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自然保護官(レンジャー)とは?仕事内容や年収、目指せる大学の学部も紹介

2024.09.06

カテゴリー:
屋外活動中の自然保護官

自然保護官は、国立公園の自然を守り、人と自然をつなぐ環境省の公務員です。主な仕事は、国立公園の管理、環境保全、自然教育プログラムの実施などです。美しい自然を次世代に引き継ぐため、現場とデスクワークの両方で活躍する、やりがいのある職業です。

本記事では、自然保護官の仕事内容や向いている人、年収などを解説します。また、目指せる大学の学部についてもまとめたので、進路選びの参考にしてみてください。

自然保護官は環境省に所属する公務員です。環境省で働く人々の出身大学が気になる方は、「JOB-BIKI(ジョブビキ)」で検索してみてください。就職先検索で「環境省」と入れると、環境省就職者の出身大学が分かるため、進路選びの参考になるはずです。

自然保護官(レンジャー)とは

自然保護官は、国立公園などの貴重な自然環境を守る専門家です。環境省の地方環境事務所に所属し、正式には自然保護官または国立公園管理官と呼ばれますが、一般的にはレンジャーの愛称で親しまれています。

自然保護官の仕事内容

自然保護官の主な仕事は、国立公園の管理です。実際に野外で活動することはあまり多くなく、仕事の大半はデスクワークになるようです。具体的な内容は以下のとおりです。

  • 許認可業務
  • 公園計画案の作成
  • 自然の見守りと安全確保
  • 自然再生の推進
  • 国立公園の清掃活動
  • 自然を身近に感じる機会づくり

メインの仕事は、デスクワークである許認可業務と公園計画案の作成です。屋外の仕事で手が足りなくなった場合は、アクティブ・レンジャーと言って、自然保護官(レンジャー)の補佐役に手伝ってもらいます。

それぞれの詳しい仕事内容について解説します。

参考:アクティブ・レンジャー | 採用・キャリア形成支援情報 | 環境省

許認可業務

自然保護官の大切な仕事の一つに、国立公園内での許可や認可を出す仕事があります。これは、公園の中で何か建物を建てたり、特別な活動をしたりする時に、それが自然に悪影響を与えないかを確認する仕事です。特別な活動には、植物の採取や動物の観察、キャンプ場の設置、自然を題材にした映画やテレビ番組の撮影などが含まれます。

公園計画案の作成

公園計画の作成は自然保護官の主要業務です。この計画は、国立公園の保護と利用の最適なバランスを目指します。具体的には、公園内を保護レベルでゾーン分けし、各区域の利用規制や施設配置を定めます。自然環境の変化に対応するため、計画は定期的に見直されます。
国立公園の豊かな自然を守りつつ、人々が楽しめるようにする。この難しいバランスを取るのが、自然保護官の重要な仕事、公園計画の作成です。

自然の見守りと安全確保

自然保護官の大切な役割に、国立公園の自然保護と安全管理があります。公園内を巡回しながら、動植物の状態を観察し、来訪者数を把握します。同時に、ルール違反がないかチェックし、散策路や案内所、トイレなどの施設を整備します。これらの活動を通じて、公園の生態系を守りつつ、人々の自然体験をサポートする重要な橋渡し役を担っているのです。

自然再生の推進

自然保護官は、過去に傷ついた自然を元の姿に戻す取り組みにも力を入れています。森や湿地、サンゴ礁など、さまざまな環境の再生を目指しています。この仕事では、地域の人々やNPO団体と協力し合います。みんなで知恵を出し合い、力を合わせることで、失われかけた自然を少しずつ取り戻していきます。

国立公園の清掃活動

自然保護官は、国立公園の美しさを保つ活動も行っています。特に注目すべきは、毎年8月の第一日曜日に実施される「全国一斉クリーンデー」です。この日、公園を訪れる人々や地域の方々と協力して、大規模な清掃活動を行います。ゴミを拾い、自然を大切にする心を育てる、この活動は環境保護の大切さを実感できる機会となっています。

自然を身近に感じる機会づくり

自然保護官は、国立公園の魅力を多くの人に伝える取り組みも行っています。公園内の案内所などを中心に、自然観察会や手作り体験といった楽しいイベントを企画します。これらの活動を通じて、参加者が自然の大切さを学ぶ機会を提供しています。

自然保護官の年収

環境省

厚生労働省によると、令和5年度の自然保護官の平均年収は、350.2万円です。国税庁の令和4年分民間給与実態統計調査によると、日本の平均年収は458万円なので、自然保護官の年収は、平均よりも低いと言えます。

ただし、平均年収自然保護官は国家公務員として働くため、安定した収入を得ることができ、経験を積むにつれて、給与も段階的に上昇します。このため、長く勤めるほど、経済的な面でも着実なキャリアアップが期待できると言えるでしょう。

自然保護官のやりがい

自然保護官の仕事には、多くのやりがいがあります。まず、美しい自然を守り、次世代に引き継ぐ重要な役割を担っていることです。日々の努力が生態系の維持につながる喜びは格別です。また、自然観察会や教育プログラムを通じて、人々の自然への理解や愛着を深める手助けができることも大きな喜びです。

さらに、専門知識や技術を活かして環境保護に貢献できることも魅力です。そして何より、自然の中で働き、その美しさや力を肌で感じられることが、この仕事の最大の魅力と言えるでしょう。

地域の一員として、国立公園の未来を地元の方々と一緒に考え、作り上げていく。そんな貴重な経験ができるのも、自然保護官ならではのやりがいです。

自然保護官に向いている人

自然保護官に向いている人の特長は、以下の3つです。

  • 自然への深い愛着と知識
  • 体力と屋外活動への適性
  • 環境保全への強い使命感

順番に解説します。

自然への深い愛着と知識

自然保護官に向いている人は、何より自然が大好きな人です。校庭の木々や花の変化に気づいたりする人ですね。理科の授業で生物や地学が得意な人も、きっと適性があるでしょう。スマホで見る自然の写真や動画に興味があったり、環境問題のニュースが気になったりする人も向いているかもしれません。

体力と屋外活動への適性

自然保護官には、体を動かすことが好きな人が向いています。業務の大半はデスクワークですが、ときには現場仕事もあるためです。国立公園内の仕事では、長時間歩いたり、時には急な坂道を登ったりすることもあるので、ある程度の体力が必要です。
体育の授業で長距離走が苦にならない人や、遠足で疲れにくい人は適性があるかもしれません。また、雨や暑さ、寒さなど、さまざまな天候の中で活動できることも大切です。

屋外での活動を楽しめる人、自然の中にいると元気が出る人なら、きっとこの仕事に向いているでしょう。体力は徐々に付けていけるので、今から少しずつ屋外活動に慣れていくのもいいですね。

環境保全への強い使命感

自然保護官には、環境を守ることに強い思いを持つ人が向いています。地球温暖化や生物多様性の減少など、環境問題に関心がある人は適性があるでしょう。

学校でのゴミの分別や節電に熱心に取り組む人や、環境に関するニュースや授業に興味を持つ人は、この仕事に向いているかもしれません。また、地域の清掃活動に参加したり、エコバッグを使ったりするなど、日常生活で環境のことを考えて行動する人も、自然保護官の素質があると言えます。

自然を守り、次の世代に美しい環境を残したいという思いが強い人なら、きっとこの仕事にやりがいを感じるはずです。今からでも、身近なところから環境保護に取り組んでみるのもいいですね。

自然保護官になるには

日光国立公園

自然保護官になるルートは、以下のとおりです。

  1. 国家公務員試験の総合職か一般職(自然系)に合格する
  2. 官庁訪問で面接に合格し内定を得る
  3. 自然環境事務所や自然保護官事務所などに勤務

順番に解説します。

1. 国家公務員試験に合格する

自然保護官になるためには、まず毎年人事院が実施する国家公務員総合職試験(森林・自然環境、化学・生物・薬学)又は一般職試験(林学、農学、建築、土木、農業農村工学)に合格することが第一歩です。

試験は、大卒・院卒程度の知識が必要とされます。倍率は非常に高く、総合職は20倍、一般職は8倍程度となっています。さらに、採用人数も限られており、毎年数人から多くても数十人程度しか採用されません。このような厳しい競争を勝ち抜くには、十分な準備と粘り強さが求められます。

自然保護官になるのは狭き門ですが、ここで重要なのは、一度の挑戦で諦める必要がないということです。実は、試験制度には受験者に有利な仕組みがあります。人事院試験の合格者は、3年間有効な採用候補者名簿に登録されるのです。
たとえば、今高校生の皆さんが大学に進学し、最短で自然保護官になりたいと考えているとしましょう。大学を4年で卒業して就職する場合、3回のチャンスがあります。

  • 大学3年生の夏に受ける試験
  • 大学4年生の夏に受ける試験
  • 大学卒業後の夏に受ける試験

これらのどれか1つに合格すれば、大学卒業後すぐに自然保護官になれる可能性があります。つまり、1回目で合格できなくても、あきらめる必要はありません。2回目、3回目とチャンスがあります。

参考:自然系FAQ  採用・キャリア形成支援情報 | 環境省

採用実績 採用・キャリア形成支援情報 | 環境省

2. 官庁訪問で面接に合格し内定を得る

試験合格後は、官庁訪問といって、東京霞が関にある環境省本省を訪れ、面接を受けることになります。この面接で自分の熱意や適性をアピールし、最終的に環境省からの内定を獲得できれば、自然保護官になれます。
採用される際は、「総合職自然系」または「一般職自然系」のいずれかの職種で環境省に入省することになります。

3. 地方環境事務所などに配属

自然保護官として採用されたあとの配属先について、総合職と一般職に分けて解説します。なお紹介するのはモデルケースなので、実際の勤務地とは異なる場合があります。

【総合職】
総合職の自然保護官は、キャリアの始まりを環境省本省で過ごします。2年目からは、日本各地の地方環境事務所や自然保護官事務所などで実地経験を積みます。およそ5年経つと本省に戻る機会があり、さらに他の省庁、民間企業、地方自治体、大学などで働く可能性も出てきます。このように、様々な場所や組織で幅広い経験を積むことができるのが、総合職の特徴です。

【一般職】
一般職の自然保護官は、最初から地方環境事務所で実践的な経験を積み始めます。2~3年目からは自然保護官事務所など、より現場に近い場所で働くことになります。その後、環境省本省での勤務や地方自治体への出向など、様々な場所で経験を積む機会があります。このように、現場重視のキャリアパスを歩むのが一般職の特徴です。

自然保護官は、総合職・一般職ともに2~3年ごとに部署を移動し、幅広い経験を積みます。勤務地は全国に及び、本省の他部局で勤務する場合もあります。さらに、国際的な舞台で活躍する機会もあり、海外の機関への派遣や留学の制度も整っています。

参考:自然系FAQ  採用・キャリア形成支援情報 | 環境省

自然保護官を目指せる大学の学部

自然保護官を目指している学生が国立公園を歩く様子

自然保護官を目指す人におすすめの学部の一例は、以下のとおりです。

  • 農学部
  • 理学部
  • 工学部
  • 生命科学部
  • 環境科学部
  • 薬学部

理学部や工学部には、さまざまな学科があるので、これらの学部・学科では、試験区分に関連する専門知識を深く学べます。

ただし、理学部や工学部を選ぶ場合、自然保護官の試験区分に関連する学科を選びましょう。理学部なら生物学科や化学科、工学部なら環境工学科や土木工学科が適しています。物理学科や情報工学科など、試験区分と関連が薄い学科は避けるようにしてください。学科選びの際は、必ず内容を確認し、自然保護官の業務に関連する専門分野を選択することが重要です。

また、どの学部を選んでも、試験科目に合わせた自主的な学習が必要です。そのため、大学での学びと並行して、公務員試験に特化したスクールに通う人もいるようです。

自然保護官を目指せる大学の一例は、以下のとおりです。

自然保護官になりたい人はJOB-BIKIで検索!

自然保護官は、国立公園の自然を守り、人々と自然をつなぐ重要な役割を担う、やりがいのある素晴らしい職業です。しかし、厳しい試験と高い倍率を乗り越える必要があります。そのため、大学で関連分野の専門知識をしっかり身につけ、同時に公務員試験対策の勉強も進めることが大切です。

自然保護官は環境省に所属する公務員です。環境省で働く人々の出身大学が気になる方は、「JOB-BIKI(ジョブビキ)」で検索してみてください。就職先検索で「環境省」と入れると、環境省就職者の出身大学が分かるため、進路選びの参考になるはずです。

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