インフラエンジニアになるには?仕事内容や必要な資質・能力を紹介
2022.10.18
サーバーやネットワーク機器などのITインフラを構築・運用し、「縁の下の力持ち」として活躍するのがインフラエンジニアです。高校生のうちからパソコンを自作したり、ウェブサイトを制作したりするなど、コンピューター関連に興味がある人にはおすすめの職種です。
この記事では、インフラエンジニアの仕事内容や求められる資質と能力、インフラエンジニアを目指す方法について解説します。パソコンを使った仕事に興味がある人は、ぜひ最後まで読んでくださいね。
目次
インフラエンジニアとは?
インフラエンジニアは、サーバーやネットワーク関連機器などのITインフラストラクチャー(ITインフラ)を設計・構築・保守・運用する仕事です。インフラとは、人々の生活を支える土台・基盤のことで、生活になくてはならないもの。ITインフラがなければ、皆さんはPCやスマートフォンでウェブサイトやアプリを利用できないのです。
ウェブサイトやアプリを表示するITシステムは、すべてITインフラであるサーバーやネットワークでのデータのやりとりで成り立っています。私たちが利用するウェブサイトやアプリを24時間365日、常に利用できるのは、インフラエンジニアがITインフラを構築しているおかげなのです。
インフラエンジニアとアプリケーションエンジニアの違い
アプリケーションエンジニアは、ITシステムに含まれるソフトウェアを開発する仕事です。アプリケーションエンジニアは、クライアント(お客となる企業や行政)などの要望をまとめ、それに沿ってソフトウェアを企画・開発、さらにテスト運用・納品まで実施します。
インフラエンジニアはIT環境の土台を作りますが、アプリケーションエンジニアはインフラエンジニアが作ったITシステムの基盤の上で、業務に必要なソフトウェアを開発するのです。
インフラエンジニアの仕事内容
インフラエンジニアは、ITインフラとなるサーバーやネットワークの設計や構築を行います。仕事としては、設計・構築の「上流工程」、納品後の運用・保守である「下流工程」の大きく2つ。インフラエンジニアは、システムエンジニアのように納品後の運用・保守まで担当することもあるのです。
各工程で専門性を高め、実績を認められたら、いずれの工程の仕事も担当できるようになります。
インフラエンジニアは、専門分野によって大きく下記の3つに分けられることを覚えておいてください。
・サーバーエンジニア
サーバーエンジニアは、インターネットを利用するためのウェブサーバーや、データを保管するファイルサーバーなどの設計や構築などが仕事です。サーバーの設定や必要なソフトウェアのインストールのほか、バックアップの仕組みを用意したりします。
・ネットワークエンジニア
データセンターや社内ネットワーク環境を設計・構築するのがネットワークエンジニアです。ネットワーク構成や使用するネットワーク機器、それらの接続の仕方などを設計し、テストを行って安定したネットワークを構築。IT社会で障害が起きると大きな損失になってしまうため、24時間・365日安定稼働するように、設計・構築・保守することを求められます。
・セキュリティエンジニア
ITシステムに対してウイルス感染やサイバー攻撃による情報漏洩などが起きないよう、セキュリティ面の安全性を確保するのがセキュリティエンジニアの仕事です。セキュリティシステムを導入し、ITシステムの脆弱性をカバーすることで、クライアントのITシステムや大事な情報を守ります。
インフラエンジニアの仕事のやりがい
クライアントのITインフラを構築・運用・保守するインフラエンジニア。その仕事のやりがいは、ITインフラならではの大規模なシステムに関われることでしょう。社会のデジタル化が進む中、ITシステムやアプリを動かす根幹の部分に携われることは、責任が重い分、大きな達成感につながるはず。
また、自分の構築したITインフラの上で稼働しているITサービスやゲームなどのアプリケーションが、多くの人に喜んでもらえているとき、やってよかったと感じるでしょう。
インフラエンジニアとして実績を積むと、ITコンサルタントやITアーキテクトなど、さまざまなキャリアプランがあることも魅力のひとつといえます。
インフラエンジニアの仕事の流れ
インフラエンジニアは、実際にどのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、インフラエンジニアの仕事の流れを「上流工程」「下流工程」に分けて解説します。
1. 上流工程:要件定義・設計・構築
クライアントに納品するまでの「要件定義」「設計」「構築」という業務を「上流工程」といいます。ここでは、各業務について確認しましょう。
・要件定義
最初に行うのが要件定義です。インフラエンジニアは、購入するサーバーや装置が要件を満たせるか確認したり、アプリケーションの要件を満たせる環境になるか、システムエンジニアと相談したりします。
・設計
要件定義が固まったら、システムの詳細な設計に移ります。サーバーの設定値やインストールするソフトウェアのバージョンを決めたり、定期処理やバックアップの時刻を決めたりするのがインフラエンジニアの仕事。これらは、インフラエンジニアの作業内容を具体的に記したものなので、できるだけ情報を正確に記載する必要があります。
・構築
設計内容にもとづいて、実際にITインフラを構築していきます。サーバーにOS(基本となるソフトウェア)をインストールするといった作業に加え、データベースやウェブサーバーなどの根幹となるソフトウェアなどをインストールするのです。また、ネットワーク機器類の設定も重要な仕事といえます。
納品前には、ネットワーク機器との通信が正常に行われているか、サーバーは想定どおりに稼働しているかなどのテストを行って、問題がなければ作業完了です。
2. 下流工程:運用・保守
クライアント(お客である企業や行政)に納品した後も、インフラエンジニアはITインフラの運用サポートを行います。
クライアントにとっては、運用後の安定的な稼働こそが重要。社内ITシステムの基幹となるサーバーやネットワークの停止は、企業活動に大きな影響を及ぼすため、絶対に避けなければならないからです。
インフラエンジニアはサーバーやネットワークに負荷がかかっていないか常に監視し、危機を回避できるようサポートします。特定の時間にアクセスが集中してシステムに負荷がかかる場合には、負荷を分散するようにするなどの対策を行うのです。
万が一、ITインフラに不具合が発生したり、停止したりした場合には、復旧作業のためにインフラエンジニアが駆けつけます。
インフラエンジニアの年収
インフラエンジニアの平均年収は、「令和3年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)によると、733万6,000円です。ITインフラは現代社会において必須なので、今後年収が伸びていく可能性は十分にあります。
ただし、ITインフラ分野は日進月歩の世界。求められる基本的なスキルに加えて、次々生み出される新しい知識を習得するなどの自己研鑽も必要です。知識や技術を磨き続けていれれば、年収1,000万円を超えることもできるでしょう。
インフラエンジニアに必要な資質と能力
インフラエンジニアは、ITインフラを担う責任の重い仕事です。どのような資質や能力が求められるのかを解説します。
サーバー・ネットワークの知識
ITインフラを設計・構築する上で欠かせないのが、サーバーやネットワークの知識です。また、一連の作業についても理解しておく必要があるでしょう。
近年では、サーバーのクラウド化が急速に進んでいます。そのため、AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azureなどのクラウドシステムと、それに関連するセキュリティの知識は必須です。特にセキュリティ設定では、外部からのサーバー攻撃をいかに防ぐかがポイント。あらゆるリスクを回避して、ITインフラを安定稼働できるための知識は、システムエンジニアには欠かせないのです。
設計力
ITインフラは、一般のユーザーから注目されることはほぼなく、「インターネットにアクセスできない」といった障害が起きたとき、初めてユーザーはその存在に気づくでしょう。
ユーザーに注目されないということは、つまりITインフラが安定的な稼働を実現できているということ。インフラエンジニアにとって、「障害が起きない」ことが一番の成功です。
そのため、インフラエンジニアには、サーバーやネットワークの障害が発生しないよう、障害が起こるリスクを洗い出し、それを対策した設計をするチカラが求められます。想定外の障害が発生したケースにもITインフラの安定的に稼働、あるいはすぐに復旧できるような設計がされていると、インフラエンジニアとして高く評価されるでしょう。
自己研鑽力
インフラエンジニアが働くIT業界は、技術革新のスピードがとても速い世界。常に最新の技術や動向をキャッチすることが求められます。現状に満足して「今あるスキルだけで大丈夫」と思っていても、やがて業務に支障が出てしまうかもしれません。常に自己研鑽を行い、知識や技術をアップデートしていく姿勢が必要です。
将来のキャリアプランを考えて、誰からも求められるインフラエンジニアになりたい人は、現在担当する業務だけでなく、ワンランク上のスキルを進んで習得する、資格取得にチャレンジするなど、自発的に行動しています。
インフラエンジニアになるための方法とは?
高校生のあなたが、もしインフラエンジニアの仕事に興味を持っているなら、これからどのような進路を目指したらいいのか、気になっているのではないでしょうか。続いては、インフラエンジニアになるための方法をご紹介します。
インフラエンジニアの世界の現状
PCやスマートフォンなどで、インターネットやアプリを利用することは、今や当たり前のことになりました。サブスクリプションサービスや無店舗販売など、ITシステムを活用した経営戦略が、企業の売上を左右するまでになっています。
このように、インターネットやアプリの利用が増えていることから、基盤となるITインフラの重要性は高まる一方。インフラエンジニアの需要は今後も増え続けることでしょうし、ITの専門知識を必要とすることから非常に価値の高い職種でしょう。
大規模なITインフラ構築の仕事では、クライアントとなる企業に1〜2年常駐して、システム構築を行います。クラウド上でのシステム構築の場合は、リモートワークで作業することも。
インフラエンジニアは障害などのトラブルがあれば、即対応しなければならない厳しさはありますが、トラブルが長期間続くことはまずありません。チーム体制で業務に対応するだけでなく、仕事量も管理されているため、比較的柔軟に働けるはず。
インフラエンジニアになるための勉強ができる大学・学部
インフラエンジニアになるには、特別な学歴や資格は必要ありません。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「Jobtag」によると、実際に働いている人のうち77.6%が大学卒であり、大手企業の新卒社員採用では、大学卒である傾向が見られます。
インフラエンジニアになりたいと思うなら工学部に進学し、情報系のカリキュラムを学ぶのがおすすめです。ITシステムの基礎はもちろん、最新技術の研究をすることもできるため、就職に有利に働くはず。高度な知識を必要とする企業には大学院に進学し、修士・博士課程を修める必要もあるでしょう。
<インフラエンジニアになるための勉強ができる学部・学科>
・システムデザイン工学部情報システム工学科
・総合情報学部総合情報学科
・コンピューターサイエンス学科
・情報学部情報ネットワーク・コミュニケーション学科
・メディアコミュニケーション学部情報文化学科
・工学部情報システム学科
・社会学部社会情報学科
インフラエンジニアなどITエンジニアになるには、「理系でなければいけないのでは?」と思う人もいるかもしれません。ただし、文系学部でもインフラエンジニアになっている人もいます。入社後に研修を受けられるので、安心してチャレンジしてくださいね。
インフラエンジニアに必要な資格や受験すべき試験
インフラエンジニアとして仕事で役立つ資格には、どのようなものがあるのでしょうか。各資格について詳しくご紹介します。
・基本情報技術者試験/応用情報技術者試験
基本情報技術者試験、および応用情報技術者試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が運営する経済産業省認定の国家資格です。基本情報技術者試験は、情報処理の基本的な知識やスキルがあることを証明できるもので、試験会場に設置されたコンピューターを使用するCBT(Computer Based Testing)方式です。その上位資格の応用情報技術者試験は、データベースやネットワークをはじめ、経営戦略、プロジェクトマネジメントなど、幅広く出題されるペーパー方式の試験です。
・シスコ技術者認定
シスコ技術者認定は、アメリカのネットワーク機器大手メーカー・シスコシステムズが運営する試験です。インフラエンジニアが扱うネットワーク機器はシスコシステムズ製が多いため、この資格を取得することはネットワーク構築の際に役立ちます。試験は「エントリー」「アソシエイト」「プロフェッショナル」「エキスパート」の4つのレベルに分かれており、アソシエイトの「CCNA(Cisco Certified Network Associate)」は、世界のネットワークエンジニアにとって必須の試験だとか。
・Linux技術者認定試験
Linuxが運営するのが、Linux技術者認定試験です。LinuxはITシステムでよく利用される高いシェアを誇るサーバー用OS。Linux技術者認定試験の「LinuC」の認定を得れば、Linuxの知識が確かなことを証明できるため、インフラエンジニアとしてのキャリアパスに役立つはず。試験は難度別に3段階に分かれており、入門編の「LinuCレベル1」は、自宅からオンライン受験可能です。
・AWS認定ソリューションアーキテクト
システムエンジニアは、今後クラウド化が進む中、AWS(Amazon Web Service)を利用して、ITインフラを構築することも考えられます。そこで、AWSのクラウドサービスの関連スキルを認定する資格が役立つのです。AWS認定ソリューションアーキテクトは、AWSに関する中級レベルのスキルを認定するもの。1年以上のAWS実務経験が受験条件です。
・ネットワークスペシャリスト試験
IPAが運営する試験のうち、高度試験のひとつがネットワークスペシャリスト試験です。ネットワークに関する網羅的な試験が出題されます。ネットワークエンジニアは、ぜひ取得したい資格といえるでしょう。
・情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験も、IPAが運営する高度試験のひとつです。「登録セキスぺ」とも呼ばれるこの資格は、サイバーセキュリティに関する専門知識を認定するもの。クライアントのITシステムの安全性をサポートするには不可欠です。
インフラエンジニアになるために目指すべき就職先
インフラエンジニアとして働くには、メーカーや情報サービス会社、システムインテグレータ(Sler:エスアイヤー)といわれるシステム開発会社への就職が適しています。インフラエンジニアは、SI会社の職種のひとつなのです。
インフラエンジニアは、正社員や派遣社員での募集がほとんど。勤務先は都市部が多いですが、実際に勤務するのはクライアントのオフィスであることも多いので、就職前には注意が必要です。また、企業や行政などのベースとなるITインフラを構築することから、クライアントとのあいだに守秘義務が発生するのが一般的です。
クライアントによっては上流工程のみ、下流工程のみと業務が限定される場合もあります。「上流工程をやりたかったけれど仕事がなかった」とならないようにしたいところです。
インフラエンジニアになった後のキャリアプラン
インフラエンジニアからのキャリアアップには、どのような選択肢があるのでしょうか。ここでは例として、ITコンサルタント、ITアーキテクト、スペシャリストとゼネラリスト(プロジェクトマネージャー)をご紹介します。
ITコンサルタント
インフラエンジニアとしての知識や経験を活かして、ITコンサルタントを目指す道があります。ITコンサルタントは、クライアントのIT全般に対する課題を解決するのが仕事。クライアントに現状の経営課題や要望をヒアリングし、ITを活用した経営戦略の提案を行うのです。そのため、ITの知識はもちろん、経営戦略や経済分野に関する幅広い知識が必要です。
ITコンサルタントは、さまざまな企業の課題に関わるため、さまざまな業界で仕事をしたい人には最適な職種。クライアントの経営課題解決に貢献すれば、「あなたに相談して良かった」と大いに称賛されるはず。縁の下の力持ちであるインフラエンジニアにはない達成感ややりがいがあるかも。
ITアーキテクト
アーキテクトとは「建築家、設計者」という意味です。ITアーキテクトは、ITコンサルタントが作った経営戦略にもとづいて、最適なITシステムを実現するための全体デザインをするのが仕事です。
近年、企業のITシステムのクラウド化が急速に進んでいることから、ITアーキテクトの需要が高まっています。クライアントのビジネスに直結する大規模なシステムを設計するため、ITアーキテクトにはITスキルだけでなく、ビジネスに関する知識やコミュニケーション能力のほか、強いリーダーシップが必要となるでしょう。
スペシャリスト(クラウドエンジニアなど)
インフラエンジニアは担当分野のスペシャリストとして、クラウドエンジニアやセキュリティエンジニア、フルスタックエンジニアなどを目指すキャリアプランがあります。難度の高い資格を取ったり、ハイレベルな技術を習得したりすることで、一般のインフラエンジニアよりもハイレベルな業務を担当するのです。知識や技術をさらに極めたい人向きといえますね!
プロジェクトマネージャー
インフラエンジニアのゼネラリストとして、プロジェクトマネージャーになる道もあります。この場合、クライアントへのヒアリングや提案、要件定義などを担当し、実際にサーバーやネットワーク機器の設定など、現場作業はチームのインフラエンジニアに任せます。
複数のメンバーで構成されるチームをまとめ、複数の仕事を同時並行で担当し、スムーズに納期に間に合わせるためには、プロジェクトマネジメント能力が欠かせません。幅広い知識を持ち、計画性の高い人に向いています。
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インフラエンジニアは、社会を支えるITシステムに携わることができる、とてもやりがいのある仕事です。DX(デジタルトランスフォーメーション)など、社会はITを使って進化しており、インフラエンジニアの需要は高まるばかり。これからの社会づくりに貢献できる仕事をしたい人に、インフラエンジニアは最適でしょう。
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