逆引き大学辞典逆引き大学辞典

医療系学部・大学セミナー&進学ガイダンス講演会レポート 明治薬科大学による薬剤師の仕事についての講演

2024.07.05

カテゴリー:
講演会会場入口

はじめに

2024年5月26日、日曜日。有楽町の東京交通会館12階ダイヤモンドホールにて、医療系学部・大学セミナー&進学ガイダンスが開催されました。

将来医療に携わりたいと考えている高校生を中心とした、大学進学相談会です。個別に大学と相談をすることができるイベントですが、大学進学に役立つ講演会も実施しています。

今回は明治薬科大学による薬剤師の仕事についての2つの講演会を中心に、当日の講演会の様子をレポートいたします。

本記事作成にご協力いただいた大学:明治薬科大学


薬物治療における病院薬剤師の役割

薬物治療における病院薬剤師の役割の講演会開始の様子

13時から明治薬科大学 薬剤情報解析学 大野恵子教授によります、薬物治療における病院薬剤師の役割の講演がスタートしました。

大野教授:薬剤師は医療人です。薬剤師の任務の目的は、人々の健康な生活の確保であり、それは医師の目的と同じです。その目的に向かって、我々薬剤師は、調剤や医薬品の供給などの職務を行います。


病院薬剤師の仕事内容

――仕事内容についてのお話です。私たちは薬剤師さんというと薬局にいる人というイメージしがちです。

大野教授:薬剤師は薬局と病院だけではなく、実際には医薬品開発、医薬関連業界、厚生労働省のような衛生行政と呼ばれる役所、大学・研究所、ドラマにでてくる科捜研などいろいろな現場で活躍しています。

病院薬剤師の主な仕事内容について、順番に紹介します。

まず、調剤とは処方箋に基づいて医薬品を調合することですが、患者さんが適切に薬を使用できるように十分に説明することまで含めてはじめて調剤といえるのです。薬剤師には薬の安全性や有効性を確保する責任があり、処方箋の内容に疑問がある場合は処方医に確認する義務があります。このように、調剤には薬剤師としての責任と義務があります。

病院では、注射剤の調剤・調製も病院薬剤師の仕事です。

薬局と違って、病院には、病棟、検査室、手術室などなどさまざまな場所に薬があるため、それらの管理も担当しています。

また、医薬情報の収集・提供という仕事では、患者さんからの薬に関する情報収集や情報提供も行っています。

患者さんに入院前に使用していた薬について、どのような薬を使用していたのか、忘れずに服用できているか、といったことなどをヒアリングします。薬は正しく使用されないと効果は得られません。患者さんが薬を適切に使用できるように考えて対応することも病院薬剤師の大事な役目です。

――仕事の内容の説明を通じて、最初に人々を健康にするという目的の話があった理由がよくわかります。病院薬剤師の仕事とは、患者さんの病気をよくするという目的のためにさまざまな行動をしているということでしょう。


病院薬剤師の現在と今後

大野恵子教授

――続いて、病院薬剤師の現在とこれからのお話になりました。

大野教授:病院では、調剤業務を支援してくれるロボットが登場しています。ロボット(装置)の中にある薬を処方箋に従って用意してくれるロボットです。中には、粉薬を量って分けて包装まで自動化されたロボットもあります。そう聞くと近い将来、薬剤師はいらなくなるのでは?と考える人もいるかもしれません。これらのロボットは薬剤師の仕事の一部を支援してくれるものであり、薬剤師が必要なくなるということではありません。

従来から調剤業務に加えて、患者さんへの薬学的なケアが重要な業務になってきているので、そこに病院薬剤師の職能をさらに発揮させなければなりません。

薬物療法は高度化しており、医療事故の約4割が医薬品に関わる事故であるという現在では、安全で効果的な薬物療法を行うために、薬剤師が主体的にチーム医療の薬担当として活躍することが望まれているのです。

一人一人の患者さんにあった薬やその使い方などについて医師に提案するなど、医師の処方設計を支援することも、安全で効果的な薬物療法を行う上で重要です。病院の中ではいくつもの医療チームがあって、他の医療従事者とともに、感染対策、栄養管理、緩和ケアなどそれぞれ得意な分野で活躍している薬剤師もたくさんいます。

――最初のメッセージにあったように、医者と薬剤師が患者さんのために自分たちの専門領域で力を発揮する。病院のチーム医療の一員として活躍するのが病院薬剤師ということなのですね。


薬剤師を目指すみなさんへ

――最後に、薬剤師を目指すみなさんへのメッセージです。

大野教授:医療人である薬剤師に一番必要なものはやさしい心だと思います。患者さんに寄り添える心なくして病院の薬剤師にはなれません。

そして、薬剤師になるためには大学で6年間学ぶことになりますが、それで終わりではありません。医療は日進月歩であり、次々と新たな医薬品が登場しているので、薬剤師は生涯学習が必要な仕事なのです。

薬剤師は、薬に関するジェネラリストですが、感染症、がん、妊婦など特定の領域で、強みを持った専門薬剤師を目指すこともいいでしょう。

――ただ薬剤師を目指すということだけではなく、どのような薬剤師になりたいのかを考えることが重要なんですね。薬系大学への進学を検討している参加者のみなさんは、大学受験と大学での学びのことはもちろん考えていると思いますが、卒業後のことも考えるきっかけになったことでしょう。大きな拍手で講演会は終了しました。


地域における薬局薬剤師の役割

地域における薬局薬剤師の役割の講演開始の様子

14時からは明治薬科大学 地域医療学 山﨑 紀子教授による、地域における薬局薬剤師の役割の講演です。続けて講演に参加することで、病院薬剤師との違いや、自分がどちらを目指したいのかを考える参考になる構成となっています。

山崎教授:現在日本で薬剤師の国家資格を取得しているのは約32万人です。そのうちの約6万人が病院、19万人くらいが薬局で働いています。


病院薬剤師と薬局薬剤師の違い

――病院薬剤師との違いについてお話をされました。

山崎教授:病院薬剤師の特徴は、相手が患者さん。つまりは病気の治療中である点です。入院していれば、栄養管理された食事を3回して、夜になれば寝るという、規則正しい生活をしています。そういう状況にいる患者さんが退院するために、治療に介入するというのが病院薬剤師のお仕事です。薬局に訪れる人は、病気の人だけでなく自分の家で普通に生活をしている人です。病院にいるのと違って、決まった時間に寝ているとも限りません。

そういった、自分のサイクルでさまざまな生活をしている人に対して安心して暮らせるように健康のサポートをするのが、薬局薬剤師の仕事です。

――参加者はみんな、病院薬剤師と薬局薬剤師の違いがよくわかったと思います。


今後の薬局、地域医療について

――次に、今後の薬局についてのお話をしてくださいました。

山崎教授:まず、昭和のときの薬局はどうだったかというと、地域住民の体調不良、病気の相談を地元の薬剤師にしていました。そして、相談の応えとして一般薬を販売していました。平成になると、薬局は診療所のすぐ近くにできるようになり、その診療所の処方箋を受け付ける時代になりました。

しかし、国は今後、薬局のあり方を変えようとしています。薬局は診療所とセットではなく自分の家の近くにみんながかかりつけ薬局をもつような平成よりも昭和に近い方向へと。内科でも皮膚科でも眼科でも、どの診療所の処方箋でも、自分のかかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師から薬をもらう時代に変わっていきます。

今、この講演を聞いているみなさんが、大学へ進んで6年間学んで、卒業後に薬剤師国家資格を取得する頃には、そういった時代になっていると思われます。

――つまり、今後薬剤師を目指す人は、かかりつけ薬剤師になって欲しいと思われる薬剤師にならなければならない、ということですね。


薬局薬剤師の仕事

山﨑紀子教授

――次に薬局薬剤師のお仕事の紹介です。まず処方箋の監査のお話です。

山崎教授:つい先日、とあるお笑い芸人が炎上しました。それはなぜ医者にした説明をまた薬局薬剤師にしなければならないのか。どうせ処方箋のとおりに薬を用意するだけなのに。時間の無駄だ、非常に腹が立つというような発言によるものでした。しかしこのヒアリングはとても重要なことなんです。

実際に、ヒアリングをした100人のうち2、3人くらいは本当にこの処方内容で良いのかと、医者に問い合わせることがあります。この処方箋の監査は薬剤師の大事な仕事です。

――また、薬局薬剤師の薬局以外での活動も教えて下さいました。

山崎教授:在宅医療の患者さんへの訪問や、学校薬剤師としての活動もあります。

学校薬剤師は、大学以外の学校には必ずいて、学校の環境衛生を確認して指導助言したり、薬物の危険を教えたりなどの教育活動をしています。

――次に、今後の地域医療についてです。

山崎教授:国は、自分で自分の健康を守っていくセルフメディケーションを推進しています。

そうすると、病気になる前の状態で健康についての相談をするようになります。病気になっていないので、お医者さんではなく薬剤師に相談する。薬剤師は相談者の健康のために必要なことを判断する。

健康になる方法は薬ではなく運動かもしれませんし、食事かもしれない。場合によっては一般用医薬品で経過観察することや病院に受診することを勧めます。これがトリアージという大切な仕事ですが、これが今後の薬局薬剤師に求められる仕事です。

こういう地域での活動がある点が、薬局薬剤師の特徴のひとつであり、今後はますます地域住民の健康のための活動にシフトしていくでしょう。


薬局薬剤師を目指すみなさんへ

――最後に、薬局薬剤師を目指すみなさんへのメッセージです。

山崎教授:薬に関する相談だけでなく、健康に関する相談にも応じる『健康サポート薬局』という制度がありますが、これからはそのような機能を持つ地域連携薬局、もしくはがん等の専門医療機関と密接な関係をもつ専門医療機関連携薬局というように、薬局は機能別に分かれていきます。

これから大学で学ぶみなさんは、今後の薬局がどのように変わっていくのか知ったうえで、大学を選んでください。

薬局薬剤師は、一番身近な医療人です。健康上の悩みを最初に相談してもらえるとても重要なやりがいのある職業です。みなさんもこんな薬局薬剤師を目指してみてください。

――拍手のあと、2組の参加者が先生のところに質問にいらっしゃいました。1組は明治薬科大学で選ぶコースについての相談。もう1組は、今後の薬局での就職の相談でした。

こうした相談を大学の先生に直接できるのも、この講演会の魅力のひとつです。


明治薬科大学以外の講演会について

北里大学の講演会では、大学で看護学を学びたい方に向けたお話をされました。

救急医療と災害医療の現場のことを中心に、リアルな看護師の仕事について知ることができました。

参加者のみなさんも、どのような看護師になりたいのか考えるきっかけになったことでしょう。

なかには薬剤師の講演会に参加していた人もいらっしゃいました。看護と薬学のどちらを学ぼうか迷っている人も、学科選びの参考になったと思います。

最後は、医療看護系大学受験のための志望理由書の書き方と、面接対策に関する講演会が行われました。

一般的な面接対策の話もありましたが、医療人を目指している人ならではの要素もありました。志望理由を考えたり、面接の対策をしたりすることは、医療を学びたい理由をきちんと考えるということでもありますね。

受講者のみなさんは、受験に際しての具体的な手段を知ることができたことで安心できたと思います。

以上、医療系学部・大学セミナー&進学ガイダンスの講演会レポートでした。進学EXPOでは、大学受験を検討するみなさんにとって有意義な講演会を実施しています。機会があれば、ぜひ参加してみてくださいね。

よく読まれている記事

タグで記事を絞り込む