空間デザイナーになるには?仕事内容や求められる資質・能力を紹介
2022.08.02
最新のビルやイルミネーションなど、スタイリッシュで快適な空間に、思わず魅了された経験がある人もいるのでは。その空間を作り上げる職業、「空間デザイナー」に興味を持ったことはありませんか?
この記事では、空間デザイナーの仕事内容や必要とされる資質と能力、目指すための方法を解説しています。適した進学先や有名な空間デザイナーの出身大学も紹介しているので、ぜひ進路選択の参考にしてくださいね。
目次
空間デザイナーとは?
空間デザイナーとは、商業施設や宿泊施設をはじめ、ショーウインドーやイルミネーションなど、空間の演出を手掛ける仕事です。建物の内装・外装はもちろんのこと、照明やインテリアなどの企画・設計から担当することもあれば、既存の空間をアレンジして演出することも。屋内外を問わず、あらゆる空間デザインに携わるのが特徴です。
空間デザインには建築やデザイン、カラーコーディネートなど幅広い知見が求められます。注意したいのは、空間デザイナーは単に「凝ったデザイン」「独創的なデザイン」の空間を作っているのではないこと。あくまで利用する人の視点に立ってデザインする役割を担っているのです。空間デザイナーの仕事のすごさ、伝わりましたか?
空間デザイナーとインテリアデザイナーの違い
空間デザイナーと似た仕事に「インテリアデザイナー」があります。両者の手掛ける仕事の違いは下記のとおりです。
■空間デザイナーとインテリアデザイナーの仕事の違い
空間デザイナー | インテリアデザイナー | |
主な場所 | 屋内外 | 屋内 |
手掛ける作品の規模 | 大規模なものも含まれる | 比較的小規模 |
手掛ける作品の例 | ・イベントスペース ・ホテルのロビー ・ショーウインドー | ・店舗の内装 ・ホテル室内の内装 ・住宅の内装 |
空間デザイナーとインテリアデザイナーは仕事内容に一応の区別はあるもの、仕事内容によっては、空間デザイナーがインテリアデザイナーの役割も兼ねていて、空間デザイナーが建物の内装も含めて担当する場合も。厳密に線引きされているわけではなく、言い換えれば実力さえあれば、どちらも幅広くこなせてしまう仕事といえますね。
空間デザイナーの仕事内容
空間デザイナーが手掛けるデザインは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?一例として、下記のような建物の内外装デザインを担当しています。
<空間デザイナーが手掛ける空間の一例>
・イベントスペース
・ホテルのロビー
・ショーウインドー
・美術館、博物館
手掛ける施設や場所によって、クライアント(仕事を依頼してきた企業や人)から要望されるデザインコンセプトはさまざま。空間デザイナーはアイディアを提案するだけでなく、実際に形にする施工業者に指示を出し、施工が完了するまで見届け、クライアントに完成品を引き渡すところまでが仕事なのです。
空間デザイナーの仕事のやりがい
空間デザイナーが携わる仕事は、イルミネーションなど大掛かりなものも珍しくありません。多くの人が訪れる施設の演出を手掛ければ、実際に自分の作品をたくさんの人に見てもらうことができます。自分がデザインした空間に人が感動して写真を撮ったり、快適そうに過ごしたりしている様子を見れば、空間デザイナーとして大きなやりがいを覚えることでしょう。
優れた空間デザインによってクライアントの企業イメージが向上したり、集客や売上アップにつながったりすることもあります。そうすれば、クライアントから直々に感謝され、「作品を手掛けて良かった」と実感できるはずですし、評判が評判を呼んで次の仕事も舞い込むはず!
空間デザイナーの仕事の流れ
空間デザイナーの仕事の流れは、手掛ける空間のコンセプトや場所によって大きく異なります。ここでは、一般的な仕事の流れを見ていきましょう。
1. クライアントとの打ち合わせ
クライアントから依頼を受け、イメージしている空間やコンセプトについて要望や注意点などの聞き取りを行います。クライアントの中でまだコンセプトが十分に固まっていないこともあるため、意見やアイディアを出し合いながら、方針を固めていきます。
2. デザイン案の作成・提案
クライアントから聞き取った要望などをもとに、デザイン案にまとめていきます。ラフスケッチや図面で作成することもあれば、模型を作成したりCGパース(一定の図法で描いた立体的な絵のこと)で表現したりすることもあり、提案方法はさまざま。
空間デザイナーにはアーティストの側面と、現実的に施工可能かどうかを判断するビジネスパーソンの側面の両方が求められます。提案が予算内に収まるように材料費や工事費を試算した上で、デザイン案を実現に向けて固めていくのです。
3. 施工業者の選定
施工業者を選定し、発注するのも空間デザイナーの重要な仕事のひとつ。イメージどおりに仕上げる技術力があり、予算内で施工可能な業者を選ぶ必要があります。施工業者と打ち合わせを重ね、工事のスケジュールやデザイン上の留意点を事前にしっかり共有しておくことも、いい仕事のための大切なポイントです。施工業者はクライアントが指定する場合もあります。
4. 施工現場の訪問・指示出し
施工が始まってからも現場を訪れ、工事の進み具合やイメージとのずれがないかのチェックを行います。必要に応じて施工業者に指示を出し、調整していくことで、空間デザイナーやクライアントのイメージどおりに仕上げていくのです。
5. 完成後の引き渡し
工事が完了したら、空間デザイナー自身が仕上がりをチェック!イメージどおりに出来上がっているかを確認します。気になる点があれば納得いくまで業者と微調整や修正作業を行うことも珍しくありません。最終チェックが完了したら、いよいよクライアントに作品を引き渡します。
空間デザイナーの年収
空間デザイナーの平均年収は400~450万円ですが、これはあくまでも会社勤めのデザイナー全体の平均年収です。空間デザイナーになったばかりの頃は、より低い年収で働く可能性も十分にあります。反対に、経験が豊富で数多くの優れた空間デザインを手掛けてきたベテランになると、高収入を得ている人も。
実力ある空間デザイナーの中には、独立して個人事務所を立ち上げる人もいます。複数のスタッフを抱える経営者となれば、さらに多くの仕事と収入を得ることもできるでしょう。空間デザイナーの年収は経験や実績によって大きく変わるので、独立を目指してがんばりたいところですね。
空間デザイナーに必要な資質と能力
ここまで読んでみて、空間デザイナーを目指すにはどのような資質や能力が必要なのか、気になっていませんか?空間デザイナーは仕事の幅広さもあって、求められる能力も多岐にわたります。具体的にどのような資質と能力を必要とされるのか、見ていきましょう。
好奇心
世の中には、優れた空間デザイン作品がたくさんあります。有名な作品は日本国内から海外まで多数あるため、空間デザインを「自分の目で確かめるために現地へ行こう」と思える好奇心が必要です。
また、空間デザインのヒントになるのは、建築やデザイン分野の知見だけではありません。幅広い分野に興味を持ち、インプットしようとする前向きな姿勢も求められます。
探究力
空間デザインには決まった正解はなく、クライアントのイメージに近づけるためのアプローチもひとつだけではありません。「どんな表現方法が可能なのか、より良い表現方法はないか」を常に考え、自分だからこそ発案できるデザインを世の中に送り出していく必要があります。空間デザインの世界では、常に新しい表現やより良い機能性を探っていく探究力が求められるのです。
デザイン力
空間デザインを作り上げていくにあたって、デザイン力は必要不可欠なスキルといえるでしょう。空間デザイナーが頭に浮かんだイメージを「伝える力」がデザイン力です。イメージを伝えるために、建築やインテリアの知識のほか、美的センスや色彩感覚も必要になってくるでしょう。
また、空間デザインには芸術的要素があるとはいえ、同時に実用性が問われるもの。独りよがりにならないよう、客観的な視点で機能面や使い勝手など、使う人のことも考えたデザイン力が求められます。
設計力
空間デザインを世に送り出すには、実際に作り上げる施工業者に設計図面を示す必要があります。建築の基本的な知識・技能と、正確な設計ができる能力を身につけなくてはなりません。プロジェクトによっては建築士などと協力しながら、ひとつの空間をデザインしていくことも。建築分野の専門家と対等な立場で話せるだけの知識・技能を身につけておくことは、アイディアを形にしていく上で欠かせないのです。
空間デザイナーになるための方法とは?
空間デザイナーになるには、どのような進路を選べば良いのでしょうか。取得しておくべき資格や、空間デザイナーになるために目指したい就職先を紹介します。
空間デザイナーの世界の現状
空間デザインを必要とする建物や場所の数だけ、空間デザイナーの活躍の場があります。仮にショッピングを楽しむとしたら、殺風景なビルよりも、おしゃれで雰囲気の良いお店で買い物をしたいですよね?その意味で、今後も空間デザイナーの需要は衰えそうにありません。
世の中にモノがあふれている現代だからこそ、「本当に欲しいモノを買う」人が増えつつある中、企業にとって企業やブランドのイメージアップは重要な戦略となっているのです。
さらに、近年は「便利」「快適」なだけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、地球環境や多様性への配慮が重視されています。環境に配慮したり、障害のある人などにとっても過ごしやすかったりする空間づくりが空間デザイナーにも求められているのです。空間デザインに興味がある高校生の皆さんは、斬新さだけではなく、サステナビリティやダイバーシティという言葉についても、しっかりと理解しておく必要がありそうですよ。
空間デザイナーになるための勉強ができる大学・学部
空間デザインは独立したひとつの学問で学ぶというより、複数の学問分野が複雑に組み合わさっているものといえます。そのため、空間デザイナーになるための勉強ができる大学・学部も幅広いのです。
例えば、芸術・デザイン関係の勉強なら、インテリアデザイン科や空間デザイン科など。これらは、美術大学に設置されています。また、建築学科で学ぶ場合もあります。
空間デザイナーを目指すためのルートはひとつではありません。自分が学びたい内容や目指したいデザイナー像に合わせて、進路を考えてみてはいかがでしょうか?
<有名空間デザイナーの出身校>
・伊藤隆道(東京芸術大学 美術学部工芸科)
・倉俣史朗(桑沢デザイン研究所 リビングデザイン科)
・鈴木恵千代(多摩美術大学 建築学科)
・ヤマザキミノリ(東京芸術大学 工芸科)
・湯沢幸子(東京造形大学 造形学部美術学科卒業)
・吉岡徳仁(桑沢デザイン研究所)
※50音順・敬称略
有名な空間デザイナーは、デザイン関係の勉強をしてきた方が多いことがわかります。また、大学を卒業した人や専門学校でデザインを学んできた人もいます。
空間デザイナーに必要な資格や受験すべき試験
空間デザイナーになるにあたって、必ず取らなければならない資格や、必ず卒業していなければならない学校はありません。また、空間デザイナーの資質や能力そのものを証明する資格は存在しないので、それに関連する資格を取得することによって、必要な知識や技術を身につけていきましょう。
空間デザイナーの仕事に関わりの深い資格としては、下記のようなものが挙げられます。
・空間ディスプレイデザイナー
空間ディスプレイデザイナーは、日本デザインプランナー協会が主催している民間資格です。認定試験で取れる資格は1級・2級がありますが、どちらも受験資格は設けられておらず誰でも受験できます。試験が年間で4回程度実施されており、なおかつ在宅受験できることから、気軽に空間デザイナーとして必要な知識を身につけられる資格といえます。
・インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、公益社団法人インテリア産業協会が認定する民間資格。資格名のとおりインテリアがメインテーマですが、空間デザイナーがインテリアをデザインすることもあるため、取得しておいて損はない資格といえるでしょう。
・インテリアプランナー
建築士試験も行う公益財団法人建築技術教育普及センターが主催しているのがインテリアプランナー試験です。学科試験と設計製図試験の2つに合格し、所定の実務経験年数を満たすとインテリアプランナーの資格を取得できます。実務経験がないときにはアソシエイト・インテリアプランナーとして学科試験に合格したことを証明できるため、将来的に資格取得を目指して受験してみては?
・カラーコーディネーター
カラーコーディネーター検定試験は、東京商工会議所検定センターが行っている検定試験です。空間デザイナーにはデザインの形状に関するセンスだけでなく、色彩感覚も求められるもの。色彩について理論的に学び、実務に活かしていくには、カラーコーディネーターは有効な資格です。受験において年齢制限は設けられていないので、高校生のうちに受けてみてはいかがでしょう。
空間デザイナーになるために目指すべき就職先
空間デザイナーになるために目指すべき就職先には、大きく分けて2つがあります。
ひとつは住宅メーカーや建築メーカーに就職し、企業内でデザイナーを目指す方法です。メーカーに就職後、必ずデザイン部署に配属されるとは限りませんが、大学でデザインを学び、メーカーでもデザインの実務経験を積めれば、空間デザイナーへとステップアップできるチャンスは十分にあるはず。
もうひとつは、デザイン事務所でデザインの経験を積んでいく方法です。デザイン事務所の規模や、仕事を依頼するクライアント次第で幅広い案件に携われるため、空間デザイナーとして実力を磨いていくにはベストの環境といえるのではないでしょうか。
もちろん、これらの企業に入社できたとしても、1年目から空間デザイナーとして活躍できるわけではありません。空間デザイナーとして活躍するには経験が必要です。自分が関わったプロジェクトが評価されるようになり、徐々に名前を知ってもらうことになるでしょう。経験が浅い時期は何かと大変なことも多いかもしれません。それでも、「多くの人を感動させる空間デザイナーを目指す!」という強い気持ちを持って、知識や技術を身につけていきたいですね!
空間デザイナーになった後のキャリアプラン
空間デザイナーになった後は、独立して事務所を設立し、経営者となる道があります。空間デザイナーとして有名になれば、本を出したりテレビ番組に出演したりする機会を得られることもあるかもしれません。
また、空間デザイナーとしての知見を活かして後進の指導にあたる道もあります。講師や特任教授として招かれる場合も。
企業や事務所所属の空間デザイナーとして実績が増えていくにつれて、個人の名前で仕事ができる機会も増えていきます。本を出したりメディアに出演できたりする可能性もあるなんて、空間デザイナーとはなんと夢のある職業なのでしょうか!
空間デザイナーを目指すなら「JOB-BIKI」で進学先を検索しよう
空間デザイナーは屋内外を問わず、大規模なデザインを手掛けるダイナミックな仕事です。アイディアを形にする仕事に就きたい人、また携わった仕事を多くの人に見てもらいたい人にはおすすめの仕事でしょう。
空間デザイナーとして実力を身につけ、世間の評価を高めていくには、長い目で見たキャリアプランが必要です。進路を考えていくためにも、ぜひ「JOB-BIKI」を使って大学選びなども考えてみてくださいね!