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医療機器業界とは?働く魅力や仕事内容、目指せる大学を紹介

2024.07.23

カテゴリー:
CTスキャンの機器

医療機器は、病気・怪我の予防や治療に必ず用いられるものです。医療機器業界では、そのような医療機器の製造販売を担っています。医療に使う機器のため「医学系の学部に進まなくてはいけないのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、医療機器業界の業種は多岐にわたるため、機械の知識を活かせる職種や文系の学部でも目指せる職種などもあります。
この記事では、医療機器業界の特徴や職種などについて解説します。また「JOB-BIKI」で調べられる企業の例、主な職種、おすすめ学部などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

医療機器業界の魅力や代表的な企業の例

医療機器業界には、どんな特徴があるのでしょうか。ここでは、医療機器業界の基礎知識や働く魅力、代表的な企業の例をご紹介します。

医療機器業界とは?

さまざまな医療機器が使われる人間ドック

医療機器とは、私たちの病気や怪我の診断・治療・予防などに使われる機器のことです。具体的な例としては、手術台や聴診器、注射器などが挙げられます。また、健康診断で使われるような血圧計や一般X線撮影装置なども、医療機器の1つです。医療機器業界は、これらのような医療機器の製造・販売を担っています。
現代医療において、医療機器は必ず使用されるものです。私たちの生活にも、医療は欠かせない存在となっています。そのため、医療機器業界は社会情勢などに左右されにくく、安定している産業です。時代や文明が発達しても「医療機器が全く必要なくなる」という可能性は低いといえるでしょう。

医療機器業界で働く魅力

医療機器は、私たちが健康でいるために欠かせない存在です。また、医療に従事する医師や看護師が医療行為を行いやすくするためにも貢献しています。医療機器が医療の現場を支えているという事実から、「人々の健康に貢献できている」と実感できることが魅力です。例えば、主に不整脈(心臓が脈打つリズムがおかしくなってしまう症状)の患者に対して行われる心臓手術では、カテーテルと呼ばれる、細いプラスチック製の管のような医療機器が使われます。このカテーテルから高周波電流を流し、異常な脈の原因となる心筋を電流で焼いて治療することで、心臓の脈を正しいリズムに戻すことが可能です。このように、製造したカテーテルが医療現場で使用され、その治療によって回復する患者がいることで、大きなやりがいを感じられるでしょう。

医療機器業界の代表的な企業の例

オリンパスの工場

医療機器業界の中でも、得意とする技術や製品分野などによって企業ごとの特色は異なります。
例えば「テルモ株式会社」は、医療機器や薬剤を体内の適切な部位に届けるための技術に強みを持つ企業です。具体的には、ガイドワイヤーやカテーテル、注射針の製造を得意としています。ガイドワイヤーとは、治療においてカテーテルを患部まで正しく届けるために、カテーテルのレール代わりとなるものです。治療のための電流などを流す役割を持つカテーテルと、そのカテーテルを正しく患部まで届けるためのガイドワイヤーの両方が揃うことで、適切な手術や治療を行えます。テルモ株式会社は、以上のようなガイドワイヤーやカテーテルの製造において、30年以上の実績があることが特徴です。また、注射針においては、2019年に世界最短・最細の注射針を発売した実績もあります。


「ニプロ株式会社」は、医療機器だけでなく、医薬分野にも事業展開している企業です。医療機器と医薬品をセットで製造・販売できることを強みとし、成長を続けています。2024年時点で、ニプロ株式会社が製造・販売している医療機器製品は、約2万品目以上です。特に、腎不全(腎臓の機能が低下する病気)の治療に使われる医療機器ダイアライザ(人工腎臓)を主力製品としており、世界第2位のシェアを達成した実績もあります。


「オリンパス株式会社」は、世界で初めて1950年に胃カメラの実用化に成功した企業です。現在も、内視鏡や消化器科・泌尿器科・呼吸器科の治療に使用する医療機器分野を得意としています。特に消化器内視鏡では高いシェアを誇っており、世界シェアの7割を獲得した実績もあるのが特徴です。医師などに感染症がうつるリスクを軽減するため、消化器内視鏡の挿入部に触れることなく検査と治療が可能な内視鏡保護具の開発にも成功しました。


「キヤノンメディカルシステムズ株式会社」は、プリンターやカメラなどの製造でも有名なキヤノン株式会社のグループ企業です。プリンターやカメラの製造で培ったスキルを活かし、医療機器分野でも特にCTやMRIなど、体内の様子を画像化して検査可能にする機器の製造を得意としています。2022年度には、CTの国内シェアにて1位、MRIは国内シェア3位を獲得しました。また、2024年時点までに18製品もの世界初の機器を開発しています。キヤノンメディカルシステムズ株式会社が開発した世界初の医療機器の1つが、2017年に発売された高精細CTです。従来のCTの約2倍、より細かい部分まで描出できるようになっています。さらに細かく描出できるようになることで、体内の小さな異変も見つけやすくなることがメリットです。CTにおいて、より細かい部分まで描出可能になる機能は約30年間大きな進化がない状態でした。しかし、キヤノンメディカルシステムズ株式会社は世界で初めて、以上のような機能をCTに搭載することを実現できたのです。このような高い技術を持っていることは、大きな強みといえるでしょう。

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医療機器業界の職種

MRIを使う小さな子ども

医療機器業界の仕事には、具体的にどのような職種があるのでしょうか。ここでは、医療機器業界のおもな職種についてご紹介します。

研究開発

医療現場で「どんな医療機器が求められているのか」を調査し、新たな製品や技術について研究開発する職種です。医療機器の研究開発においては、現場で実際に医療機器を使用する医師などの医療従事者からの意見を聞くことは必須となります。そのため、医療機関や医療に関する研究施設などと共同で研究開発を進めるケースも多いです。医療現場からの声を大事にして研究開発した例としては、機器が発する音をなるべく抑えたMRIが挙げられます。MRIは、使用する際、1人で寝た状態で検査を受けなければいけません。そのため、小さい子供は特に機器が発する大きな音に恐怖感を抱く場合が多く、医療現場からも「大きな音が出る機器は子供が怖がる」という意見が多く寄せられていました。結果、発する音を極限まで抑えた機器の研究開発が進められています。研究開発では、このように医療現場と綿密に連携を取りながら仕事を進める姿勢も重要です。

生産企画

生産企画は「どの製品をどのくらいのペースで生産し、どのくらいの期間と費用をかけてお客様へ届けるか」を考える職種です。医療機器の生産において、製品を生み出すというスタートから実際に生産してお客様へ届けるというゴールまで、広く関わることができる職種でもあります。具体的には、特定の製品について「どの機械を使用し、どのような流れで作るか」という作り方を考案し、作った製品の届け方や届けるためにかかる費用、期間などを考慮した計画を組み立てることが仕事です。また、実際に製品を作る工場について、より生産性が上がるようレイアウトを考案したり、新たな機械の導入について検討したりもします。どの業務においても他部門との連携が不可欠であるため、社内外のさまざまな部門とやり取りすることが可能です。

生産技術

「より安く、より早く、より高品質な製品を作るためにはどうすればいいか?」を考え、効率のよい生産方法や生産機械の導入について検討する職種です。現在は生産工程の改善やデジタル化・自動化で効率よく生産する方法の開発が進んでおり、医療機器の生産においても機械に頼っている部分が多くあります。しかし、MRIやCTなどの医療機器には高度な技術も多く使われているため、人の手や感覚に頼る部分も非常に大きいです。無理に機械によって自動化を導入すると、製品の品質が低下する恐れもあります。そのため、生産技術には、生産効率の良さと品質のバランスを見極める力も必要です。また、実際に生産に携わる人材の育成も生産技術職が担っています。医療機器の生産において、ものづくりの現場に近い部分で働ける職種です。

品質保証

製品の品質や安全性などを保つために、製品の設計のチェックや完成した製品の最終確認を行う職種です。特に医療機器においては、厳しい規格が設けられていたり国ごとに異なる法律で規制されていたりすることがあり、それぞれの規格・法律を遵守した製品を作る必要があります。そのため、各ルールに沿った製品が作られるよう、開発・設計段階から完成までにわたってチェックすることが品質保証の重要な仕事です。例えば電気を使う医療機器(医療用ACアダプターなど)には、基本的性能と安全性を定める一連の技術規格があります。電気を使う医療機器の開発には、このような規格に沿った性能が必須です。また、それを海外に向けて販売する場合、その国での法律も遵守する必要があります。以上のようにチェック項目は多岐にわたるため、効率よく正確にチェックできるような方法を考案することも、品質保証の業務です。

臨床開発・薬事

医療機器の製造・販売には、販売する国において「医療機器の販売をしてよい」という承認を得ることが必要です。これを薬事承認といいます。国ごとに薬事承認がおりる基準や求められる事項は異なるため、医療機器を販売する際は、各国にあわせた書類や実験結果などを用意して申請しなくてはいけません。また、この際に行われる実験は臨床実験と呼ばれており、医療機器の効果や安全性を示すためにも実施が必須です。臨床開発・薬事職では、以上のような薬事承認を得るために必要な書類やデータの収集・作成や、必要な臨床実験の実施などの業務を行います。

知的財産

知的財産とは、医療機器の製造販売にあたって社内で開発した技術やアイディアなどを守るため、特許の申請や商標の登録などを行う職種です。企業独自で開発した技術やアイディアなどは、特許や商標の登録を行っていないと、競合他社に真似をされる恐れがあります。真似をされて似た商品を製造販売された場合、自社の損失に繋がりかねません。以上のような事態を防ぐため、知的財産部門では社内の開発部門と連携し、技術やアイディアの権利化や特許出願に必要な手続きなどを担っています。また、取得した特許や商標を活用し、社外との知的財産に関わる交渉などを行うことも業務です。

医療機器業界で求められる人とおすすめの学部

医療用パワードスーツの実験の様子

医療機器業界を目指す場合、応募段階で資格の取得は必要ありません。必要な知識や資格については、入社後に習得できるよう研修制度が整えられている企業がほとんどです。
それでは具体的に、医療機器業界に向いている人の特徴、おすすめの学部なども見ていきましょう。

医療機器業界に向いている人

医療機器業界に向いている人の特徴は、以下の2つです。
・人の役に立ちたいという強い気持ちがある
・医療や機械など幅広い知識を身につける意欲がある

人の役に立ちたいという強い気持ちがある

医療機器は、人々の病気や怪我の治療に必ず用いられるものです。そのため「病気や怪我に苦しむ人の役に立ちたい」という気持ちがある方にとっては、大きなやりがいを感じられるでしょう。また、医療機器を実際に使う医療従事者にとっても、使いやすく便利な機器を開発する必要があります。そのため、実際に医療機器を使う人々の気持ちに寄り添って「よりよい医療機器を生み出すには、どうすればよいか?」を考えることが重要です。「実際に機械を触ることが好きで、自分の作った機械で人の役に立ちたい」という気持ちで向き合える人には、向いているといえます。

医療や機械など幅広い知識を身につける意欲がある

製造販売する医療機器を改善していくためには、豊富な医療などの知識を学ばなければいけません。なぜなら、医療機器を使用するのは病院の医師などであり、深い知識を持った専門家であるからです。医師の要望などをしっかり理解するためには、医療機器業界で働く人間も深い知識を身につけている必要があります。以上の理由から、直接関わる機械に関する知識だけでなく医療などの勉強まで、意欲を持って取り組める方には向いているでしょう。

医療機器業界で働くためにおすすめの学部・学科

レントゲン装置を学ぶ学生

医療機器業界の生産技術などの技術系職種を目指す場合は、工学部がおすすめです。工学では、自然科学の法則や理論、仕組みから得た知識を社会で実際に役立てるために、実用化を目指した技術開発や研究を行います。特に機械工学について学んでおくと、医療機器の製造・開発に知識や技術を活かせる場面が多いでしょう。

医療機器業界の営業などの事務系職種を目指す場合は、文系の学部でも応募可能です。しかし、技術系職種と関わる機会も多いため、機械工学についての知識がある方がよいでしょう。

工学について学べる大学、学部・学科には、以下のようなものがあります。

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私たちの病気や怪我の診断・治療・予防などに役立ち、人々の健康な生活を支えているのが医療機器業界の仕事です。「人々の役に立ちたい」という気持ちで向上心を持って仕事に取り組める方には、大きなやりがいを感じられるでしょう。
医療機器業界で働くための大学選びに悩んだ場合は「JOB-BIKI」の活用がおすすめです。「JOB-BIKI」の「就職先検索」では、医療機器業界の企業やその企業へ就職している先輩の出身大学が調べられます。検索方法は「就職先検索」の「業種から探す」を選択し「製造・機械」の「精密機械」を選択しましょう。医療機器業界への就職を目指すための、具体的な進路がイメージできるはずです。

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