スポーツトレーナーになるには?目指せる大学の学部や主な就職先と仕事内容を解説
2022.11.18
高校生の皆さんの中にも、スポーツ関連の仕事をする道を志す方は多いのではないでしょうか。自身がプレーヤーとなることはもちろんですが、プレーヤーを支えるスポーツトレーナーという道もあります。スポーツ選手だけでなく、フィットネスジムなどで一般人の指導を行うのもスポーツトレーナーの役割です。
この記事では、スポーツトレーナーの仕事内容をはじめ、スポーツトレーナーに向いている人や、目指す方へ向けて進路も解説します。ぜひ参考にしてください!
目次
スポーツトレーナーとは?
スポーツトレーナーは主に、スポーツ選手がベストなパフォーマンスを発揮できるよう、トレーニング指導やコンディショニングを行う職業です。また、フィットネスジムやヨガスタジオなどで一般人をサポートするのもスポーツトレーナーの仕事となります。
スポーツトレーナーのなかでも分野ごとに分かれており、リハビリを担当する「メディカルトレーナー」や健康管理(コンディショニング)を担当する「コンディショニングトレーナー」などがあります。
そのほか、パーソナルトレーナーなど近い種類の職業も含め、スポーツトレーナーという仕事の分野や概要について見ていきましょう。
スポーツトレーナーとスポーツインストラクターの違い
スポーツトレーナーは選手のコンディショニングや怪我の予防、リハビリに力を入れ、専門知識を活かした長期的な仕事が特徴です。一方インストラクターは、ヨガやエアロビクスなどの教室で、実際に体を動かしながら技術指導を行います。
スポーツインストラクターは、自身の体力と技術が重要で、参加者と一緒に汗を流しながら指導するのが醍醐味です。どちらも健康とスポーツに貢献する仕事ですが、その方法や求められる資質が異なります。
スポーツインストラクターについては、以下の記事で詳しく解説しています。
スポーツトレーナーとパーソナルトレーナーの違い
スポーツトレーナーとパーソナルトレーナーの主な違いは、対象と指導方法にあります。スポーツトレーナーは主にチームや施設と契約し、複数の人々を同時にサポートします。一方、パーソナルトレーナーは個人に特化し、一人ひとりのニーズに合わせたプランを作成してマンツーマンで指導します。
パーソナルトレーナーの仕事は筋トレ指導からダイエットサポートまで多岐にわたり、スポーツジムに所属したり、フリーランスとして活動したりと働き方もさまざまです。
スポーツトレーナーになるには?
スポーツトレーナーを目指す場合、体育系や医療系の大学や短大、専門学校のスポーツ関連学科で学ぶのが一般的です。
とくに必須の資格はありませんが、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格取得が有利になります。これらの教育機関や資格取得過程で、人体の仕組みやトレーニング理論、怪我の予防と回復などについて専門的に学ぶことができます。
大学と専門学校の違い
大学と専門学校では、学習内容や期間、実習先など、さまざまな違いがあります。自分の目標や状況に合わせて、最適な道を選ぶことが大切です。以下の比較表を参考に、じっくり検討してみましょう。
項目 | 大学 | 短大・専門学校 |
期間 | 4年 | 2~3年 |
費用 | 約240~470万円 | 約220万円 |
学び | 幅広い教養と専門知識 | 専門知識が中心 |
実習 | 大学の部活が中心 | 外部の有名チームもあり |
向いている人 | ・幅広く学びたい人 ・将来の選択肢を残したい人 | ・目標が明確 ・早く社会に出たい人 |
スポーツトレーナーの道を選ぶか迷っている場合は、大学進学をおすすめします。大学では幅広い教養を身につけながら、教育分野やスポーツビジネス、健康産業など他の進路も視野に入れられるため、将来の選択肢が広がります。
また、大学進学では、スポーツトレーナーとして活躍するのに有利な資格も取得可能です。たとえば、NSCA-CSCS(ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)などの四大卒限定の資格があります。この資格は、アスリートの競技力向上に特化したトレーニング指導者として世界中で高く評価されています。
また、一部の大学では柔道整復師や理学療法士といった医療系の国家資格取得も可能です。これらの資格は、スポーツトレーナーとしてのキャリアを大きく広げる可能性があります。このように、大学進学では将来の選択肢が広がり、専門性を高められることが大きな魅力です。
スポーツトレーナーになるための勉強ができる大学・学部
スポーツトレーナーを目指す場合、体育大学や医療系の大学、スポーツ学科やリハビリテーション学科などに進学するとよいでしょう。
スポーツトレーナーを目指せる大学の一例は以下のとおりです。
- 札幌国際大学 スポーツ人間学部(北海道)
- 東京家政大学 健康科学部 リハビリテーション学科(東京都)
- 桐蔭横浜大学 スポーツ科学部(神奈川県)
- 駿河台大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科(埼玉県)
- 愛知学院大学 健康科学部 健康科学科(愛知県)
- びわこ成蹊スポーツ大学 スポーツ学部(滋賀県)
- 大阪体育大学 スポーツ科学部(大阪)
スポーツトレーナーが取得しておくとよい資格
スポーツトレーナーは特別な資格がなくてもなれますが、活躍している人の多くは、医療系の資格を取得している場合がほとんどです。
資格を取ることで専門知識や技術が身につき、同時に周囲からの信頼も得やすくなります。就職の際も、資格があれば選択肢が広がるでしょう。
スポーツトレーナーに役立つ主な資格について、国家資格と民間資格に分けて解説します。
国家資格
スポーツトレーナーになるには、次のような医療系の国家資格を取得するとよいでしょう。
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- 鍼灸師
- 理学療法士
これらの国家資格は、選手のケアや回復に欠かせない専門技術を身につけられます。
資格を取得するには、国が指定する大学・専門学校に通い、試験に合格しなければなりません。4年制の大学であれば体育学部やスポーツ科学科。専門学校では医療系専門学校のほかに、スポーツトレーナー専門の養成学校が選択肢に入ってくるでしょう。
資格取得を考えている場合は、志望大学のカリキュラムや取得可能な資格について事前によく確認することが大切です。
民間資格
スポーツトレーナーを目指すなら、次のような民間資格も取得しておくと有利です。
- 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
- ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチック・トレーナー(JATAC-ATC)
- FMS(Functional Movement Screen)
- 全米ストレングス&コンディショニング協会 認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
まずは、国内で広く認知されている「日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)」の取得を目指すのが一般的です。
JSPO-AT資格を取得するには、日本スポーツ協会が認定した養成校で必要な科目を履修し、180時間の実習を完了する必要があります。その後、実技確認テストと検定試験に合格することで資格が得られます。大学や専門学校によっては、カリキュラムの中にこの資格取得に必要な科目が組み込まれている場合もあるので、進学先を選ぶ際に確認するとよいでしょう。
スポーツトレーナーの種類と仕事内容
スポーツトレーナーと一口にいっても、下記の5種類に分類されます。
- アスレティックトレーナー
- メディカルトレーナー
- コンディショニングトレーナー
- ストレングストレーナー
- フィットネストレーナー
それぞれの仕事内容について見ていきましょう。
アスレティックトレーナー
アスレティックトレーナーの仕事は、主にスポーツの現場で選手の健康管理やスポーツ障害の予防を行うことです。具体的には骨折や脱臼などの外傷が起きた際の応急処置、障害予防、ケガから回復した後のリハビリテーションなどを行います。
さまざまな競技の選手と接することになるため、トレーナーとして必要な身体に関する知識とともに各競技の特性に応じた専門知識も必要になってきます。そのため、資格取得には受験資格を得るために大学や専門学校で決められた単位を取得する必要があります。
アスレティックトレーナーの資格は国内では「日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)」「ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチック・トレーナー(JATAC-ATC)」などの民間資格があります。
アスレティックトレーナーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
アスレティックトレーナーになるには?仕事内容やキャリアプラン
メディカルトレーナー
メディカルトレーナーは主に医療機関で活動します。日本の超高齢化社会の特性から高齢者に対する心身の機能低下を予防、元気な日常生活のためのサポートといった仕事が増加しており、今後の需要増加が見込まれます。
メディカルトレーナーになるためには特に資格は必要ありませんが、未経験からメディカルトレーナーを目指すには大学や専門学校で学ぶのが近道です。
コンディショニングトレーナー
コンディショニングトレーナーは選手の試合や練習前後、選手以外に対しては日々のコンディションを整える役割の仕事です。スポーツ現場においてはコンディションを整えることで競技能力を向上させ、良い結果に導くことが主な役割です。
コンディショニングトレーナーになるために資格は必要ありませんが、パーソナルトレーナー資格であるFMS(Functional Movement Screen)など、身体の診断や機能改善を行える知識や技術が身につく資格の取得が役立ちます。
ストレングストレーナー
ストレングストレーナーは選手の筋力やスピードを向上させるプログラムの作成などを行い、競技能力を向上させる仕事です。また、ドーピングに関する注意の指導も行います。
ストレングストレーナーになるために必要な資格は特にありませんが、全米ストレングス&コンディショニング協会 認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)などを取得するとスポーツの現場で知識や技術を活かすことができます。
フィットネストレーナー
フィットネストレーナーは、スポーツジムやフィットネスクラブで、個人に対して運動プログラムの提供や栄養アドバイスを行います。
まずはカウンセリングでトレーニングの目的を決めます。ダイエットや体力作りなど、その人の目的にあったトレーニングメニューを作成するところから始まり、マシンの使用法や生活習慣・食事のアドバイスなども行います。
スポーツトレーナーの仕事のやりがい
スポーツトレーナーの仕事のやりがいとして、例えば以下のような点があります。
- スポーツ科学の知識を活かして 選手の身体面からアプローチし、選手の欠点を改善しパフォーマンス向上を図って好成績に貢献できる。メジャースポーツの世界では必須となっているので、チームと共に大きな達成感を味わうことができる。
- ケガや故障で苦しんでいる選手に寄り添い、スポーツトレーナーの専門的な知識や技術を活かして回復させ競技に復帰できたときには、共に喜びを分かち合うことができる。
- スポーツ選手として現役でなくなっても、スポーツ選手と一緒になって活躍することができる。
スポーツトレーナーの仕事の流れ
就職先などによってスケジュールは変わってきますが、ここではプロスポーツチームに所属するスポーツトレーナーの一般的な1日の流れを例に解説します。
1.対象者の現状把握
選手の現在の状態を把握し、身体の改善すべき点を検討します。
2.メニューの計画立案
筋力向上、故障箇所のリハビリ、ストレッチやマッサージなどのメニューを立案します。
3.メニューの実行
立案したメニューに従ってトレーニング指導やマッサージを行います。
4.結果の確認
トレーニングやマッサージを行った後の現状や改善の状況(以前との差)を把握します。
スポーツトレーナーの年収
スポーツトレーナーもほかの業種と同様に、経験を重ねることで貢献度が増していき、それに伴って年収も増加していきます 。実力次第ということですね。
社会人や大学・高校チームと契約するスポーツトレーナーの多くは、スポーツジムや整体院などから派遣されています。 一般的なデータとしては、スポーツトレーナーの年収の実態は約370万~650万円となっています。平均的な年収は500万円前後でしょう。
ちなみに、プロチームや一流選手と専属契約ができるスポーツトレーナーはほんの一握りです。狭き門ですが、プロチームや一流選手と専属契約しているトレーナーはかなりの収入があるようですよ!
スポーツトレーナーの将来性
近年は健康ブームの流れもあり、ジムに通う人もフィットネスジムの店舗も増えています。2022年8月の速報「フィットネスクラブの動向(特定サービス産業動態統計速報(2022年8月))」(経済産業省)によれば、フィットネスクラブ利用者数は14,316,534人で同年+4.2%と9ヵ連続で増加しているそうです。
フィットネスクラブの指導は基本的にパーソナルトレーナーの仕事ですが、近年はスポーツトレーナーが受け持つ機会が増えています。一部のプロスポーツ選手だけが相手ではなくなってきているのです。
機械とは異なり、人の体はそれぞれ違います。一人ひとり合わせたトレーニング指導ができるスポーツトレーナーは、今後ますます必要とされていくと見て間違いないでしょう。需要は伸びていく方向なので、将来性の高い職業といえます。
スポーツトレーナーに向いている人
スポーツトレーナーに向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 運動能力が高い
- 社交性がある
- 専門知識がある
- 観察力と判断力がある
- 自己研鑽できる
運動能力が高い
どのようなスポーツでも担当する種目については動きの手本を見せる必要があるため、一定以上の運動能力が必要です。
社交性がある
選手やお客を勇気づけモチベーションを上げることが大切なので、人を明るく元気にできる態度・気遣い・人柄が必要です。また、意思疎通を図れるコミュニケーション能力、精神面を支える信頼関係を構築できる能力も求められます。
専門知識がある
身体機能・運動機能・解剖学・運動整理学・スポーツ科学・栄養学などの幅広い専門知識。トレーニング指導・ストレッチ・テーピング・アイシング・ケガの応急処置などの実践的な技術が求められます。
観察力と判断力がある
選手やお客のコンディションを把握し小さな変化や異変を見逃さない観察力、その状態に応じて対処する臨機応変な対応力と判断力が重要です。
自己研鑽できる
競技ルールやドーピング基準などは変更される場合があるので、そのような情報をキャッチする情報収集が必要です。 また情報収集のみならず、栄養学・スポーツ科学の進歩についていけるよう、積極的に勉強していく姿勢が求められます。
スポーツトレーナーの主な就職先
スポーツトレーナーの主な就職先は、以下のとおりです。
- スポーツジム・フィットネスクラブ
- ヨガスタジオ・ピラティススタジオ
- スポーツ選手が使用する道具の開発会社
- 病院や整体院
- 企業や学校の部活などの指導員
スポーツジム・フィットネスクラブ
スポーツジムやフィットネスクラブで働くスポーツトレーナーもいます。一般の人にフィットネスを教えたり、生活習慣や食生活のアドバイスを行ったりします。社内研修が充実している企業であれば、未経験でもスポーツトレーナーとしてのキャリアを積める可能性があります。
ヨガスタジオ・ピラティススタジオ
スポーツトレーナーの就職先として、ヨガスタジオやピラティススタジオもあります。
お客さんの体力と柔軟性を向上させるために、ニーズに応じて呼吸法や筋肉の動かし方などを指導します。ヨガやピラティスは、リラックスやメンタルヘルスの向上にも焦点を当てるのが特徴です。
スポーツ選手が使用する道具の開発会社
スポーツトレーナーのなかには、スポーツ選手が使用する道具の開発をしている人もいます。選手のパフォーマンス向上やケガの予防に焦点を当て、効果的で安全な製品の開発を行っています。
近年では、自宅で使える運動器具の需要が急増しており、トレーナーのアドバイスを取り入れた製品開発に注力している企業も多いです。
病院や整体院
病院や整体院で働くスポーツトレーナーもいます。ここでのトレーナーの役割は、リハビリや身体の機能向上のサポートです。
病院では、医療プロフェッショナルと協力して患者の健康回復を促進し、運動プログラムを通じて生活の質を向上させます。整体院では、トレーナーがクライアントの姿勢や筋肉の調整に焦点を当て、身体のバランスを整えます。
専門的な知識とスキルを駆使して患者さんの健康をサポートし、安全で効果的なトレーニングを提供することが求められます。
企業や学校の部活などの指導員
スポーツトレーナーは企業や学校の部活動などで指導員としても活躍します。
企業では、従業員の健康促進プログラムの一環として、トレーナーがフィットネスクラスや健康相談を提供し、労働環境の向上に貢献しています。また、学校の部活動で、生徒たちにスポーツ技術やトレーニングの基本を教えることもあります。
スポーツトレーナーになった後のキャリアプラン
スポーツトレーナーになった後のキャリアとして、どのような道があるのでしょうか。ここでは、2つのキャリアプランをご紹介します。
経験を積んで独立する
フィットネスジムや治療院などで経験を積み、独立するプランです。例えば、体操教室を経営するなどが考えられます。ほかにもスイミングスクールやボクシングジムなど、スポーツトレーナーとしての経験を活かせる職種はさまざまです。
講師の道
経験を積んだのちに専門学校や公共施設の講師として働くなど、やりたい道に進むというプランもあります。「人になにかを教えることが好き」という方に向いているプランではないでしょうか。
プロスポーツチームに所属する
プロスポーツチームに所属する、またはプロスポーツ選手個人と契約するなどの選択肢もあります。 狭き門になりますが、地道に実績を積んでいくなど、努力次第では成功に近づくかもしれませんよ。
スポーツトレーナーへの道について「JOB-BIKI」で情報収集してみよう
スポーツトレーナーは、スポーツ科学を活かして選手のパフォーマンス向上を図って好成績に貢献できる。そしてケガや故障で苦しんでいる人を回復させられる可能性のある、とてもやりがいのある仕事です。
資格は必要ないものの、実際には柔道整復師などの国家資格が求められる場面が多いので、大学や専門学校で学ぶのが近道です。高校生のうちから情報収集しておけば、スムーズに進学できるでしょう。「JOB-BIKI」の人物検索で「スポーツトレーナー」と検索してみると、有名なスポーツトレーナーのことがわかると思うので、ぜひ検索してみてくださいね。