絵本作家になるには?仕事内容を詳しく解説!収入、目指せる進路も紹介
2022.12.01
子どものときに、お父さんやお母さん、先生に絵本の読み聞かせをしてもらった経験があるでしょう。ページをめくって、ドキドキしたり、ワクワクしたり、楽しい気持ちになったこともあるはず!高校生の皆さんのなかには、そんな絵本を自分で作ってみたいと思ったことのある人もいるかもしれませんね。
この記事では、絵本作家の仕事についてお伝えしていきます。どうしたら絵本を作る仕事ができるようになるのか、気になったらぜひ読んでみてください。
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目次
絵本作家とは?
絵本作家は、物語や絵を創作して、絵本にする仕事です。文章と絵の両方を1人で担当する作家もいれば、文章のみ、絵のみを専門としている作家もいます。絵本は子どもたちの読み物として、多くの家庭のほか、幼稚園や保育園などの施設でもたくさん読まれます!子どもが人生で初めて触れる本でもあることから、教育にも欠かせない存在なのです。絵本作家は、子どもたちを惹きつけるお話と絵によって、魅力ある絵本を生み出しています。
絵本作家の仕事内容
絵本作家の仕事内容は、以下のとおりです。
1.アイデア出し
2.出版社や編集者との打ち合わせ
3.下書きを行う
4.文章を書く
- 絵に色を付けデザインを整える
- 製本する
7.校正作業を行う
それぞれ詳しく解説します。
1.アイデア出し
絵本作家にとって、新しい物語のアイデアを生み出すことは創作の第一歩です。多くの作家は日常生活の中でインスピレーションを得ながら、頭の中で物語を組み立て始めます。浮かんだアイデアはすぐにメモをとることが重要で、スマートフォンやタブレットを使って文章やスケッチを記録します。
アイデアが形になってきたら、本やインターネットで調べものをして内容を膨らませていきます。このプロセスは散歩中や移動中など、予期せぬ瞬間に進展することもあります。常に新しい発想を探りながら、アイデアを育てていくことが、魅力的な絵本を生み出す土台となるのです。
2.出版社との打ち合わせ
絵本作家の重要な仕事の一つに、出版社との打ち合わせがあります。商業出版の場合、絵本制作の方向性を決めるため、制作前に綿密な打ち合わせを行います。ここでは、ストーリーの内容や絵本を通じて伝えたいメッセージなどを話し合います。この過程で、原稿料や納期などの実務的な面も決定します。
3.下書きを行う
物語の骨組みができたら、絵本の下絵づくりに入ります。作家は、ストーリーに沿って簡単なスケッチを描き始めます。これは本番の絵を描く前の設計図のようなものです。
下絵をもとに、編集者と何度もやりとりを重ねるため、基本的には鉛筆で行うそうです。「ここの場面をもう少し詳しく」とか「このキャラクターの表情をこう変えては?」など、細かな調整を行っていきます。
こうしたキャッチボールを繰り返し、物語の流れや絵の構図、キャラクターデザインなどを徐々に固めていきます。この過程を経て、本格的な制作に入る前の、絵本の設計図が完成するのです。
4.文章を書く
絵本では、絵が主役で、文章はそれを支える役割を果たします。絵の流れに沿って、簡潔で理解しやすい言葉を選びます。リズミカルな文章は、読み聞かせの際に心地よい響きを生みます。
なお、絵本制作では、絵を担当する人と文章を担当する人が別々の場合もあります。それぞれの専門性を活かし、協力して一冊の絵本を作り上げていくのです。
5.絵に色を付けデザインを整える
絵本の制作方法は作家によってさまざまです。水彩や色鉛筆などで直接色を塗り、完全に手描きで仕上げる人もいれば、デジタルツールを活用する作家もいます。デジタルツールを活用する場合は、手描きの下絵をスキャンしてデジタル彩色を行います。
いずれの方法でも、最終的には出版社のデザイナーと協力して、文字のレイアウトや全体のバランスを調整します。
6.製本する
製本とは、印刷された紙を本の形に仕上げる工程のことです。絵本の場合、各ページの絵や文字が印刷された用紙を正しい順序で並べ、一冊の本として綴じ合わせます。
この過程で、表紙をつけたり、背表紙を作ったりします。製本の方法によって、本の開きやすさ、耐久性、見た目の印象が変わってきます。
7.校正作業を行う
校正作業では、作家、編集者、デザイナーが協力して、絵と文章の細部をチェックします。
誤字脱字はもちろん、絵の細かな部分、色彩の調和、ページ間の整合性なども綿密に確認し、読者に届ける前の最終調整を行います。
絵本作家の仕事のやりがい
絵本作家として活躍すると、自分が生み出した絵本を広く届けて、日本や世界にいるたくさんの子どもたちに楽しんでもらうことができます。発行された絵本が書店に並んだり、図書館の本棚に並んだりして、誰かが手に取るところを目にするかもしれませんね。一生懸命に作った絵本が、親子の絆を深めたり、ロングセラーになって世代を超えて愛されたりする喜びは、絵本作家ならではのやりがいだといえます!
絵本作家の働き方
絵本作家の多くはフリーランスとして活動しています。専業の絵本作家もいますが、イラストレーターやデザイナーとの兼業が一般的です。なかには出版社勤務をしながら絵本制作を行う人もいます。
このように、絵本作家は個々の状況に合わせて多様なスタイルで創作活動を展開しています。自由度が高い反面、安定性を求めて関連職との兼業を選ぶ作家も多いのが現状です。
絵本の種類
絵本作家は、さまざまな種類の絵本を制作しています。主な絵本の種類は以下の通りです。
1.知育絵本
数字、色、形、言葉などを学ぶための絵本で、子どもの認知能力の発達を促します。代表的な作品に、「いないいないばあ」シリーズ(顔や体の部位を学ぶ)、「めくってごらん」シリーズ(数や形、色を学ぶ)「くだものいろいろかくれんぼ」(果物の名前と色を学ぶ)があります。
2.物語絵本
ストーリーを通して想像力や創造性を育む絵本で、子供の情操教育に適しています。有名な作品には、「ねないこだれだ」や「おおきなかぶ」などがあります。
3.しかけ絵本
飛び出す仕掛けや、触って感じる素材を使った絵本。子供の好奇心を刺激し、興味を引き付けます。人気の作品として、「とびだす!はらぺこあおむし」や「くだものどうぞ」などがあります。
4.生活習慣絵本
食事や歯磨き、トイレトレーニングなど、子供の日常生活に関する絵本。子育ての助けになる実用的な内容が特徴です。有名な作品には、「じぶんで はなを かめるかな」や「むしばあちゃん」などがあります。
絵本作家の想定年収
絵本作家の年収は、絵本の売れ行きに大きく左右されます。その理由は、収入の仕組みに関係しています。絵本作家の収入は、絵本の執筆に対して支払われる「原稿料」と、売れた絵本の部数に応じて支払われる「印税」に分けられているのです。そのため、たくさん売れる絵本や、長く売れ続ける絵本を生み出すことができれば、印税で安定した収入を得られることも!
ただし、多くの絵本作家は安定した収入を得るために仕事を掛け持ちしています。たとえば、挿絵やイラストを描くスキルを活かしてデザイン会社などに務める場合、年収の目安は約300万円~400万円とされています。
絵本作家になるには
将来、憧れの絵本作家になるには、一体どんな方法があるのでしょうか?ここでは、以下の5つを紹介します。
- 美術系の大学などに通う
- 出版社へ作品を持ち込む
- コンクールに応募する
- 自費出版する
- SNSを活用し作品を宣伝する
順番に解説します。
美術系の大学などに通う
絵本作家には、基本的に画力が求められます。そのためにも、作品制作のスキルを身に付けておくことが大切です!美術系の大学では、絵本作家に欠かせない技術を学び、磨くことができます。絵画専攻やデザイン専攻など、さまざまな表現を専門としたコースもあるので、絵本作家をはじめとしたクリエイターの職業を目指して入学する人も多くいます。絵本作家を目指しているなら、進学先の選択肢に入れてみては?
出版社へ作品を持ち込む
絵本作家が出版社へ作品を持ち込んで、編集者に見てもらう方法です。作品が編集者の目に留まり、さらには会社内でも認められたら、いよいよ作品を出版する流れになります。持ち込みから出版までは厳しい道のりになりますが、デビューのきっかけとなる可能性も!なかには持ち込みができない出版社もあるので、事前に各社の公式Webサイトなどで情報を確認してみてくださいね。
コンクールに応募する
出版社が開催する絵本のコンクールに作品を応募する方法です。コンクールの受賞者には賞金が与えられるほか、賞によっては受賞作品が出版されることも!多くの作家が受賞を狙って挑戦するため競争率が高く、難易度も高いといえます。しかし、入賞すればデビューにつながる大きなチャンスが手に入るので、腕試しにチャレンジしてみても良いでしょう。
自費出版する
絵本作家を目指す人にとって、自費出版は作品を世に出すための有効な手段です。
自費出版では、作者みずからが制作費用を負担し、印刷会社や出版社と協力して絵本を出版します。これにより、出版社の審査を経ずに自分の作品を発表できます。また、自費出版では、作者が絵本の内容やデザインをコントロールできるため、自分のビジョンを忠実に反映した作品を作れます。
自費出版した作品に反響があれば、将来的に商業出版のチャンスに恵まれるかもしれません。
「りんごかもしれない」「このあとどうしちゃおう」などのヒット作で有名な絵本作家のヨシタケシンスケさんも、最初の出版は自費出版でした。
SNSを活用し作品を宣伝する
絵本作家になりたいなら、SNSを使って自分の絵本の魅力を伝えてみましょう。絵本の一部を写真や動画で紹介したり、絵本を作る過程で起きた面白い出来事を投稿したりするなどの方法がありますよ。
SNSで積極的に情報発信していれば、出版社の目にとまることもあります。絵本作家のまなつ&まふゆさんは、インスタグラムに投稿していたイラストが評価され、2023年に絵本「君がいるから」を出版しています。まなつ&まふゆさんは、夫婦イラスト作家で、お2人とも大学で美術を専攻されていたそうです。
有名な絵本作家の学歴
ここでは有名な絵本作家の代表作品と経歴についてまとめました。
作家名 | 代表作品 | 最終学歴 |
ヨシタケシンスケ | ・ねこの絵本 ・しゅくだい ・あうっとそばに・・・ | 金沢美術工芸大学 |
新井洋行 | ・れいぞうこ ・いろいろ ばあ ・おやすみなさい | 東京造形大学 |
石井睦美 | ・皿と紙ひこうき ・パパはすてきな男のおばさん ・卵と小麦粉とそれからマドレーヌ | フェリス女学院大学 |
五味 太郎 | ・手ぶくろを買いに ・ごんぎつね ・でんでんむしのかなしみ | 東京外国語大学 |
林明子 | ・はじめてのおつかい ・こんとあき ・おつきさまこんばんは | 横浜国立大学 |
ほかの絵本作家の出身大学も知りたい人は、ぜひ「JOB-BIKI」を使って調べてみてくださいね。人物検索で「絵本作家」と入力すると、絵本作家として活躍している先輩たちがどの大学へ進学したのかチェックできますよ!
絵本作家に必要な資質
絵本作家に向いているのは、どんな人なのでしょうか?仕事に必要な資質について解説します。
分析力
絵本作家として安定した収入を得るには、絵本が売れなければなりません。そのためには、どうしたら売れる作品になるかを考えたり、売り方を工夫したりと、マーケティングのために分析する力が求められます。今、子どもたちが何に関心を持っているのか、分析的な視点で見ることも大切です。
企画力
絵本を出版するには、まず出版社に絵本の企画を採用してもらうことになります。そのためにも、「どんな作品を制作しようとしているのか」「なぜこの絵本を出版しようと考えたのか」「絵本を読んだ子どもたちにどんな影響を与えることができるのか」などを伝えて、人を納得させる力が必須です。
独創性
子どもたちをあっと驚かせるような、これまでにない絵本を生み出すには、作家に独創性が求められます。絵本の読者である子どもたちは、大人とはまったく違う物事の見方をしていることも少なくありません。絵本作家も、当たり前のように見える物事の見方を変えて、独創的な作品を生み出せるといいですね。
創造性
絵本作家をはじめとしたクリエイター(制作の仕事に携わる人)には、創造性が欠かせません。子どもたちが夢中になる絵本の中には、これまでに見たことのない新しい世界観やキャラクターなど、常識はずれの驚くような発想から生まれたものも。絵本作家には特に強い創造性が必要だといえます。
作画力
絵本は文字が読めない年齢の子どもが読むことも多いので、絵を見ただけで十分に人を惹きつけられるだけの作画力も重要となります。単に絵の技術が高いということだけでなく、画材や描き方に工夫して子どもたちに親しみやすいと感じてもらえることや、他にない個性があってしっかりと印象に残ること、子どもたちが場面を理解しやすいように構図を設計することなども大切です。
絵本作家になるために取得したい資格
絵本作家になるために必須の資格はありません。ただし、絵本制作の仕事に役立てられる資格があるので、ぜひチェックしておきましょう。
Illustrator®(イラストレーター)クリエイター能力認定試験
グラフィックツールの「Illustrator®」を使って制作するスキルを証明できる資格です。最近では、デジタルで挿絵やイラストを描くクリエイターも多いので、一通りの使い方を押さえておきたいですね。
Photoshop®(フォトショップ)クリエイター能力認定試験
画像編集のソフトウェア「Photoshop®」を使って制作するスキルを証明できる資格です。絵本作家をはじめとしたプロも、絵の調整にソフトを使うことがあるので、こちらもあわせて受験してみては?
クリエイターなどのデザインをする仕事に欠かせない、色彩に関する知識やスキルを証明できる資格です。多くの絵本は、フルカラーのアナログで迫力たっぷりに描かれています。色彩への学びを深めると、自分が表現したいことに合わせて、効果的な配色を使えるようになるはず!
絵本作家のキャリアプラン
絵本作家としてデビューしたら、まずはたくさんの人に手に取ってもらえるような、人気の作品を生み出すことが一つの目標となります。売れ行きのいい作品は増刷されて、多くの人のところへ届けられるようになります。さらには、出版社から新しい作品の依頼を受けるようになるでしょう!
次に目標となるのが、長く売れ続ける作品を生み出すことです。絵本の世界では、数十年も前の作品が今なお読み続けられているケースも珍しくありません。皆さんの中には、1960年代に発行された『ぐりとぐら』や、1970年代に発行された『100万回生きたねこ』や『はらぺこあおむし』などの作品を読んだことがある人も多いはず。これらはロングセラーの絵本の一例です。多くの絵本作家が、こうした時代を超えて読み継がれる絵本を作ることを目指しています。
絵本作家になりたいあなたは「JOB-BIKI」で進路検索!
ここまで、絵本作家になる方法をご紹介しました!有名な絵本作家のなかには、大学を卒業してからこの仕事に就いた人も多くいます。たとえば、児童文学『クマのプーさん』の翻訳や、絵本『ノンちゃん雲に乗る』で知られる石井桃子さんは、日本女子大学校 (現日本女子大学)英文学科の卒業生。大学における文学や外国語の学びが、その後の編集や翻訳、絵本の創作につながっています。
絵本作家の先輩たちの出身大学に興味があるなら、ぜひ「JOB-BIKI」を使って調べてみてくださいね。人物検索で「絵本作家」と入力すると、絵本作家として活躍している先輩たちがどの大学へ進学したのかチェックできますよ。