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検察事務官になるには?仕事内容や求められる資質・能力などを紹介

2023.05.23

カテゴリー:
検察官に付きそう検察事務官

高校生のみなさんは、検察事務官という仕事をご存知でしょうか?検察事務官は、検察官をサポートする重要な仕事です。この生地では、検察事務官の仕事内容や求められる資質や能力、なるための方法についてお伝えします。目指す大学・学部についても解説していますので、進路選びの参考にしてください。

検察事務官とは?

検察事務官とは、検察官をサポートする職業です。検察庁で国家公務員として働き、事件を起こしてしまった被疑者を裁判にかけるかどうかを決める検察官の仕事をお手伝いします。実際、検察事務官が行う仕事にはどのようなものがあるのでしょうか?仕事内容ややりがい、気になる年収について解説していきます。

検察事務官の仕事内容

検察事務官の仕事内容は、殺人、傷害、窃盗などの犯罪行為にあたる刑事事件に関わるものです。検察事務官が勤める検察庁には、「捜査公判部門」「検務部門」「事務局部門」の3つの部門があり、それぞれの部門ごとに検察事務官が配置されます。部門ごとに仕事内容が異なるので、それぞれ詳しく解説していきますね。

・捜査公判部門
捜査公判部門の検察事務官は、検察官が捜査・公判業務 を行いやすいようにサポートしていくのが仕事です。検察官が行う捜査とは、犯罪や事件を詳しく調べて、起訴するかどうかを決めるために行います。被疑者や関係者から話を聞き、裁判が必要と判断した被疑者に対しては、裁判を求めます。

公判とは、裁判の中でも誰でも傍聴できる裁判のことです。起訴された刑事事件で、公の法廷の場で議論を繰り広げて判決を下すことをいいます。裁判には大きくわけると民事裁判と刑事裁判の2つがありますが、刑事裁判の場合のみ公判の形をとります。検察官が担当する事件は刑事事件なので、検察官が出席する裁判はすべて公判になります。検察官が刑事事件の裁判を行う際に、「公判に出席する」というのはそのためです。

検察事務官は、検察官が起訴不起訴の判断をくだすために必要な被疑者への取り調べや、参考人への事情聴取に同席します。検察官の質問に答える被疑者や参考人が話す内容にもとづいて、検察事務官が供述調書を作成します。検察事務官が作成する供述調書は、裁判の証拠となる重要なものです。

また、裁判を行う場合は、裁判所に提出するための事件記録の管理、検察庁内の各部門の人たちや警察など裁判の訴訟を起こすうえでの関係者と連絡を取るのも仕事です。

検察事務官が、裁判所に立ち会う場合は、検察官とともに起訴された事件の事件記録や証拠品をもとに、法律上の問題点や事件の立証を行う方針を検討します。公平な裁判ができるように、検察官と二人三脚で進めていきます。捜査公判部門で働く検察事務官は、検察官の捜査や公判に立ち会うため、立会事務官とも呼ばれているんですよ。

捜査・公判部門で働く検察事務官のなかでも、一定の捜査経験を積んだ人は、自ら被疑者の取り調べを行うこともあります。検察官に取り扱いを命じられた場合に限り、捜査や起訴・不起訴処分の決定を行います。

・検務部門
検務部門では、刑事事件に関わる幅広い業務を行います。検務部門で働く検察事務官が行う内容は多岐に渡るため、それぞれの担当にわかれて仕事を行うのが一般的です。検務部門の担当は以下の7つです。

  • 事件事務:捜査機関から送られてきた事件の受理手続き、起訴・不起訴に関する事務。
  • 令状事務 :裁判所に逮捕状や勾留状などの令状請求。執行に関する事務。
  • 証拠品事務:捜査機関から送られてきた証拠品の保管、処分や返却に伴う事務。
  • 執行事務:刑事裁判の判決内容にもとづいた刑執行に関する事務。
  • 徴収事務:裁判で罰金が確定した者から徴収し、未納者に催促を行うなど徴収に関する事務。
  • 犯歴事務:有罪の確定裁判を受けた者の犯罪歴の調査や管理にともなう事務。
  • 記録事務:事件の記録等の保管・管理に関する事務

上記で紹介した仕事内容のほかにも、検察庁への各種相談対応や被疑者、被告人の社会復帰支援や再犯防止も行っています。起訴・不起訴に関わる対応だけではなく、事件を起こしてしまった人のその後まで関わるのが検察事務官の仕事です。保護観察所や地方自治体などと連携して、犯罪を繰り返してしまわないようにサポートしているんですよ。

・事務局部門
事務局部門で働く検察事務官は、「総務事務」と「会計事務」にわかれます。総務事務では、検察庁で働く職員の勤務時間や給与、福利厚生に関わる業務を行います。一般的な企業にある人事部署のような仕事をイメージするとわかりやすいです。ほかにも、職員の健康管理に関わる事務や、文書の受付・発送なども行います。

会計事務では、事件を起こした人に罰金が発生した場合に、罰金などの納付に関する事務手続きを行います。業務に必要な物品の調達、職員の出張旅費の支給など、検察庁で働く職員をサポートするのが事務局部門の仕事です。

検察事務官のやりがい

検察事務官は、さまざまな部門の仕事から検察官の業務をサポートします。検務部門の仕事では、検察官が捜査・公判を進めるうえで必要になるものの手続きに関わります。検察官の仕事が円滑に進められる助けができるため、結果的に事件の真相解明やその後の被疑者の罪の決定などを行う際にも役立つでしょう。

ほかにも、社会復帰支援や再発防止を行っているため、目の前の事件解決に努めるだけではなく、社会に出るうえでハンデになりやすい人たちに救いの手を差し伸べられます。一人ひとりにかける時間はそれほど多いものではないかもしれません。しかし、検察事務官の支援によって、罪を犯してしまった人が罪を償ってから、社会でやりがいを持って働いている姿を見た時には、大きなやりがいが感じられます。

立会事務官は、検察官と一緒に事件の真相解明に同行します。二人三脚で刑事事件の真相を究明し、解明できた時には大きなやりがいが感じられるでしょう。立会事務官は、事件に直接携われる点にやりがいを感じる人が多いようです。

検察事務官はさまざまな業務を経験できるため、違った立場から検察官・検察庁を支えられる職業です。人をサポートするのが好き、人を支えて役に立ちたいという思いがある人は、さまざまな業務を通してやりがいが感じられるでしょう。

検察事務官の仕事の流れ

検察庁で働く検察事務官

検察事務官は、配属される部門によって仕事内容が異なります。ここでは、検察事務官の中でもイメージが強い、捜査・公判部門の一般的な仕事の流れについて紹介します。

・1.被疑者(在宅事件)取り調べ・参考人事情聴取
立会事務官は、警察などの捜査を専門とする場所から送られてくる、事件を起こした被疑者の取り調べや参考人から話を聞くために事情聴取に同席します。裁判所に提出するために、検察官が話を聞いている様子をしっかり記録し、供述調書にまとめるのが立会事務官の大切な役目です。

在宅事件とは、事件を起こしてしまった被疑者や被告人を拘束せずに、自然な状態で捜査や裁判が進められる刑事事件のことをいいます。事件に関する話を聞く参考人は、事件の状況を知っている被害者や目撃者などです。

・2.被疑者(身柄事件)取り調べ
身柄事件は、在宅事件とは反対に、すでに警察などに逮捕された状態で捜査や裁判が進められる事件です。取り調べでは、身体を拘束された状態の被疑者から話を聞くことになります。検察官が、検察庁に送られてくる被疑者に対して、「やっていないことはあるのか」「本当は事件を起こしていないのか」など、弁解の機会を与えます。被疑者からの供述を聞きながら、真偽を確かめるために検察官による取り調べが行われていくんですね。そのうえで留置する必要性があるのかどうか、検察官が最終的な判断を行います。立会事務官は、検察官の判断に従って、勾留か釈放の手続きに必要な書類作成を行います。

・3.公判準備
検察官が裁判に立ち会うことが決まったら、検察官の指示を受けて裁判に必要な書類を作成し、裁判所に提出します。裁判の立会をしている間は、検察事務官は別の裁判の準備を行ったり、参考人を法廷に案内したりと慌ただしく動きます。事件によっては、被害者支援員とともに法廷で証言をする参考人に付きそう場合もあるんですよ。検察官が法廷に立っている間、検察事務官はさまざまな面で裁判をサポートしているのです。

・4.決裁準備
検察官が捜査を担当している事件の起訴・不起訴の処理を行うために準備するのも、立会事務官の仕事です。判決を下すために必要な書類の準備や、警察等の関係機関との調整を行います。

検察事務官の想定年収

検察事務官の年収はどれくらいなのか、気になるところですよね。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査 」によると、約945万円という結果が出ています。

検察庁で国家公務員として働く検察事務官は、刑事事件に携わる重要な業務を担っているため、責任の重い仕事です。そのため、平均年収を比較 すると高くなっているのです。

検察事務官に必要な資質・能力

検察事務官になるためには、どのような資質や能力が求められるのでしょうか?刑事事件に携わる検察事務官に必要な資質・能力について見ていきましょう。

正義感・使命感がある

正義感や使命感が強い人は、検察事務官に向いています。検察事務官は、人の人生を左右する仕事に関わります。刑事事件は、内容を聞くだけで辛いものもあります。そうした事件を起こしてしまった被疑者と立ち向かい、今後このような事件が起きないようにと、少しでも社会を良くしたいと思える気持ちが大切です。

使命感を持って行える人は、法に反する行為を見逃さず、社会の治安と秩序を守ることに貢献したい思いがあります。検察事務官は、そうした強い思いがなければ続けられない大変な仕事です。

人のサポートをするのが好き

検察事務官は、検察官の業務をサポートするのが仕事です。検察官とは異なり、自分が最前線にたって仕事をする機会は少ないです。そのため、人のサポートをしたり、支えたりするのが好きな人が向いています。

「裏方として前に立つ人の助けになりたい!」と思える人は、検察事務官に向いています。しかし、自分が最前線に立って行動したい人は、検察事務官よりも検察官の仕事があっているかもしれませんね。

法律に関心がある

検察事務官として働くためには、法律に関心があるかどうかも大切なポイントです。刑事事件の捜査や裁判に関わる機会のある検察事務官は、法律に基づいて考える機会が出てきます。特に直接捜査や裁判に関わる立会事務官は、被疑者の事件を立証するためには法律に関する知識が欠かせません。

法律は難しそう、たくさんあって覚えるのが大変そうというイメージがあるかもしれません。しかし、検察事務官の仕事に興味を持っているみなさんならば、法律にも興味を持って取り組めるでしょう。最初から全部を完璧に覚えようとする必要はないので、まずは法律に興味や関心を向けてみるところから始めてみてください。本格的な勉強は、法律の勉強ができる大学に入ってからできますよ。

正確に物事を進められる

検察事務官の仕事の中には、刑事事件に関わる業務を進めるために重要な業務がたくさんあります。例えば、裁判を左右する供述調書では、正確な記述が求められます。文章で記載する内容は、書き方によっては受け手が間違った解釈をする可能性があります。思ってもいない方向に伝わった結果、被疑者の心象が悪くなってしまうかもしれません。ほかにも、検察事務官は捜査や裁判に関わるさまざまな事務作業を行います。そうした業務を間違いなくこなせる人でなければ、検察事務官は務まりません。

事務作業はコツコツとした地道な作業が多いですが、正しく処理できる人が信頼される検察事務官となれるでしょう。高校生の今のうちから、自分が行ったことが間違っていないかを確認する癖をつけてみてください。テストのケアレスミスの確認や、友達に送るLINEのメッセージに誤解を与えるような伝わり方がないかなど、最終確認する習慣を作ってみましょう。そうすれば、正確に物事を進められる人になれますよ。

客観的に物事を見る力

検察事務官は、さまざまな刑事事件に携わります。時には、被疑者に対して怒りを感じる時もあるかもしれません。そのような時に主観で「この人が悪いから、重い罪を与えてほしい!」と考えてしまう人は、検察事務官には向いていません。

人の人生を左右する仕事なので、感情に流されず、客観的に物事を見る力が求められます。冷静に物事を分析し、自分の感情に左右されずに証拠や供述などの事実をもとに判断する力が必要です。

高校生のみなさんは、普段の生活の中で友達との決め事や、学校での話し合いなどを行う時に、自分の意見を一度捨てて人の意見を聞くことを意識してみてください。以前までは「自分はこうしたいのに!」と思っていたことでも、客観的に見る意識をすると「自分の意見はあるけれど、周りは違うことをやりたいんだな…… 」と冷静に考えられるようになりますよ。客観的に物事が見られるようになると、自分が希望していない方向に物事が進んだとしても、納得できるようになるでしょう。

柔軟な対応力

検察事務官の仕事内容でもお伝えしたように、検察事務官は3つの部門にわかれて仕事を行います。1つの部門の中でも行う仕事内容は幅広く、柔軟な対応力が求められるでしょう。また、刑事事件を扱う検察庁は、事件の捜査をする中で、突然展開が180度変わることもあります。そうした突然の自体に柔軟に対応する必要があります。

1つのことだけをずっと続けたい人や、急な変化についていけない人には検察事務官の仕事は難しいかもしれません。

検察事務官になるための方法とは?

検察事務官を目指して勉強する学生

検察事務官になるためには、具体的にどのような進路を歩めばよいのでしょうか?検察事務官を目指せる大学や学部、必要な資格や受験すべき試験についてお伝えします。検察事務官を目指す人は、進路選びの参考にしてくださいね。

検察事務官になるための勉強ができる大学・学部

検察事務官になるには、法律知識が学べる法学部のある大学に進学するのが一般的です。求められる能力でもお伝えしたように、検察事務官として働くうえでは、法律の知識が必要です。

法学部のある大学であれば、私立でも国公立でも検察事務官を目指せます。しかし、大学はたくさんあってどの大学を選べばいいのか難しいですよね。参考として、高校3年生に上がったばかりの人たちにリクルートが調査した「2020年の進学ブランド力調査 」の結果をお見せします。

こちらは3つの地方の法学部の中で、高校3年生が選んだランキングです。

  • 関東1位「明治大学」、2位「早稲田大学」、3位「中央大学」、4位「青山学院大学」
  • 東海1位「南山大学」、2位「名城大学」、3位「中京大学」、4位「愛知大学」
  • 関西1位「関西大学」、2位「同志社大学」、3位「近畿大学」、4位「関西学院大学」

こちらの結果はブランド力調査のため、比較的有名な大学が選ばれています。法学部のある大学を探す時の1つの参考としてください。

検察事務官に必要な資格や受験すべき試験

検察事務官は検察庁に所属する国家公務員であるため、人事院が行う「国家公務員採用一般職試験」に合格する必要があります。一般職試験には、大卒程度試験と高卒者試験の2つがあります。それぞれの試験内容について見ていきましょう。

・高卒者試験
検察事務官が受ける高卒者試験は、事務区分です。第1次試験が筆記試験、第2次試験では人物試験と身体検査が行われます。身体検査では、胸部疾患や尿、その他一般内科系の検査が行われます。第1次試験は3つの試験種目にわかれています。

  • 基礎能力試験(多肢選択式)
  • 適性試験(多肢選択式)
  • 作文試験 

高卒者試験の試験内容は、主に事務・税務の分野が出題されます。高卒者試験のスケジュールは、例年第1次試験が9月頃、第2次試験が10月頃です。最終合格者発表は11月頃に行われます。

・大卒程度試験
検察事務官を目指す人は、大卒程度試験の試験では、行政区分を受験します。高卒者試験同様、筆記試験の第1次試験と面接の第2次試験にわかれます。筆記試験では、3つの試験種目が実施されますよ。

  • 基礎能力試験(多肢選択式)
  • 専門試験(多肢選択式)
  • 一般論文試験 1題

専門試験では、政治学、行政学、憲法、行政法が出題されます。大卒程度の試験のスケジュールは、例年では第1次試験が6月に行われ、第2次試験が7月に行われています。合格発表は8月頃に行われるのが通年の流れです。

大卒程度試験の合格者の方が、検察事務官の採用数は多い傾向にあります。できれば大卒程度試験を目指すのがよいでしょう。

検察事務官になるために目指すべき就職先

検察事務官が働く検察庁

検察事務官になるためには、各地方検察庁への就職を目指しましょう。国家公務員採用一般職試験に合格した後、全国8箇所に設置された法務総合研究所か、希望の検察庁で面接を受け、検察事務官となります。基本的には、採用された地方検察庁で働きます。

その後、検察のスペシャリストを養成するために、検察官等が講師となって実務に即した講義等研修として受けるのが一般的な流れです。研修ははじめだけではなく、検察事務官になってから3年後に行われる「中等科研修」、7年後に専門的な知識や技術習得のために行われる「専修科研修」というように、職歴にあわせて研修制度が用意されています。

検察事務官になった後のキャリアプラン

検察事務官になった後は、1~2年のサイクルで各部門に移りさまざまな仕事経験を積んでいきます。キャリアに合わせて、一般職員、専門官、各部門管理職等上位職というようにキャリアップしていくのが、検察事務官の一般的なキャリアプランの流れです。

また、検察事務官から、副検事・特任検事になる方法もあります。特任検事の仕事内容は、検察官と同じものです。副検事になるには、検察事務官として一定の在籍要件を満たし、試験を受けて、選考に合格するとなれます。

さらに、3年以上副検事として働くと、特任検事を目指せる検察官特別考試が受けられるんです。その試験に合格すると特任検事となり、検察官と同じ業務を行えます。

検察事務官としてのキャリアを積み上げていくか、副検事・特任検事と検察官への道を歩むのか、検察事務官になった後は主に2つのキャリアプランが考えられますね。

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検察事務官は、検察官をサポートする重要な役割を持つ職業です。人の人生を左右する刑事事件を取り扱うため、責任を伴いますが、大きなやりがいが感じられる仕事でもあります。

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