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再生医療とは?実例やメリット・デメリット、研究ができる大学の学部も紹介

2024.10.25

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「再生医療って具体的にどんな病気を治せるの? 」「再生医療を学ぶには、どの大学や学部を選べばいい?」と疑問に思っていませんか?
再生医療は、病気やケガで失われた体の機能を回復させる新しい治療法です。自分の細胞を使って、傷ついた組織や臓器を修復したり、新しく作り直したりします。

再生医療は、主に大学の医学部や歯学部、生命科学部などで学べます。また、農学部や理工学部の生命工学科などでも扱われる場合があるようです。本記事では、再生医療を分かりやすく解説。実例や大学での研究事例についても紹介します。

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再生医療とは?

再生医療は、人体の自然な再生能力を最大限に引き出し、病気やケガで損傷した組織や臓器を修復・再生する革新的な医療技術です。再生医療は、従来の治療法では対応が難しかった以下のような難病や外傷の新たな治療法として注目されています。

  • 脳梗塞
  • 心筋梗塞
  • 認知症
  • パーキンソン病
  • リウマチ
  • 糖尿病
  • 重度の火傷
  • 網膜疾患

また、再生医療は美容医療の分野でも注目を集めており、皮膚の若返りや毛髪再生など、エイジングケアへの応用が期待されています。

再生医療では、どのように組織や臓器を再生しているのでしょうか。次の章で解説します。

再生医療に使われる細胞

細胞のCG

再生医療の基盤となるのは、特殊な能力を持つ以下の細胞です。

  • 体性幹細胞
  • IPS細胞
  • ES細胞

これらの細胞は、損傷した組織や臓器を修復・再生する力を持っています。それぞれ解説します。

体性幹細胞

私たちの体内に元々存在する特殊な細胞です。特定の組織や臓器で、その周囲の細胞を生み出す能力を持っています。たとえば、骨髄の幹細胞※は、赤血球や白血球などの血液細胞を作り出せます。安全性が高く、すでに医療で使用されていますが、多くの種類の細胞に分化できるiPS細胞やES細胞と異なり、分化できる細胞の種類が限られているのが特徴です。

※幹細胞…体内で新しい細胞を生み出す能力を持つ特殊な細胞

iPS細胞

通常の体細胞※に特定の遺伝子を導入して作られる幹細胞です。さまざまな種類の細胞に分化できます。患者自身の細胞から作製できるため、拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。次に紹介するES細胞と比べ倫理的な問題も比較的少ないですが、作製には多くの時間と手間コストがかかります。

※体細胞…生物の体を構成する主要な細胞群。(例:皮膚細胞、筋肉細胞、神経細胞など)

iPS細胞については、以下の記事で詳しく解説しています。
iPS細胞とは?実用化で期待できることや研究ができる大学を紹介 (gyakubiki.net)

ES細胞

受精卵の初期段階(胚盤胞)から採取される幹細胞で、あらゆる種類の細胞に分化できる多能性を持っています。研究の歴史が長く、分化能力※が高いのが特徴です。しかし、倫理的な問題や拒絶反応のリスクがあるため、使用には慎重な議論が必要とされています。
※分化能力…さまざまな種類の細胞に変化する能力

とくに、ES細胞を取り巻く倫理的問題は重要です。ES細胞を作るには、受精直後の卵(受精卵)を使います。そのため、これを研究に使うことは、生まれるかもしれない命を奪うことになるのではないか、という議論があります。

再生医療の実例

再生医療の手術の様子

再生医療の実用化が進む中、すでに臨床応用され、患者さんの生活を大きく改善した事例がいくつか存在します。ここでは、再生医療の可能性を示す代表的な2つの成功例を紹介します。

  • 熱傷患者への皮膚移植
  • 軟骨欠損患者への培養軟骨の移植

それぞれ解説します。

熱傷患者への皮膚移植

2009年、全身の44%にやけどを負った患者さんに、再生医療の技術を使った画期的な治療が行われました。

従来の治療では、患者さんの体の健康な部分から皮膚を取って移植したり、人工皮膚を使ったりしていました。しかし、広範囲のやけどだと皮膚が足りなかったり、何度も手術が必要だったりと大変だったようです。

そこで使われたのが再生医療です。患者さん自身の皮膚細胞を培養して「培養表皮シート」を作り、これを移植しました。この方法なら、広い範囲のやけどでも一度の手術で治療できます。患者さんはその後順調に回復し、普通の生活に戻れました。

参考:東京医科大学病院

軟骨欠損患者への培養軟骨の移植

バスケの試合中にひざの軟骨を傷めた患者さんの話です。従来なら、傷んだ軟骨を削って滑らかにする方法や、健康な部分から軟骨を取って移植する方法が一般的でした。しかし、これらの方法では完全な回復が難しく、スポーツへの復帰も制限されることが多かったようです。

そこで使われたのが再生医療です。患者さんの健康な軟骨を少量取り出し、それを培養して増やしました。4週間後、増やした軟骨を傷んだ部分に移植したのです。
1年間のリハビリの結果、移植した軟骨は周りの健康な軟骨と同じくらいの硬さになりました。患者さんは仕事に復帰し、さらにバスケも再開できるまでに回復。従来の方法よりも自然な修復ができ、活動の制限も少なくなったようです。

参考:損傷事例と手術事例|自家培養軟骨移植術|再生医療ナビ

再生医療の未来

ここでは、まだ実現していないものの、臨床実験が進み安全性の確認が進んでいるiPS細胞を使った治療について解説します。

再生医療が現実のものになりそうな分野、それが目の治療です。目の奥にある網膜という部分が傷むと、見えにくくなったり失明したりすることがあります。
そこで、2014年に画期的な手術が行われました。iPS細胞から作った網膜の細胞を患者さんに移植したのです。なんと、5年たっても問題なく、効果も持続していました。

さらに2020年から2021年には、別の目の病気の患者さん2人にも同じような手術をしました。1年たっても移植した細胞は定着しており、拒絶反応もなく、目の機能も少し良くなりました。これらの結果から、iPS細胞を使った治療が安全で効果的だということが分かってきたのです。

参考:iPS細胞と未来の再生医療 – 株式会社リプロセル

再生医療のメリット・デメリット

再生医療の主なメリットは、損傷した組織や臓器を新しく作り直せるため、病気の根本から治せる可能性があることです。また、自分の細胞を使うので、体が拒否反応を起こしにくく、副作用も少ないと言われています。さらに、大きな手術なしで治療できることもあり、体への負担も少ないです。

再生医療にはデメリットもあります。まず、治療にかかる費用がとても高額です。新しい技術なので、保険が効かないことが多く、自己負担額が大きくなります。さらに、効果は人によって違うので、100%良くなるとは限りません。

再生医療には課題もありますが、これらを解決するのは、これから医療を学ぶみなさんかもしれません。治療費を下げる方法、効果を高める技術、より多くの人が受けられる仕組みづくりなど、やるべきことはたくさんあります。未来の医療を変える大きな可能性を持つ再生医療。その発展に、あなたも貢献できるかもしれませんよ。

再生医療の研究がしたい人におすすめの学部

再生医療の研究ができる主な学部は以下です。

  • 医学部
  • 歯学部
  • 薬学部
  • 生命科学部
  • 理工学部
  • 農学部

医師または歯科医師として再生医療に携わりたい人は、それぞれ医学部または歯学部に進み、免許取得後に大学院で専門研究を行うのが一般的です。医師として臨床に関わりたい人は医学部や歯学部に進み、医師免許取得後に大学院で専門研究を行うのが一般的です。純粋に研究に集中したい場合は、生命科学部や理工学部や農学部の生命科学学科などから医学系大学院へ進む方法があります。
また、再生医療の分野は広いので、自分の興味ある領域を見つけ、それに適した大学や研究室を探すことが大切です。

【再生医療の研究ができる大学と学部の一例】

再生医療の研究に強い大学3選と研究事例

医学部の学生

大学では、再生医療についてどんな研究がなされているのでしょう?ここでは以下の大学における再生医療の研究を紹介します。

  • 横浜国立大学
  • 同志社大学
  • 日本大学

それぞれ解説します。

横浜国立大学

横浜国立大学の「3次元培養による毛髪再生医療の基盤技術の確立」を紹介します。
この研究では、薄毛や抜け毛の治療に役立つ毛髪再生医療の実現を目指して、3つの新しい方法に取り組みました。

1つ目は、毛髪の元となる細胞を3次元培養という方法で増やす技術3D環境で増やす技術。この方法では、細胞を従来の平らな皿の中ではなく、高さのある構造体の中で育てます。2つ目は、電気刺激を使って毛を作る細胞を増やす方法。3つ目は、3Dプリンターのような機械を使って、人工的に毛髪の基となるものを作る技術です。

これらの研究により、将来的に自分の細胞から新しい髪の毛を作り出せる可能性が高まりました。薄毛に悩む多くの人々に希望をもたらす画期的な成果といえるでしょう。

同志社大学

同志社大学の「羊膜の特性を模倣したより安全で機能的な再生医療材料の開発」を紹介します。同志社大学の研究チームが、赤ちゃんを守る羊膜の驚くべき能力を医療に活用する画期的な方法を発見しました。手術後に起こる内臓同士のくっつきや傷の治りの悪さは、患者さんの回復を遅らせる大きな問題でした。そこで研究チームは、羊膜から取った特殊な細胞の培養液をゼラチンに染み込ませ、新しい医療材料を開発。ネズミを使った実験では、この新材料が内臓のくっつきを防ぎ、傷の治りを促進することが確認されました。

この革新的な技術が実用化されれば、手術後の回復がより速く、安全になる可能性があります。痛みや合併症のリスクが減り、入院期間も短くなるかもしれません。

日本大学

日本大学の「臨床グレードの犬のiPS細胞を用いた運動器再生医療の確立」を紹介します。
犬の運動器(関節や靱帯など)の病気を治すため、京都大学の山中教授が発見したiPS細胞技術を犬に応用する研究が行われました。まず、犬の臍の緒からiPS細胞を効率よく作る方法を見つけました。
そのiPS細胞から、体のいろいろな組織に変化できる間葉系幹細胞を作ることにも成功。この細胞を犬の関節に注射しても安全なことが分かりました。さらに、これらの細胞を特殊な方法で培養すると、軟骨や靱帯のような組織ができることも分かりました。将来、この技術で犬の関節炎や靱帯断裂などの治療が可能になるかもしれません。

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再生医療は、難病や重度の怪我に対する革新的な治療法として期待されています。実例として、熱傷や軟骨損傷の治療があり、大きな成果を上げています。従来の方法では難しかった治療が可能になる一方、高コストや効果の個人差が課題です。

再生医療は医学部や生命科学部で学べます。
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