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カウンセラー資格の取得方法とおすすめの大学の学部学科

2024.09.05

カテゴリー:
カウンセリングの様子

高校生の皆さんの中には、心理学に興味があるという人や、人の悩みに寄り添う仕事がしたいと考えている人もいるでしょう。

カウンセラーは、心理学の知識を活かしてカウンセリングをおこない、相談者の悩みの解決を支援する仕事です。資格がなくてもカウンセラーにはなれますが、資格を必要とする求人は多いため、資格を取得したほうがカウンセラーとしての仕事の幅が広がるでしょう。

この記事では、カウンセラー資格の取得方法や、資格取得におすすめの大学、学部学科について解説しています。進路選びの参考にしてみてください。

カウンセラーの資格とは?

カウンセラーの資格試験勉強

カウンセラーの資格の種類や取得方法について解説します。

カウンセラー資格の概要

カウンセラーになるための資格は制定されていませんが、カウンセラーの資格は大きく分けて国家資格と民間資格があります。資格があるとカウンセリングに必要な心理学の基礎や応用力を身につけることができるため、多くのカウンセラーは資格を持っています。
カウンセリングの現場では、相談しにくる人のことを「クライエント」といいます。クライエントとは「専門家に依頼をする、自発的にサポートを受ける人」という意味で、カウンセラーはクライエントが自力で問題を解決するための手助けをする仕事です。
カウンセラーの資格は知識や技術の証明にもなるため、クライエントからも信頼されやすくなるでしょう。

カウンセラー資格の種類

カウンセラーの資格は国家資格と民間資格がありますが、国家資格は公認心理師のみです。民間資格は多くの種類がありますが、ここでは大学卒業を必要要件とする資格のうち代表的なもののみを紹介します。

公認心理師
公認心理師は日本の心理職では初の国家資格です。2018年に第一回の試験が実施されました。心理的サポートを必要とする人やその関係者に、専門的技術と知識で相談や助言をおこなうことができます。

公認心理師試験は年に1回、午前・午後の各120分おこなわれます。出題基準は一般財団法人日本心理研修センターホームページに掲載され、総得点の60%以上正解すると合格です。

臨床心理士
臨床心理士は、日本心理士資格認定協会が認定する資格です。臨床心理学をもとにした知識や手法を用いて、相談者の心の問題にアプローチします。個人だけでなく学校や職場などのコミュニティに対しても支援をおこないます。

臨床心理士試験では、筆記による一次試験と面接による二次試験がおこなわれます。合格基準は公表されておらず、総合的に判定されます。

認定心理士
認定心理士は、公益社団法人日本心理学会が認定する民間資格です。心理学に対する標準的な基礎学力と技能を持っていることを証明できます。

認定心理士の資格を取得するには、大学で必要な単位を取得したうえで申請書類を用意し、審査が通ったら認定料を支払う必要があります。

応用心理士
日本応用心理学会で交付される、学会員の業績などに応じて心理学的指導に従事している人の社会的地位を認めるためにつくられた民間の認定資格です。免許ではありませんが、カウンセラーとしての活動がしやすくなります。

応用心理士の認定基準は学会によって異なりますが、基本的には認定心理士と同様、申請書類を提出して合格すると資格を取得できます。

産業カウンセラー
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。特に職場での心の問題に対するカウンセリング(メンタルヘルスカウンセリング)を専門とするカウンセラーで、キャリアカウンセリングや産業場面でのカウンセリングマインドの普及なども行います。

産業カウンセラーの試験は年1回、学科試験と実技試験がおこなわれます。学科試験では産業カウンセリング概論など5つの分野から出題され、実技試験では受験者同士のロールプレイングや口述試験をおこないます。学科・実技共に6割以上の得点をとると合格できます。

メンタルケア心理士
日本学術会議協力学術研究団体メンタルケア学術学会が認定する民間資格です。カウンセラーの仕事やコミュニケーション向上で求められる基礎能力を有することを証明します。心理学系の民間資格の中では知名度が高く、2018年度より文部科学省が後援する「こころ検定」を認定試験としています。

メンタルケア心理士は申請によって資格を取得でき、文部科学省の定める4年制大学心理学部、学科または心理隣接学部、学科卒業者が申請できます。加えて「こころ検定」2級合格が必須条件で、正答率70%以上が合格基準です。精神解剖生理学・精神医科学・心理カウンセリング基本技法の3分野から出題されます。

臨床発達心理士
人の発達・成長・加齢に寄り添って様々な困難を抱える人を支援する資格です。研修や5年ごとの資格更新があるため、カウンセラーとして常に高い専門性を保つことができます。

臨床心理士試験は申請タイプごとに試験内容が異なりますが、大学院を修了した場合はタイプⅠで申請できます。タイプⅠは書類審査・筆記試験・臨床実習内容報告書による一次審査と、口述試験による二次審査がおこなわれます。合格基準は公表されていませんが、難易度はやや高めといわれています。

カウンセラー資格の取得方法

カウンセラー資格を取得するには、各資格の試験を受ける必要があります。
国家資格である公認心理師は、公認心理師カリキュラムを組む四年制大学と大学を卒業すること、あるいは四年制大学を卒業後に認定事務所で実務経験を積むことが受験資格となっています。また、臨床心理士は指定の大学院か臨床心理士を養成する専門職大学院を修了卒業することが受験資格です。

他の資格試験でも大学を指定している場合がありますが、基本的には四年制大学と大学院修了卒業を必須としています。大学と大学院を卒業していて、一定の条件を満たせば社会人でもカウンセラー資格取得を目指せることもあるので、高校生の皆さんはまず四年制大学への進学を検討してみましょう。

カウンセラー資格を取得しやすい大学や学科

カウンセラー資格取得を目指す学生

カウンセラー資格を取得しやすい大学や学科について、具体的に紹介します。

心理学科のカウンセラー関連コース

心理学科を設置している大学では、カウンセラー資格の取得に役立つ内容に特化したカウンセラー関連コースなどを設置していることがあります。カウンセラー資格で唯一の国家資格である公認心理師の資格取得を目指せる大学を一部ご紹介します。

駿河台大学
駿河台大学の心理学部心理学科では、2年次より下記の3つのコースが選べます。いずれのコースでも卒業し、大学院で必要な単位を取得すれば、公認心理師試験の受験資格を得ることができます。
・臨床の心理コース:心の問題や改善のための臨床心理学的支援を学べる
・犯罪の心理コース:犯罪者の心理、操作、防犯など、犯罪や非行に関する心理学を学べる
・子どもの心理コース:子どもの心理的発達や子育てをめぐる問題、心理学的支援を学べる

帝塚山大学
帝塚山大学の心理学部心理学科では、公認心理師の養成カリキュラムに対応しています。臨床心理学分野の教員は全員が公認心理師と臨床心理士の資格を保有しており、カリキュラムをこなすことで学生のうちから二つの資格取得を目指せます。学科全体で心理学検定の受験にも取り組んでいます。

教育学学科のカウンセリングコース

教育学系の学部では子どもの心理について学ぶ内容もあるため、カウンセラー資格の取得にもつながるコースを設置しているケースがあります。

宮城学院女子大学
教育学部教育学科の幼児教育専攻では、子どもの心の健康や発達に焦点をあてた「心理コース」が設置されています。代表的なカウンセラー資格のひとつである認定心理士資格の取得を目指せます。

芦屋大学
芦屋大学の教育学科では、2025年度から心理学コースを設置しています。人の心を理解し、学校現場で起きている心理問題に対応できる人材の育成に特化し、認定心理士資格の取得を目指せます。

社会福祉学学科のカウンセリング専攻

社会福祉学は、社会環境や制度のあり方を様々な角度から追求し、人類全体の幸せを研究する学問です。物理的援助だけでなく精神的援助もおこなう総合サービスとしての福祉を目指しており、社会福祉学科でも心理学専攻やカウンセリングコースを設けていることが多いです。

東京福祉大学
社会福祉学部社会福祉学科には心理福祉専攻が設けられており、公認心理師資格に必要な指定科目を履修できます。

同朋大学
社会福祉学科心理学専攻では、社会福祉学と心理学双方の知識・技術を学ぶことで幅広い分野で活躍できる人材の育成を目指します。公認心理師資格の取得に役立つ座学や演習、実習などのカリキュラムが用意されています。

人間関係学科のカウンセリング専修

人間関係学科は、人間の心と身体のメカニズムをトータルに捉え、人間そのものに深く切り込む学問です。

大妻女子大学
社会・臨床心理学専攻人間関係学科 社会・臨床心理学専攻は、社会心理学と臨床心理学をバランスよく学び、人間関係とこころの問題に取り組みます。傾聴のロールプレイや臨床力のトレーニングを経て、公認心理師・臨床心理士両資格の取得を目指せます。

別府大学
人間関係学科は「心理」「福祉」「教育・生涯スポーツ」の領域から、社会における人間関係を多面的に考察し、地域社会の活性化に携わる人材の育成を目指します。公認心理師、認定心理士の資格取得を目指せます。

カウンセラー資格を取得するために必要なスキルとは

カウンセラー資格取得に必要とされるスキルをまとめました。

コミュニケーションスキル

カウンセラーは人を相手にする仕事なので、コミュニケーションスキルは必須です。クライエントの話をきちんと聞く力はもちろん、クライエントの抱える問題解決のために、適切な言葉を選んで話すことも求められるでしょう。

エンパシースキル

エンパシーとは「共感力」です。心理学の世界では「自己移入」とも訳され、「もし自分が〇〇だったら」と考えて共感するスキルを意味します。カウンセラーの仕事では、つらい話を聞くこともあればクライエントの気持ちに100%共感できない、ということもあるでしょう。しかし相手の心を開いて問題を解決するには、どのような相手に対してもまずは共感に努めるエンパシ―スキルが必要となります。

問題解決能力

カウンセラーの仕事はクライエントが抱える悩みを解決することです。そのためにはクライエントの話の内容や人間性、価値観などから問題の本質を正しく分析し、解決に導く能力が求められます。

感情のコントロール力

クライエントに共感することは大切ですが、感情移入しすぎてしまうとカウンセラー自身が体調を崩してしまうこともあります。また、クライエントの課題に対して正常な判断もできなくなる可能性があります。クライエントに共感しながらも自身の感情をコントロールし、常に客観的な姿勢を保てると良いでしょう。

カウンセラー資格を活かす職場とは

老人ホームで働くカウンセラー

カウンセラーの資格を活かすことができる職場の一例をご紹介します。

心療内科・精神科クリニック

医療の現場では、心療内科・精神科のクリニックなどで活躍できる場合があります。時に精神科医と連携しながらカウンセリングをおこなって患者の問題解決の手助けをしたり、心理検査をおこなったりします。

学校教育現場

教育現場ではスクールカウンセラーとして活躍できる可能性があります。カウンセリングの対象は生徒・児童や教職員で、小・中学校や高校はもちろん、フリースクールにもスクールカウンセラーが設置されていることが多いです。生徒の悩みを聞いたり、教職員や行政と連携して不登校や問題行動にも対処していきます。

スクールカウンセラーについて詳しくは、こちらの記事も読んで見てください。
スクールカウンセラーとは?仕事内容や必要な資格について解説

企業の福利厚生部門

近年は民間企業に勤めるカウンセラーも増えてきています。従業員のメンタルヘルス対策を重視する企業に設置され、産業カウンセラーと呼ばれます。従業員のメンタルヘルス対策やキャリア相談、働きやすい職場環境づくりなど、職務内容は幅広いです。

地域福祉施設

カウンセラーが働く福祉施設は、児童福祉施設と高齢者施設の2種類です。児童福祉施設とは保育所や児童相談所、児童養護施設などが含まれ、高齢者施設は有料老人ホームやケアハウス、特別養護老人ホームなどが含まれます。施設に通う子どもや高齢者だけでなく、その家族や施設で働く従業員もカウンセリングの対象です。

司法機関

カウンセラーが働く司法機関は、少年院や刑務所、警察署や少年鑑別所です。非行や犯罪の加害者を対象に、社会復帰の支援や心理的な背景を探ることが仕事となります。

自営業・フリーランスのカウンセラー

自営業やフリーランスとして独立するカウンセラーもいます。自身の得意とする心理療法を用いてカウンセリングや心理学セミナーなどの心理学的な支援をおこなう人が多いようです。勤務時間や勤務場所を自由に決められるため、オンラインでカウンセリングをおこなう人もいます。自営業やフリーランスのカウンセラーが仕事を得るには信用が求められるので、カウンセラー資格があれば仕事をしやすくなるでしょう。

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