税理士の資格とは? 税理士試験の受験資格や試験内容、大学と学科選び
2024.08.20
「税理士の資格ってどうやってとったらいい?」
「税理士の資格を取るにはどんな大学を選んだらいい?」
税理士の仕事に興味を持つ人の中には、このように考えている人も多いでしょう。
税理士は、国や自治体の収入源である税金のスペシャリストであり、国や企業の財務を支える重要な仕事です。
税理士資格は国家資格であり、専門性も高いので、資格を取得するには様々な条件や試験対策が必要になります。
大学在学中から税理士資格の取得を目指せるため、税理士資格を取得したい人にとっては大学選びが重要な鍵を握るでしょう。
この記事では、税理士資格を取得したい人に役立つ大学の選び方や、税理士資格の勉強法についてまとめました。税理士資格取得のメリットや税理士の将来性についても触れているので、進路選びの参考にしてみてください。
目次
税理士資格の重要性
税理士資格を持つことのメリットや、税理士資格を取得するために知っておきたいことをまとめました。
税理士資格を持つことのメリット3つ
税理士資格には、下記のようなメリットがあります。
1 .年収が高くなりやすい
税理士の仕事は、年収が高い傾向にあります。税理士には3つの独占業務があり、下記の税務業務は税理士だけが行うことができるよう、税理士法で定められています。
・税務署類の作成:確定申告などの申告書、請求書などを納税者の代わりに作成する。
・税務代理:納税者の代わりに税務署などに申告や申請を行う。
・税務相談:納税者からの税に関する相談に応じる。
専門的知識が求められる業務であり、税理士資格を持つ人だけがおこなえる業務のため、希少性も専門性も高い仕事です。厚生労働省の調査によると令和4年の税理士の平均年収は746万円です。給与所得者の平均年収が450万円前後であることを考えると、高くなる傾向にあるといえるでしょう。
2 .就職・転職に有利
税理士資格を持っていると、就職・転職を有利に進めやすくなります。前述したように税理士にしかできない業務があり、専門性が求められます。税理士資格を持っていれば即戦力として採用されやすくなるでしょう。
税理士業務は全国どこでも必要とされる業務です。税理士事務所などはもちろん、一般企業の財務部門などでも活躍できる可能性があります。生涯有効な資格でもあるため、ライフスタイルや家族の事情で地方に移動したとしても転職しやすく、産休や育休で長期間仕事を休んだとしても復職しやすいです。
3.独立しやすい
税理士資格を持っていると、独立起業するという選択肢も増えます。税理士の仕事は需要が高く、年齢を重ねても安定した年収をキープできる可能性があるでしょう。独立して顧客と関係性を築くことで自身のやりがいも感じられます。
税理士資格を取得するために必要な条件とは
税理士資格を取得するには、税理士試験を受験する必要があります。税理士試験の受験資格は、主に下記の通りです。下記のいずれかの条件を証明できる書類を受験願書と共に提出しなければなりません。
学識による受験資格 | 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 |
大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者 | |
一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者 | |
司法試験合格者 | |
公認会計士試験の短答式試験に合格した者 | |
資格による受験資格 | 日商簿記検定1級合格者 |
全経簿記検定上級合格者 | |
職歴による受験資格 | 法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者 |
銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者 | |
税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者 |
受験資格に含まれる「社会科学に属する科目」について、詳しくは後述の「大学選びの際に注意すべき点」に記載しています。
高校生の皆さんはまず「社会科学に属する科目」を学べる大学を選び、「学識による受験資格」を得ることを目標にすると良いでしょう。
税理士資格試験について
税理士試験は年に1回、8月におこなわれます。試験内容は下記の通りで、会計学に属する科目の2科目と税法に属する科目から選んだ3科目、合計5科目の各科目において満点の60パーセントをとると合格です。
会計学に属する科目 | 簿記論 |
財務諸表論 | |
税法に属する科目 | 所得税法 (所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択) |
法人税法 (所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択) | |
相続税法 | |
消費税法又は酒税法 | |
国税徴収法 | |
住民税又は事業税 | |
固定資産税 |
(国税庁ホームページ「税理士試験受験資格の概要」より抜粋)
税理士試験は科目合格制で、一度に5科目を受験する必要はありません。1科目受験することも可能で、試験の合格科目が3科目以上あるだけでも転職に有利になる可能性があります。
税理士試験に合格し、2年以上の実務を経験すると日本税理士会連合会に税理士として登録されます。
大学選びのポイント
税理士の資格取得に役立つ、大学選びのポイントを解説します。
税理士の資格取得を目的とした場合の考え方
税理士資格は社会人になってからでも取得できますが、大学のうちに取得を目指すのがおすすめです。
国税庁が発表している『令和5年度(第73回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)』によると、大学在学中の受験者の合格率が最も高く30.5%となっています。
理由としては、大学在学中が最も勉強に集中できる環境が整っていること、勉強時間を確保しやすいことが考えられます。大学によっては在学生向けに税理士試験の講座を開いているところもあるので、うまく力を借りながら税理士試験の勉強もできるでしょう。
また、大学院に進学して要件を満たすと、税理士試験の税法2科目または会計1科目が免除されます。 確実に税理士試験の5科目で合格したいという人は大学院への進学も念頭に置いておきましょう。
参考:令和5年度(第73回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)
大学選びの際に注意すべき点
税理士資格を取得するために必要な条件のうち、大学選びに関係するのは下記の3つです。
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
そのため、大学を選ぶときには、「社会科学に属する科目」が大学にあることをきちんと確認しましょう。
国税庁のホームページで紹介されている「社会科学に属する科目」は、下記のとおりです。
法学 | 法律概論 | 日本国憲法 | 民法 | 刑法 |
商法 | 行政法 | 労働法 | 国際法等 | (マクロ又はミクロ)経済学 |
経営学 | 経済原論 | 経済政策 | 経済学史 | 財政学 |
国際経済論 | 金融論 | 貿易論 | 会計学 | 簿記学 |
商品学 | 農業経済 | 工業経済 | 社会学 | 政治学 |
行政学 | 政策学 | ビジネス学 | コミュニケーション学 | 教育学 |
福祉学 | 心理学 | 統計学 |
税理士資格取得ならこの大学!おすすめの大学6選
税理士資格取得を目指す人におすすめの大学を紹介します。
税理士を目指す学生におすすめの学部学科
税理士を目指して大学を選ぶのであれば、税理士試験の試験科目と関連している学部を選ぶのがおすすめです。
経営学部
企業の管理や経営手法について、多角的な視点から考察・研究をおこなう学部です。経営学 の概論的知識や簿記・会計の基本、経済学、社会学、法学などの関連分野を習得できます。
経済学部
ミクロ経済学・マクロ経済学を中心に、人とお金の動きや経済に関する思想、歴史の分析などをおこなう学部です。税理士試験の受験資格にも経済学の履修が含まれるので、是非チェックしておきましょう。
法学部
法律について体系的に学べる学部です。法の側面から事件や問題の解決方法について学ぶ学問で、法律学や商法を含む基本六法、経営法学なども学べます。税理士試験の出題範囲と重なる分野も多いため、税法の試験勉強にも役立ちます。
商学部
企業の経済活動に関する学問です。税理士の試験科目に含まれる会計学を必修科目としているので、税理士試験にも役立つでしょう。会計や税務、生産管理のほか、経済学や基礎数学を習得できるため、商業全般やお金の流れについても学べます。
タイプ別オススメの大学6選
タイプ別におすすめの大学をいくつかピックアップしました。大学選びの参考にしてみてください。
大学在学中に税理士資格取得を目指す人におすすめの大学3選
大学在学中に税理士資格を取得したいという人には、税理士資格の科目合格を単位にしている 大学を選ぶのがおすすめです。
科目合格を大学の単位としている大学は少ないですが、主に下記のような大学があります。
・香川大学(経済学部)
・関西大学(商学部)
・高崎商科大学(商学部)
税理士資格取得のサポートを受けたい人におすすめの大学3選
大学のサポートを受けて税理士資格取得を目指す人には、大学内に講座を設置している大学や、税理士になる人向けのコースを設置している大学を選ぶのがおすすめです。
主に下記のような大学があります。
・大阪学院大学(大学院/商学研究科 )
修士(商学)の学位取得で、税理士試験の会計学科目1科目の免除を受けられる
・駿河台大学(総合政策研究科/経済・経営学専攻)
税理士などの資格取得を目指すための「資格取得支援プログラム」を設置
・福山大学(経済学部/税務会計学科)
資格取得の対策講座などサポートが充実
税理士を目指す高校生へのアドバイス
税理士を目指す高校生のみなさんに、自分に合った大学の見つけ方や税理士資格の取得に必要な勉強方法をご紹介します。
自分に合った大学と学部学科を見つけるための方法
大学在学中に税理士資格を取得できる人は多いとはいえ、税理士資格は専門的知識が求められる国家資格です。合格するには個人差があり、2,3年で合格できる人もいれば10年以上かかる人もいます。そのため、確実に税理士資格を取得したいのであれば、集中して学習に取り組めるよう自分に合った大学を見つけるようにしましょう。
大学在学中に税理士資格を取得したいという人は、前述したとおり税理士試験で科目合格すると単位に計上できる大学を選ぶのがおすすめです。税理士試験に合格すると奨励金が貰える制度がある大学も、モチベーションアップに繋がるでしょう。
また、税理士として登録されるには、税理士資格と2年以上の実務経験が必要です。学生のうちから税務関係の仕事をしながら資格取得を目指せば、より早く税理士として活躍できる可能性もあります。働きながら資格取得を目指したいという人や、自分のペースで学びたいという人には、少ないですが通信制大学もあります。
税理士を目指すためにサポートできる講座やコースを用意している大学も多いので、自分の学習ペースやモチベーションアップに合った大学を探してみましょう。
税理士資格を取得するために必要な勉強方法
税理士資格試験は出題範囲が多く、法改正による変更もあるため、目安の勉強時間どおりに勉強すれば合格できるとは限りません。早めに合格できるよう、効果的な勉強方法で取り組みましょう。
税理士資格取得を目指す人におすすめの勉強方法は、大きく分けて下記の4つです。
1.過去問を活用する
税理士資格試験に合格するには、過去問の活用が重要です。過去問を解くことで出題傾向や勉強に力を入れるべきポイントがわかります。難問・奇問を見分けられるようになり、自分の得意分野と苦手分野を知ることもできるでしょう。内容を覚えるためというよりは、当日の試験に慣れるために過去問を活用するのがおすすめです。
2.アウトプット練習をする
税理士資格試験は、計算問題と理論問題に分かれます。計算問題は計算によって答えを導き出す問題、理論問題は税法の理論に対して記述式で答える 問題で、受験科目の規則や税法条例を理解しているかを問われます。 暗記はできても実際にアウトプットするのはハードルが高いと感じる人が多いので、計算問題をスムーズに解く練習や、理論を自分の言葉でアウトプットする練習などをしておきましょう。
3.学習範囲・問題の取捨選択をする
税理士試験は出題ボリュームが多く、「試験時間2時間に対して3時間分の問題が出される」と言われるほどです。すべて一から順に解いていくと合格点に届かないということもあるため、内容が共通している科目は関連づけて勉強する、自分の得意分野を中心的に勉強する、など学習範囲もある程度取捨選択すると良いでしょう。本番でも解ける問題から解いていけるよう、出題傾向を掴んでおくことが大切です。
4.本番のシミュレーションをする
税理士試験は出題数が多いので、試験当日の時間配分は重要です。実際に時間を測って問題を解いてみるなど、本番のシミュレーションをしておきましょう。本番の緊張と時間制限で普段はできる問題が解けなかった、ということのないように、事前に準備しておくことが大切です。
税理士としての将来の展望
税理士としての将来的な需要や就職環境、キャリアパスの可能性について解説します。
税理士の需要や就職環境について
結論として、税理士は将来的に需要の高い仕事です。税金は国や自治体を支える重要な収入源であり、税理士はその税金のスペシャリストです。前述したように税理士だけがおこなえる税務もあるため、需要がなくなることはないでしょう。
近年はAI、クラウドサービスなどIT が発達し、税の関連書類の記入がしやすくなりました。インターネットやSNSで一般の人でも税の知識を得られるため、税理士の仕事がなくなるという見方もあります。
しかし、同様にフリーランスや独立起業する人も増え、比例して税関連の業務を税理士に任せるという人も増えています。独学で仕入れた情報だけでは税務書類を正確に記載することが難しいこともあり、今後も税務のスペシャリストである税理士は重宝されるでしょう。
税理士資格を活かしたキャリアパスの可能性
税理士のキャリアは幅広く、勤務税理士や企業内税理士として専門性を高める道や、幅広い知識で活躍する「ゼネラリスト」、自らが所長となる独立開業などの道があります。
税理士資格を活かしたキャリアパスの一例をご紹介します。
勤務税理士
税理士事務所や税理士法人に勤める税理士を、勤務税理士といいます。税理士事務所や税理士法人で経験を積んで他の職場に転職したり独立開業したりすることでキャリアアップする人もいますが、税理士事務所・税理士法人の中で専門性の高い税理士としてキャリアを積むという人もいます。
企業内税理士
一般企業や、金融機関・コンサルティングファームなどで税務を専門に扱う税理士を、企業内税理士といいます。経理部や管理部門で財務や会計に関する専門的な知識を活かすのが一般的なケースで、キャリアを積むことで経理部や管理部門の部長、役員やCFO(最高財務責任者)などのポジションに昇格できる可能性もあります。
独立開業
税理士試験に合格し、2年以上の実務経験があれば税理士として登録され、独立開業が可能です。要件さえ満たしていれば税理士試験に合格してすぐに独立開業することも可能ですが、多くの場合勤務税理士・企業内税理士として経験を積んでから独立開業しています。
独立した場合は自分が事務所のトップになるため、事業の規模や収入はすべて自分の手腕次第になりますが、経営者として自由に働きたいという人にはおすすめです。
JOB-BIKIで税理士を検索!
JOB-BIKIの「業種から探す」で「コンサル・会計・法務関連」から「会計、税務、法務、労務」に絞りこむと、税理士が活躍する税理士法人や企業を検索することができます。実際に就職した人の出身大学も見られるので、大学や就職先選びに活用してみてください。