載されているからです。
ロボットは電子工学と情報工学が組み合わさってはじめて、自律的に行動する能力を持つことができるわけです。
電子工学で研究していること
電子工学で研究している内容は、以下の通りです。
- 半導体の仕組みや研究開発
- コンピュータの製品や電子部品の開発
- アプリなどソフトウェアの制作技術
それぞれご紹介します。
半導体の仕組みや研究開発
電子工学では、半導体の仕組みを学び、新しい半導体の研究開発を行います。半導体は、私たちの生活に関わる多くの製品に使われています。代表的な例は以下の通りです。
- エアコンの温度制御
- 電子レンジや冷蔵庫などの電源回路
- スマートフォンやパソコンなどのメモリーやCPU
- 電車・自動車の加速、減速などの機能管理
- 飛行機の自動制御システム
半導体の研究は情報技術の進歩に役立ち、私たちが使うデバイスの性能向上に役立ちます。また、車や医療機器に使われる電子技術の省エネルギー化や、再生可能エネルギーの効率化にもつながります。
半導体について詳しく知りたい、将来半導体業界で働きたいという人は、以下の記事も参考にしてみてください。
半導体業界とは?先端技術に関わる半導体業界の魅力とおすすめの学部 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)
コンピュータの製品や電子部品の開発
電子工学の研究には、新しいコンピュータやスマートフォンの設計、電子回路やチップの開発、電子部品の研究が含まれます。たとえば、マイクロプロセッサと呼ばれる小さなコンピュータの脳を作ることや、スマートフォンのバッテリー寿命を向上させる新しい電池技術の開発があります。
スマート家電の研究開発
電子工学の研究内容の一部として、生活に役立つスマート家電の研究開発が挙げられます。スマート家電の例としては、外出先から家にある炊飯器やエアコンのスイッチを入れられる機能などが挙げられます。こういったスマート家電は、開発するにあたりプログラミングを組む必要があります。プログラミングに興味がある人は、プログラマーになる道もありますよ。
プログラマーに興味のある人は、以下の記事も参考にしてみてくださいね!
プログラマーはどのような仕事をしている?求められるスキル – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)
「スタビキ」で電子工学についてもっと知ろう
スタビキは大学でどんな研究をしているか調べられるサービスです。
「電子工学」で検索すると「集積回路」や「太陽電池」などより詳細な研究テーマが表示されます。じぶんがどんな研究テーマに興味があるのか、それをどの大学で学べるのかわかります。ぜひ使ってみてください。
大学で学ぶ電子工学の内容
大学で電子工学を学ぶ場合、年次によって学ぶ内容は異なります。一般的には、1年次に電子工学の基礎となる科目を学び、2年次は専門的なスキルの習得を目指します。3年次には、実際の現場で活かせるスキルを養い、4年次には研究室に属して卒業研究に励む流れです。
年次別の詳しい内容についてまとめたので、参考にしてみてください。
1年次:物理・化学・数学と電子工学の基礎
1年次は基礎知識を確立し、専門的な学習に備える重要な時期です。物理学、化学、数学など、高校の学習内容を復習し、専門科目を学ぶ基礎を養います。また電子回路の設計や基本原理など、電子回路の基礎についても学びます。
実験室で物理実験や電子回路の実験も行います。
2年次:電子回路、電子物性の基礎、プログラミングなど
2年次は基本的な知識の応用と専門的なスキルの習得に焦点を当て、電子工学の専門分野に進むための準備を行います。具体的には、以下のような内容を学びます。
- コンピュータや電子機器の設計に必要な知識
- プログラミング知識
- 半導体材料の特性
3年次:電子工学の専門科目
3年次は、専門知識を深く学び、実務スキルの獲得に励む時期です。電子工学の知識とスキルをさらに発展させ、将来の専門職に活かせる技術や知識の習得を目指します。
具体的には、以下のような内容を学びます。
- 高度な信号処理技術の習得
- 複雑な電子回路の設計
- 通信工学の理解
- 制御工学の研究
実験を通じて、実世界の問題に対処する力を養います。
4年次:研究室に所属し卒業研究
4年次には個別の研究室に所属し、卒業研究に取り組みます。自分の研究テーマを選択し、研究プロジェクトを設計・実施します。卒業研究の流れは以下の通りです。
- 関連文献の調査
- 実験の計画と実施
- データの収集と分析
- 研究結果の解釈
- 卒業論文の作成・発表
卒業研究を通じて、将来のキャリアに必要な専門知識と研究スキルを向上させます。
電子工学を学べる学部
電子工学を学べるおもな学部は、以下の通りです。
- 工学部
- 理工学部
- システム工学部・システム理工学部
学部によってアプローチや専攻分野に若干の違いがあるため、自身の興味やキャリア目標に合った学部を選ぶことが重要です。それぞれの学部の違いと、各学部がある大学を紹介します。
工学部
工学部の電子工学科は、より実用的なエンジニアリングに焦点を当てています。具体的な電子デバイスやシステムの設計、開発、応用に重点が置かれます。電子技術やエンジニアリングに強い興味を持っている人におすすめです。
電子工学が学べる工学部のある大学の一例は、以下の通りです。
理工学部
理工学部の電子工学科では、理論と実務が結びついたアプローチを行います。理論的な問題を実際のシステムやデバイスに適用することに魅力を感じる人におすすめです。
電子工学が学べる理工学部のある大学の一例は、以下の通りです。
システム工学部・システム理工学部
システム工学とは、複雑なシステムやプロジェクトを設計、開発、運用、管理する方法を学ぶ学問です。システム工学部で学ぶ電子工学は、大規模で複雑なシステム構築に興味のある人におすすめです。
電子工学が学べるシステム工学部のある大学の一例は、以下の通りです。
電子工学を活かせる職業
電子工学を活かせる職業の例として、以下5つを紹介します。
- 電機・機械メーカーの研究開発職
- 半導体メーカーの研究開発職
- 自動車・輸送用機器メーカーの研究開発職
- 鉄道・航空・運輸会社の技術職
- 通信・ソフトウェアの研究開発職
それぞれ解説します。
電機・機械メーカーの研究開発職
電子工学の知識を活かせる仕事には、電機・機械メーカーの研究開発職があります。冷蔵庫や電子レンジ、テレビなどの製造や改良に活かせる知識や技術を研究し、製品開発に活かします。電気・機械メーカーの有名な企業には、日立製作所、ソニーグループ、パナソニックホールディングスなどがあります。
機械の中でもロボットに興味がある人は、ロボットエンジニアになる道もありますよ。詳しくは以下の記事を読んでみてください。
ロボットエンジニアになるには?求められる資質・能力などを紹介 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)
半導体メーカーの研究開発職
私たちの身の回りにあるあらゆる電化製品や、社会のインフラに欠かせない半導体。電子工学の知識は、半導体の研究開発職にも活かせます。半導体業界で有名な企業としては、SONYや東芝、日立などが挙げられます。
半導体業界について詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
半導体業界とは?先端技術に関わる半導体業界の魅力とおすすめの学部 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)
自動車・輸送用機器メーカーの研究開発職
電子工学の知識は、自動車や輸送用機器メーカーの研究開発職にも活かせます。具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 新しい車両技術やシステムの研究と開発
- 車両の設計と設計改良
- 製品の性能テストと安全性評価
- 新素材の研究と採用
- 車載ソフトウェアおよびエレクトロニクスの開発
- 燃費向上とエネルギー効率の向上
自動車・輸送用機器メーカーの有名な企業には、トヨタ自動車株式会社(トヨタ)や本田技研工業株式会社(ホンダ)、日産自動車株式会社(ニッサン)などがあります。
鉄道・航空・運輸会社の技術職
電子工学の知識は、鉄道・航空・運輸会社の技術職にも活かせます。具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- 新しい列車や航空機の設計と改良
- 車両や機器の定期点検、保守、修理
- 航空交通管理システムや列車運行管理システムの開発と運用
- 燃費改善や排出ガス削減の技術開発
- 航空機や宇宙船の設計と製造
鉄道・航空・運輸会社の有名な企業には、日本貨物鉄道(JR貨物)や日本航空株式会社(JAL)、全日本空輸株式会社(ANA)、日本郵船株式会社などがあります。
通信・ソフトウェアの研究開発職
電子工学の知識は、通信・ソフトウェアの研究開発にも活かせます。具体的な仕事内容は、以下の通りです。
- コンピュータネットワークや通信インフラの設計と最適化
- スマートフォンやタブレット向けのアプリ開発
- ソフトウェアとネットワークのセキュリティ対策の研究
- インターネットに接続されたデバイスやセンサーのソフトウェア開発
通信・ソフトウェア系の有名な企業には、NTTデータやYahoo、マイクロソフトなどがあります。
(まとめ)電子工学が学べる大学を「逆引き大学辞典」で検索しよう
電子工学とは、情報を伝えたり、電気を制御したりするための「エレクトロニクス(電子工学)」についての学問です。
コンピュータや通信、医療機器、エネルギー管理など、私たちの日常生活や産業の発展に欠かせない分野です。
電子工学を学ぶことで、将来的にはさまざまな分野の研究開発職や技術職として活躍できるでしょう。興味を持った人は、早速、電子工学が学べる大学を「逆引き大学辞典」で検索してみてください。興味関心のある学科を設置している大学が見つかりますよ。