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海上保安官になるには?仕事内容や求められる資質と能力を紹介

2022.11.24

カテゴリー:
海上保安庁 巡視船もとぶ

海上保安官は、海上保安庁所属の国家公務員として海上の安全や治安を守る業務を担当しています。高校生の皆さんにも、海上で活躍する姿に憧れる方は多いでしょう。海難救助や犯罪の鎮圧など、海上の安全にかかわる業務を担います 。

この記事では、海上保安官の仕事内容や求められる資質や能力のほか、海上保安官を目指すための進路についても解説します。海上保安官興味があれば、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!

海上保安官とは?

操船訓練

海上保安官の仕事は主に海の安全を守ることですが、そのために日々さまざまな仕事をこなしています。整備や通信はもちろん、担当によっては船員に振る舞う料理を任されることも。また、船ではなくヘリコプターのパイロットとして活動することもありますよ。
まずは、海上保安官の詳しい仕事内容や自衛官との違いについて見ていきましょう。

海上保安官と自衛官の違い

海上保安官が国土交通省の管轄する海上保安庁の国家公務員として海上の安全や治安確保を図るのに対し、自衛官は防衛省の特別職国家公務員として陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に分かれています。
海上保安庁に近い存在としては海上自衛隊ですが、自衛隊は「日本の領土・領海・領空を守り、国の安全を確保するため、外国からの侵略から防衛する」ことが主な任務です。

海上保安官の仕事内容

現場の海上保安官の仕事内容は多岐に渡りますが、大きく分けると以下の5つに分類されます。巡視船の乗組員のイメージが強いですが、海洋調査やサイバーセキュリティ対策など、ほかにもさまざまな業務があります。

1.警備業務の仕事内容

違法・過激な集団による海上デモや危険・悪質な事案、テロなどに対応します。こちらはみなさんが海上保安官としてイメージしているものに一番近いでしょうか。担当する職種としては、以下のようなものがあります。

● 特別警備隊……違法・過激な集団による海上デモや悪質なテロなどに対応する
● 運用指令センター運用官……118番の受付や、事件・事故の発生時に関係機関と連携する司令塔

2.救難業務の仕事内容

海難事故における救難活動や船舶火災の消火など、海の安全を守る仕事内容です。ニュースなどでよく見るのはこの業務でしょうか。 担当する職種としては、以下のようなものがあります。

● 潜水士……遭難や転覆など、救助が必要な人や行方不明者の潜水探索を行う
● 機動情報通信隊……災害現場の状況を把握するため、現場に出動しリアルタイムな映像伝送を行う
● 救命救急士……海難事故などによるケガ人を医療機関まで搬送する間、救急救命処置を行う
● 機動救難士……海難発生時にヘリコプターで出動し、迅速な救助を行う
● 国際緊急援助隊……海外で大きな災害が発生した場合、被災国の政府などの要請を受け、救助や災害復旧等を行う

3.海上交通業務の仕事内容

海上交通業務では、海上の交通ルールの設定や航路標識の管理、海難事故の調査など、海上の交通に関する業務を行います。担当する職種としては、「海上交通センター運用管制官」などが挙げられます。

4.海洋情報業務の仕事内容

南極の観測や海底の地形調査など、実は海洋調査も海上保安官の仕事の一環です。海流や地形を把握することで安全な航路の設定などに役立てています。以下のような職種に就くと担当できる内容です。

● 南極地域観測隊員……観測隊として南極地域へ赴 き、周辺の地形などを観測する
● 海洋防災調査官……地震や津波の防災に役立てるため、海域 火山や地殻変動などを観測する
● 海洋情報編集官……安全で効率的な航路を設定するために欠かせない「海図」の制作、情報の更新などの業務を行う

5.捜査系 の仕事内容

国際的な組織犯罪など、大規模な犯罪の捜査を行うのも海上自衛官の仕事です。密輸や密航、海賊行為などを取り締まるために、監視や分析によって日々情報を集めています。捜査系の職種としては、例えば以下のようなものがあります。

● 国際捜査官……英語や中国語など、言語力を活かして外国人犯罪者を捜査する
● ソマリア周辺海域派遣捜査隊……ソマリア海域周辺の海賊に対処するため、海上自衛隊の護衛艦に同乗し、監視などを行う
● 制圧指導官……海上保安官の制圧訓練を指導する専門家
● 鑑識官……警察の鑑識官と同じく、捜査現場に残された指紋や血痕などの採取・分析を行う

6.そのほかの仕事内容

海上保安官は上記のほかにも、サイバーセキュリティ対策官や音楽隊といったまったく異なる内容の仕事もあります。

● パイロット……海難救助の際など、ヘリコプターを操縦する。
● サイバーセキュリティ対策官……海上保安に必要なシステムなどをサイバー攻撃から守る。
● 情報処理官……上記システムを維持・管理するため、監視やトラブルの対処を行う。
● 大学校教授……海上保安大学校にて研究をしながら、教授として生徒の前で授業を行う。
● 音楽隊……広報活動の一環としてだけでなく、職員の士気を高める役割を持つ。

海上保安官の仕事のやりがい

海上保安庁の任務は治安の確保、領海警備、海難救助、海上環境の保全、災害対策、海洋調査、海上交通の安全、国際機関との連携・協力と多岐にわたるため、仕事内容もたいへん幅広いです。日本の海を守る、人命救助を行うという大切な任務を遂行するスペシャリストとして、責任感に裏打ちされた職務こそが海上保安官のやりがいといえるでしょう。

海上保安官の仕事の流れ

石垣島の巡視艇

海上保安官の勤務時間は基本的に1日8時間。現場の海上・陸上・航空基地の各勤務では勤務体系が異なりますが、ここでは海上勤務を例にご紹介します。

1.巡視業務

遭難船や密輸船などの不審船がいないか、パトロールを行います。

2.訓練の実施

救助訓練など、業務で必要なスキルを身につけるための訓練を行います。

3.海上交通業務

航路標識を点検・管理したり、海難の調査をしたりと、海上交通の安全に関する業務を行います。

4.巡視業務

2度目の巡視業務を行います。

海上勤務は長ければ10日以上の航海となり24時間体制でパトロールを行うため、4時間勤務を繰り返す交代制が基本となります。当直は3〜4交代で回ってきます。勤務時間外でも船に乗っているため、休み時間も船の上で過ごすことがほとんどです。

海上保安官の年収

人事院が公表している「令和2年 国家公務員給与実態調査結果」によると、海上保安官の平均年収は710万円とされています。国税庁の「民間給与実態調査結果」の433万円より274万円も多く高給と言えますが、国家公務員としては平均的な年収です。

海上保安官に必要な資質と能力

訓練

海上保安官として活躍していくために、どのような資質と能力が必要とされるのでしょうか。ここでは、必要な資質と能力を4つご紹介します。

強い責任感

海上保安官の仕事は、人命救助や領海を守るなど国や国民のために行う業務です。国家公務員として使命を理解し、 海の安全を守る。海の上という過酷な環境でも仕事を続けていくには、責任感が無くては務まらないでしょう。

強い精神力

人命救助や犯罪の制圧など、海上保安官の仕事は緊張感のある場面も多く存在します。そういった状況でも冷静かつ正確に仕事をこなす精神力が求められます。

タフな体力

10日以上の航海もあるので、 体力も必要です。海上保安官の仕事に興味のある方は、高校生のうちから体力づくりに励むのもおすすめですよ!

コミュニケーション力

海上保安官は基本的にチームで協力して職務を行いますので、コミュニケーション力は必須です。陸よりも危険が多いため、意思疎通が足りないと命に関わります。また、長い間船という閉鎖された場所に一緒にいるので、協調性も重要です。

このほか、外国語の語学力は必須でありませんが、外国船を相手にすることも多いので身につけておくとよいでしょう。 英語はもちろん、中国語やロシア語の習得も仕事の幅を広げるチャンスとなります。

海上保安官になるための方法とは?

海上保安官になるには、具体的にどのような進路を選択すれば良いのでしょうか。海上保安官の世界の現状と併せて、進学先や就職先について理解を深めておきましょう。

海上保安官の世界の現状

近年は国際情勢が変化してきたこともあり、組織的な密航や密輸、テロ行為など犯罪への緊張感が高まっています。これは日本の周辺海域にもいえることで、日本の海を守るために海上保安官の需要は高まっているのです。

しかし、十分な数の海上保安官がいるとはいえないのが現状です。警察や消防など陸上の組織に置き換えてみると、海上保安官はそのほとんどを1つの組織で担当しているような状態ですので、当然多くの人員が必要となってきます。

人手不足ともいえますが、 逆にいえば需要が安定しています。海上保安官になりたい人にとっては、現状はチャンスでもあるのです。

海上保安官になるための勉強ができる大学・学部

海上保安官を目指す場合、まずは海上保安学校または幹部候補育成を目的としている海上保安大学校に入学します。海上保安大学校は高卒者向けの(本科)と大卒者向けの(初任科)が あります。そのための大学選びとして、航海学や救急救命を学べる学科のある大学を目指すと有益でしょう。

上記以外では、特定の資格を持っている人を対象とした海上保安学校(門司分校)に入学するパターンもあります。卒業後は資格を活かした現場に配属されます。このほか、海上保安官になるために活かせる資格を取得できる大学・学部として以下の大学があります。

● 新潟医療福祉大学……医療技術学部 救命救急学科
● 徳島文理大学……総合政策学部 総合政策学科
● 駿河台大学……法学部 法律学科 警察・消防コース
● 東海大学……海洋学部 海洋理工学科 航海学専攻

海上保安官に必要な資格や受験すべき試験

海上保安官になるために特に資格は必要ありませんが、以下の資格があると海上保安学校(門司分校)に入学 できます。

● 航海……五級海技士(航海)以上
● 機関……五級海技士(機関)以上
● 通信・技術……第二級総合無線通信士以上、第三級海上無線通信士以上、第二級陸上無線通信士以上のいずれか
● 飛行……事業用操縦士以上、第一種航空身体検査証明書、航空無線通信士を全て有すること
● 整備……航空整備士または航空運行整備士
● 航空通信……航空無線通信士

海上保安官になるために目指すべき就職先

海上保安官になるために目指すべき就職先は、やはり海上保安庁です。海上保安庁の職員=海上保安官なので、就職先としては一択になります。海上保安官の仕事は陸海空に分けられますが、基本的には海上勤務からスタートするのが一般的です。

海上保安官になった後のキャリアプラン

海上保安庁(国土交通省、観光庁)

大きな組織である上にさまざまな職種があるため、海上保安官のキャリアプランはいくつものパターンが考えられます。しかし共通している点として、基本的に昇進を目指すこととなります。例えば、海上保安大学校を卒業した場合、以下のようなキャリアプランが考えられます。

20代

PL型巡視船主任航海士→本庁係員

30代

PC型巡視艇船長→本庁係長→PLH型巡視船首席航海士→外務省出向

40代

管区海上保安本部課長→PLH型巡視船航海長→海上保安部長→PL型巡視船船長→管区海上保安本部長

海上保安官は海上保安庁に属する職員ですが、能力やスキル次第では外務省などほかの省庁に出向するなど、組織をまたいだ キャリアアップを目指すこともできますよ!

海上保安官への道について情報収集してみよう

海上保安官 は海の警察官として、犯罪の取り締まりから人命救助、海上交通業務など幅広い業務をこなす仕事です。ハードな仕事ではありますが、国や人を守るという大きな使命があり、やりがいは非常に高い仕事といえます。人から感謝される機会も多いでしょう。

海上保安官になるためには、海上保安庁の養成機関である海上保安学校、または海上保安大学校に入学する必要がありますので、高校生のうちから進路について考えておくことが大切です。入学に向けての勉強は、早めに取り組むに越したことはありませんよね。

また、「海上保安官採用試験」への受験を目指す道もあります。こちらは海上保安大学校で研修を2年間行い、研修終了後はそのまま幹部海上保安官として就職できる制度です。受験は大学卒業者が対象になるので、大学進学を検討している人は「JOB-BIKI」で情報収集してみてくださいね。

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