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歯科医師になるには何年かかる?目指せる大学や費用を解説

2023.09.27

カテゴリー:
開業した歯科医師

「歯科医師になるには、どんな進路があるの?」「費用はどのくらいかかるんだろう?」と疑問に思っている人もいるでしょう。

歯科医師になるには歯学部で6年間学んだあと国家試験に合格し、1年以上の臨床研修を受ける必要があります。現在、歯学部を設置している大学は27大学29学部ありますが、実は選ぶ進路によっては350万円~3,200万円と大きな差があります。

本記事では、歯科医師を目指せる大学一覧と費用を解説します。ぜひ進路選択の参考にしてください。

歯科医師とは

歯科医師とは、虫歯や歯周病の治療を中心に歯やアゴなど口の周辺の健康を守る医師のことです。

虫歯や歯周病以外にも、歯並びの矯正や抜歯、人工の歯を取り付けるインプラントといった治療を行う他、口の中にできた腫瘍の治療も行います。

また歯科医師は治療を行う範囲が限られていますが、歯科治療に関する行為であれば、全身麻酔や呼吸管理を行うことも。

多くの歯科医師が「歯医者さん」として診療所で働いており、地域の人々のお口の健康を守っています。

歯科医師と医師の違いは?

歯科医師と医師の違いは持っている資格です。

持っている資格が異なるため、歯科医師は歯科診療に限り医療行為ができます。

同じように、医師は医師としての国家資格を持っていても、歯科診療はできません。

また歯科医師と医師では、学ぶ大学や学部も違います。

歯科医師は歯科大学か大学の歯学部を卒業し、歯科医師国家試験に合格することが必要です。

医師は医科大学か大学の医学部を卒業し、医師国家試験に合格することで医師になれます。

医師については、以下の記事で詳しく紹介しています。

医師(医者)になるためにはどのような学部を選ぶ?向いている人ややりがい

歯に関わる仕事には、歯科衛生士や歯科技工士などもあります。歯科衛生士の仕事は、治療の補助や予防処置です。歯科技工士は、歯科医師からの指示書にもとづいて入れ歯や詰めものを制作します。

歯科衛生士については、以下の記事で詳しく紹介しているので、興味がある人はあわせて読んでみてください。

歯科衛生士になる方法|向いている人やキャリアプラン

歯科医師と歯科衛生士の違いは?

歯科医師と歯科衛生士の違いは、歯科の医療行為を行えるかどうかによります。

わかりやすく説明すると、歯の治療をするのが歯科医師で、治療の補助や予防処置をするのが歯科衛生士です。

歯科衛生士になるには、専門学校などの養成機関で学んだ後に国家試験に合格する必要があります。

歯科衛生士に似た職業で歯科助手もありますが、歯科助手には資格は必要ありません。

仕事内容としては受付やカルテの整理、器具の洗浄など、歯科治療を支える業務がメインとなります。

歯科医師と歯科技工士の違いは?

歯科技工士の手元

歯科技工士の仕事とは、歯科医師からの指示書にもとづいて入れ歯や詰めものを制作することです。

歯科技工士になるには、専門学校や大学などの養成機関で2年以上学んだ後に国家試験に合格する必要があります。

患者さんと顔を合わせる機会はあまりありませんが、歯科技工士もお口の健康を守る重要な仕事です。

歯科医師になる方法

歯科医師への道のりは主に3つのステップがあります。まず、歯学部に入学し6年間の専門教育を受けます。次に歯科医師国家試験に挑戦します。

合格後は、すぐに歯科医師として働けるわけではありません。最後のステップとして、歯科医院や病院の歯科で1年以上の臨床研修が義務付けられています。

この研修期間で実践的な技術や知識を身につけ、晴れて一人前の歯科医師としてのキャリアをスタートさせることができるのです。

歯科医師になるには何年かかる?

歯科医師になるまでの最短期間は7年です。まず歯学部で6年間学びながら、最終学年で国家試験の合格を目指します。試験に合格したら、1年間の臨床研修を受けるため、大学入学から数えて最低でも7年の期間が必要となります。

歯科医師国家試験の難易度

歯科医師国家試験の合格率は、新卒者と全体で大きく差があります。近年の傾向として、新卒者の合格率は70~80%台を維持していますが、全体では60%台にとどまっています。直近の令和6年度の結果では、新卒者の合格率が81.5%だったのに対し、全体では66.1%でした。

歯科医師国家試験は、卒業してすぐの新卒者の方が合格しやすく、時間が経過すると合格率が下がる傾向にあります。このため、卒業と同時期の受験で合格を目指すことが重要といえます。 参考:第117回歯科医師国家試験の学校別合格者状況|更生労働省

歯科医師国家資格の概要は、以下のとおりです。

試験日・年1回 ・例年1月下旬~2月上旬の2日間
試験地・北海道 ・宮城県 ・東京都 ・新潟県 ・愛知県 ・大阪府 ・広島県 ・福岡県
受験資格歯科大学や歯学部の卒業者など
受験料18,900円
合格発表3月中旬

参考:歯科医師国家試験の施行について|厚生労働省

歯科医師免許と同時に取得できる資格

歯科医師免許を取得すると、以下の資格も自動的に付与されます。

  • 食品衛生管理者
  • 衛生管理者
  • 衛生検査技師

また、以下の受験資格や一部試験の免除も得られます。

たとえば、臨床検査技師の資格取得には、一般的に専門の教育機関での課程修了と国家試験の合格が必要です。ただし、歯科医師免許を持っている場合は、教育課程を受けることなく、臨床検査技師の国家試験を受験できます。

歯科医師を目指せる大学(歯科大学・歯学部)

東京医科歯科大学

歯科医師を目指せる大学は27大学29学部あります。国立、公立、私立に分けてまとめたので参考にしてみてください。

国公立大学(11校)

公立大学(1校)

九州歯科大学 歯学部 歯学科(福岡県)

私立大学(15校)

歯科医師を目指せる大学の費用

歯科医師を目指せる大学の費用は以下のとおりです。

国立大学約350万円
公立大学約350万~370万円
私立大学約1,900万~3,200万円

全ての国立大学では同額の入学料と授業料が設けられています。公立大学は現在、九州歯科大学のみで、居住地が県外の場合は学費が高く設定されています。

私立大学の学費は6年間で1,900万円~3,200万円と高額になっており、一番高い大学と安い大学の差は1,400万円もの差があります。

私立大学の歯学部|学費ランキング

 大学名6年間の学費
1朝日大学19,181,000円
2有明大学19,312,000円
3奥羽大学23,749,895円
4北海道医療大学24,600,000円
5昭和大学27,000,000円
6神奈川歯科大学27,000,000円
7松本歯科大学27,360,000円
8岩手医科大学27,600,000円
9鶴見大学28,077,200円
10福岡歯科大学28,678,136円
11日本大学松戸歯学部29,400,000円
12大阪歯科大学31,500,000円
13日本歯科大学新潟生命歯学部31,530,000円
14日本歯科大学31,530,000円
15日本大学歯学部31,940,000円
16東京歯科大学32,142,000円
17愛知学院大学33,541,000円

※年度によって変動する可能性がありますので、詳細は大学のホームページでご確認ください。

歯科医師の仕事内容

小児歯科の診療

歯科医師の仕事内容は、虫歯や歯周病の治療だけではなく、歯並びの矯正や歯を美しくするホワイトニングなど多岐にわたります。
また、一般歯科や小児歯科など、ジャンルによっても仕事内容に違いがあるのも特徴です。
歯科医師の仕事内容について説明します。

一般歯科

歯科医師の仕事で中心となるのは虫歯や歯周病の治療で、一般歯科と呼ばれています。

抜歯や入れ歯や差し歯の取り付けの他に歯の定期健診も仕事のひとつです。

小児歯科

乳歯が生え始める頃から永久歯に生え変わる頃までの子どもの成長に合わせた歯の診療のことです。

この時期のケアが将来的なお口の状態に影響することもあるため、定期健診やブラッシング指導などを行います。

矯正歯科

歯並びやかみ合わせをきれいに整えるよう矯正する診療のことです。

出っ歯やすきっ歯といった歯並びや、受け口などのかみ合わせに問題があると、虫歯や歯周病になりやすいといわれています。
そのため歯並びの場合は、ワイヤーなどで固定し、きれいな歯ならびになるようきれいに整えるのが矯正歯科です。
成長期の子どもであれば抜歯をせずに矯正できることもあるため、矯正をする場合は成長期に合わせて行うとメリットが多いとされています。

審美歯科

歯を中心に口元の美しさを目的とした歯科診療です。

歯のクリーニングやホワイトニングが代表的で、笑ったときの歯の見た目を美しくしたいとお考えの方に人気です。

口腔外科

お口の中やアゴの他に顔面周辺の疾患を診療します。

口内炎や口腔ガンなどの他に、歯ぐきに埋まっている親知らずを抜歯することもあります。

訪問歯科

患者さんの自宅や入居施設へ訪問して歯科診療を行うことを訪問歯科といいます。

虫歯や歯周病の診療の他に、入れ歯の制作や調整など多岐にわたる歯科診療を行うのが特徴です。

高齢化を背景に、訪問歯科に対する需要が高まっていることから、対応できる歯科医師は増加傾向にあります。

歯科医師のやりがい

歯を美しくしたモデル

歯の治療は、専門性の高い知識と技術が必要であり、国家資格を持っている歯科医師にしかできない仕事です。

虫歯や歯周病で歯を失うと、やわらかいものしか食べられなかったり、栄養不足や糖尿病、心疾患などの病気になりやすくなったりします。

歯科医師になることで、人々のお口の健康を守り、楽しい食生活をサポートできることに加えて全身の健康改善に貢献できることにやりがいを感じるでしょう。

歯科診療の技術は日進月歩で発展するため、常に新しい技術や方法を学んでいけることも大きなやりがいに繋がるはずです。

さらに自身の歯科医院を開業することで、歯医者として、また経営者としての手腕が試され、両方にやりがいを感じるでしょう。

歯科医師がしんどいと言われる理由

歯科医師の仕事は、大変なところもあります。

治療中は常に前かがみの姿勢を続けるため、腰痛や肩こり、目の疲れが起こりやすくなります。また、1日に多くの患者さんの治療を行うため、集中力も必要です。

患者さんとのコミュニケーションも難しい面の一つです。一人ひとりの状態に合わせた丁寧な説明と治療が求められます。お子さんや歯医者が苦手な方への配慮も欠かせません。

しかし、患者さんの笑顔に触れられる喜びは、これらの苦労を上回る大きなやりがいとなるでしょう。

歯科医師の仕事の流れ

歯科医による問診

歯科医師の仕事はどのような流れで行われるのでしょうか。

ここでは歯科の2大疾患といわれる虫歯治療と歯周病治療の流れについて紹介します。

虫歯の治療の流れ

虫歯とは、口の中の細菌が酸を出して歯を溶かす現象のことです。
虫歯の治療の主な流れについてご紹介します。

1 問診と検査
患者さんに痛みのある場所を聞き、どの部分を治療するのかを決めていくのが問診です。
問診の結果、検査をし、レントゲンなどの検査へ。
歯の奥まで虫歯が進んでいる場合は、虫歯の部分を削って詰め物をします。

2 虫歯を削る
虫歯の箇所を専用の器具を使って、すべて削り取ります。
そのとき、痛みが出る場合は麻酔などの処置がある場合も。
虫歯部分をきれいに削り、カタチを整えます。

3 詰め物をするための型を取る
歯の奥まで進んでいる虫歯になると、型を取ってから詰め物をしなければいけません。
型を取るには多くの場合、アルジネートとよばれるピンクの軟らかい素材を使い型を取ります。

4 詰め物を作る
アルジネートで型を取ったらそこに石膏を流し込んで、歯の模型を作ります。
石膏の模型が出来上がったら、詰め物や入れ歯などを専門に作製している歯科技工所へ詰め物作製の依頼。
歯科技工士は、歯科技工所で詰め物が出来上がると診療所に届けてくれます。

5 出来上がった詰め物を取り付ける
患者さんに連絡をし、出来上がった旨を伝え、来院してもらいます。
詰め物を仮付けして、フィット感や噛み合わせたときの高さなどを調整。
調整が済んだら歯科用の接着剤で取り付けて治療が終了となります。

歯周病の治療の流れ

歯周病とは、歯垢ができることによって口の中の細菌が増え、それによって起こる炎症のことです。
歯周病の治療の流れについてご紹介します。

1 検査
歯周病にかかった場合、プローピング検査やエックス線検査などを行って進み具合を調べ、歯周病を悪化させる要因などを分析し治療計画を立てます。

プローピング検査とは歯と歯ぐきの間に器具を差し込み、すき間がどれくらいあるかを測る検査のことです。

2 歯石を取り除く
歯石は歯の表面に残った歯垢が石のように固くなったもののことです。
歯周病では歯と歯ぐきの間にすき間ができているため、歯石を取り除きすき間を少なくするようにします。

歯周病の原因を取り除くために、まずやることは歯みがきです。
炎症を減らすために、患者さんに正しい歯みがきを行ってもらいます。

歯石が見えるようになったら超音波で大まかに除去し、残りを器具を使ってひとつずつ取り除くと歯石除去の作業は終わりです。

3 修復物や嚙み合わせのチェック
虫歯を治療したときの修復物や噛み合わせの具合によっては歯垢がたまりやすくなる場合があります。
そのため、修復物や噛み合わせを調整が必要です。
調整をした後、歯ぐきの状態が改善し、安定した状態となります。

ここで再検査を行い、問題がなければ治療は終了です。

4 メンテナンス
歯周病の再発を予防するには、正しい歯みがきと定期的な検診が重要です。
患者さんに定期的に検診を受けてもらうことでメンテナンスを継続します。

歯科医師の収入

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、歯科医師の年収は、全国平均で810.4万円です。
都道府県によって約550万円~約1100万円と差がありますし、年齢や勤務先や開業しているかによっても変わってきます。

歯科医師に必要な資質と能力

親しみやすい女性歯科医師

歯科医師に必要な資質や能力にはどのようなものがあるのでしょうか?
必要とされる資質や能力について紹介します。

手先の器用さ

狭い口の中を専用の器具を使って手際よく治療を行う必要があるため、手先が器用であることが求められます。
口の中だけではなく、歯の中を治療することも多いため手先を器用に動かし治療器具を操る技術が必要です。

親しみやすい人柄

歯を治療するとき、患者さんが少なからず痛みや振動などを感じてしまうことがあります。
そのため患者さんが治療に対して持っている悪いイメージを、なるべく少なくするように接することが大切です。

患者さんにできるだけリラックスして治療を受けてもらうためにも、親しみやすい人柄が求められます。

また、患者さんが痛みや症状を歯科医師がわかるように説明できない場合でも、思いやりを持って話を聞けるような人柄は、基本的な資質といえるかもしれません。

マネジメント能力

歯科医師が診療を行うときは歯科衛生士や歯科助手とチームとなって診療を行うため、スタッフへ指示を出すなど現場を管理する能力が必要です。

また患者さんの予約状況やその日のスタッフ数を考慮して、診療所全体が円滑に業務できるように管理することが求められます。

経営能力

自分で診療所を開業する場合は経営能力も求められます。
宣伝や人材育成、売上と経費の管理など多岐にわたるため、歯科医師としてもスキルに加えて、利益を確保し診療所を継続させていく経営能力が必要です。

歯科医師になった後のキャリアプラン

設備の豪華なデンタルクリニック

歯科医師資格を取った後は、勤務医として診療所や一般病院に勤務する他に以下のようなキャリアプランがあります。

・小児歯科や口腔外科などで認定医や専門医になる
・大学教員や研究者
・開業

他にも、企業に勤務する、自衛隊で医官として勤務するという選択肢もあります。

認定医・専門医になる

認定医・専門医とは、その分野を専門とする学会がスキルを保証する制度のことです。
専門分野ごとにキャリアアップの方法が異なりますが、まずは学会に所属し認定医の取得を目指すことがスタートとなります。

歯科医師から認定や専門医を目指せる分野は、口腔外科・歯科麻酔・歯科放射・小児歯科・歯周病・インプラント・矯正があり、歯科医師の得意な分野から始めてみるとよいでしょう。

大学教員・研究者になる

勤務医や開業医と違って、学術的知識や研究結果が要求されます。
そのため臨床の技術を磨くだけなく、研究して論文を書くことも仕事です。
また大学教員の場合は、診療と研究に加えて学生への指導が仕事として加わります。

歯科医療器具メーカーの研究員になる

企業に勤める場合は、歯科器材のメーカーでの研究職などの職種があります。
直接患者さんと関わることはありませんが、歯科医師として学んだ知識を世の中に役立てられます。

開業する

開業医は、自分で診療所を開業するため歯科医師としての実力に加えて、経営能力も必要となりますが、自分が理想とする環境で働けるため歯科医師にとっては理想のゴールのひとつともいえます。

しかし、スタッフや患者さんの人生を背負うという責任も発生するため、まずは自分の適性を知るところから始め、理想の歯科診療を目指してキャリアを積んでいきましょう。

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