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社会保険労務士とは?仕事内容や必要な資格、目指せる大学や学部を紹介

2023.04.04

カテゴリー:
企業の労務担当と打ち合わせをする社会保険労務士の男性

社会保険労務士とは?

社会保険労務士は、労働・社会保険に関する法律や、人事・労務管理などの専門家です。「社労士」という略称が使われることもあります。

会社に雇用されて働く人や、会社を経営する人などは「労働基準法」などの法律で決められたルールを守って仕事をする必要があります。ただ、労働に関する法律は複雑なので、すべてを把握している人は少ないでしょう。そのため、法律違反となる条件で人を雇ってしまう会社や、不当な環境で働かされてしまう労働者などが問題になるケースもあります。そんなときに求められるのが、労働や社会保険などの法律知識を持つ社会保険労務士です。社会保険労務士の働きで、こういった問題を解決に導いたり、未然に防げたりすることがあります。

社会保険労務士の仕事内容

企業から相談を受ける社会保険労務士の女性

社会保険労務士の仕事は、1号業務・2号業務・3号業務の3種類に分けることができます。このうち、1号と2号は「独占業務」となり、社会保険労務士の資格を持っている人でなければ行うことはできません。

  • 1号 労働社会保険の手続き
  • 2号 提出手続き代行業務
  • 3号 コンサルティング業務

それぞれ詳しく解説します。

参考:労働社会保険手続業務|全国社会保険労務士会連合会 (shakaihokenroumushi.jp)

1号 労働社会保険の手続き

社会保険労務士の1号業務は、労働社会保険の手続きです。

労働社会保険とは働く人々を社会的に保護するための制度です。保険加入者は、ケガや病気、失業、老いなどの理由で働けなくなったときにお金を受け取れます。会社側は、従業員を雇う際に、書類を作成して社会保険の手続きをしなければいけません。

書類作成や提出手続きは、保険の種類によって計算方法が異なったり、窓口が異なったりして複雑です。そのため、社会保険労務士が代理で手続きを行う場合があります。

2号 帳簿書類等の作成

帳簿書類の作成は、社会保険労務士の2号業務です。

社会保険労務士が扱う帳簿書類とは、就業規則や賃金台帳(企業や雇用主が従業員に支払う給与や賞与、手当などの支給内容を記録した帳簿)を指します。経理が扱う収支管理の帳簿とは異なります。

こういった書類や帳簿などの作成では法律の専門知識が必要になるので、詳しくない人が作るとミスをしてしまうことも。そのため、正しい書類を作れる社会保険労務士のスキルが求められています。これらの書類作成を代理で行うことで、雇用主は法令を順守し、正確な給与支払いを行えます。また、社会保険労務士は雇用契約や給与体系に関するアドバイスを提供し、雇用関係におけるトラブルを未然に防ぎます。

帳簿書類等の作成は2号業務であり、社会保険労務士の資格を持っている人しか行えません。

3号 コンサルティング業務

コンサルティングは3号業務で、簡単にいうとお客様からの相談に乗り、専門家としての立場からアドバイスすることです。

社会保険労務士の場合、会社で働く社員の賃金の見直しや、就業規則の改善などを提案していきます。たとえば、賃金が低い場合、退職する人が出たり、採用応募者が減ったりといった問題が起こることがあります。

反対に、賃金が高すぎると経営が圧迫されてしまう可能性も。社会保険労務士は、こういった問題が起こらないように、適正な金額や賃金制度についてアドバイスします。

社会保険労務士の仕事のやりがい

社会保険労務士は、経営者の「会社で使える補助金を知りたい」「退職する人を減らしたい」といったさまざまな相談に乗ることがあります。自分の提案が、結果として企業の成長につながることも。責任は大きいですが、その分やりがいを感じられますよ。

また、働いている社員やアルバイトなどの「自分がどんな保険に入っているのか知りたい」「万が一、会社が倒産してしまったらどのくらいの失業保険をもらえるのか知りたい」といった疑問に答えることもあります。必要な場合は、適切な保険に入れるように会社へ働きかけることも。こうして労働者へのサポートを行い、悩みを解決できるのもやりがいにつながります。

社会保険労務士になる方法

社会保険労務士になる方法について、以下2つの観点で解説します。

  • 必要な資格や手続き
  • 社会保険労務士になるためにおすすめの学部

必要な資格や手続き

社会保険労務士になるためのルートは、以下のとおりです。

社会保険労務士になるための図

参考:社労士になるには|全国社会保険労務士会連合会 (shakaihokenroumushi.jp)

社会保険労務士になるためには国家試験である「社会保険労務士試験」に合格して資格を取る必要があります。

試験に合格できても、すぐに社会保険労務士として働けるわけではありません。「全国社会保険労務士会連合会」に登録することで仕事を始められます。

登録するためには、労務や人事などの実務経験を2年以上積むか、所定の講習を修了する必要があります。

このように、社会保険労務士の資格を生かして働けるようになるまでにはそれなりの時間がかかります。一度は別の職業に就職してから社会保険労務士を目指す人も。 ただ、社会保険労務士を募集している職場のなかには、資格取得を目指して勉強中の未経験者も応募可能なところもあります。そういった職場で仕事を学びながら試験勉強し、資格を取る人もいますよ。

社会保険労務士試験の受験資格を取得する方法は、いくつかあります。

たとえば、行政書士試験に合格した人や指定の国家試験に合格した人などにも受験資格があります。国・地方公共団体の公務員など、指定の職業での実務経験が3年以上ある人も試験を受けることができます。

高校生の皆さんの場合は大学で必要な数の単位を取得するか、大学・短大・専門学校などを卒業するのが最短ルートです。次の章では、社会保険労務士を目指せる学部・学科を紹介します。

社会保険労務士になるためにおすすめの学部学科

社会保険労務士を目指して大学に通う男性

社会保険労務士になるためにおすすめの学部は、以下のとおりです。

  • 法学部
  • 経営学部
  • 商学部
  • 経済学部

社会保険労務士の試験は難易度が高いことで有名です。試験を突破するためには1000時間以上の勉強が必要といわれることもあります。

合格のためには労働や社会保険などに関する法律をしっかりと勉強する必要があります。法学部法学科や法律学科などで法律の専門知識を学んでおくと、試験はもちろん、合格後の仕事でも役に立つでしょう! また、社会保険労務士の仕事は経営者にアドバイスする機会も多くなります。経営学部や商学部、経済学部などで経営についての専門知識を身に付けると、仕事のさまざまな場面で生かせますよ。代表的な学科には経営学科や経済学科、マーケティング学科などがあります。

社会保険労務士の想定年収

令和3年賃金構造基本統計調査によると、社会保険労務士の平均年収は1029.5万円といわれています。ただ、仕事を始めたばかりでいきなりこの年収を稼ぐのは難しいでしょう。経験を積んで独立し、多くのお客様から依頼をもらえるようになることで、年収1000万円を達成する人もいますよ。

また、社会保険労務士は「士業」という職業に含まれます。「弁護士」や「司法書士」のように「○○士」と付くことが特徴で、なるためには専門的な勉強をして資格を取る必要があります。その他の士業はどんな仕事なのか、気になる人はこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

【参考】職業情報提供サイト(日本版O-NET)
URL:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/83


弁護士になるには?司法試験を受けるまでの道のりやキャリアプラン
弁理士になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介
税理士になるためにはどうすれば良い?必要な資格やキャリアプラン

社会保険労務士の将来性

AIの発達により、社会保険労務士の仕事は減少していると聞いたことがあるかもしれません。将来性を考えると、これから社会保険労務士を目指すべきかどうか悩んでいる人もいるでしょう。

結論から言うと、社会保険労務士の仕事は今後もニーズが高まる見込みです。確かに、1号業務の書類作成や2号業務の帳簿書類等の作成は、AIに取って代わられる可能性があるかもしれません。

しかし、3号業務であるコンサルティング業務は、まだまだ機械で行うのは難しく、社労士の手が必要と言われています。

コンサルティング業務は、難しい法律ルールの理解に加え、個人や企業の状況に合ったアドバイスを提供する必要があります。働き方改革や人手不足が進むいま、企業の悩みを解決する社会保険労務士の需要は、今後も高まると予想されます。

社会保険労務士に求められるスキル

法律の内容を確認する社会保険労務士の男性

社会保険労務士の仕事は、どんな知識・技術が必要とされるのでしょうか。こちらでは、社会保険労務士に求められる主なスキルをご紹介します。

法律に関する最新情報を収集するスキル

社会保険労務士には「労働基準法」や「雇用保険法」などの法律の知識が必要です。法改正に迅速に対応しなければならないので、法律関連の最新情報をつねにチェックして取り入れることが求められます。

数字に強く正確に事務処理ができるスキル

社会保険労務士の仕事では、給料や保険料などの数字を計算する機会がたくさんあります。数字に強い人なら的確に計算し、間違いのない結果を出すことができるでしょう。不備のない書類を作成するため、細かいミスなく正確に事務処理できるスキルも欠かせません。

正義感を持って対応できるスキル

社会保険労務士として働いていると、従業員を違法な環境で働かせているブラック企業に遭遇することもあります。こういった会社を減らすために、経営者の認識が間違っているときは正しい専門知識を教えることも、社会保険労務士の大事な役目です。仕事を続けていくには、ブラック企業に対して毅然とした態度で立ち向かえる正義感も必要といえますね。

社労士とよく比較される仕事

社労士と比較される仕事として、以下の3つを紹介します。

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーは、お金に関する計画やアドバイスを提供する専門家で、お客さんの生活費、貯金、税金、年金などに関する広範な相談に応じます。お金の問題を解決するために計画を立てて、お客さん人生の目標を実現するためにサポートします。社会保険労務士は、雇用と社会保険のプロであり、ファイナンシャルプランナーは、お金の管理や投資のプロと言えます。

行政書士

行政書士は、法的な手続きや書類作成の専門家です。戸籍謄本の取得や会社設立手続き、不動産登記など、行政機関との連携が中心です。幅広い法的手続きを代行し、お客さんの法的な義務遵守を支援します。

社会保険労務士は雇用・労働に関連する専門家であり、行政書士は法的な手続きのプロです。

税理士

税理士は、税金に関する専門家で、個人や企業が法令に基づいて正確かつ効率的に税金を申告・支払うためのアドバイスや手続きを行います。

具体的には、税務申告書の作成や税務調査対応、節税アドバイスなどが挙げられます。また、お客さんに最適な税務戦略を提案し、法的な規定に基づいた節税や合法的な税金の最適化をサポートします。

社会保険労務士は雇用と社会保険を扱うのに対し、税理士は税金や財務全般を扱います。

社会保険労務士が働く場所

社会保険労務士事務所に所属する社会保険労務士たち

社会保険労務士の就職先で代表的なのが社会保険労務士事務所です。企業や個人のお客様からの依頼を受けて、それぞれの要望に合わせたサポートを行います。弁護士事務所や税理士事務所など、ほかの士業事務所で社会保険労務士が募集されることも。

そのほかには、企業の人事部や総務部などで社会保険労務士の資格を持つ人が募集されていることがあります。この場合は、就職した会社の労働管理などを任されることになります。また、人事・労務のコンサルティング会社で働く社会保険労務士の方もいますよ。

社会保険労務士のキャリアプラン

社会保険労務士の資格を持っていると、専門性の高さを生かしながら仕事を続けていくことができます。就職した企業に長く勤める人もいれば、経験を積んで独立し、自分の事務所を持つ人も。また、後進の育成に携わりたい場合は、社会保険労務士を目指す人向けのスクール講師になることもありますよ。社会保険労務士としてどんな働き方をしていきたいかによって、将来の方向性も変わってくるでしょう。

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社会保険労務士になるためには法律の専門知識を身に付け、難しい試験に合格しなければいけません。大学の法学部などで学ぶと、試験や仕事に役立つ知識を身に付けられますよ。社会保険労務士を目指せる大学に興味がわいたら、ぜひ「JOB-BIKI」を活用して調べてみてください。「就職先検索」で「社会保険労務士」と入力して検索すると、社会保険労務士の資格を生かせる就職先や、就職した人の出身大学をチェックできますよ。

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