ガーデンデザイナーになるには?仕事内容や必要な資質・能力を紹介
2022.09.29
見る人の目を楽しませ、心をなごませる緑豊かな庭園。高校生の皆さんの中にも、素敵な庭園やガーデンに癒やされ、それを設計する職業に興味を持つ人はいるのではないでしょうか?そんな美しい庭園を設計するのは、ガーデンデザイナーという職業です。
この記事では、ガーデンデザイナーの仕事内容や必要な資質と能力、ガーデンデザイナーになるために目指すべき進路について詳しく見ていきます。ガーデンデザイナーになるための進学先や就職先への理解を深めていきましょう!
目次
ガーデンデザイナーとは?
ガーデンデザイナーとは、「庭」という空間の設計やデザインを手掛けるプロフェッショナルです。個人宅の庭はもちろんのこと、大きなビルの屋上庭園や公園などの空間設計を手掛けることもあります。
ガーデンデザイナーは、設計段階で植物や石の種類・配置を考えるほか、池やアプローチ、噴水などについても担当します。造園の知識はもちろん、建築の知識も駆使しながら正確な設計図を作らなくてはなりません。池や噴水のある庭園なら、給排水設備を設置することも含めて検討する必要があります。
こうした一連の設計・デザインを一手に引き受けているのが、ガーデンデザイナーなのです。
ガーデンデザイナーと庭師の違い
庭に携わる職業として、ガーデンデザイナーのほかに「庭師」があります。庭師は主に個人宅の日本庭園を手掛ける職人。樹木の剪定(せんてい)を行ったり、庭石、池などを配置したりして、美しい庭園に仕上げる庭師は、日本庭園を作り上げるプロフェッショナルといえます。
一方、ガーデンデザイナーは西洋庭園から日本庭園まで、幅広くデザインを手掛けます。対象となる庭も個人宅に限らず、商業ビルのガーデンエリアや公園など、大規模な空間を手掛けることも少なくありません。また、ガーデンデザイナーは設計に特化しているのに対し、庭師は造園工事も行うところに違いがあります。
ガーデンデザイナーの仕事内容
庭園が完成に至るには、大きく分けて企画・設計・造園工事の3つの工程があります。ガーデンデザイナーが主に手掛けるのは企画と設計です。
ガーデンデザイナーが設計した庭園の実現のために、必要な植物や設備を手配することはありますが、工事自体は造園会社や庭師が担当するのが一般的。ガーデンデザイナーは造園工事に立ち会い、イメージどおりに工事が進んでいるか監督・管理も担います。
庭園づくりや公園づくりの企画段階で、クライアントは大枠のイメージやコンセプトを思い描いているでしょう。クライアントの脳内にあるイメージをいかに具現化し、形にするかがガーデンデザイナーの腕の見せ所なのです!
ガーデンデザイナーの仕事のやりがい
ガーデンデザイナーが手掛けた庭園や公園は、基本的にオンリーワンのもの。そして、完成後も長きにわたって自分のデザイン作品がその場所に残り、人の生活に潤いをもたらしてくれます。
自分のデザイン作品である素敵な庭園や公園に足を運ぶ人が大勢いて、そんな作品が彼らの思い出に残るとすれば、ガーデンデザイナーとして大きなやりがいになるはずです。
ガーデンデザイナーの仕事の流れ
ガーデンデザイナーの仕事は、具体的にどのような内容なのでしょうか。続いては、ガーデンデザイナーの仕事内容を、順を追ってご紹介します。
1. 打ち合わせ
庭園や公園は、クライアントから依頼を受けてガーデンデザイナーが設計・デザインするケースがほとんど。クライアントと打ち合わせを重ね、どのようなイメージやコンセプトの庭を造りたいのかをヒアリングします。デザインの方向性はもちろん、配置したい植物や設備などこだわりがあれば、それも設計に取り入れていきます。
2. デザインイメージ図の作成
全体の完成デザインイメージ図を描き起こし、クライアントが思い描いているイメージとのすり合わせを行います。実際にイメージ図を目にすると、「池も造りたい」「◯◯の木をもっと増やしたい」といった要望が出てくることもあるでしょう。ガーデンデザイナーはクライアントの要望をより具体的に引き出し、イメージ図に描き加えていきます。
3. 設計図の作成
全体のイメージが固まったら、CADソフトなどを使って設計図に落とし込んでいきます。設計図をベースに造園施工会社が施工図を作り、造園工事を進めるため、抜けや漏れのない正確な設計図を作らなくてはなりません。
デザインとして優れているのはもちろんのこと、メンテナンスのしやすさや給排水設備などの機能面も考慮して設計図を作成する必要があります。
4. 各種手配
設計図が完成したら、造園工事に必要な植物や設備、造園施工会社などを手配するのもガーデンデザイナーの仕事です。造園施工会社と打ち合わせを行い、デザインイメージや設計図を見せながら全体のデザインコンセプトやクライアントの要望を伝えていきます。
造園施工会社には、設計図をベースにした施工図のとおりに造園工事を進めてもらうだけでなく、表現したいデザインコンセプトを共有しておくことが大切です。
5. 造園工事の監督・管理
造園工事が始まってからも、ガーデンデザイナーは現場に立ち会って監督・管理します。工事の過程で、イメージと異なる点が出てきた場合はその都度、クライアントや造園施工会社と打ち合わせを行い、修正を加えていくことも少なくありません。こうして完成した庭園などをクライアントに引き渡すところまでが、ガーデンデザイナーの仕事です。
ガーデンデザイナーの年収
ガーデンデザイナーの平均年収は、およそ300万〜500万円です。
ただし、ガーデンデザイナーは、実績や経験によって年収の差が開く仕事でもあります。ガーデンデザイナーとしての実績を積み、そのデザインセンスが高く評価されれば、指名される案件も増え、高収入も期待できるでしょう。
ガーデンデザイナーに必要な資質と能力
ガーデンデザイナーには、どのような資質や能力が求められるのでしょうか。特に重要な資質と能力を確認しておきましょう。
草花や樹木などに対する愛情と知識
美しい庭に欠かせない草花や樹木は、いうまでもなく生き物です。それぞれの植物の特性を理解し、適した土壌を用意したり、手入れのしやすい植え方を考えたりすることは、ガーデンデザイナーとして重要な資質です。
ですから、植物に関する知識はもちろんのこと、植物への深い愛情を持っていることが前提となります。草花や樹木を慈しみ、愛情を持って扱うことができる人がガーデンデザイナーに向いています。
造園に対する美的センスと設計力
美しい庭を造るには、美的センスが必要です。平たくいえば、「どのような庭が美しいのか」をわかっていることが求められます。
庭園を設計する場合、派手だったり豪華だったりすれば、それが優れたデザインなわけではありません。コンセプトによっては、「引き算」の発想で要素を減らしてデザインしたほうが、全体がすっきりと美しく仕上がることもあるのです。
また、造園には「正解」がないため、美的センスを磨き続けることにも終わりはありません。
ただし、美的センスが優れていれば、ガーデンデザイナーとして活躍できるとは限りません。イメージを設計図に落とし込んでいく設計力や、設計のためにCADソフトを扱うスキルも求められます。庭園として利用できる敷地の面積や形状には制約があるので、制約内でいかにイメージを具体化していくかが腕の見せ所ですね!
コミュニケーション力
ガーデンデザイナーは、一人で仕事を進められる職業ではありません。クライアントが思い描いているイメージを理解したり、造園施工会社と打ち合わせをしたりする際は、的確な言葉でコミュニケーションを図る能力が求められます。
美的センスを備えていても、イメージや設計の趣旨をうまく伝えられなければ、特に施工を担う職人さんなどに納得してもらうことはできないでしょう。
ガーデンデザイナーには、信頼関係を築いていくためのコミュニケーション力も重要なのです。
段取り力
造園工事は建設工事の一種であり、関係者や関わる会社の数も多く、大掛かりになるケースが多いものです。
ガーデンデザイナーはすばらしいデザインや設計図を作るのが仕事ですが、実際に庭園という形にするのは自分以外の関係者です。しかし、肝心の形にするまでの段取りが曖昧なままでは、完成が遠のいてしまいます。
ガーデンデザイナーは完成までのロードマップを思い描き、いつまでに何をするべきか、スケジュールを監督・管理していくチカラが求められるのです。
こうした段取り力を身につけるには、実際に造園工事に立ち会って現場の動きを見てきたという経験が欠かせません。それぞれの工程にどれだけの期間を要するのか、造園工事の難度と必要な人数、工事にかかる手間などを見積もるチカラも必要になるでしょう。
ガーデンデザイナーになるための方法とは?
ガーデンデザイナーになるためには、どのような進路を選択すれば良いのでしょうか。ガーデンデザイナーの世界の現状と併せて確認しておきましょう。
ガーデンデザイナーの世界の現状
緑豊かな庭園を眺めて癒やされたいという人の想いは、今も昔も変わらないもの。今後も、私たちは自然にふれられる空間を求め続けていくでしょう。自然と人工物を融合させるプロフェッショナルとして、ガーデンデザイナーの需要は今後も衰えることはないと考えられます。
昨今では、サステナブルな都市開発や自然と共存するライフスタイルへの関心が高まっています。都市開発においても、屋上庭園などに代表されるように緑地と併存できる空間が求められていくでしょう。ガーデンデザイナーにとって、今後ますます活躍の場が広がっていくことが想定できますね!
ガーデンデザイナーになるための勉強ができる大学・学部
ガーデンデザイナーになるための勉強ができる学部・学科としては、造園・園芸系や土木系、建築系の学部・学科、環境工学系の学部・学科などが挙げられます。ガーデンデザイナーは「デザイン」と「設計」の役割を担うこともあって、建築系の知識は実務で大いに活かされるのです。
例として、下記のような学部・学科があります。
<ガーデンデザイナーになるための勉強ができる学部・学科>
・環境園芸学部
・芸術学部デザイン学科
・地域環境科学部
・デザイン工学部建築・環境デザイン学科
・人間社会学部社会園芸学科
場合によっては、ガーデニングの本場であるイギリスの大学へ留学する方法も。日本の大学と提携しており、短期留学がしやすい仕組みになっているケースもあるのです。本場でガーデンデザイナーとしての基礎を学べば、帰国後に活躍できるチャンスも広がりそうですね!
有名なガーデンデザイナーの出身校も見てみましょう。
<有名なガーデンデザイナーの出身校>
・石原和幸(久留米工業大学 工学部交通機械工学科)
・上野砂由紀(札幌国際大学 人文・社会学部国際文化学科)
・白井温紀(跡見学園女子大学 文学部美学美術史学科)
・豊田美紀(慶應義塾大学 経済学部)
・正木覚(武蔵野美術大学 造形学部基礎デザイン学科)
・吉谷桂子(日本大学 芸術学部美術学科)
※50音順・敬称略
出身学部や学科は芸術系が多いようですが、そうでない人も。あなたがガーデンデザイナーになりたいと思うときは、もしかすると有名デザイナーのように大学入学後なのかもしれませんね。
ガーデンデザイナーに必要な資格や受験すべき試験
ガーデンデザイナーを目指すにあたって、必須の資格や免許はありません。資格を持っていれば活躍できるとは限らない、実力主義の世界だからです。
ただ、造園や園芸に関する国家資格を取得しておくことは、基礎知識を持っている証明となります。下記の資格を取得することで、プロのガーデンデザイナーに近づくでしょう。
・造園技能士
造園技能士の試験では、造園全般に関する知識や庭木の手入れ、工場緑化といった幅広い知識が問われます。1~3級まであり、造園工法や設計図の作成方法、測量方法といった実務に役立つ知識を習得することができます。
・造園施工管理技士
造園施工管理技士は、造園工事の施工計画や工程管理、作業の安全管理といった知識が問われます。1級と2級があり、大学の指定学科を卒業している場合、2級の受験資格には卒業後の実務経験1年以上、1級は卒業後の実務経験3年以上あるいは2級合格者であることを求められます。土木工学や園芸学、林学、都市工学のほか、施工管理などの知識を有していることを証明できます。
・園芸装飾技能士
園芸装飾技能士は、園芸装飾に必要な技能が認定される資格です。1~3級まであり、それぞれ実技試験で出題される課題の難度が異なります。インドアガーデンを実際に制作する課題が出されることから、園芸装飾の経験者向けの資格といえるでしょう。
ガーデンデザイナーになるために目指すべき就職先
ガーデンデザイナーになるための就職先としては、下記のようなものが挙げられます。
・造園設計・施工会社
造園設計・施工会社は、造園設計・施工を専門に請け負っています。ガーデンデザイナーとして採用されるのは主に経験者ですが、未経験で入社し、徐々にステップアップしていくことも可能です。個人宅の庭から比較的大規模な庭園まで手掛けている企業もあります。
・建設・造園コンサルタント
建設コンサルタントは、公共工事の設計分野を請け負う会社です。その中でも、公園や緑地の計画・調査や設計デザインを行う造園コンサルタントに就職すると、行政の仕事として公園の設計を行うことになります。予算や法律的な制約は多いですが、造園に関する高い専門知識や技術を学ぶことができます。
・園芸店、ガーデニングショップ
園芸店では、観葉植物や多肉植物などを商品として扱っています。植物の販売に付随して、植物を配置する空間デザインを請け負う店もあるのです。ガーデニングショップはガーデニングに関する商品の専門店ですが、ガーデニングに関する相談にのったりアレンジ方法をアドバイスしたりすることもあります。好きな植物にふれながら、クライアントとのやりとりを通じて得た経験や知見は、ガーデンデザイナーを目指すための貴重な財産になるでしょう。
・エクステリア専門工務店
エクステリア専門工務店は外装工事全般を扱う工務店ですが、最近では庭園の設計・施工を請け負っているケースもみられます。庭園づくりに携わるチャンスを得られる可能性も!
ガーデンデザイナーになった後のキャリアプラン
ガーデンデザイナーとして働き出した後は、さまざまな庭園や公園の設計・デザインを手掛けることで実績を積み重ねていきます。仮に自分がデザインした庭園や公園が「日本造園学会賞」といった著名な賞を受賞し、実績が認められれば、知名度も高まっていくでしょう。
ガーデンデザイナーとして一定以上の実績がある人は、独立して設計から施工まで担う事務所を設立するケースもみられます。後進を育成していきながら経営者として、次のステージを歩むこともできるのです。
また、著名なガーデンデザイナーだと著書を出版したり、講演活動を行ったりすることも。ガーデンデザイナーとして磨き上げてきたセンスを発信することで、「自分もガーデンデザイナーを目指してみたい」と考える皆さんのような若い人がどんどん現れるかもしれませんね。
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緑あふれる美しい庭園を設計・デザインすることを通じて、人に癒やしや安らぎを提供するガーデンデザイナー。自然と人工物を融合させ、長く残る魅力的な空間を生み出していく仕事はとても魅力的ですよね。今回紹介してきた進学先や就職先を手掛かりに、ぜひガーデンデザイナーを目指すための進路を考えてみてください。
ガーデンデザイナーの仕事にさらに興味が出てきた人は、「JOB-BIKI」で「ガーデン」「園芸」「造園」などと検索してみてはいかがでしょうか?ガーデンデザイナーを目指すための手掛かりや役立つ情報がきっと見つかりますよ!