診療放射線技師になるには?目指せる大学・学部と想定年収も紹介!
2023.03.16
診療放射線技師は、放射線を用いて検査や治療を行う専門家です。病気を見つけるために必要な検査を行う医療現場では欠かせない存在です。実際にどのような仕事を行っているのか、想像しづらいかもしれませんね。
学校の健康診断で、専門の人からの検査を受けた経験はありませんか?企業や学校で受ける健康診断では、医師と共に診療放射線技師も同行します。レントゲン検査や胸部X線検査を行っている人が、診療放射線技師です。
具体的にどのような検査を行っているのか、今回の記事では、診療放射線技師の詳しい仕事内容と目指せる大学を紹介します。主な就職先についてもお伝えしているので、興味のある方は参考にしてくださいね。
目次
診療放射線技師とは?
診療放射線技師とは、放射線を体に照射して検査や治療を行う医療技術職です。放射線とは、放射性物質から放出される粒子や電磁波のことです。目には見えず、さまざまなものを通り抜ける性質を持っています。この性質を利用して、医療現場では体の内部を見る検査や治療に使われています。
放射線は、医師、歯科医師、診療放射線技師の資格を持つ人しか取り扱えません。診療放射線技師は、国家資格のひとつで、放射線を取り扱うスペシャリストとして医療現場で活躍します。医師の指示のもと、レントゲンやCT検査など、放射線を用いたさまざまな検査を行います。外から見ただけではわからない病気の種類や病名、ケガの程度を医師が判断できるのは、診療放射線技師の検査を見ているからです。
診療放射線技師は、時には放射線を用いた治療を行います。がんなどの悪性腫瘍に放射線を照射し、治療します。外科手術のように臓器を取り除かずに治療を行えるので、患者さんの負担が少ないです。
また、診療放射線技師は、放射線の管理も行います。放射線は体に照射する量が一定量を超えると、体に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、放射線の取り扱いには十分気をつけなければなりません。医療機関では、放射線機器の設置や使用をするために、国や都道府県に届け出をし、許可をもらいます。
診療放射線技師は、日常的に放射線機器の点検を行い、患者さんに安全に使えるように管理しなければなりません。そのため、診療放射線技師は、適切な量の放射線が使用されているのか、定期的に放射線測定を行っています。
臨床検査技師との違い
診療放射線技能士と似た仕事で、検査を専門に行う臨床検査技師という仕事があります。臨床検査技師は、検体検査をメインに行います。血液検査やがん細胞の有無を調べる病理検査、輸血検査が主な業務です。ほかには、心電図検査や脳波検査などの生理検査を行います。検査を行うのは診療放射線技師と同じですが、検査項目や扱う機器が異なるのです。
診療放射線技師の仕事内容
診療放射線技師は、さまざまな仕事を行っています。大きく分けて5つの仕事内容について紹介していきますね。
画像検査・診断
画像診断検査は、診療放射線技能士の主な業務です。医師の指示のもと、医師が病気を診断するために画像情報を提供します。診療放射線技師が行う画像検査は、用途によってさまざまです。その中でもよく行われる6つの検査内容を紹介します。
・一般X線撮影
一般X線撮影では、放射線の1種であるX線を体に照射して体内を写します。X線は人体を通過する特徴を持つ放射線です。その特性を活かし、検査が必要な箇所にX線を当て、電気信号に変えてモニターに写します。
一般X線撮影は、胸部や腹部の検査や、骨折などの外傷による骨の検査を行います。いわゆるレントゲン検査と呼ばれるものですね。一般X線撮影は、ケガや病気を検査する際に、一番初めに行われることが多いです。
・乳房X線撮影
乳房X線撮影は、早期の乳がん発見のために行われる検査です。乳がん検査の際に行います。乳房を圧迫して撮影することで、わずかなX線でも小さな腫瘍や石灰化の影を見つけられます。
・CT検査
CT検査は、X線を使って体の断面を撮影する検査です。コンピューター処理し、内臓や骨格、血管などを3D画像化します。全身の細かい部分まで見られるので、内臓など体に異常がないかがわかります。
・骨密度検査
骨密度検査は、X線を使って骨密度を測定する検査です。骨の強度が低下し、骨折しやすくなっている骨粗しょう症かどうかを検査する際に用いられます。
・MRI検査
MRI検査は、放射線を使わずに、磁気共鳴画像診断装置と呼ばれる強力な磁石と電波を使って、体内を撮影する検査方法です。放射線を使わない検査のため、必ずしも診療放射線技師が担当しなければならない業務ではありません。
脳や子宮、血管などやわらかくて繊細な部分を撮影する際に行われる検査です。検査の実施状況や、勤務する病院の体制によって、診療放射線技師が担当する場合があります。
・超音波検査
超音波検査は、放射線の代わりに超音波を体にあて、戻ってくるエコーによって体内を検査するものです。超音波検査は、経験豊富な医療従事者が行える検査方法です。医師をはじめ、診療放射線技師以外にも、臨床検査技師や准看護師が行う場合もあります。
超音波検査は、腹部の臓器や心臓、甲状腺などを見る際に行います。放射線を体に照射しないため、体に負担がかかりません。妊娠時に退治の動きを見る際にも使われるほど、安全なものです。リアルタイムで体の状況が見られるため、画像検査よりも患者さんに状態を伝えやすいのが特徴です。ただし、骨や空気がある場所は明確な判断ができないなど、放射線を用いた画像検査よりも状態がわかりづらい部分もあります。
医用画像処理
医用画像処理とは、医師が診断しやすいように、撮影した画像を処理する仕事です。患部の状況がわかるようにしたり、内臓と骨を分離させて見やすくしたりします。
核医学検査
核医学検査は、CT検査やMRI検査とは異なり、臓器や組織の形ではなく、機能や代謝状態を確認する検査です。臓器は機能や代謝が衰えてくると形が変わっていくため、核医学検査によって病気の早期発見が実現できます。
核医学検査では、ガンマカメラと呼ばれる、放射線の1種であるガンマ線を撮影し、画像化できる機械を使用します。特定の臓器や組織に集まりやすい放射性医薬品を使い、体内から出てくる放射線から画像を得るのです。
放射線治療
放射線治療は、放射線治療を行うために作られた外部照射装置を使って行います。直線加速器と呼ばれる大型の機械リニアックを使うのが一般的です。リニアックとは、電気によって高速の素粒子を作り出す装置のことです。この機械を使って、高エネルギーのX線を患部に照射します。主にがん治療に使われ、高エネルギーの放射線を悪性腫瘍にあてて、がん細胞を破壊します。
放射線管理
診療放射線技師は、患者さんが浴びる放射線量を管理・記録するのも仕事のひとつです。なぜなら、放射線は人体に悪影響を及ぼすのではないかと、心配される患者さんがいるからです。医療現場では、検査によって病気を診断・治療するうえで得られる情報のほうが、放射線による体の影響よりも有益であると判断した場合にのみ、患者さんに放射線を用いた検査や治療を行います。
この際、体に及ぼす影響のほうが大きくならないように、最小の被ばく量に調整します。被ばくとは、放射線検査や放射線治療など、放射性物質を体の外側から受けることです。被ばくしたからといって、必ずしも体に悪影響が出るわけではありません。
一定以上の放射線量を受け続けたときに、はじめて体に異常をきたすものです。そうならないために、診療放射線技師は患者さんの放射線量を管理することが求められるのです。
診療放射線技師のやりがい
診療放射線技師の仕事のやりがいは、画像検査が医師の診断や治療に貢献できたときです。診療放射線技師は、ただ撮影すればいいというものではありません。撮影した画像の結果次第では、重篤な病気の原因が発見できる可能性もあり、反対に病気を見逃してしまうこともあります。診療放射線技師の撮影技術によって、病気の早期発見ができるかどうかが変わります。
診療放射線技師の検査した画像が医師の診断を左右するため、責任が伴う仕事です。だからこそ、検査した画像が病気の発見に寄与したり、治療により病状の改善がみられたりしたときは、大きなやりがいにつながります。実際、診療放射線技師の中には、医師から指名を受けて検査を行うほど信頼される人もいます。医師や看護師など、スタッフとの連携がなによりも大切です。医療現場のチームの一員としてチカラを発揮すれば、役立っている実感が得られるでしょう。
診療放射線技師の仕事の流れ
診療放射線技師の1日の仕事の流れを紹介します。勤務先や状況によって、仕事内容は異なります。ここでは、総合病院で働く診療放射線技師の一般的な仕事の流れをお伝えしますね。
1.機器の点検・診療準備
診療放射線技師は、出勤したら最初に放射線機器の点検を行います。機械を立ち上げ、実際に画像撮影ができるか、画像が表示されるか確認しなければなりません。総合病院などの大きな病院では、その日によって担当する検査機器が変わります。その日の自分の担当分の機器を点検し、検査できる状態にします。
2.ミーティング
診療が始まる前に、スタッフで予定の共有や事務連絡をします。その日入っている検査数などを確認し、特別な連絡があればミーティングのタイミングで全体に共有します。
3.検査
検査予約に合わせて、医師からの依頼内容を確認し、検査を実施します。検査数はその日の予約数によって異なります。予約患者だけではなく、緊急の対応など臨機応変に動かなければなりません。特に休日受診や救急対応を行っている病院では、予定どおりにいかない場合がほとんどです。日によって検査数は異なります。
4.画像処理・検像作業
画像検査を終えたら、すぐに医師が診断できるように画像処理を行います。次の検査予約までに間に合わせなければならないため、正確な処理技術とスピードが求められます。画像処理は、医師の依頼内容に沿うものでなければなりません。画像処理後は、画像を再確認する検像作業を行います。診療放射線技師が検像作業を終えたら、病院内のサーバーに画像をあげ、医師が患者さんに報告します。
5.機器点検・レポートの確認
その日の検査を終えたら、再度放射線機器の点検を行います。異常がないか、放射線の量は適切かどうかの確認作業です。
その後、その日に撮影した画像や読影レポートを確認します。読影レポートとは、診療技能士が画像検査した画像を医師がモニターで確認し、病気の状態を診断した画像診断報告書のことです。それらを確認したら、今後の検査予定を確認して退勤します。
総合病院の場合、入院患者や救急対応のために当直勤務もあります。その場合、夜間や休日にも出勤します。
診療放射線技師の想定年収
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、診療放射線技師の年収相場は546.7万円です。あくまでこの数字は全国平均なので、勤務先や年齢によって異なります。
救急患者を受け付けている病院では、休日出勤や夜間勤務もあります。特別手当がつくため、日勤体制の勤務先で働く放射線技能技師に比べると、年収の相場は高くなります。
年齢によっても異なるため、具体的な年収や月収相場が知りたい方は、実際の求人情報を見てみるのもいいですね。
診療放射線技師に求められる資質と能力
診療放射線技師は、放射線治療や検査のスペシャリストとして、高い技術と知識が必要です。画像検査をする上での撮影方法や処理技術などは、現場での経験を積む中で磨き続けるものです。医師が正しく診断できるように、創意工夫し続けなければなりません。
そのため、常に自分で考え、知識の習得を継続するチカラが求められます。学校で学んだ知識だけに甘んじることなく、アップデートし続けられる人は、医師や患者さんから頼りにされる診療放射線技師になれますよ。
また、診療放射線技師は、医師からの指示内容をくみ取るチカラも必要です。日頃からコミュニケーションをとる機会を持ち、医師の考えを理解する姿勢が求められます。凝り固まった考え方をしてしまうと、自分の視点だけに偏ってしまいます。医師や患者さんの立場から考え、どうすればよりわかりやすく、伝わりやすくなるのか、想像力をうまく働かせて考えてみてください。
診療放射線技師になるには
ここまで診療放射線技師の仕事内容について解説してきました。実際、診療放射線技師になるには、高校卒業後どのような道を歩めばいいのでしょうか?診療放射線技師の道のりと、目指せる大学について紹介しますね。
診療放射線技師の道のり
診療放射線技師になるには、診療放射線技師の国家資格に合格し、免許を取得しなければなりません。文部科学大臣指定の大学か都道府県知事指定の専門学校を卒業すれば、診療放射線技師の受験資格が得られます。
大学と専門学校のどちらを卒業しても、国家資格の受験資格を得ることができます。大学に進学した場合、より専門的な知識を学ぶために大学院に進学することもできますよ。
診療放射線技師を目指せる大学・学部
医療現場で活躍する診療放射線技師は、医療・福祉関係の大学で目指せます。ここでは、診療放射線技師を目指せる文部科学大臣指定の大学と学部を紹介します。
以下の大学で、診療放射線技師の勉強ができます。
大学選びの参考にしてくださいね。複数の都道府県にキャンパスがある大学もあるので、自分が住んでいる都道府県の近くにもキャンパスがあるかもしれません。
診療放射線技師を目指せる学部は、主に以下の4つです。
- 保健医療学部
- 医療技術学部
- 保健科学部
- 医療健康科学部
これらの学部では、放射線学科や診療放射線学科が選べます。たとえば「国際医療福祉大学」の「放射線・情報科学科」は、診療放射線技師の養成を目的としており、最新医療機器が充実しています。医療の進歩は早いので、最先端医療に対応できる学科で学ぶメリットは大きいでしょう。医学部が併設されているため、チーム医療についても学べます。どのような検査画像が求められるのかなど、医療現場を体験しないとわからないことが経験できますよ。
診療放射線技師を目指すならば、こういった大学や学部・学科について調べてみるといいですね。
診療放射線技師の就職先・キャリアプラン
診療放射線技師として働ける就職先と、キャリアプランについてお伝えします。診療放射線技師といえば、総合病院などの大きな病院での勤務イメージがあるかもしれません。しかし、診療放射線技師は幅広い医療現場で活躍しています。詳しく紹介していきますね。
診療放射線技師の主な就職先
診療放射線技師の主な就職先は、病院・診療所・保健所などの医療機関です。医療現場以外には、医療機器メーカーで研究開発を行う人もいます。それぞれの就職先について、詳しく紹介していきます。
総合病院
総合病院では、さまざまな症状の患者さんを検査します。総合病院などの大きな病院では、段階を踏んですべての検査領域が経験できますよ。はじめは一般X線撮影の検査から始まり、CT検査・MRI検査、骨密度検査や超音波検査というように、さまざまな実務経験を積めます。国立病院や大学病院ならば、最新の診療技術にふれられるのが魅力です。
専門病院・クリニック
クリニックでは、胸部X線撮影、CT検査、MRI検査が中心となります。婦人科や整形外科などの専門病院では、専門分野に併せた検査が中心です。婦人科ならば乳房X線撮影と骨密度検査、整形外科ならば一般X線撮影と骨密度検査というように、検査分野が限られます。
クリニックの規模や診療科目によって、診療放射線技師の仕事内容は異なります。診療放射線技師が1~3人体制で行われるような小規模なクリニックでは、すべての検査を一人に任されるでしょう。また、検査業務以外にも事務作業や院内のそうじ、受付業務などをを兼任する場合があるので、さまざまな業務への対応力が問われます。
検査施設
診療放射線技師は、健診を専門に行う検査施設でも活躍します。病院の健診・検診センターや健診クリニック、保健所などが該当します。検査業務は、胸部X線撮影、乳房X線撮影、CT検査、MRI検査が中心です。
検査施設で働く場合、施設内で検査するだけではなく、検診車で企業や学校をまわることもあります。
医療機器関連企業
医療機器関連企業は、診療放射線技師が扱う放射線機器を開発・販売する仕事です。製品開発のための医療機関とのやりとりや、医療機器を導入した医療機関に説明するのが仕事です。直接医療現場で働く仕事ではありませんが、診療放射線技師の知識が活かせます。
診療放射線技師のキャリアプラン
診療放射線技師の仕事には、明確な答えがあるわけではありません。患者さんの状態により、どのように撮影するのが適切かは異なります。日々勉強を重ね、試行錯誤しながら病気の早期発見ができるように努めます。まずは、医師や患者さんから「あなたの画像のおかげで病気がすぐに発見できた」と評価される診療放射線技師を目指すのが1つのステップです。経験を積んで、幅広い検査・画像処理技術を磨いていくのがいいですね。
また、専門分野をもってその道の専門家を目指すのも選択肢のひとつです。MRI検査機器の専門家、産科の専門家、心臓の専門家というように特化している人もいます。はじめから専門分野を決めるよりは、働く中で興味の出てきた分野を目指すのがいいですね。キャリアを限定してしまうと、後からほかの道に進みたくなったときに変更するのが大変です。それならば、最初は広く扱えるように経験を積んでから、専門分野の知識や技術を磨くのが賢明です。
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診療放射線技師の仕事内容と、目指せる大学についてお伝えしてきました。まずは、診療放射線技師の勉強ができる大学を調べるところから、はじめてみてはいかがでしょうか。
「JOB-BIKI」の大学検索で「医療・福祉」などのキーワードで検索すれば、医療や福祉関係の大学が一覧で見られますよ。高校生の今から情報収集をして、興味のある大学や職場を見つけてみてくださいね。