ガス業界の魅力は?具体的な仕事内容や職種、就職に役立つ学部・学科の選び方を紹介
2024.02.29
ガスは電力同様、人々の生活に欠かせないものです。人のお役に立ちたい、生活を支える仕事がしたい、とガス業界への就職を考えている人もいるでしょう。
しかしガス業界の具体的な仕事内容や業界の動向などについては、まだ詳しく知らないという人もいると思います。
この記事ではガス業界の仕事内容や職種、今後の動向についてまとめています。ガス業界に興味がある人は、是非参考にしてみてください。
目次
ガス業界の仕事内容と職種
ガス業界の具体的な仕事内容と職種について、簡単にご紹介しましょう。
施工管理
一般家庭や企業のガス工事の施工管理をおこないます。設計図面の作成や工事費用の算出、工事会社や施工主の顧客との打ち合わせなども担当します。設計図面をつくるだけでなく、課題解決のためによりよい工事方法などを提案することも求められます。
保守
一般家庭や企業などで使用しているガス管などの点検、修理、メンテナンスなどをおこないます。古くなったガス管の入れ替え提案なども担当します。点検の前後には図面の準備や顧客との打ち合わせ、事後の資料作成といった事務作業もおこないます。
緊急保安
24時間365日、ガスの安全を見守る仕事です。ガス漏れや工事トラブルなどの緊急事態にいち早く駆けつけ、顧客への避難指示やガスの引火防止処置などをおこない、二次災害の防止やスピーディな復旧に努めます。
技術開発
ガス事業に関わる幅広い技術を開発します。ガス供給やガス分析、導管建設といった、人々に安全にガスを届ける設備をつくるために必要な技術を開発します。災害時にも強いパイプラインの実現など、最先端の技術確立を目指します。
営業・販売促進
個人や法人に対してガス及びガス機器の営業や提案、アドバイスなどをおこない、多くの人にガスを届ける仕事です。ガス業界の営業は、ルート営業であることがほとんどです。定期的にガスの点検をするなど顧客と関係性を築き、例えば給湯機の調子が悪い、暖房の効きが良くない、といったガス関連のニーズを満たす商品を提供します。法人相手にはガスではなく、ガス事業に関わる技術を売買することもあります。
経営企画
経営戦略や事業戦略の企画・立案・遂行、経営資源の最適配分などをおこないます。企業経営の中枢部を担う仕事で、変革が求められるガス業界においては新しいエネルギー資源への投資や、海外での新規事業開発などを担当します。
ガス業界の関連企業
ガス業界は、厳密には「都市ガス業界」と「LPガス(プロパンガス)業界」の二つに分けられます。都市ガスは人口の多い地域で供給されており、都市ガス業界に属する企業は約200社ほどあるといわれています。一方、LPガスはガス管を必要としないため人口の密集していない地方で使われていることが多く、関連企業は小規模の企業が1万5千社以上あるとされています。
東京ガス(都市ガス)
関東地方を中心に事業展開しています。エネルギー供給に限らず、これまでに築いてきた顧客基盤や事業を活かした新サービスに力を入れているのが特徴です。また、海外事業の展開も進めています。
大阪ガス(都市ガス)
関西を中心にガス事業を展開しています。現在は海外展開にも力を入れ、北米、アジア、オセアニアで重点的に活動しています。これまでに構築した海外事業基盤を活用し、上流から中下流まで事業拡大を進めています。
東邦ガス(都市ガス)
東海エリアを中心に活躍している企業です。主要供給エリアである愛知・三重・岐阜に中京工業地帯を含むためか、ガス販売量の約89パーセントが「業務用その他」用として供給されています。
岩谷産業(LPガス)
東京と大阪に本社を持つ企業です。事業を幅広く展開している商社の一面も持っており、LPガス分野ではトップの売上高を記録しています。総合エネルギー事業、産業ガス・機械事業、マテリアル事業、自然産業事業及び各事業に係る金融、保険、運送、情報処理等その他の分野を扱っています。
エネサンスホールディングス(LPガス)
北海道から九州まで各地方にグループ会社がある企業です。2008年に昭和シェル石油と住友商事のLPG事業統合に伴い、「昭石ガスホールディング㈱」(昭和シェル石油100%子会社)と「住商エルピーガス・ホールディングス㈱」(住友商事100%子会社)が合併して誕生しました。
ガス業界の現状と今後の動向
ガス業界は現状、以下の3つの大きな課題を抱えています。
オール電化による需要の低下
オール電化は、空調・調理・電気・急騰などの熱源を、ガスを使わずすべて電気で賄うことを意味します。オール電化が促進されることで、ガスの需要が低下しつつあります。
都市ガスの全面自由化による競争の激化
2017年より都市ガスの全面自由化がスタートしました。他の企業もガス業界に参入しはじめ、競争が激化しています。
ガス業界は長年、前述の大手3社が中心に ガス販売をおこなっていました。これは、戦時中に政府がガス事業の統合を推進したのが大きな理由です。当初いくつもの会社がガス事業を始めましたが、初期投資が大きい一方経営が不安定な事業だったため、倒産する企業が相次ぎました。ガス事業者の約9割を大手数社に集約することで、ガス事業は安定し業界は大きく成長したのです。
ガス業界が大きく成長し安定してきた今、顧客がよりニーズにあった料金やプランを選べるようにするため、全面自由化が始まりました。全面自由化によって他企業が参入できるようになると、より多くの顧客を獲得するために価格に差をつけたり、他事業との組み合わせでつかいやすいプランを用意したりできるようになるからです。
顧客にとってはつかいやすくなる一方、ガス業界の企業は競争に勝つための工夫や挑戦が求められています。
脱炭素社会の実現
世界で気候変動への取り組みが課題となっている中、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。ガスは燃えると温室効果ガスの要因であるCO2を出すため、ガス業界でも2020年10月に「2050年カーボンニュートラル(CO2排出量収支の実質ゼロ)」を目指すことを宣言しました。
脱炭素社会実現に向け、ガス業界では、合成メタン「e-メタン」の生産と、ガスコージェネレーションシステムの導入、という2つの施策が進められています。「e-メタン」の生産は水素と二酸化炭素を合成してつくる再生可能エネルギーですが、水素のコストが高くコストを下げるための技術開発に力を注いでいます。ガスコージェネレーションシステムとは、ガスを燃料として必要な場所で電気と熱をつくるシステムです。発電と同時に発生する熱を有効利用することで、送電ロスを防いでCO2排出量を約3分の1削減することができるといわれています。
上記のように課題の多いガス業界ですが、社会のインフラでもある公益事業であり、政府が補助金を出してガス料金を下げるなど関与する余地も残しています。大きな変革は必要ではあるものの、変わらず人々の生活を支え続ける大事な業界のひとつといえるでしょう。
ガス業界で求められる人材とおすすめの学部
ガス業界で求められる人の特徴と、ガス業界で働くために必要な知識を得られるおすすめの学部をご紹介します。
ガス業界に求められる人の特徴
ガス業界に求められる人材の特徴は、主に下記の3つです。
チャレンジ精神旺盛な人
前述したように、ガス業界は大きな変革の時を迎えています。そのため、新しいことにも果敢にチャレンジできる人材が求められています。特にガス業界 は長い歴史を持つ会社が多く、変革にあたっては伝統的な社風を見直す必要が出てくるでしょう。そうした社内改革にも柔軟に取り組める人材が求められることが予想されます。
自走力のある人
変革が求められる中、会社を支えていけるのは自走力のある人です。ただ与えられる指示を待つだけではなく、自ら主体的に考えて行動を起こす人材が求められるでしょう。既存の発想にとらわれず、新しい価値を作り出す人材が重宝されます。
人々の暮らしを支えたいという想いがある人
ガス業界は人々の暮らしに直結する業界です。すべての行動や選択の根底に「人々の暮らしを支えたい」という想いがあることが大切です。ガスは飲食店の営業を支え、調理や給湯など人々の生活を支える一方、災害時には人に害を与える危険性も持ち合わせています。人々の暮らしを守るため、真心をこめて働くことにやりがいを感じるような、貢献心のある人材が求められるでしょう。
ガス業界に就職するための勉強ができる大学・学部
ガス業界の職種は多岐にわたりますが、理系と文系で任される仕事が変わります。理工学や応用化学を身につければ、技術開発やDX推進など理系の仕事に携われるでしょう。経済学や商学、経営学を学べば、営業や経営企画といった文系の仕事に関われます。
ガス会社に就職するのに必要な資格はありませんが、自分が就きたい職業から逆算して学部を決めると希望の職種に配属される可能性が高まるでしょう。ここでは実際にガス会社に就職した学生の出身学部を元に、理系・文系でまとめました。
理系(配属先:施工管理、保守、緊急保安、技術開発など)
施工管理や技術開発に携わるには、主に理工学系の学部で技術を学ぶと良いでしょう。関連学部がある大学の一例は下記の通りです。
秋田県立大学(システム科学技術学部)
北里大学(未来工学部/理学部)
前橋工科大学(工学部)
日本工業大学(先進工学部)
東京理科大学(理学部第一部/工学部)
日本女子大学(理学部)
早稲田大学(基幹理工学部/創造理工学部/先進理工学部)
東京国際工科専門職大学(工科学部)
静岡理工科大学(理工学部)
金沢大学(理工学域物質化学類)
甲南大学(理工学部)
崇城大学(工学部)
九州産業大学(理工学部)
文系(配属先:営業、経営企画、人事、経理財務など)
文系の場合は学部の指定はありませんが、経営企画などに携わりたい場合は経済学部や経営学部を選ぶと良いでしょう。大手のガス会社は海外への事業展開も進めているので、語学系の学部も役立つかもしれません。関連学部がある大学の一例は下記のとおりです。
北海学園大学(経済学部/経営学部)
宮城学院女子大学(現代ビジネス学部)
開志専門職大学(事業創造学部)
多摩大学(経営情報学部)
東京経済大学(経済学部/経営学部)
福井工業大学(経営情報学部)
流通科学大学(商学部/経済学部)
立命館アジア太平洋大学(国際経営学部)
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ガス業界について、具体的な仕事内容やおすすめの学部についてまとめました。
ガス業界は人々の生活を支える重要な業界ですが、世界中で気候変動の取り組みや地球環境の改善のため、変革を求められる時期にあります。そのため、新しいことに臆せず取り組めるチャレンジ精神旺盛な人材が求められるでしょう。
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