国際公務員になるには?仕事内容や受験すべき試験をご紹介
2023.09.26
「国連で働ける?」「国際公務員になるには何が必要?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
国連や専門機関に勤務する正規職員が国際公務員です。
国際公務員は専門的な知識やスキルを活かして、調査や研究、プロジェクトの運営や管理など多岐にわたることも。
国際社会の平和や利益を守るために、中立の立場で働く国際公務員について、主な仕事内容、外交官との違い、求められる資質や能力についてご紹介します。
国際公務員になるために受験すべき試験や、有利な資格も解説しているので、目指す方はぜひ参考にしてください。
目次
国際公務員とは?
国際公務員とは、国際連合(以下、国連という)や国連の組織、専門機関、その他の国際機関で働く職員のことです。
令和5年7月25日時点で国連に193ヵ国が加盟していますが、自分の出身国や特定の国ではなく、国際社会の利益のために中立の立場で働かなければなりません。
国際公務員は、以下の任務にしたがって仕事を行います。
・国際平和と安全の維持
・国家間の友好関係の構築
・社会発展
・生活水準の向上および人権の推進
また国際公務員が働く国際機関とは、主に以下のことです。
・国連(UN)
・国連の下部組織:国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連人口基金(UNFPA)など
・専門機関:国連食糧農業機関(FAO)、国連工業開発機関(UNIDO)、世界保健機関(WHO)など
・その他の国際機関:国際原子力機関(IAEA)、世界貿易機関(WTO)など
国際公務員と外交官の違い
国際公務員は、国連や国際機関などで働きますが、外交官は外務省や世界各地の大使館、総領事館などで働きます。
外交官の仕事は主に、外交政策の企画や立ち上げ、交渉や情報分析、日本人の保護活動などです。
語学力と専門知識を活かして世界で活躍する点ではどちらも似ていますが、国際公務員と外交官は、仕事を行う上で達成すべき目的が違います。
国際公務員は国際社会のために中立の立場で職務を行いますが、外交官は日本の平和や利益の確保が目的です。
国際公務員は出身国や特定の国のために働くのではなく、国際平和や安全の維持、国家間の友好関係の構築などを目的に職務を遂行します。
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国際公務員の仕事内容
国際公務員の職種は、専門職と一般職の2つに分かれます。
ひとつずつ見ていきましょう。
専門職
専門職の仕事は、専門的な知識やスキルを活かして、調査や研究、プロジェクトの運営や管理を行うことです。
専門職は開発や経済、環境といった国際機関が取り組む活動に直接関わる業務を行います。
一般職
一般職とは現地のスタッフのことで、仕事内容は主に事務作業です。
専門職のもとで、業務スケジュールの管理や資料作成などの秘書業務、勤務先のビルのメンテナンスやセキュリティーに関する業務などを担当します。
国際公務員の仕事のやりがい
国際公務員は世界平和や貧困の撲滅、地球環境の保護を目的として、世界規模の問題に取り組んでいます。
人権を守るといった世界問題や、気候変動といった地球規模の問題に取り組むことで、社会を変えられる仕事は刺激的で大きなやりがいを感じられるでしょう。
また自分が学んだ専門分野を活かして世界の専門家と議論できることで、楽しさを感じたり、勉強する意欲の向上に繋がったりします。
国際公務員は、発展途上国や紛争地域で支援活動を行うことも少なくありません。
支援した人から感謝を伝えられることで、支援できた実感を得られるでしょう。
例えば、発展途上国で学校へいく子どもを増やす活動を行う国際公務員は、支援する子どもが学校に通って学ぶ姿を見ることでやりがいを感じられます。
世界中の情報を扱う機会や、さまざまな言語、異なる宗教・文化に触れる機会が多く貴重な経験が味わえます。
「世界の平和を守りたい」「貧困をなくしたい」といった使命感を持って、職務を行うことでやりがいを感じられたり、達成感を得られたりするでしょう。
国際公務員の働き方
国際公務員の勤務ルールについては各機関で定められていますが、多くの機関が「国連共通制度」の規程にしたがっています。
共通制度によって、国連や下部組織、専門機関の勤務条件はほとんど同じです。
労働時間は、平均163時間とされています。
一日8時間、月20日間の勤務が一般的な日本の公務員と比較すると、労働時間はあまり変わらないでしょう。
また1年に30日間の年次休暇が与えられるほか、病気休暇や出産休暇などや、渡航費用を各機関が負担してくれる「帰国休暇制度」もあります。
国際公務員の年収
国際公務員の専門職は、P-1からP-5までのランクに分けられ、レベルに応じて給料が異なります。
人によって勤務地が異なるため、ルールが均一化されるよう、各国の生活費や為替などにもとづいて定められています。
支給される手当は、以下のとおりです。
・扶養手当
・教育補助金
・異動手当
・困難地手当
・住宅補助金
・赴任手当
・帰国手当
困難地手当は、勤務を続けることが困難な地域で働く職員に支給される手当です。
2020年3月に外務省の「国際機関人事センター」が作成したパンフレットに掲載の年収の例をご紹介します。
【ニューヨーク勤務、単身者、P-2ランク1年目の場合】
・基本給(年俸):約4万7,000ドル
・地域調整給(67.5%):約3万2,000ドル
・着任時手当(30日分):約2万ドル
・着任一時金(給与1ヵ月分):約6,500ドル
・計 約10万5,500米ドル(約1,160万円)
人によって他に扶養手当や住宅手当などが加算されますが、P-2ランクでは年収1,000万円程度になるでしょう。
国際公務員の一般職は勤務する現地の給与水準にしたがって支給額が決められているため、経験年数や実績、働く国によって給料が大きく異なります。
一方で一般職の年収は約300~700万円程度になることが多いでしょう。
国際公務員に必要な資質と能力
国際公務員として働くには、どのようなスキルが必要になるのでしょうか。
国際公務員に必要な資質や能力を解説します。
2ヵ国語以上扱える語学力
国際公務員になるには、2ヵ国以上の語学力が必要になります。
国連の公用語は「アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語」の6つで、事務局の常用語は英語とフランス語です。
英語またはフランス語で職務できる必要があり、文書による報告や会議の主催ができる程度の語学力が求められます。
また海外で勤務する上で異文化を尊重したり、異なる背景を持つ人と協力したりすることも大切です。
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使命感や誠実さ
国際公務員になるには「恵まれない子どもを助けたい」「世界の労働問題を解決したい」「地球環境を保護したい」といった使命感が必要です。
また中立の立場で働く国際公務員には、私利私欲に走らない、政治的圧力に屈しないなどの誠実さが求められます。
「国際機関で働きたい」という憧れよりも、「国際社会のために成し遂げたいことがある」という意思のある方が、国際公務員に向いているでしょう。
学び続ける姿勢
国際公務員の専門職は、専門的な知識やスキルが必須です。
自分の専門分野を高めるために学び続ける姿勢や、世界の情勢に関心を持つことが大切で、さらに専門的能力を発揮し、職務を遂行できるチカラがあるとよいでしょう。
国際公務員になるための方法とは?
国際公務員の状況や、目指せる進学先をご紹介します。
国際公務員の世界の現状
外務省が行った「国連関係機関の日本人職員数」の調査によると、2019年12月末時点で912人の日本人が国際公務員の専門職として働いているとのこと。
他の主要国に比べて、日本人の職員が少ないのが現状です。
外務省は「2025年までに国連関係機関で働く日本人職員を1,000名とする」という目標を掲げています。
「国際機関人事センター」が、国際公務員を目指す日本人の増加に向けてサポートを行っており、今後も国際公務員の需要は高まるといえるでしょう。
国際公務員になるための勉強ができる大学・学部
国際公務員になるには、一般的に大学院卒の学歴が必要で、専門分野の知識を持っていることが求められます。
専門分野の内容によって勤務できる国際機関が異なるため、学びたい分野や働きたい機関に必要な分野を選ぶとよいでしょう。
専門分野の内容と各機関の関係の例を以下に挙げます。
・医学部、理学部:世界保健機関(WHO)
・農学部:国連食糧農業機関(FAO)
・工学部:国連工業開発機関(UNIDO)
・法学部:世界知的所有権機関(WIPO)
・経済学部:国連事務局の経済社会局(DESA)
その他にも教育、環境、ITなどの知識がある人材も求められています。
しかし「文学、語学、芸術、体育」などの専門領域は、採用の条件として認められていません。
国際公務員になるためにオススメの大学は以下のとおりで、そのまま大学院への進学を目指すとよいでしょう。
・慶応義塾大学(法学部→法学研究科)/東京
・京都大学(農学部→農学研究科-応用生命科学専攻、地域環境科学専攻、食品生物科学専攻)/京都
・早稲田大学(社会科学部→社会科学研究科)/東京
・国際基督教大学(アーツ・サイエンス研究科→公共政策・社会研究専攻)/東京
・横浜市立大学(国際教養学部→国際マネジメント研究科)/神奈川
一方で、専門分野と語学の習得を同時に目指すのであれば、海外への留学や海外の大学・大学院に進学するのもよいでしょう。
主に大学院生を対象に、一定期間勤務体験ができるインターンシップ制度を設ける国際機関もあります。
国際公務員になるために受験すべき試験
国際公務員になるには、以下のいずれかの試験を受ける必要があります。
①空席公募
②外務省JPO派遣制度
③国連事務局YPP試験
④現地採用
空席公募
各国際機関や各事務所で職員の退職などによる欠員が出たときや、部署を新設するときなどに人材の募集が行われます。
空席情報は各国際機関または外務省の国際機関人事センターのホームページに掲載されるため、随時チェックするとよいでしょう。
国際機関や選考の種類によって異なりますが、募集から採用までの一般的な流れは「空席発生、公募、書類選考、筆記、面接、採用」です。
応募資格は以下のとおり。
・大学院卒以上(大学卒+追加的な職歴2年で応募できることもある)
・関連分野での職歴が2年以上
毎日のように空席公募が出るため、随時応募できる点がポイントです。
外務省JPO派遣制度
ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣制度とは、各国の政府が費用を負担することで、国際機関が若手人材を受け入れる制度です。
外務省は1974年から派遣を開始し、原則として2年間国際機関で経験を積む機会を提供しています。
JPO派遣先は外務省が派遣の取り決めを結ぶ国際機関が対象です。
派遣期間中に国際公務員になるための必要な知識や経験を得ることで、終了後に正規採用される可能性があります。
選考試験は通常年1回で、募集から採用までの流れは「応募、外務省による書類審査、外務省による面接、国際機関による書類審査や面接、採用」です。
応募資格は以下のとおり。
・35歳以下
・専門分野での大学院卒以上
・関連分野での職歴が2年以上
・英語で職務が遂行できること
・将来にわたって国際機関で働く意思があること
・日本国籍であること
応募者は日本人だけなので、空席公募に比べて採用倍率が低くなる点がポイントです。
国連事務局YPP試験
ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)とは、若手職員採用のために国連事務局が行うプログラムです。
選考試験は年1回で、募集から採用までの流れは「応募、書類審査、筆記、面接、合格」となります。
他の選考と異なり、合格したら採用というわけではありません。
選考に合格した人は合格者名簿(ロスター)に掲載され、人材の空き状況に応じて合格者名簿の中から再度選考が行われた後に採用されます。
合格者名簿の有効期限は3年間です。
採用者は2年間勤務した後、勤務中の成績が優秀であれば継続して雇用されます。
応募資格は以下のとおり。
・32歳以下
・専門分野での大学卒以上
・英語またはフランス語で職務が遂行できること
大学卒、職務経歴なしで応募できる点がポイントです。
国連食糧農業機関(FAO)や経済協力開発機構(OECD)なども若手向けの採用試験を行っていることがあるため、各国際機関のホームページを確認するとよいでしょう。
現地採用
国際公務員のうちの一般職は、世界各地の事務所や各国際機関などの現地採用となります。
採用基準は地域によって異なりますが、一般職は大学卒で応募できることが多いです。
国際公務員に有利な資格
国際公務員になるのに必要な資格はありませんが、応募する方法によってはTOEFLまたはIELTS結果の提出が求められます。
また語学力を証明するために、以下の試験を受けて高い点数をとっておくとよいでしょう。
・TOEFL iBT(R) TEST
・IELTS
・国際連合公用語英語検定試験(国連英検)
・実用フランス語技能検定試験
TOEFL iBT(R) TEST
TOEFL iBT(R) TESTとは、英語を母語としない人のための英語能力を判定するテストです。
月に4~5回程度の実施日があり、全国各地で試験を受けられます。
満点は120点ですが、2019年度にJPO制度を利用した派遣予定者の平均点数が105.4点であったため、平均以上の点数を目安にするのもよいでしょう。
IELTS
IELTSは、英検を実施する日本英語検定協会が運営するテストです。
140の国で認定され、英語能力の証明に使用されます。
IELTSは、ペーパー版とコンピューター版の2つの受験方式に分かれます。
ペーパー版は紙と鉛筆で受験でき、月に4回ほど、全国16都道府県で開催されるのが特徴です。
コンピューター版はパソコンを使って受験し、月に10回ほど、東京・名古屋・大阪で開催されます。
どちらの受験方式でも、試験内容や採点基準、試験時間は同じなので都合に合わせて選ぶとよいでしょう。
テスト結果は1.0から9.0のスコアで表されます。
2019年度にJPO制度を利用した派遣予定者の平均スコアが7.4点であったため、平均以上の点数を目指すのもよいでしょう。
国際連合公用語英語検定試験(国連英検)
国連英検は公益財団法人日本国際連合協会が主催し、語学力の判定だけでなく国際コミュニケーションスキルを問う試験です。
受験級には、プロフェッショナルレベルの特A級とA級、スキルアップレベルのB級からE級の6つのレベルがあります。
特A級に合格するとJPOの派遣候補者を選考する試験で加点対象となるため、特A級合格を目指すのもよいでしょう。
実用フランス語技能検定試験
実用フランス語技能検定試験は、日本の学習者を対象とした唯一のフランス語検定試験です。
級は1から5級までありますが、職業で即戦力となる程度の1級または社会生活を営める程度の準1級を目指すのがオススメ。
試験は年に2回、全国各地で開催されますが、級によって実施の有無が異なるため注意してください。
国際公務員になるために目指すべき就職先
国際公務員になったら、主な就職先は国連機関や国連の専門機関などになります。
日本国内で働くこともできますが、海外の国連に関係のある機関や支部などで働く場合もあるでしょう。
赴任先は、国連の本部があるニューヨーク(アメリカ)に、国連にとって主要とされる事務所が設置されたジュネーブ(スイス)、ナイロビ(ケニア)などがあります。
また発展途上国にある現地の事務所で問題解決を行うフィールドワークも、国際公務員にとって重要な任務です。
紛争地帯や治安の悪い地域などの危険な場所で勤務することもあります。
国際公務員になった後のキャリアプラン
国際公務員になった後は、昇進や昇給を目指すとよいでしょう。
また、日本人初の「国連事務総長」を目指してみてはいかがでしょうか?
国際公務員はポジションごとに「専門職(P-1~P-5)、管理職(D-1~D-2)、事務次長補(ASG)、事務次長(USG)、副事務総長(DSG)、事務総長(SG)」といったランクが定められており、ランクは職歴年数や実績に応じて決まり、ランクが上がると給与も高くなります。
国際機関では所属や勤務地を変えて経験を積むことが推奨されているため、異動して仕事の幅を広げるとよいでしょう。
国際公務員への進路を「JOB-BIKI」で検索しよう
国際公務員は、国際社会の平和や安全の維持、社会生活の向上などを目的に国際機関で働く仕事です。
国際公務員に興味を持った方は、必要な勉強ができる大学や学部を調べてはいかがでしょうか。
詳しく知りたい方は「JOB-BIKI」の人物検索で「国際連合」と検索すると、国連事務次長や国連工業開発機関(UNIDO)の事務局事務次長を務めた方などの出身大学が見つけられます。
国際公務員を目指すためにまずは情報収集をして、進路選択に役立てましょう。