ゴム製品業界とは?主な企業や職種、就職するのに有利な学部も紹介
2024.01.11
「ゴム製品の業界とは?」「ゴム製品の将来性は?」と疑問に思っている人もいるでしょう。
ゴム製品は、自動車のタイヤをはじめ、ゴムベルトやゴムホース、建築用の免震ゴムなど、私たちの身の回りで使われています。
ゴム製品業界は、半数以上を車のタイヤが占めているため、自動車業界の動向に大きく左右される傾向にあります。車業界は「100年に一度の変革期」と言われるほど、変化の激しい時代に突入しているので、タイヤ業界も変化を求められる時代となっています。
この記事では、ゴム製品の主な企業や将来性、職種や仕事内容について解説しています。就職するのに有利な学部についてもまとめたので、将来、タイヤ業界への就職を考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ゴム製品業界の概要
ゴム製品業界のシェアは、日本のブリヂストンとフランスに拠点をもつミシュランが頭ひとつ抜けている状況です。3位以下は以下のとおりです。
3位:グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー(アメリカ)
4位:コンチネンタル(ドイツ)
5位:住友ゴム(日本)
日本のゴム業界は、世界のなかでも多くのシェアを占めています。
一般社団法人日本ゴム工業会によると、2022年の日本のゴム製品における出荷額は、自動車タイヤが50%以上を占めています。その次に多いのが、自動車部品や油圧機器、工作機械などに利用される「工業用ゴム製品」と呼ばれるものです。次に多いのがゴムベルトやゴムホースといった製品になります。
ゴム製品にはさまざまな種目がありますが、自動車のタイヤが大きなシェアを占めているため、多くの企業が自動車事業に力を入れているようです。
ゴムには合成ゴムと天然ゴムがあり、それぞれの特徴や使用用途は、以下のとおりです。
原材料 | 特徴 | おもな使用用途 | |
合成ゴム | ナフサ(石油製品) | ・価格変動が少ない ・耐久性、耐熱性などに優れている | 工業用ゴム製品 |
天然ゴム | 天然ゴム(ゴム樹) | ・価格変動が大きい ・弾力性、粘着性、伸張性などに優れている | 自動車タイヤ |
ゴム製品業界の動向
ゴム製品業界は販売先のほとんどが自動車業界なので、自動車の売れ行きによって売り上げが左右されやすいのが特徴です。タイヤは、新車用・市販用(交換用)・輸出用の3つに分けられますが、なかでも市販用、とくに冬用タイヤが売り上げを支えています。
しかし、日本国内では少子高齢化や若者の車離れによる市場の縮小、積雪量の減少による冬用タイヤの需要低下が原因で、タイヤが主力のゴム製品も需要が減っているのが現状です。
今後は、車が普及しだした新興国に市場を移し、中国や韓国などの海外メーカーと価格競争を強いられることになりそうです。
近年のゴム製品の動向を見てみると、2020年はコロナウイルスの影響により、自動車の販売台数が激減し、大きな打撃を受けました。
2021年には自動車生産の回復と共にゴム業界も回復したように見えました。しかし2022年は、自動車の原材料の値上げや半導体不足などが原因で、タイヤの出荷金額は前年比より落ちています。
一方、自動車用の防振ゴムや衛生面に配慮したコンベヤベルトは、医療業界や食品業界において需要が高まっています。タイヤ以外のところで、ゴム製品業界を支えてくれそうな需要はまだまだあると言えるでしょう。
ゴム業界の代表的な企業
日本のゴム業界の代表的な企業の一例は、以下のとおりです。
- ブリヂストン
- 住友ゴム工業
- 横浜ゴム
それぞれの企業について紹介します。
ブリヂストン
2008年、タイヤ事業で世界1位のシェアを獲得。国内のみならず世界でもトップシェアを誇る企業。
社名 | 株式会社ブリヂストン |
本社所在地 | 東京都中央区京橋3丁目1番1号 |
設立年月日 | 1931年(昭和6年) 3月1日 |
国外開発拠点 | 68カ国 |
従業員数 | 約13万人 |
主要製品 | ・乗用車用タイヤ ・トラック・バス用タイヤ ・免震ゴム ・ホース ・鉱山、建設車両用タイヤ ・航空機用タイヤ ・自転車 ・スポーツ用品 |
※2023年12月現在
参照:会社概要 | 会社概要 | 企業情報 |株式会社ブリヂストン (bridgestone.co.jp)
住友ゴム工業株式会社
ダンロップというブランドで有名な住友ゴム工業は、国内シェア第2位の企業です。
社名 | 住友ゴム工業 |
本社所在地 | 東京都江東区豊洲3丁目3番3号(豊洲センタービル) |
設立年月日 | 1917年 |
国外開発拠点 | 16カ国 |
従業員数 | 7,573名 |
主要製品 | ・タイヤ(自動車用、建設車両用、農耕機用、産業車両用、レース・ラリー、モーターサイクル用、新交通システム用) ・アルミホイール ・その他パーツ(自動車関連用品) |
※2023年12月現在
参照:製造資本|住友ゴム工業 (srigroup.co.jp)
横浜ゴム
横浜ゴムは、国内シェア第3位の企業です。
社名 | 横浜ゴム株式会社 |
本社所在地 | 神奈川県平塚市追分2番1号 |
創立年月日 | 大正6年(1917年)10月13日 |
国外開発拠点 | 55カ国 |
従業員数 | 5,399名 |
主要製品 | ・タイヤ・チューブ・アルミホイール(乗用車用、トラック・バス用、小型トラック用、建設車両用など) ・高圧・樹脂ホース、コンベヤベルト、マリンホース、航空部品(ウォータータンク)など ・スポーツ用品など |
※2023年12月現在
参照:会社概要│横浜ゴム株式会社/THE YOKOHAMA RUBBER CO., LTD. (y-yokohama.com)
ゴム業界の主な職種
ゴム業界の主な職種は、以下のとおりです。
- 研究開発職
- 生産技術職
- 営業・企画
それぞれ紹介します。
研究開発職
研究開発職は、新しい素材・技術の研究を行い、新しい製品を生み出したり、今あるタイヤの性能を向上させたりする職種です。
世の中のニーズに合った革新的な製品を生み出すスタートラインとなる部署です。
研究開発職は、工場や技術センター、研究開発施設が職場になります。 研究開発職の1日の流れの例は以下のとおりです。
9:00 | ・メールチェック ・1日のスケジュールを確認 |
10:00 | 原料メーカーなど共同企業先と打ち合わせ |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | 実験(新しいサンプルの施作と評価) |
15:00 | 実験データの結果をまとめ、報告資料を作成する |
16:00 | 社内ミーティング(実験結果や打ち合わせ内容などを関係者に報告) |
17:00 | 退社 |
生産技術職
生産技術職は、生産現場で生産ラインの設計・管理を行う職種です。生産ラインとは、材料から製品ができる一連の流れを指します。
生産性を向上させるために、理想的な生産ラインを構築するのも仕事のひとつです。必要な設備が不足している場合は、設備開発にも尽力します。
生産技術職も、研究開発職と同じく、工場や技術センター、研究開発施設が職場になります。
生産技術職の1日の流れの例は以下のとおりです。
9:00 | 朝礼 (ラジオ体操、各工程からの連絡事項を共有) |
10:00 | ・メールチェック ・担当工程の問題点を抽出する(各職場でヒアリングを行う) ・各部署との調整が必要な案件から優先的に仕事を行う |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | テストの立ち合い (新材料を使用した生産や新規配合などの工程に立ちあい、安全・品質を保ちながら生産可能か確認する) |
14:00 | メーカーや関連部署との打ち合わせ |
15:00 | 工場内打ち合わせ (生産状況について生産・資材・工務などの各部署と認識をすり合わせる) |
16:00 | 工程管理などの書類作成し、チーム内で共有 |
17:00 | 退社 |
営業・企画
営業・企画職は、自社のタイヤのシェアを増やすために得意先へ営業をかけたり、お客さんの声からニーズに合った商品を企画・提案したりする仕事です。
営業・企画職は、本社および各事業所が職場になります。
営業・企画職の1日の流れの例は以下のとおりです。
9:00 | ・メールチェック ・タイヤの生産や納品状況の確認 |
10:00 | 価格戦略や価格設定などに関するチームミーティング用の資料作成 |
11:00 | チームミーティング |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | ガソリンスタンドやカー用品店など、お客さんの会社へ伺い商談(準備してきた資料をもとにプレゼンを行う) |
15:00 | ・帰社 ・面談の結果を上司に報告 ・次回の面談に向けて資料作成 |
17:00 | 退社 |
ゴム業界で求められる人の特徴
ゴム業界で求められている人の特徴は、以下のとおりです。
- 論理的思考力が高い人
- グローバルな視点をもっている人
- 自分で考え行動できる人
順番に解説します。
論理的思考力が高い人
ゴム業界は社内・社外ともに多くの人と関わるため、論点を整理して相手に自分の意見を伝える「論理的思考力」が求められます。
論理的思考力が高い人は、問題解決が得意であったり、説得力があるため相手に納得してもらいやすかったりします。
たとえばタイヤの営業であれば、お客さんの抱える問題からニーズを把握し、根拠と共に最適な商品を提案できるでしょう。
グローバルな視点をもっている人
タイヤ業界は国内市場が縮小しており、企業が生き残るためには海外に拠点を広げることがカギとなります。現にブリヂストンをはじめとする大手ゴム企業は、海外にも生産・開発拠点を広げています。
価値観や文化が異なる国の人が同僚になったり、顧客になったりする可能性が高いため、グローバルな視野をもっていることが重要です。
多様性を受け入れながら、コミュニケーションをとっていくことが求められるでしょう。
自分で考え行動できる人
自動車業界は自動運転化やカーシェアの浸透などの影響で「100年に一度の変革期」と言われています。自動車業界と深く関わるタイヤ業界も、その影響を大きく受けます。
時代の変化が速い業界では、新しい製品や技術が求められています。世の中のニーズをくみとり、自分で考えてチャレンジできる人が重宝されるでしょう。
ゴム業界の事務系で働くためにおすすめの学部
事務系の職種は、学部・学科による応募要件の縛りはなく、どの学部でも応募できるのが一般的です。とはいえ、タイヤ業界の動向や職種を考えると、以下の学部での学びが現場で活かしやすいでしょう。
- 経済学部・経営学部・商学部
- 国際系の学部
経済学部・経営学部・商学部
経済学部や経営学部、商学部では、企業におけるお金の流れや世界の経済動向などを学べます。タイヤ業界に限ったことではないですが、お金まわりの知識はビジネスにおいて重要です。とくにタイヤ業界はグローバルに展開しているため、国際貿易業務などで優位に立つために、経済の知識は役立つでしょう。
国際系の学部
グローバルに展開するタイヤ業界では、国際系の学部で学ぶ知識も活かしやすいです。
国際系の学部の一例は、以下のとおりです。
- 国際学部
- 国際関係学部
- 国際教養学部
学部名に「国際」が入ったこれらの学部では、世界の国々や地域の政治、経済、文化などを学びます。また、他言語の習得にも力を入れている場合が多いです。とくに英語は「読む・聞く・話す・書く」の総合的な力を伸ばせるでしょう。
海外で活躍するための国際感覚や語学力を養えるため、タイヤ業界で実力を発揮しやすい学部と言えます。
ゴム業界の技術系で働くためにおすすめの学部
ゴム業界の技術系職種は、募集学科を理系学科に限定している企業が多いです。
たとえば、ブリヂストンの技術職における募集学科には「機械、物理、化学、金属、材料、電気、電子、制御、情報、経営工学など」と記載があります。
これらの学科が設置してある主な学部は、工学部や理学部、理工学部になります。実験や講義を通して、研究・開発職で必要とされる専門的な知識や論理的思考能力を養えます。
工学部に向いている人や学科の種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。
工学部とは?学部・学科の特徴や進学のメリット・デメリットを解説 – 逆引き大学辞典 (gyakubiki.net)
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販売先のほとんどが自動車業界なので、ゴム製品業界は、自動車の売れ行きに左右されやすいです。また、自動車業界は「100年に一度の変革期」と言われており、変化が激しいため、タイヤ業界でも新しい製品・技術の開発やグローバル展開が必要とされています。
そのため、将来ゴム製品業界への就職を考えている人は、理工学部や工学部などで専門的な技術や知識を身に付けたり、国際系の学部で、グローバルな視野を養ったりするのもよいでしょう。
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