歯科医師になるには?仕事内容や学部の選び方などを紹介!
2023.09.27
歯科医師とは、虫歯の治療や予防以外にも歯並び矯正やホワイトニング治療など、口の中に関する治療を行う医師のことです。
歯科医師になるためには、主に大学の歯学部で6年間学んだ後に、国家試験に合格する必要があります。
口の中の健康を管理するため、地域に密着していることが多く、やりがいもある仕事です。
この記事では、歯科医師の仕事内容や収入、求められる資質・能力、歯科医師になるための大学の選び方や学費などについて紹介します。
ぜひ進路選択の参考にしてください。
目次
歯科医師とは
歯科医師とは、虫歯や歯周病の治療を中心に歯やアゴなど口の周辺の健康を守る医師のことです。
虫歯や歯周病以外にも、歯並びの矯正や抜歯、人工の歯を取り付けるインプラントといった治療を行う他、口の中にできた腫瘍の治療も行います。
また歯科医師は治療を行う範囲が限られていますが、歯科治療に関する行為であれば、全身麻酔や呼吸管理を行うことも。
多くの歯科医師が「歯医者さん」として診療所で働いており、地域の人々のお口の健康を守っています。
歯科医師と医師の違いは?
歯科医師と医師の違いは持っている資格です。
持っている資格が異なるため、歯科医師は歯科診療に限り医療行為ができます。
同じように、医師は医師としての国家資格を持っていても、歯科診療はできません。
また歯科医師と医師では、学ぶ大学や学部も違います。
歯科医師は歯科大学か大学の歯学部を卒業し、歯科医師国家試験に合格することが必要です。
医師は医科大学か大学の医学部を卒業し、医師国家試験に合格することで医師になれます。
歯科医師と歯科衛生士の違いは?
歯科医師と歯科衛生士の違いは、歯科の医療行為を行えるかどうかによります。
わかりやすく説明すると、歯の治療をするのが歯科医師で、治療の補助や予防処置をするのが歯科衛生士です。
歯科衛生士になるには、専門学校などの養成機関で学んだ後に国家試験に合格する必要があります。
歯科衛生士に似た職業で歯科助手もありますが、歯科助手には資格は必要ありません。
仕事内容としては受付やカルテの整理、器具の洗浄など、歯科治療を支える業務がメインとなります。
歯科医師と歯科技工士の違いは?
歯科技工士の仕事とは、歯科医師からの指示書にもとづいて入れ歯や詰めものを制作することです。
歯科技工士になるには、専門学校や大学などの養成機関で2年以上学んだ後に国家試験に合格する必要があります。
患者さんと顔を合わせる機会はあまりありませんが、歯科技工士もお口の健康を守る重要な仕事です。
歯科医師の仕事内容
歯科医師の仕事内容は、虫歯や歯周病の治療だけではなく、歯並びの矯正や歯を美しくするホワイトニングなど多岐にわたります。
また、一般歯科や小児歯科など、ジャンルによっても仕事内容に違いがあるのも特徴です。
歯科医師の仕事内容について説明します。
一般歯科
歯科医師の仕事で中心となるのは虫歯や歯周病の治療で、一般歯科と呼ばれています。
抜歯や入れ歯や差し歯の取り付けの他に歯の定期健診も仕事のひとつです。
小児歯科
乳歯が生え始める頃から永久歯に生え変わる頃までの子どもの成長に合わせた歯の診療のことです。
この時期のケアが将来的なお口の状態に影響することもあるため、定期健診やブラッシング指導などを行います。
矯正歯科
歯並びやかみ合わせをきれいに整えるよう矯正する診療のことです。
出っ歯やすきっ歯といった歯並びや、受け口などのかみ合わせに問題があると、虫歯や歯周病になりやすいといわれています。
そのため歯並びの場合は、ワイヤーなどで固定し、きれいな歯ならびになるようきれいに整えるのが矯正歯科です。
成長期の子どもであれば抜歯をせずに矯正できることもあるため、矯正をする場合は成長期に合わせて行うとメリットが多いとされています。
審美歯科
歯を中心に口元の美しさを目的とした歯科診療です。
歯のクリーニングやホワイトニングが代表的で、笑ったときの歯の見た目を美しくしたいとお考えの方に人気です。
口腔外科
お口の中やアゴの他に顔面周辺の疾患を診療します。
口内炎や口腔ガンなどの他に、歯ぐきに埋まっている親知らずを抜歯することもあります。
訪問歯科
患者さんの自宅や入居施設へ訪問して歯科診療を行うことを訪問歯科といいます。
虫歯や歯周病の診療の他に、入れ歯の制作や調整など多岐にわたる歯科診療を行うのが特徴です。
高齢化を背景に、訪問歯科に対する需要が高まっていることから、対応できる歯科医師は増加傾向にあります。
歯科医師のやりがい
歯の治療は、専門性の高い知識と技術が必要であり、国家資格を持っている歯科医師にしかできない仕事です。
虫歯や歯周病で歯を失うと、やわらかいものしか食べられなかったり、栄養不足や糖尿病、心疾患などの病気になりやすくなったりします。
歯科医師になることで、人々のお口の健康を守り、楽しい食生活をサポートできることに加えて全身の健康改善に貢献できることにやりがいを感じるでしょう。
歯科診療の技術は日進月歩で発展するため、常に新しい技術や方法を学んでいけることも大きなやりがいに繋がるはずです。
さらに自身の歯科医院を開業することで、歯医者として、また経営者としての手腕が試され、両方にやりがいを感じるでしょう。
歯科医師の仕事の流れ
歯科医師の仕事はどのような流れで行われるのでしょうか。
ここでは歯科の2大疾患といわれる虫歯治療と歯周病治療の流れについて紹介します。
虫歯の治療の流れ
虫歯とは、口の中の細菌が酸を出して歯を溶かす現象のことです。
虫歯の治療の主な流れについてご紹介します。
1 問診と検査
患者さんに痛みのある場所を聞き、どの部分を治療するのかを決めていくのが問診です。
問診の結果、検査をし、レントゲンなどの検査へ。
歯の奥まで虫歯が進んでいる場合は、虫歯の部分を削って詰め物をします。
2 虫歯を削る
虫歯の箇所を専用の器具を使って、すべて削り取ります。
そのとき、痛みが出る場合は麻酔などの処置がある場合も。
虫歯部分をきれいに削り、カタチを整えます。
3 詰め物をするための型を取る
歯の奥まで進んでいる虫歯になると、型を取ってから詰め物をしなければいけません。
型を取るには多くの場合、アルジネートとよばれるピンクの軟らかい素材を使い型を取ります。
4 詰め物を作る
アルジネートで型を取ったらそこに石膏を流し込んで、歯の模型を作ります。
石膏の模型が出来上がったら、詰め物や入れ歯などを専門に作製している歯科技工所へ詰め物作製の依頼。
歯科技工士は、歯科技工所で詰め物が出来上がると診療所に届けてくれます。
5 出来上がった詰め物を取り付ける
患者さんに連絡をし、出来上がった旨を伝え、来院してもらいます。
詰め物を仮付けして、フィット感や噛み合わせたときの高さなどを調整。
調整が済んだら歯科用の接着剤で取り付けて治療が終了となります。
歯周病の治療の流れ
歯周病とは、歯垢ができることによって口の中の細菌が増え、それによって起こる炎症のことです。
歯周病の治療の流れについてご紹介します。
1 検査
歯周病にかかった場合、プローピング検査やエックス線検査などを行って進み具合を調べ、歯周病を悪化させる要因などを分析し治療計画を立てます。
プローピング検査とは歯と歯ぐきの間に器具を差し込み、すき間がどれくらいあるかを測る検査のことです。
2 歯石を取り除く
歯石は歯の表面に残った歯垢が石のように固くなったもののことです。
歯周病では歯と歯ぐきの間にすき間ができているため、歯石を取り除きすき間を少なくするようにします。
歯周病の原因を取り除くために、まずやることは歯みがきです。
炎症を減らすために、患者さんに正しい歯みがきを行ってもらいます。
歯石が見えるようになったら超音波で大まかに除去し、残りを器具を使ってひとつずつ取り除くと歯石除去の作業は終わりです。
3 修復物や嚙み合わせのチェック
虫歯を治療したときの修復物や噛み合わせの具合によっては歯垢がたまりやすくなる場合があります。
そのため、修復物や噛み合わせを調整が必要です。
調整をした後、歯ぐきの状態が改善し、安定した状態となります。
ここで再検査を行い、問題がなければ治療は終了です。
4 メンテナンス
歯周病の再発を予防するには、正しい歯みがきと定期的な検診が重要です。
患者さんに定期的に検診を受けてもらうことでメンテナンスを継続します。
歯科医師の収入
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、歯科医師の年収は、全国平均で810.4万円です。
都道府県によって約550万円~約1100万円と差がありますし、年齢や勤務先や開業しているかによっても変わってきます。
歯科医師に必要な資質と能力
歯科医師に必要な資質や能力にはどのようなものがあるのでしょうか?
必要とされる資質や能力について紹介します。
手先の器用さ
狭い口の中を専用の器具を使って手際よく治療を行う必要があるため、手先が器用であることが求められます。
口の中だけではなく、歯の中を治療することも多いため手先を器用に動かし治療器具を操る技術が必要です。
親しみやすい人柄
歯を治療するとき、患者さんが少なからず痛みや振動などを感じてしまうことがあります。
そのため患者さんが治療に対して持っている悪いイメージを、なるべく少なくするように接することが大切です。
患者さんにできるだけリラックスして治療を受けてもらうためにも、親しみやすい人柄が求められます。
また、患者さんが痛みや症状を歯科医師がわかるように説明できない場合でも、思いやりを持って話を聞けるような人柄は、基本的な資質といえるかもしれません。
マネジメント能力
歯科医師が診療を行うときは歯科衛生士や歯科助手とチームとなって診療を行うため、スタッフへ指示を出すなど現場を管理する能力が必要です。
また患者さんの予約状況やその日のスタッフ数を考慮して、診療所全体が円滑に業務できるように管理することが求められます。
経営能力
自分で診療所を開業する場合は経営能力も求められます。
宣伝や人材育成、売上と経費の管理など多岐にわたるため、歯科医師としてもスキルに加えて、利益を確保し診療所を継続させていく経営能力が必要です。
歯科医師になるための方法とは?
歯科医師になるためにはどのような方法があり、どういった資格を取ればいいのでしょうか?ここでは歯科医師を目指せる大学や学部と必要な資格についてご紹介します。
大学の歯学部で学ぶ
歯科医師になるには、歯科大学か大学の歯学部を卒業していることが必要となります。
歯科医師国家試験の受験資格として求められているためです。
歯学部のある大学や歯科大学は全国に29校あり、国公立大学が12校、私立大学が17校となっております。
また受験科目は英語・数学・理科といった理系の科目の他に、面接や小論文を課される大学もあるようです。
歯科医師を目指す上でオススメの大学・学部をいくつかご紹介します。
・新潟大学(歯学部:歯学科)/新潟
・東京医科歯科大学(歯学部:歯学科)/東京
・東京歯科大学(歯学部:歯学科)/東京
・日本歯科大学(生命歯学部)/東京
・九州歯科大学(歯学部:歯学科)/福岡
歯科医師国家試験に合格する
歯科医師になるには、厚生労働省が行う歯科医師国家試験に合格し、歯科医師資格の取得が必要です。
試験は毎年1月に2日間で実施され、試験内容は「臨床上必要な歯科医学および口腔衛生に関して、歯科医師として具有すべき知識および技能」となっています。
2023年の国家試験では、3,157人が受験して2,006人が合格。 合格率は63.5%でした。
また2006年4月からは資格取得後、研修施設の指定を受けた病院・診療所などで1年以上の臨床研修が義務付けられています。
歯科医師になった後のキャリアプラン
歯科医師資格を取った後は、勤務医として診療所や一般病院に勤務する他に以下のようなキャリアプランがあります。
・小児歯科や口腔外科などで認定医や専門医になる
・大学教員や研究者
・開業
他にも、企業に勤務する、自衛隊で医官として勤務するという選択肢もあります。
認定医・専門医になる
認定医・専門医とは、その分野を専門とする学会がスキルを保証する制度のことです。
専門分野ごとにキャリアアップの方法が異なりますが、まずは学会に所属し認定医の取得を目指すことがスタートとなります。
歯科医師から認定や専門医を目指せる分野は、口腔外科・歯科麻酔・歯科放射・小児歯科・歯周病・インプラント・矯正があり、歯科医師の得意な分野から始めてみるとよいでしょう。
大学教員・研究者になる
勤務医や開業医と違って、学術的知識や研究結果が要求されます。
そのため臨床の技術を磨くだけなく、研究して論文を書くことも仕事です。
また大学教員の場合は、診療と研究に加えて学生への指導が仕事として加わります。
歯科医療器具メーカーの研究員になる
企業に勤める場合は、歯科器材のメーカーでの研究職などの職種があります。
直接患者さんと関わることはありませんが、歯科医師として学んだ知識を世の中に役立てられます。
開業する
開業医は、自分で診療所を開業するため歯科医師としての実力に加えて、経営能力も必要となりますが、自分が理想とする環境で働けるため歯科医師にとっては理想のゴールのひとつともいえます。
しかし、スタッフや患者さんの人生を背負うという責任も発生するため、まずは自分の適性を知るところから始め、理想の歯科診療を目指してキャリアを積んでいきましょう。
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