通訳になるには?翻訳者との違いや年収、目指せる大学の学部・学科を紹介
2023.01.12
高校生の皆さんの中には、世界で活躍する外国のスポーツ選手やアーティストを応援している人も多いでしょう。彼らが日本語を話せない場合、私たちの間には言葉の壁がある状態で、コミュニケーションをとることができません。それでも、イベントの舞台やインタビューなどの大事な場面で、海外の人がどんなことを話しているかを理解できるのは、外国語を日本語に訳して伝える通訳者がいるからです!この記事では、そんな通訳者の仕事内容や、通訳者になるための進路についてご紹介します。
目次
通訳の仕事の種類
通訳者は普段、どんな仕事をしているのでしょうか?まずは、通訳者の種類と仕事内容をお伝えします!
通訳者の主な種類は以下のとおりです。
- ビジネス通訳
- 会議通訳
- 放送通訳
- 通訳ガイド
- コミュニティ通訳
ビジネス通訳
ビジネス通訳は、企業の国際取引や交渉の場で通訳を行う仕事です。たとえば、日本企業が海外企業と商談する際、双方の言語を的確に通訳し、お互いの主張や要求を正しく伝えます。単に言葉を置き換えるだけでなく、文化の違いを踏まえたうえで、建設的な対話が行えるよう橋渡しを行います。
ビジネスシーンでは、高度な語学力に加え、商取引の知識や契約交渉のスキルが求められる専門的な職種です。
会議通訳
会議通訳は、企業や国際機関の会議で、複数の言語間でリアルタイムに通訳を行う仕事です。会議の進行に合わせて、話者の発言内容を即座にもう一方の言語に通訳していきます。
専用の通訳ブースから音声を送出したり、会議場内で発言者に同行しながら逐次通訳を行ったりします。高度な言語力とリスニング力に加え、集中力とスタミナが必要不可欠です。
また、会議の専門用語や関連知識を深く理解しておく必要があるため、ストレスの多い過酷な仕事ですが、世界を舞台に活躍できるところが醍醐味です。
ビジネス通訳が、主に企業間の商談や交渉の場で行われる逐次通訳が中心であるのに対し、会議通訳は国際会議などで行われる同時通訳が中心となります。
放送通訳
放送通訳とは、テレビやラジオなどのメディアで外国語の番組や映画を日本語に通訳する仕事です。外国映画の吹き替えや、海外の生中継番組のリアルタイム通訳などが代表的な業務となります。
通訳者は制作スタジオや放送局に入り、映像や音声に合わせてタイミングよく通訳を行います。単に言葉を置き換えるだけでなく、その国の文化的背景を理解し、的確に日本語に置き換える高度な語学力が求められます。
声質や発音、テンポなども大切で、リスナーが自然に理解できるよう心がける必要があります。通訳を通じて、海外の出来事や文化を日本に伝える重要な役割を担っています。
通訳ガイド
通訳ガイドは、外国人観光客に対して通訳と観光ガイドの双方の役割を果たす仕事です。
観光地を外国人観光客に案内しながら、日本の文化や歴史、見どころなどについて外国語で解説を行います。単に通訳するだけでなく、観光客に喜んでもらえるような興味深い説明や適切な対応が求められます。また、訪日外国人へのホスピタリティの心がけも大切な資質となります。
お客様に日本の良さを十分に伝え、楽しい思い出を作ってもらうのが通訳ガイドの役割です。通訳ガイドについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
通訳案内士になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介 (gyakubiki.net)
コミュニティ通訳
コミュニティ通訳は、地域に住む外国人住民が公的機関を利用する際に、言語の壁を取り除く役割を担う仕事です。
たとえば、病院での診療や市役所での手続き、学校での保護者面談など、日常生活で支援が必要な場面で通訳を務めます。単なる言葉の通訳にとどまらず、文化的背景の違いを踏まえたうえで、適切なコミュニケーションが図れるよう双方をサポートします。
高度な語学力はもちろん、医療や行政、教育など、さまざまな分野の知識と中立公平な立場を保つ態度が求められます。外国人住民の生活を支える重要な存在で、お互いの文化を汲み取りながらスムーズな対話を実現する役割を担っています。
通訳者の仕事方法
通訳する方法には、主に3つの種類があります。
- 同時通訳
- 逐次通訳
- ウィスパリング通訳
同時通訳
通訳者が話し手の声を聞きながら、ほぼ同時に訳していきます。ヘッドフォン(イヤフォン)を通じて話し手の音声を聞き、通訳者の声はマイクを使って聞き手に届けるのが一般的です。大人数が参加する会議など、速やかに会話を進める場面でよく用いられます。
逐次通訳
話し手が少しずつ区切りをつけながら話して、話し終えたタイミングごとに通訳者が訳していきます。話し手と通訳者が交互に発言するので、同時通訳の倍の時間がかかりますが、より正確でわかりやすく訳しやすい方法です。インタビューや意見交換会のほか、お客様との商談をはじめとした、幅広い場面で用いられます。
ウィスパリング通訳
ウィスパリングには「ささやき」という意味があります。通訳が必要な人の近くに通訳者がいて、話し手の言葉を訳して小さな声で聞き手に伝えます。同時通訳と同じように、話し手の声を聞きながらほぼ同時に訳しますが、機材を使わないことが主な違いです。少人数での会議など、少数の人へ向けて通訳する場面に適しています。
通訳者と翻訳者の違い
通訳者と翻訳者は、言語を通じたコミュニケーションを支援する点で共通していますが、その役割と求められる能力は大きく異なります。
通訳者は、話された言葉を直接的にリアルタイムに別の言語に置き換える仕事です。一方、翻訳者は書かれた文章を別の言語に変換する作業を行います。
つまり、通訳は瞬時の対応力と臨機応変さが求められる一方、翻訳は時間をかけた丁寧な文章構成力が重要となります。高度な言語運用能力と専門知識は両者に共通して求められますが、それぞれ異なる技術とスキルセットが必要な職種なのです。
翻訳者の仕事については以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて読んでみてください。
翻訳家(翻訳者)になるには?仕事内容や求められる知識と資質 (gyakubiki.net)
通訳者の仕事のやりがい
異なる言語を使う人たちは、互いの言葉がわからない状態では、コミュニケーションをとることができません。しかし、通訳が人と人との間に立ち、自分の語学力を活かせば、たくさんの人たちをつなぐことができます。たとえ使う言語が違っても、自分の通訳によって伝えたいことが伝わり、目の前にいる人々が互いに理解し合えるようになる喜びは、仕事のモチベーションになるはず!
通訳者の想定年収
英語の通訳者の年収は、全国平均で584.4万円となっています。求人賃金の全国平均は、月額で25.9万円です。通訳者として働いている人の内訳を見ると、自営業やフリーランス(=個人で契約して仕事をする人のこと)が多い傾向にあります。通訳者になりたい皆さんは、会社に就職する以外の多様な働き方についてもよく調べて、自分の将来をイメージしてみてくださいね。
【参考】通訳者 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)) (mhlw.go.jp)
通訳者の将来性
「AIが人間に代わって通訳をするようになったら、通訳者の仕事がなくなるのでは?」そう不安に思う高校生も多いかもしれません。
確かにAIは言語の直接的な翻訳は可能ですが、言葉の裏にある文化的背景や暗黙の意味合いを読み取ることはできません。AIが進化すればするほど、人間らしいコミュニケーション能力が求められ、通訳者の役割は重要になると考えられます。
今後は、AIと人間の役割分担が進み、通訳者には高度な判断力と対人スキルがより一層求められるでしょう。
また、リモート通訳の需要増加や、ビジネスなど専門分野での活躍の場の拡大が見込まれています。言語運用能力はもちろん、問題解決力、コミュニケーション力、幅広い知識が重要になってくるでしょう。
通訳者に求められる資質やスキル
通訳者になるには、どんな資質やスキルが必要なのでしょう?仕事で求められる3つの能力を解説します。
- 語学力
- コミュニケーション能力
- 表現力
語学力
語学力は通訳者に必須のスキルです。前提として、通訳で使う2つの言語ともにスラスラと会話ができる程度まで習得していることが求められます。人の話を瞬時に理解して言い換えができるレベルに達していなければ、仕事をこなすのは難しいでしょう。着実に勉強して語学力に磨きをかけていきたいですね。
コミュニケーション能力
通訳者が話し手の細やかな意図まで正確に訳すためには、その場にいる人たちの立場の違いや関係性などを速やかに理解した上で、適切な言葉遣いで訳す必要があります。語学力だけでなく、多様な人たちと関わり円滑にコミュニケーションをとれる能力も欠かせません。
表現力
通訳の仕事では、話し手の伝えたいことを、目の前にいる聞き手にしっかりと届ける必要があります。そのためにも、単に別の言語に置き換えるだけでなく、どんな風に表現したらその場にいる人たちに伝わるのかを即座に考えて、言葉の選び方や話すテンポにも工夫することが大切です。
通訳になるには?
通訳者になるためにはどんな知識が必要で、進学先選びではどんな大学を探せば良いのでしょうか?資格やおすすめの学部をご紹介します!
通訳者に必要な資格
通訳者として働くために必須の資格はありませんが、安心して仕事を依頼していただくためにも、自分の語学力の高さをアピールする必要があるでしょう。語学レベルを客観的に証明できる資格を持っていると、仕事を獲得する上で有利になることがあります。たとえば英語の通訳者を目指すのであれば、世界160カ国で実施されてグローバルに通用する「TOEICⓇ」や、ビジネスシーンで使う実用英語まで出題される「実用英語技能検定(英検Ⓡ)」などがおすすめです。
通訳者を目指す高校生が今からできる勉強法
通訳者を目指すなら、高校生のうちから着実に準備を進めることが大切です。
まずは言語力の向上に力を入れましょう。英語や目指す言語の勉強はもちろん、母語である日本語をしっかり学ぶことも重要です。語彙力、文法力、発音の正確さなどに加え、リスニング力と瞬時の言語変換能力を付けることが通訳の基本となります。
また、幅広い教養を身につけることもおすすめします。時事問題への関心を持ち、ニュースや新聞で、社会の動きを把握しておきましょう。さまざまな分野の専門知識を得るために、書籍や講演会などで学習するのも良いですね。
このように高校生のうちから意識的に取り組めば、着実に通訳者への第一歩を踏み出せるはずです。
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通訳になるためのおすすめの大学と学部学科
通訳者を目指す上で、大学の学部選びでは特に決まりがありません。ただし、通訳者として活躍している多くの人が、学生時代から語学力をしっかりと鍛えられる進路を選んでいます。たとえば、英語の通訳者を目指すのであれば、文学部や外国語学部の、英語英文学科・英米語学科・国際コミュニケーション学科・英語専攻などの学科やコースがおすすめです。
英語の通訳者を目指せる大学の学部・学科の一例は、以下のとおりです。
大学によっては、英語のほかにも中国語・韓国語・スペイン語・ドイツ語・フランス語をはじめとした言語の選択肢があります!語学と併せて幅広い教養も身に付けられる、充実した環境で学ぶことができますよ。
有名な通訳者の出身大学
有名な通訳者の出身大学をまとめたので、進路選びの参考にしてみてください。
翻訳者 | 出身大学 |
戸田 奈津子 | 津田塾大学 学芸学部 英文学科 |
金山宣夫 | 東京外国語大学 英米語学科 |
小熊弥生 | 早稲田大学 社会科学部 |
鈴木小百合 | 国際基督教大学(ICU)異文化コミュニケーション専攻 |
橋本美穂 | 慶應義塾大学 総合政策学部 |
通訳者の就職先とキャリアプラン
通訳者として働くときの就職先や、将来の働き方についてお伝えします!通訳者を目指すなら、チェックしておきましょう。
通訳者の就職先
通訳者の働き方には、会社などの組織に所属して働く方法と、フリーランスとなり個人で仕事を引き受けて働く方法があります。このうち組織で働く通訳者が就職するのは、海外と取引を行っている会社や、国際交流や貿易を担当する行政機関、通訳者の養成スクールなどです。フリーランスの場合は、特定の組織に所属せずに、さまざまな会社や行政機関から仕事を引き受けます。
通訳者のキャリアプラン
将来、通訳者としてのレベルアップを目指すなら、通訳の技術に磨きをかけてハイレベルな仕事を引き受ける方向性があります。具体的には、スポーツや芸術といった専門分野の通訳に携わることや、株主総会(=会社経営の重要な事柄を議論する場のこと)やメディア対応といった責任ある場面で通訳に携わることです。専門分野の語彙力を強化したり、難易度の高い同時通訳を正確にこなせるようになったりすることで、さらに活躍の場が広がるようになるでしょう!
通訳者になりたいあなたは「JOB-BIKI」で進路検索!
通訳者の仕事について解説しました!皆さんが憧れる通訳者の先輩たちは、どんな大学で外国語を勉強したのでしょうか?たとえば、「007シリーズ」や「ミッションインポッシブル」の映画字幕の翻訳者であり、通訳者でもある戸田奈津子さんは、津田塾大学英文科の卒業生。ハリウッドスターの通訳を務めることでも有名で、長年にわたりトム・クルーズの通訳者として活躍してきました。彼女はかつて、大好きな映画の世界を目指して英語を学ぶために、英文科に強みのある大学を選んだそうです。
憧れの通訳者がどんな大学に通っていたのか気になったら、ぜひ「JOB-BIKI」で検索してみてください!検索画面の人物検索で「通訳」と検索すると、先輩たちの出身大学がわかりますよ。または通訳者の氏名で検索してもOK!進路を考え始めたら、まずは調べることから始めてみては?