スタビキ制作スタッフ推薦 大学の面白い研究8選
2024.10.28
高校生のみなさんの中には、大学で学びたいことはイメージできていても、何を研究するかまでは思い描いていない人もいるでしょう。しかし、そもそも大学の研究とはどういったものでしょうか。
私たちは、やりたい研究ができない大学に進学してしまわないようにスタビキというサービスを公開しました。
しかしスタビキで検索するワードも思いつかない。そんなみなさんに興味を持ってもらえないかと、個人的に面白いと思った研究をご紹介します。
一つでも興味があったら、ぜひスタビキで検索してみてくださいね。
目次
日本古代菓子の実態解明と再現活用に関する研究―東アジアの食膳研究その1-
日本にお菓子というものが、いつからあったと思いますか?
そして古代のお菓子はどんな味だったと思いますか?
そういった日本の古代の菓子について、そしてそれを再現してどんな味だったのかを確かめるという、奈良女子大学の前川佳代先生らによる研究です。
日本での菓子の登場なんて江戸時代くらいだろうかと予想しましたが、なんと古墳時代には加工菓子状の食物形土製品が出土しているそうです。
奈良時代初めには、すでに和名がある大陸由来の加工菓子があったこと。平安時代の菓子のほとんどは奈良時代にもあったが、その材料や姿かたちは変化していることなどを研究によって明らかにしています。
一番面白いところは、その菓子を再現して実際に食べた点でしょう。当時は砂糖がなく、甘味料として甘葛煎(あまづらせん)というものが使われていました。この研究では再現された甘葛煎を使い平安時代のスイーツである薫物(たきもの)を制作したのです。
当時の甘味料の再現は、当時の食生活について知るということはもちろん、今後の日本の料理の発展に繋がる可能性もありますね。
参考:「後味さっぱり」「上品」 平泉の香りワークショップ 古代の甘味料, Iwanichi Online
,https://www.iwanichi.co.jp/2019/10/20/381201/
他にも菓子について研究している大学はありますよ。
人文学資料マイクロコンテンツ化の実践研究 -江戸の都市空間再構築を通して-
この研究は人文学資料のマイクロコンテンツ化についてのものです。
それだけではあまりピンとこないかもしれませんが、研究した結果出来上がったWebサイトのedomiを見てみてください。江戸時代にタイムトラベルすることができます。
edomiでは、マップから浅草寺のような観光名所を選ぶと、江戸時代の文献にアクセスすることができます。江戸のお店の買い物ガイドブックや、江戸時代の料理のレシピなども。
Webで簡単に江戸時代の資料を見ることが出来ますよ。
「ショッピング」で見られるものをいくつか紹介します。ここでは江戸独買物案内という書の中身が閲覧できますよ。
「御琴三味線所」は現在の楽器屋さんで、文房具店は「墨筆硯問屋」、「御鞠御沓師(おまりおくつし)」がスポーツ用品店だそうです。こういった文献にはストーリーがなくても、江戸の生活が想像できて楽しいですね。
この研究は群馬県立女子大学の鈴木親彦先生らによるもので、情報処理学会「山下記念研究賞」を受賞しました。
このマイクロコンテンツ化の手法を他の分野にも応用しています。GM法と名付けた分析方法によって、美術史学分野で「遊行上人縁起絵巻」に対する様式研究の成果も得ることに成功しています。
参考:edomi
他にも江戸について研究している大学はありますよ。
新動力技術『縦渦リニアドライブ』による円柱翼風車の実用化に向けた基本特性の解明
新動力技術『縦渦リニアドライブ』ですよ?
見ただけでワクワクが止まらない、格好の良い研究名ですね。これは風車の翼を円柱の形で実装するための研究です。
そもそも円柱の形で風車として回るのかというところからですが、通常の理論では回りません。縦渦という渦を駆動力として利用するまったく新しい風車・水車の理論が『縦渦リニアドライブ』です。
円柱と平板を十字交差配置することで、縦渦が形成される。この縦渦励振現象というのを発見したのが、長岡技術科学大学の高橋勉先生たちです。
風力発電で現在よく使われている水平型ブレード風車は、薄くて複雑な形状をしており製造コストが非常に高く、国産はあまり無いそうです。
それに比べ、縦渦型風車なら形は単純、素材は安いものでもOK。安価に日本国内で風力発電の風車を量産できるかもしれないということです。更に、騒音が少なかったり、突風などでの破損の可能性も低いとか。
近い将来、日本中で縦渦型風車が回っているかもしれませんね。
参考:革新的風車動力理論「縦渦リニアドライブ」の高性能化を図る新技術
他にも風車について研究している大学はありますよ。
国産可食・燃料バイオマスによる地球温暖化対策に関する新たな知の創出
これはサツマイモをいっぱい作れるようになったという研究です!
ちょっとこれだけだと、研究名と全然違うじゃないかと思うかもしれませんね。
これは近畿大学の鈴木高広先生らの研究なのですが、そもそも近畿大学ではサツマイモをエネルギー源とした燃料電池発電の研究を行っています。石油・石炭・天然ガスといった化石燃料をサツマイモで代替し、温室効果ガスを削減しようということなのです。サツマイモは食べるんじゃなくて、発電するためなんですね。
微生物によって高効率にメタンガスに変換できるサツマイモは、バイオ燃料として注目されています。しかし、サツマイモは大量生産するには肥料が必要となり、安価かつ多量の肥料が必要……これが課題でした。
本研究では下水処理水を液体肥料として使うことで、従来の肥料を使わずに大量のサツマイモを生産することに成功。面積当たりの生産は約10倍となり、バイオマス資源において世界最高の数値を記録したとのことです。研究名の国産可食・燃料バイオマスというのがサツマイモで、大量生産して発電に回すことで化石燃料の使用が減る。結果、地球温暖化対策になるというわけなんですね。
マンションの屋上でサツマイモを育て、そのサツマイモでマンション中の発電と給湯を行う……そんな未来が訪れるかもしれません。
参考:下水処理水を液体肥料としてサツマイモの大量生産に成功 サツマイモによるバイオ燃料で化石燃料の代替をめざす
他にもバイオマスについて研究している大学はありますよ。
無謀な賭けの心理的メカニズムの解明
この研究は、人はなぜ無謀な賭けをしてしまうのかという研究です。
無謀な賭けとは、負ける可能性が高いギャンブルに多くの金額を賭けてしまうことです。あまりギャンブルをしたことがない人には意味がわからない気持ちかもしれませんね。
ギャンブルをやりたい人は、当然勝ちたいと思っているはずです。なのに、なぜか無謀な賭けをしてしまうのです。人間の心理とは難しいものですね。
日本ではIR推進法が可決され、カジノを作ろうとしています。しかし、カジノに反対する人も多くいます。反対意見のひとつがギャンブル依存症の問題です。
この京都大学の田岡大樹先生らの研究は、ギャンブル依存症の予防に繋がる可能性のある研究です。
さまざまな実験を行うことにより、その条件を調べていきました。ひとつわかったことは、無謀な賭けをする人は、その直前の賭けに勝っていた人が多く、負けていた人は無謀な賭けをしない傾向にある……ということです。面白いですね。
この研究は、特に若者が分不相応な金額を賭けてしまう「問題ギャンブル (problem gambling) 」の解決に役立つかもしれません。
他にもギャンブル依存症について研究している大学はありますよ。
笑芸作品の構造分析と科学的創造性
大学の研究とは本当にさまざまなものがあります。研究のなかで「アメトーーク」のDVD全36巻を見るというものもあるんです。
新潟大学の井山弘幸先生らによる研究は、落語や漫才、コントといった日本の笑芸が、どのようにして「笑い」を生み出しているのかというものです。
研究の結果、笑いとは12個の技法によって行われていることを明らかにしています。たとえばひとつは「針小棒大」で、落語の「うそつき弥次郎」に出てくる「北海道はあまりに寒いので、挨拶の『おはよう』の声まで凍ってしまう」のようなこと。
ひとつは「論理的逸脱」とし、落語の「粗忽長屋」に登場する「とにかく、ここへ当人を連れてきて死骸(しがい)を引き取らせます」というセリフのような言明の中で矛盾する命題が提示されるものとしています。自分の死体を自分で引き取るなんてことは不可能ですからね。
アンジャッシュのすれ違いコントは「キプロクオ」であるなど、落語だけではなく最近のお笑いも12の技法に当てはまることを確認していきます。東京03やシソンヌのライブDVDも確認します。
漫才やコントのみならずバラエティ番組の即興の笑いも研究するために「アメトーーク」のDVD全36巻もすべて12の技法で整理し直していきます。
そして、その12の技法は科学的発見の創造性と同型であるということを報告しました。笑いを生み出す知的想像の過程と、科学的発見を導くイノベーションの過程は極めて似ているというのです。
人は発展していくために必要なことだから、面白いと感じるのかもしれませんね。
他にも笑いについて研究している大学はありますよ。
災害と再生における「神社力」
「神社力」という言葉がもうワクワクしてきませんか?
これはこの研究を進めている、九州大学の藤田直子先生が作った造語になります。
自然災害と神社には密接な関係があるというのです。さらに、神社に対する地域住民の意識も自然災害に影響する。そういった研究です。
これは決して神秘の話ではなく、科学的な究明です。
3年間の研究において、災害における神社力と、再生における神社力が存在することを明らかにしています。
そして、今後の災害発生時に対して神社が防災拠点としてどのような貢献ができるのかを発表しました。
神社というものを研究することで、歴史や風土がわかるのは想像できますが、それが防災や自然災害からの復興に役立つというのが、この研究の素晴らしいポイントです。
他にもスタビキで神社について研究している大学はありますよ。
数学の文化的な美の感得を促進する教授方法に関する研究
みなさんは数学が好きでしょうか?
筆者は数学が苦手なのですが、数学に苦手意識を持つ人は多いことでしょう。
数学は科学の発展にとても重要な学問です。数学の得意な人材は不足しているため、算数や数学の学習意欲を高める必要があるのです。
そのためゲームやプログラミング教材など、算数や数学を好きになってもらうための方法が研究されているのですが、宮城教育大学の花園隼人先生は数学の「文化的な美」を感得してもらうことをテーマにしています。
古来より数学は美しいと数学者は発言しています。数学者が書いた数学の魅力に関する書籍にはビューティ、エレガンス、ハーモニーといった表現が使われています。
しかしながら、数学が苦手、嫌いという人は数学が美しいとは思っていません。この数学の美しさをわかってもらえれば、数学を勉強する若者が増えるのではないかということです。
具体的にどういった問題を提出して解けば、数学の「文化的な美」を学習者が感得するのか。さまざまな歴史を紐解き、研究や考察を重ね、実際に大学生や中学生に問題を提出し、どう感じたのかという実践的な研究を行いました。
そして数学的証明についての中学生を対象とした研究では、形式的証明と非形式的な証明の比較が、暗黙化された数学的証明の「文化的な美」の感得を促進しうることを明らかにしました。
こういった研究が進むことで、未来の日本人の算数や数学のレベルが向上することでしょう。
他にもスタビキで数学教育について研究している大学はありますよ。
最後に
あくまでも個人的に面白いと思ったものをご紹介いたしましたが、いかがだったでしょうか。
紹介したのは、数多ある研究のほんの一部です。
しかし大学で行われている研究が、さまざまな視点、さまざまな目的を持つ、本当に多様なものだとわかっていただけたのではないでしょうか。
スタビキを使えば、簡単に大学が行っている研究の概要を知ることが出来ます。
ぜひ一度、自分の興味のあるワードでぜひ検索してみてください。