マーチャンダイザーとは?なるための進路や仕事内容、年収を解説
2023.09.22
マーチャンダイザーは企業において商品の企画や商品構成から販売までを専門に担当しており、会社にとって重要な役割を担う仕事です。
担当する仕事は幅広く、市場調査やトレンドの分析から予算管理などにも携わります。
本記事では、マーチャンダイザーの仕事内容や求められる資質や能力について紹介します。
マーチャンダイザーの仕事の内容や、なるために学ぶべきことなどを知れば進路の選択できっと役立つはずです。
目次
マーチャンダイザーとは?
マーチャンダイザー(MD)とは、企業において商品計画全般を担当します。
主な仕事内容は、自社の商品を販売するにあたり、販売方法や価格設定など戦略的に販売するために計画を立てて実行することです。
マーチャンダイザーは、アパレルをはじめ雑貨や日用品などを販売する企業にとって欠かせない存在で、企業においては重要な役割を担っています。
マーチャンダイザーが活躍するアパレル業界については、以下の記事で詳しく解説しています。
アパレル業界の仕事内容は?業界の仕組みや就職に役立つ学部・学科を紹介
マーチャンダイザーとバイヤーとの違い
マーチャンダイザーとバイヤーとの違いは、商品の企画から商品を売り切るまでを担当するか、買い付け(仕入れ)に重点をおいて担当するかの違いにあります。
商品をゼロから作って売り切るまでを担当するのがマーチャンダイザー、販売するための商品を他の会社から買い付けることをメインに担当するのがバイヤーです。
バイヤーはインターネット、業界紙、プレスリリースなどで売れそうな商品を探したり、多数の会社が新商品を展示する展示会に足を運んだりし、商品を買い付けることを仕事としています。
企業によっては、マーチャンダイザーとバイヤーを兼務している場合もあります。
マーチャンダイザーに必要な考え方
マーチャンダイザーの仕事は、対象となる顧客が求める「5適」を作り上げていくことです。
5適とは、適品・適時・適所・適価・適量のことで、具体的には適した商品を(適品)、売れる時期に(適時)、適した場所で販売(適所)で、適した価格で(適価)、売り切れる量を製造か買い付ける(適量)のことを指します。
季節ごとに販売すべき商品(適品)を見極める
アパレル商品の場合、5月から7月の初夏にはTシャツなどの夏物が人気です。
またサッカーが盛んな地域のスポーツ店であればサッカー用品、登山客が多い山の近くにあるアウトドアショップであれば登山靴を販売するといったように、季節や地域などによって売れる商品が違うため、時期や場所に適した商品計画を行います。
販売に適した時期(適時)を見極める
アパレル商品など季節性がある場合は、売れる時期がある程度決まっています。
例えば食品の場合なら、食材の旬に合わせて商品を店頭で販売しないと売れなくなってしまうでしょう。
そのため売れる時期に合わせて、「いつから販売するのが適しているのか」「いつまでに店頭に並んでいなければならないのか」などを考慮して商品の販売計画を立てます。
適した場所(適所)をリサーチする
商品を販売するのに適した場所も考えなければなりません。
アパレル商品は自社の小売店となる場合が多いのですが、都会にある店舗なのか郊外にある店舗なのかによっても売れ筋が変わるため、販売に適した場所を考えることもマーチャンダイザーの仕事です。
また小売店を持たない企業であれば、自社の商品を販売するのに適した小売店への販売経路を開拓する必要があります。
販売経路とは、商品を作るメーカーから顧客に販売するまでにどのような業者を経由して販売するかの経路のこと。
メーカー→卸業者→小売店→顧客の経路をたどることが多いので、自社の商品を販売するのに最適な卸業者や小売店を探します。
適した価格(適価)を見極める
適価とは商品ごとに適した価格を決めることです。
主に以下を踏まえて適した価格を考えます。
・販売する地域
・お客さんにはどのような人が多いか
・競合他社が同じような商品をいくらで販売しているか
・商品を製造するのにかかる費用はどれくらいか
・その商品を販売することで得たい利益はどれくらいか
販売量(適量)を決める
商品ごとに製造する数量を決めます。
製造する量が多すぎると売れ残ってしまい、少なすぎるとその商品が欲しいお客さんが来店したときに売り切れてしまい、販売チャンスを逃すことになるでしょう。
同じような商品が毎年どれくらい売れているのか、などの過去のデータや、販売店における販売状況などを考慮して製造数を決めます。
マーチャンダイザーの仕事の流れ
マーチャンダイザーの仕事は、市場を調査することから商品を販売するまでの一連の流れをすべて担当します。
市場調査
マーケットリサーチともいわれ、市場の最新トレンドや自社や競合他社の売れ筋や売れている商品の傾向などの情報を集めることを指します。
商品計画は勘に頼ってするものではなく、情報を収集して得られた情報から計画を立てて行う必要があり、マーチャンダイザーの多くは、その業界で開催される展示会や最新の商業施設などにも足を運んで、次のシーズンに向けてトレンドを掴むことが大切です。
分析
集めた情報をもとに、商品を製造し販売するための分析を行い、業界のトレンドや自社で過去に売れた商品のデータなどを分析し、次の商品を作るための企画を進めます。
企画
分析した結果から、どのような商品を販売するか、企画の打ち合わせを行います。
企画をするときは、マーチャンダイザーだけではなく、商品のカタチや色を考えるデザイナーなどと打ち合わせることも。
発売する時期やトレンド、色やカタチ、機能性や材料、製造にかかる費用や販売価格などを決めます。
サンプル作成
企画した商品のサンプル作成の開始です。
デザイナーがデザイン画を作り、デザイン画をもとにパタンナーが素材の特性などを考慮したサンプルを作成し、商品イメージを具体的な形にします。
生産管理
商品化が決まると、工場の手配・材料の調達・製造にかかる期間の見積もりなど、生産管理の担当者と打ち合わせを行い、商品の生産計画を立てます。
販売計画
販売する商品について、広報(PR・プレス)担当者と打ち合わせを行い、売れるようにするためにはどうすれば良いかを話し合います。
広告を掲載する雑誌を決めるほか、店頭で販売するにあたって商品説明や商品の陳列方法の説明も販売員に対して行うことも。
商品の完成日が確定すると、販売店への納入予定を決めて配送の手配をします。
マーチャンダイザーは市場調査から販売まで総合的にマネジメントを行うため、販売店への納入が終わった後も、販売動向を常に確認する必要があるでしょう。
マーチャンダイザーの1日
アパレルのマーチャンダイザーの1日のスケジュール例は、以下のとおりです。
【午前】
8:30 メールチェック後、販売中の夏物Tシャツの在庫状況を確認。人気の白とネイビーが品薄なため、追加生産の検討を始める。
10:00 デザイナー、営業チームと12月発売予定のウインドブレーカーの企画会議。昨年の売れ筋カラーと価格帯を参考に、今期の展開カラーと生産数を決定。
【午後】
13:00 好評だったマフラーの追加生産について、メーカーと価格交渉。発注数量を増やすことで、単価を抑える方向で調整。
15:00 次の冬物展示会で発表予定の新作コートのサンプルチェック。素材の風合いと価格のバランスを確認し、デザイナーに袖丈の修正を依頼。
16:30 各店舗から届いた今週の売上速報を集計。とくに動きの良かった商品と不振商品をリストアップし、明日の週次報告会議の資料を作成。
18:00 明日の週次会議に向けて、在庫調整案と価格改定案をまとめて退社。
このように、マーチャンダイザーは現在販売中の商品管理から、次シーズンの商品企画、生産に関する交渉まで、商品に関する判断と調整を1日を通して行っています。
マーチャンダイザーのやりがい
マーチャンダイザーは仕事の内容が会社の利益に大きく影響するため、責任の大きい仕事といえます。
計画通りに商品が売れること
マーチャンダイザーのやりがいとしてもっとも大きいのは、計画通りに商品が売れることです。
市場を調査して、どのような商品をいくらで販売すれば目標の売上を達成できるのか、といったことを考えることが仕事のマーチャンダイザーにとって、計画通りに商品が売れることは大きなやりがいです。
業界のトレンドをいち早く知ることができること
マーチャンダイザーは市場の動向を調査することも仕事であるため、業界の最新トレンドをいち早く知ることができます。
知っている人がまだ少ない情報を得ることができることも、マーチャンダイザーのやりがいです。
マーチャンダイザーの年収
マーチャンダイザーの平均年収は、515.7万円です。
アパレル業界において、店長の給与水準が平均300万~400万円とされる中、マーチャンダイザーの待遇は比較的好条件と言えます。
マーチャンダイザーとして活躍できる30代40代の平均年収は677万円とのこと。
経験の少ない20代では決して高い年収とはいえませんが、経験を重ねてキャリアを積んでいけば年収アップも期待できます。
参考:マーチャンダイザー、バイヤー – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
マーチャンダイザーの将来性
マーチャンダイザーは、アパレル業界において商品企画から販売戦略まで幅広い業務を担う重要なポジションです。とくにインターネット通販の広がりに伴い、オンラインでの販売戦略を立てられるマーチャンダイザーの需要は増えています。
市場分析力とマーケティング知識を備えた優秀な人材は、国内外問わず活躍の場が広がっており、他企業からスカウトされるケースも珍しくありません。お客様のニーズが日々変化する中、商品企画のプロフェッショナルとしての価値は今後さらに高まっていくと予測されます。
マーチャンダイザーに必要な資質と能力
マーチャンダイザーは市場調査から販売戦略まで幅広く担当するため、求められる資質や能力も高くなる場合が多くなります。
コミュニケーション能力
マーチャンダイザーは、商品の企画から販売に至るまでデザイナーや生産担当者、販売員といった人と関わり合います。
商品を販売するまでの過程で多くの人と関わるため、コミュニケーション力や交渉力が必要なため社交性のある人が向いているでしょう。
リーダーシップ
マーチャンダイザーは、商品を世の中に送りだすまでの過程で常に全体のリーダーとして仕事を進めていきます。
商品デザインや生産工場といった各担当者を指揮する役割を担うためリーダーシップが求められるでしょう。
リサーチ能力
マーチャンダイザーが商品を企画するときには、まず市場調査(リサーチ)を行います。
市場調査ではトレンドや競合他社の情報を集めて、次の商品に活かすことが必要なため、リサーチ力が必要です。
分析能力
マーチャンダイザーの仕事で重要なことは、何が売れるのかを予測することです。
そのためリサーチで集めた情報を分析することの他にも、過去の販売実績などの数字を分析して、販売数や売上の予測を立てる必要があります。
企画能力
企画とは課題を解決するアイデアを発想することでもあります。
市場踏査や過去のデータを分析して課題は何かを見抜き、その課題を解決できるアイデアを商品化する能力がマーチャンダイザーには求められるでしょう。
マネジメント能力
マーチャンダイザーは商品を生み出すところから顧客の手に届くまでの一連の流れを管理することが仕事です。
そのため、スケジュールや予算を管理するマネジメントの能力は欠かせません。
英語力
マーチャンダイザーの仕事では英語力が重要なスキルとなります。海外のブランドやメーカーとの打ち合わせ、生産管理、市場トレンドの分析など、英語でのコミュニケーションが必要な場面が多いためです。
通訳を介さず直接交渉することも多いため、TOEICスコア700点以上相当のビジネスレベルの英語力が求められます。さらに、ファッション業界ではフランス語やイタリア語など、他の言語ができると活躍の幅が広がります。
マーチャンダイザーになるための方法とは?
マーチャンダイザーへの道は、通常、大学や専門学校でファッションビジネスの基礎を学んだ後、アパレル企業や百貨店に就職するところから始まります。
入社後は販売促進部門や商品開発部門でキャリアを積むケースが一般的ですが、多くの企業では最初から専門職として採用されるわけではありません。まずは総合職として入社し、その後の適性判断によって配属先が決まっていくのが現状です。 このような採用形態を踏まえると、総合的な学びができる大学教育がとくに重要な意味を持ちます。大学では、マーケティング理論や経営戦略といった専門知識だけでなく、消費者心理や世界経済の動向など幅広い教養と論理的思考力が身につきます。これらは市場分析や商品企画において必須のスキルとなるため、総合職採用が主流のアパレル業界では、大学での学びが大きな強みとなるでしょう。
マーチャンダイザーになるための勉強ができる大学・学部
マーチャンダイザーは市場調査から商品の販売までを担当することに加えて、価格や生産数の決定などをすることから商業や経済の知識が必要です。
また、企業においては経営に大きく関わるポジションになるため、経営についての知識もあると有利でしょう。
マーチャンダイザーを目指すのであれば、商業や経済、経営について学んでおくことをオススメします。
また、マーチャンダイザーは洋服などのアパレルの分野で活躍することが多い仕事です。
そのため被服(ひふく:衣服など身に着ける物)関係について学んでおくことも、仕事をしていく上で役に立ちます。
マーチャンダイザーを目指せる大学の一例は以下のとおりです。
- 慶應義塾大学 商学部(東京)
- 明治大学 経営学部(東京)
- 武蔵大学 経済学部(東京)
- 杉野服飾大学 服飾学部(東京)
- 共立女子大学 家政学部(東京)
- 大妻女子大学 家政学部(東京)
- 大阪商業大学 総合経営学部(大阪府)
- 大阪国際大学 経営経済学部(大阪府)
マーチャンダイザーとして役に立つ資格
マーチャンダイザーになるために役立つ資格は以下のようなものがあります。
一般財団法人日本ファッション教育振興協会の資格。
主にアパレル業界でのマーチャンダイザーを目指す人にとって役立ちます。
ファッションビジネスに関する知識の修得度合いによっては、1級から3級まであることも。
商工会議所が実施している資格試験です。
ファッションに限らず雑貨や日用品などを販売する上での知識や、店舗経営の知識が身につく資格で、1級から3級まであります。
文部科学省後援の資格で、社会人に必要な能力を評価する試験です。
ビジネス知識や社会人としてのマナー、問題発見能力や提案力などが評価される試験で、1級から3級まであります。
マーチャンダイザーになった後のキャリアプラン
マーチャンダイザーになった後は、どのようなキャリアプランがあるのでしょうか。
ブランドマネージャー
マーチャンダイザーは商品に関する部分を担当しますが、ブランドマネージャーは商品も含めて広報やマーケティングまでブランド全体を担当するため、マーチャンダイザーより経営に近い仕事といえるでしょう。
経営に近い仕事になるため、財務などの知識も必要です。
アパレル企業の経営者
マーチャンダイザーから取締役といった経営陣になるキャリアプランもあります。
マーチャンダイザーとしての知識や能力に加えて、財務や人事といった経営の知識が求められますが、その分やりがいも大きくなるでしょう。
誰もが知っているアパレルブランドの社長を目指せるかもしれません!
マーチャンダイザーへの進路を「JOB-BIKI」で検索してみよう
マーチャンタイザーの就職先は「JOB-BIKI」で検索できます。
「就職先検索」で業種を「小売・卸売」 → 「ファッション・洋服」の順番で検索すると、マーチャンタイザーとして活躍できる職場が見つかるでしょう。
マーチャンタイザーの仕事が気になっている人は、調べてみてくださいね。