官公庁で働くには?官公庁の仕事内容や就職に役立つ大学の選び方を紹介
2024.11.13
「官公庁の仕事にはどんなものがある?」
「官公庁で働くには何を勉強したらいい?」
高校生の皆さんの中には、このような疑問を抱いている人もいるでしょう。
官公庁は国と地方自治体の役所のことで、中央省庁や国会、裁判所や警察などの総称です。国全体や日常生活に即した行政に携わる仕事です。
この記事では、官公庁の種類や仕事内容など、官公庁で働くために役立つ情報を紹介しています。官公庁の仕事におすすめの大学の選び方についても触れているので、参考にしてみてください。
官公庁とは?
官公庁は「官庁(国の機関)」と「公庁(地方自治体)」を合わせた総称です。
業界としては「官公庁・公社・団体」に属しており、内閣府、国会、最高裁判所などが官公庁に含まれます。
それぞれの用語の意味から官公庁の仕組みについて知りましょう。
官庁とは
官庁は国家の事務について意思決定、権限を執行する国家にとって欠かせない国の機関で、官庁に所属する職員は「国家公務員」と呼ばれます。代表的な官庁は下記の5つです。
内閣府
日本において行政権を担当する機関です。行政権のリーダーである内閣総理大臣と、内閣総理大臣によって任命される国務大臣によって構成されます。法律の執行権、条約の締結権、予算を作成する権利、最高裁判所長官の指名権などの権限を持ちます。
国会
日本における唯一の立法機関で、国権の最高機関です。衆議院と参議院によって構成され、立法権、条約の承認権、内閣総理大臣の指名権などの権限を持ちます。
裁判所
司法権を担う機関で、裁判権や違憲審査権などの権限を持ちます。裁判権は裁判が起きたとき、証人の呼び出しや拘束など裁判に関するあらゆる権限を行使できます。違憲審査権は法律や条例が憲法に違反していないか審査する権利で、裁判所にのみ与えられている権限です。
人事院
国家公務員の人事管理をする行政機関です。国家公務員の任免や懲戒に関すること、採用試験の公平性の確保などをおこなう、中立な第三者機関です。
会計監査院
国家に関する様々な機関の会計処理が適切に行われているかを監視する専門機関です。立法(国会)・司法(裁判所)・行政(内閣)の三権から独立した機関で、国の収支に対する会計検査や、決算の確認などの権限を持っています。
中央官庁と地方官庁
官庁は権限の範囲によって「中央官庁」と「地方官庁」に分けられることがあります。
中央官庁は「中央行政官庁」とも呼ばれ、行政をとりおこなう官庁の中でも全国的な権限を持っている組織です。例えば、内閣、内閣総理大臣・各省大臣、各庁の長官、各行政委員会などが中央官庁に該当します。
2024年9月時点では1府13省庁が中央官庁とされており、各省には「外局」と呼ばれる行政機関が設置されています。例えば警察庁がある国家公安委員会は内閣府の外局、税金に関わる国税庁は財務省の外局です。
中央官庁は国全体の行政をとり仕切るのが仕事のため、前述した国会・裁判所・人事院・会計監査院は中央官庁に含まれません。
地方官庁は特定の地域でのみ 行政をとり仕切る権限を持っており、 各地域の国税局や税務署、法制局などが地方官庁に該当します。地方官庁に入庁すると地方に勤務することになります。例えば、各地域の税務署長などが地方官庁です。
公庁とは
公庁に所属する職員は「地方公務員」と呼ばれます。
公庁は都道府県庁と市町村区役所といった地方公共団体の役所を指し、官庁に比べてより地域に密着して行政をおこないます。県庁や役所の職員のほか、警察官や消防士、小中学校の教員も公庁に含まれます。
地方官庁と似ていると思われるかもしれませんが、地方官庁は各地域で国の行政をおこなう国家公務員、公庁は各地域の行政をおこなう地方公務員、という違いがあります。
税務署も警察署も各地域に設置されていますが、税務署職員は国家公務員のため地方官庁、警察官は地方公務員のため公庁という扱いになります。
官公庁・公社・団体の違い
官公庁は業界としては「官公庁・公社・団体」業界に区分されることが多いです。 いずれも国民の生活の基盤を支えることと、公共の福祉に貢献することを目的として業務に取り組んでいるという共通点がありますが、公社・団体は、官公庁と異なり「法人」です。私的な業務をおこなう「私法人」と区別して公的な業務を手がける「公法人」に分類され、公益社団法人や公益財団法人、独立行政法人などがあります。
中でも独立行政法人は、ほとんどが中央官庁から独立した法人です。財務省所管の造幣局や内閣府所管の国立公文書館などが該当し、国立大学法人も広義の独立行政法人と見なされています。中央官庁の所管であっても官公庁とは異なるため、区別には注意しましょう。
官公庁の仕事内容
官公庁の仕事内容は多岐にわたるため、ここでは簡単にご紹介します。
官庁
中央官庁(内閣)
前述したとおり官庁のうち中央官庁に属するのは1府13省庁です。これら省庁に勤務するのが国家公務員一般職で、大臣、大使、自衛官などは特別職と呼ばれます。内閣総理大臣がリーダーを務める内閣府は中央官庁に含まれます。
中央官庁の種類と主な仕事内容を下記にまとめました。また、高校生の皆さんがよく耳にするような官僚と呼ばれる総合職以外の職種についてもまとめ、それぞれの職種について詳しく紹介する記事のリンクを記載しています。
【中央官庁の一覧】
名称 | 外局 | 仕事内容 | 官僚以外の職種 |
内閣府 | 宮内庁 公正取引委員会 国家公安委員会(警察庁) 個人情報保護委員会 カジノ管理委員会 金融庁 消費者庁 こども家庭庁 | 国政上の重要な課題に関する企画立案・総合調整をおこなう | 総理大臣 公認会計士(金融庁) 弁護士(金融庁) 管理栄養士(消費者庁) |
デジタル庁 | デジタル社会の形成を目指し、マイナンバーカードの制度や電子署名などの制度整備、サイバーセキュリティの強化などをおこなう | システムエンジニア AIエンジニア | |
復興庁 | 復興に関する国の施策の企画や調整、実施、地方公共団体への窓口や支援をおこなう | 市町村応援職員 | |
総務省 | 公害等調整委員会 消防庁 | 消防防災、選挙、郵政行政などといった基本的システムを所管し、行政運営の改善をおこなう | 一般職事務 総合職技術系(消防庁) |
法務省 | 出入国在留管理庁 公安審査委員会 公安調査庁 | 日常生活における基本的なルールを定めたり、司法の基本的な仕組みや罪人の処罰、罪人の社会復帰援助などをおこなう | 入国審査官 法務教官 検察庁 (外局ではなく特別機関) 検察官 検察事務官 |
外務省 | 在留邦人の生命や身体の安全を守り、国際協力や国際交流などの活動支援、外交政策を円滑に進めるサポートをおこなう | 外交官(外務公務員) | |
財務省 | 国税庁 | 税関業務の運営、外国為替の安定の確保、適正かつ公平な課税の実現、国家予算の編成などをおこなう | 財務専門官 国税専門官 |
文部科学省 | スポーツ庁 文化庁 | 教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の振興などを目的に、学校で学ぶ内容や学習方法などの改善をおこなう | 一般職事務 文化庁国立近現代建築資料館研究補佐員(文化庁) |
厚生労働省 | 中央労働管理委員会 | 社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進と、働く環境の整備、職業の安定・人材の育成を総合的・一体的に推進する | 麻薬取締官 食品衛生監視員 |
農林水産省 | 林野庁 水産庁 | 「食」を中心に、産業政策、地域振興、インフラ、文化、外交等の幅広い政策分野を総合的に担う | 獣医系技術職員 畜産系技術職員 船舶職員(航海士・機関士) |
経済産業省 | 資源エネルギー庁 特許庁 中小企業庁 | 産業・イノベーションの創出に関わる研究開発プロジェクトなどの企画・実行、貿易・投資の適切な環境管理などをおこなう | 一般職(事務系・技術系) |
国土交通省 | 観光庁 気象庁 運輸安全委員会 海上保安庁 | 住宅、ビル等の生活空間を支えるもの、鉄道やバスなど移動を支えるものなど、暮らしに欠かせないものの改善をおこなう | 海上保安官 航空管制官(航空局) 南極観測隊 |
環境省 | 原子力規制委員会 | 気候変動問題への取り組みや資源を無駄にしない仕組みをつくるなど、地球環境を守るための事業をおこなう | 自然保護官(レンジャー) |
防衛省 | 防衛装備庁 | 日本の平和と独立を守り国の安全を保つため、安全保障の確保や国際平和協力活動、災害派遣などをおこなう | 自衛官(自衛隊隊員) |
(政府広報の「官公庁サイト一覧」を参考に作成しています。)
国会
法律や税金の使いみちの決定、内閣総理大臣の指名、外国と結ぶ条約の承認といった議題について話し合い、決定します。
国会議員の仕事内容について詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
国会議員とは?気になる年収ややりがい、必要な資格やスキルについて解説
裁判所
個人間などの法律的な紛争の解決、犯罪をおこなった 疑いがある人が有罪か無罪かを判断したりすることが裁判所の仕事です。裁判官は訴訟を起こした原告と相手方の被告双方の主張や 提出された証拠をもとに、法律上の判断をおこないます。
裁判所に関連する仕事について詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
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家庭裁判所調査官になるには?求められる資質や能力・仕事内容を紹介
人事院
国民にとって安心・安全な行政サービスが提供されるよう、国家公務員の人事を適切に運営するのが仕事です。主に能力・実績に基づく人事管理や人材の確保・育成、給与制度や勤務環境の見直しなどをおこなっています。
会計監査院
毎年国の収入支出の決算を検査し、国民の税金が適切に使われたかをチェックしています。不正行為や不適切な会計経理の指摘だけでなく、税金を使った政策や事業が有効に機能しているか、国民の利益に繋がっているかという観点でも検査しています。
公庁
公庁には地方公共団体や各都道府県警察、学校などが含まれます。公庁に所属する地方公務員は国家公務員同様特別職と一般職に分かれ、知事や市町村長、議会の議員などは特別職、それ以外の地方公務員はすべて一般職です。
公庁(地方公務員)の仕事でbiki-noteに記事があるものをご紹介します。それぞれの仕事について詳しく知りたい人は読んでみてください。
官公庁の仕事に就くためにはどうすればいい?
官公庁の仕事は公務員に該当するため、公務員試験を必須とするところがほとんどです。特に国家公務員の総合職は「キャリア官僚」とも呼ばれ、政策の企画や立案にもかかわる可能性が高くなるでしょう。
国家公務員と地方公務員とでは試験の種類も異なります。
・国家公務員
- 総合職試験(官庁・省庁での幹部候補生)
- 一般職試験(官庁・省庁・出先機関での勤務)
・地方公務員 - 上級(都道府県庁、東京23区、政令指定都市の役場での幹部候補生)
- 中級(事務職などがメイン)
- 初級(警察官、消防士、学校事務など)
国家公務員試験に合格した後は、官庁訪問で業務説明や採用面接を受けた上で内定をもらうことができます。
公務員になる方法について詳しく知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください。
地方公務員になるには?仕事内容や向いている人・目指せる大学について解説
また、例えば裁判官であれば 司法試験の合格など公務員試験以外の方法を必要とする仕事もあるので、自分のなりたい仕事には何が必要なのか確認しましょう。
官公庁の仕事におすすめの学部や大学
人事院の発表をもとに、2024年度の国家公務員採用総合職試験合格者の出身大学10校を下記にまとめました。
・東京大学
・京都大学
・早稲田大学
・慶應義塾大学
・立命館大学
・東北大学
・大阪大学
・北海道大学
・千葉大学
参考:人事院「総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)出身大学別合格者数一覧」
特に国家公務員総合職試験を目指す場合、「政治・国際」「法律」「経済」「人間科学」といった試験区分があります。そのため「法学」「政治学」「経済学」を学べる学部・大学を選ぶのが大きなポイントです。
多くの大学は公務員試験の受験対策などサポートをおこなっているので、試験のサポートが手厚い大学を選ぶのも良いでしょう。
また、国家公務員でも地方公務員でも官公庁の仕事は幅広い分野があります。工学系の知識があれば国交省、生物学の知識があれば環境庁、と理工学分野の仕事に就くことができ、教育分野を学べば文部科学省や教員、外国語を学べば外務省の仕事に就くこともできます。自分が目指す職種に合わせて学部・大学を選ぶと良いでしょう。
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官公庁の仕事は国民の生活全般にかかわる仕事のため、様々な業種があります。公務員試験への 対策はもちろん、必要な分野が学べる学部・大学を選ぶようにしましょう。
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