2025年度 5校が開設され、注目を集める通信教育課程について解説
2024.11.26
目次
2024年10月 文部科学省 2025年度開設予定の大学等の答申を公表
文部科学省は2024年10月29日、2025年度(令和7年度)開設予定の大学等の設置に係る答申について公表しました。今回の発表で、通信教育課程のZEN大学(公益財団法人日本財団・株式会社ドワンゴ)の認可に関し「可」とする答申がなされました。
8月には東京経営大学(学校法人大原学園)の開設とあわせ、大学3校と短期大学1校で通信教育課程の学部・学科の新設が認可されていますので、2025年度は5校の通信制大学・短期大学が新たに設置されることになります。
2025年度に通信教育課程を開設する大学・短期大学
大学 | 学部 | 学科 | 定員 |
東京経営大学 | 経営学部 | 経営マネジメント学科 | 350 |
ZEN大学 | 知能情報社会学部 | 知能情報社会学科 | 3,500 |
名古屋産業大学 | 現代ビジネス学部 | 現代ビジネス学科 | 200 |
岡山理科大学 | 情報理工学部 | 情報理工学科 | 200 |
鎌倉女子大学短期大学部 | 初等教育学科 | 300 |
※定員は正規課程の人数
●文部科学省「令和7年度開設予定の大学等の設置に係る答申について(令和6年10月29日)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1420729_00018.htm
●文部科学省「令和7年度開設予定の大学等の設置に係る答申について(令和6年8月28日)」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/attach/1420729_00015.htm
通信教育課程の動向
2024年4月現在、通信教育課程を設置するのは51校(大学43校 、短期大学8校)です。2014年度以降の10年間で新たに開設された大学が東京通信大学(2017年)、日本医療大学(2023年)の2校でしたので、2025 年度の5校が特に多いことが分かります。
大学数が増えていること以外にも、通信教育課程をめぐる環境には近年さまざまな変化が起きています。
動向① 高等学校新卒の入学者の増加
通信教育課程の大学への入学者数は2020年(令和2年)までは緩やかに増加していますが、2021年(令和3年)に急増しています。特に高等学校新卒者が約1.5倍に増加していて全体の入学者を押し上げています。 急増の背景には外出自粛期間に行われていた学校教育の自宅学習があり、通学課程の大学でも遠隔講義が実施された結果、通信教育課程との学習環境の違いがなくなったこと、加えて通信教育課程のメリットのひとつでもある学費の安さも大きな要因となりました。
なお短期大学については、多くが幼稚園教諭等の資格取得を目的としており、入学者の推移はほぼ横ばいとなっています。参考までに2023年度の短期大学の正科生全体の入学者6,444名のうち「幼稚園教育」系学科の入学者は4,689名で7割以上を占めています。
通信教育課程 入学者数の推移
※正規の課程(正科生)の入学者数
※「3月高校卒」の人数には、各年3月の高校卒に中等教育学校(後期課程)卒業者を含む。
●文部科学省 学校基本調査 大学通信教育調査「関係学科別 高校卒業年別入学者数」を元に作成
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/1268046.htm
動向② 通信環境・ICT技術の向上
通信教育の学習方法には、①印刷教材等による授業、②放送授業、③面接授業、④メディアを利用した授業 がありますが、通信環境・ICT技術の向上により現在では主にインターネットを利用したオンライン式の遠隔授業の形態である④メディアを利用した授業が主流となっています。
メディアを利用した授業は主にインターネットを利用して行われます。またインターネットを利用することで学習指導や相談もオンラインで受けることが可能になり、通信教育課程にあったデメリットが解消されつつあります。
また最近ではバーチャルキャンパスという形で、仮想空間にコミュニケーションの場を提供する大学も出てきています。
名古屋産業大学の通信教育課程ではバーチャルキャンパスを設置し、学生支援や学生交流の場づくりを行うとともに、企業と連携し、メタバースを利用したコミュニケーション力や就業力を身に付ける機会を提供するとしています。
今後は通信教育でもキャンパスライフを体験することができるようになるかもしれません。
●名古屋産業大学 通信教育課程
動向③ 「大学通信教育設置基準」の緩和
「大学通信教育設置基準」は学習環境をめぐる環境の変化にあわせて改定が行われ、その中で大きく変わったことのひとつに卒業要件における面接授業の必要単位数があります。
もともとは30単位以上必要だった面接授業ですが、改定によりメディアを利用した授業で置き換えることが認められました。
従来はスクーリング(面接授業)として大学または大学が準備した会場に行って授業を受けることが必要でしたが、大学へ行かずとも全ての単位を修得し卒業することが可能となりました。これにより居住地や時間的な制約がなくなり通信教育課程の利便性がさらに向上しています。
動向④ さまざまな教育プログラムの充実
動向②でも述べた学生サポートの充実に加え、さまざまな教育プログラムの充実も近年の通信教育課程の特長のひとつと言えます。
ZEN大学では、ネットでの学習に加えてリアルで学ぶオリジナルの課外プログラムとして、自治体や企業との共同プログラムや海外大学への留学プログラムの提供を予定しています。
また東京通信大学では、海外の大学とのダブル・ディグリー制度(単位互換制度)をグローバルな教育環境を設けています。
通学課程と比較した場合、留学や企業との連携などは従来の通信教育課程の弱い部分でしたが、通信教育の持つ強みはそのままに、通学課程に近い教育プログラムを提供する大学も増えています。
●ZEN大学
●東京通信大学
通信教育課程の今後
「通信」教育の拡大の流れは大学の通信教育課程だけで見られることではなく、高等学校においても毎年新設校が設置され、生徒数も2024年度は264,974名※と過去最高となっています。
※文部科学省 令和6年度学校基本調査(速報)
大学・高等学校に共通しますが、通信環境・ICT技術の向上により、学生サポートや教育プログラムの充実や、バーチャルキャンパスの設置など、従来の通信教育課程にあったデメリットも解消されていくことが予想されます。
高校生の進路選択の一つとして、場所や時間に捉われない学習スタイルを持つ通信教育課程が今後、存在感を増していくことでしょう。
逆引き大学辞典では通信教育課程を設置している大学を調べることもできます。この記事を読んで興味を持った方はぜひ調べてみて下さい。
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