逆引き大学辞典逆引き大学辞典

製薬業界の魅力はどのようなところ?主な職種とおすすめの学部

2024.03.07

カテゴリー:
製薬会社の研究者

病気やケガをしたとき、医療機関やドラッグストアなどで医薬品を購入する人は多いですよね。医薬品は私たちの健康を守ってくれる大切なものです。そんな誰もが一度はお世話になったことのある医薬品の開発・製造・販売をしているのが製薬企業です。多くの人の助けにつながる製薬業界で働いてみたいけれど、どんな仕事をしているかイメージしにくいですよね。今回は、製薬業界とはどのような業界なのか、魅力や各職種の業務内容・求められる人材像、就職におすすめの大学や学部を詳しく紹介します!

製薬業界の魅力や代表的な企業の例

アステラス製薬

製薬業界は、医薬品の開発から販売までを担っている業界です。業務内容が幅広く、さまざまな職種の人が働いています。製薬業界とは何か、基本的な情報や業界の魅力・代表的な製薬企業を紹介します。

製薬業界とは

製薬業界は医薬品の開発・製造・販売を一手に担う業界です。取り扱っている薬は主に以下の3種類に分けられます。

・医療用医薬品:医療目的で開発された薬
・要指導医薬品:医療用医薬品を市販薬に転用した薬
・一般用医薬品:薬局やドラッグストア等での販売を目的にした薬

一般用医薬品は、私たちが日頃ドラッグストアなどで気軽に買える薬などが該当する医薬品です。のど飴も医薬品に含まれます。しかし、一般用医薬品は、製薬業界の市場割合では大きくありません。むしろ、ワクチンやがんの薬などの医療用医薬品のほうが、製薬業界の売上市場の中で90%ほども占めています。製薬業界では、新薬として医療用薬品の開発に成功して特許を取得できれば、5〜10年ほど新薬を販売する権利を自社で独占できる仕組みがあります。そのため、自社製品の特許が切れる前に次の新薬開発に大きな研究予算をかける業界なんです。このような激しい業界争いがあるからこそ、多くの人々が健康で安心して過ごせるためのより良い医薬品開発に各企業は日々励んでいるんです!また、競争の激しい業界のため、治験や安全性の検証にAIやデータ分析を活用するなど、新しい技術の導入も盛んです。製薬業界は医療機関と連携しながら、私たちの健康を脅かすさまざまな病気やケガの予防・治療のために尽力してくれています。今後も新しい治療法や技術の発展により、さらなる成長が期待される業界です!

製薬業界の魅力

製薬業界の魅力は、医療分野に深い影響力を持ちながら、社会貢献ができることです!具体的には、製薬業界は以下のような社会貢献を行ってきました。

・今まで治療できなかった病気に立ち向かえる薬の開発
・新しい病気やウィルスのワクチンの開発
・手術でしか直せなかった病気を投薬で解決できる薬の開発

このように製薬会社は、患者さんを健康に導き、生活の質を向上させる研究に取り組んで、新薬や治療法を開発しています。ビジネスモデルの多様化で、ジェネリック医薬品(新薬の特許が切れた後に各企業が作る後発医薬品)やバイオ医薬品の分野の成長など、医療の未来を形作るために重要な領域です。

製薬業界の代表的な企業の例

新薬の開発や治療薬の製造販売を行う製薬業界には、以下のような代表的な企業があります。会社名をクリックすると入社した人の出身大学がわかりますよ。

武田薬品工業株式会社
1925年創業の武田薬品工業株式会社は、国内の製薬業界でもシェアトップクラスです。海外では主力製品の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬の「エンタイビオ」やADHD治療薬の「ビバンセ」の売上が好調で大きく成長を遂げています。

大塚製薬株式会社
1964年に創業した大塚製薬株式会社は、2023年の国内製薬会社売上ランキングで2位に位置している大手企業です。医薬関連と日々の生活から健康維持に有用な食品・飲料の領域であるニュートラシューティカルズの2つの事業を展開しています。

アステラス製薬株式会社
1923年に創業したアステラス製薬株式会社は、欧米・欧州・中南米・アジアなど幅広い海外展開に強みを持っており、海外売上比率が79.4%にものぼる大手企業です。なかでも前立腺がん治療剤の「イクスタンジ」は、当社売上高の43.5%を占める主力製品です。

第一三共株式会社
第一三共株式会社は、2005年に三共株式会社と第一製薬株式会社が統合して発足しました。当社は新薬開発・ジェネリック開発・ワクチン開発・ヘルスケア事業の4軸で事業を展開しています。幅広い製品開発により、医療現場からのMR評価を9年連続1位を獲得するなど社会貢献性の高さが特徴です。

中外製薬株式会社
1943年に創業した中外製薬株式会社は、スイスのロシュ社という世界有数の製薬企業と提携しており、海外での医薬品販売に強いという特徴があります。また、中外製薬は独自のサイエンス力と技術力から、2005年に国産初の抗体医薬品を市場に提供した実績があります。

以上のような製薬会社は、新薬の開発だけでなく、治療法の進化にも影響を与えている大企業です。他社の買収や統合をしてグローバルな市場展開をすることで、製薬業界の成長を牽引しています。製薬業界への就職のためにどんな学校を出たらいいかイメージがわかないという場合は、ぜひ「JOB-BIKI」を活用してみてください。たとえば、「就職先検索」で「武田薬品工業株式会社」などの企業名を入力して調べると、その企業に就職した方の出身大学をチェックできますよ!

製薬業界の職種

製薬会社が発売している薬のパッケージ

一般的に製薬業界に新卒で入社する場合は、総合職として採用されるケースと、初めから職種に特化して採用されるケースがあります。総合職として入社すると、営業や広報、開発・製造などさまざまな部署に配属され、幅広い場面で経験を積んでいきます。さまざまな部署での仕事を通して製薬業界の全体像を把握しつつ、将来的には経営層や専門職へとステップアップしていくんです。ここでは製薬企業に新卒として入った際に配属される職種について解説します!

MR・MS

製薬業界の営業職には、MR(医薬品情報担当者)とMS(医薬品卸販売担当者)の2つがあります。

MR(医薬品情報担当者)MS(医薬品卸販売担当者)
・製薬企業の営業部門に所属
・医薬品の適正な使用方法を提供
・医療関係者の訪問による安全管理情報の収集
・医薬品卸販売会社の営業部門に所属
・医薬品・医療機器を仕入れ医療機関に販売
・医療機関や医療スタッフに医療情報を提供

MRは、医師や薬剤師に対して医薬品の情報を提供し、適切な使用を促進する役割を担っています。新卒でMRに配属されれば、まず医薬品に関する正確な知識や使用方法などの専門知識を習得するところから業務が始まります。医師や薬剤師とやり取りをする機会が多いため、円滑なコミュニケーション能力が必要です。MRは製薬会社と医療の現場の橋渡しをする重要な職種なんですよ!

一方でMSは、製薬会社の各メーカーの商品特徴や医薬品に関わる制度や法規なども含めた幅広い知識が必要になります。また、MSはMRと違い価格交渉を行うため、財務管理の知識を有しているかも重要です。このような違いがMRとMSにはあるため、互いに協力し合えるパートナーとして機能しているのです。

開発・研究職

開発・研究職は、医薬品の有効成分を研究して医薬品を開発する研究職と、治験や臨床試験の検証を担当する開発職に分類されます。開発・研究職は、医薬品の研究開発をする製薬業界にとって中核的な職種です!

研究職は、病気の原因やその治療法、薬の効果効能と副作用について常に最新の情報や動向をチェックして深く理解しておかなければいけません。開発職では、臨床試験等の効率的な進行や、収集したデータ情報の分析力が求められます。開発・研究職に新卒で配属されると、新たな治療法の可能性を探求し、治験や臨床試験を通じて医薬品の有効性と安全性を検証したり、新薬やジェネリック医薬品の開発に関わったりします。

治験や臨床試験には、業務をスムーズに行うための進行・調整役である「治験コーディネーター」と呼ばれる職種が実はあるのです。治験コーディネーターについては以下で詳しく解説しています。

開発・研究職は製薬会社の中核を担うポジションであるからこそ、自社の医薬品開発の技術力向上を促し、より良い医薬品を開発して市場に提供するといった貢献が可能です!

薬事担当

薬事担当は、医薬品に関するさまざまな法的業務に携わる業種です。製薬企業の薬事担当は、新薬や後発医薬品を市場へ導入するとき、医薬品の安全性を承認する規制当局との橋渡し役として重要な役割を果たしているんです!そのため薬事担当には、医薬品の安全性や有効性に関する深い知識と、法規制や薬価制度に関する専門性が必要です。変化する最新の医薬品市場や医療環境の情報を迅速に収集して柔軟に対応できる能力や、深い医薬品への知識も求められます。

生産担当

生産担当は、承認された医薬品の製造を管理し、製品の品質保持と効率的な生産を担っています。近年ではAIや自動化技術を活用して、効率的で安全な製造を目指す製薬企業が増えているんですよ。製造業務は製品の効果効能、安全性を左右するために重要な仕事です。配属後は、製造ライン管理や機器のメンテナンス、製品検査などが主な業務です。生産担当には、製造技術に関する専門知識のほか、品質管理やコスト管理に関する能力が求められます。

薬剤師

病院や薬局などで働いているイメージのある薬剤師は、製薬会社でも活躍しているんですよ!製薬会社では、医薬品の専門家として有効性と安全性を監督する役割を担っています。医薬品の適正使用の推進と患者の安全の確保も重要な業務です。医師やMRと協力して、患者に対して医薬品の正しい情報提供や治療計画にも関与する場合もあります。薬剤師には薬機法や景品表示法などの法令遵守や医薬品の品質管理の深い知識が必要になります。

広報・マーケティング担当

ドラッグストアで風邪薬や目薬などの市販薬を買うとき、多くの方はテレビCMやWeb広告などで見たことがあり信用できる商品を選んで購入します。このように、広報・マーケティング担当は購入者に対して間接的に売上につながる業務を行うため、市販薬の販売が多い製薬会社では特に重要な職種なんです。製薬会社の広報・マーケティング担当は、医薬品に関する法律にも詳しくないといけないため、他業界の広報・マーケターよりも専門的な知識が必要になります。また製薬市場ではデジタルマーケティング(Web上で行うマーケティング活動)の重要性が年々増しており、SNS運用やWeb広告、コンテンツ発信を活用して、消費者や医療関係者など、さまざまな関係者とコミュニケーションを取っていくことも重要です。そのため広報・マーケティング担当にはクリエイティブな思考と、市場動向や消費者のニーズを適切に分析し、施策を改善していく能力が求められます。

製薬業界で求められる人とおすすめの学部

千葉大学

製薬業界は職種が多く、職種ごとに求められる人材像も異なります。ここでは、製薬業界で求められる経験や資格、向いている人物像、おすすめの大学と学部学科について詳しく解説します!

求められる経験や資格

製薬業界で活躍するためには、専門的な経験や資格が重要です。医薬品開発に関わる職種では、新薬の研究や開発に必要な科学的知識と技術が求められます。バイオ医薬品やジェネリック医薬品の分野では、生物学や化学の専門知識が不可欠です。MRや薬剤師のような職種では専門的な資格が必須であり、継続的な学習と資格更新が求められます。具体的には、以下のような資格が必要です。

・薬剤師:薬剤を取り扱う業種で必須の資格
・危険物取扱者:製薬の製造や機器・材料を取り扱う業種で必要な資格
・MR認定検定:取得するとMR職などで医療機関等から一定の信頼を得やすくなる資格
・TOEIC:海外でビジネスコミュニケーションを取るために必要な英語力を養う資格

医薬品市場の動向を理解するためのリサーチ力や分析能力、薬価制度や医療費の管理に関する知識も重要です。学生の頃にドラッグストアなど、医薬品を取り扱う現場で働いた経験があれば、就職に役立ちますよ!

製薬業界に向いている人

製薬業界に向いているのは、科学的な探究心と、新しい治療法や医薬品の開発に対して知的探究心を持っている人です。「将来医療や福祉に貢献したい!」という強い動機がある人も製薬業界に向いています。感染症の治療薬やワクチンの開発など、社会的な影響が大きく、多くの人の助けになる仕事に取り組む機会が訪れやすいからです。

自分で問題や課題を発見して解決できる力や、主体的に物事に取り組む姿勢も、常に変化する製薬市場や技術革新の中で活躍するために必要な資質です!製薬企業では、チームでの協力や異なる専門領域との連携が日常的に行われるため、言葉や文章、数字を正確に正しく把握したり説明したりする人も製薬業界向きと言えます。

製薬業界で働くためにおすすめの学部

製薬業界で働く人は、薬学部や理学部などの理系の大学の出身者がほとんどです。以下では、製薬会社を目指せる大学と学部学科の例を表でまとめています。

大学学部学科
大阪大学薬学部
理学部
薬学科
化学科
生物科学科
東北大学薬学部
理学部
薬学科
化学科
生物学科
東京薬科大学薬学部
生命科学部
薬学科
分子生命科学科
生命医科学科
東京工業大学理学院
生命理工学院
化学系
生命理工学系
千葉大学薬学部
理学部
薬学科
化学科
生物学科

あくまでも一例ですが、以上のような学部学科であれば、製薬企業への就職を目指せる可能性が高まります!薬剤師を目指すなら薬学部への進学は必須です。薬学部では医薬品に関する一定の知識を習得できます。研究・開発の職種を目指すなら、医薬品に関する知識を習得できる薬学部や理学部、農学部がおすすめです。生物学部系や化学部系では、医薬品の開発に関わる基礎的な科学知識を身につけられ、新薬開発や研究職に適しています。医学部や医療科学部は、医薬品の臨床試験や治験に関わる知識を深めるのに役立ちます。

薬学部以外だと、職種に応じたスキルを得られる学部がおすすめです。例えば、商学部や経済学部などであれば、製薬企業のビジネスモデルや市場分析、マーケティングや経営の知識を活かせます。工学部や情報学部では、AIやデータ分析技術を扱う専門的な知識やスキルを活かせる職種を選べば、製薬企業の技術革新や製品開発プロセスの効率化に貢献可能です。製薬業界は多岐にわたる専門知識を要求されるため、自分の興味やキャリアの目標に合わせて、適切な学部や学科を選択することが大切です!

製薬会社の出身大学

中外製薬株式会社に2023年卒で就職したのは、上記の大学以外にも九州大学、名城大学、名古屋市立大学、東京理科大学などから多くの卒業生が就職していますよ。

塩野義製薬株式会社は、金沢大学、静岡県立大学、星薬科大学、新潟薬科大学、北里大学など。KMバイオロジクス株式会社なら、崇城大学、熊本県立大学、東海大学、福岡工業大学など。日本全薬工業株式会社では、酪農学園大学、東北医科薬科大学、会津大学、成蹊大学、東京農業大学から。丸善製薬株式会社は、近畿大学工学部と尾道市立大学から就職しています。

企業によって、地域によっても違いがありますから、「JOB-BIKI」で調べてみるのがオススメです。

製薬業界への就職を目指すあなたは「JOB-BIKI」で進路検索!

製薬業界を目指す子供

製薬業界は、医薬品の開発から販売までを担い、人々の生活や暮らしに貢献し続ける魅力的な業界です。競争の激しい業界だからこそ、互いの企業が切磋琢磨してより良い医薬品を日々研究に励んでいます。製薬業界では、開発・研究や薬剤師、生産担当などの薬学系に加えて、MR・MS、広報・マーケティング担当など直接的な薬学系ではない職種まで幅広い人が活躍しています。製薬企業が開発・製造・販売する医薬品は、世界中の人たちの生活に欠かせません。製薬業界の仕事は、社会に大きな影響をもたらし、たくさんの人たちの役に立てる仕事なんです!製薬業界に興味関心があれば、まずは「JOB-BIKI」で製薬企業の情報を見てみてください。こちらをタップすると、すぐにどんな製薬企業があるのかを閲覧できます。「出身大学データ数」という項目では、就職につながった大学情報も見られるので、ぜひチェックしてください!

「JOB-BIKI」で「医薬品」メーカーの検索結果から出身大学を知る

よく読まれている記事

タグで記事を絞り込む