商学部とは?経済学部との違いや主な就職先、向いている人の特長を解説
2025.03.04

「商学部では具体的に何を勉強するの?経済学部との違いは?」「商学部に進んで、将来どんなところに就職できるんだろう」とお悩みの高校生もいるでしょう。
商学部と経済学部は、どちらもビジネスを学ぶ学部ではありますが、実はアプローチの仕方が大きく異なります。この違いをよく知らないまま選んでしまうと、入学後に「イメージと違った」と感じることも。
この記事では、商学部の学びについて経済学部や経営学部と比較しながら分かりやすく解説します。この記事を参考にすれば、商学部が自分に向いているかを確認できます。
大学の学部選びで迷っている人は、以下の記事も参考にしてみてください。
大学の学部が決まらない?学部の選び方や各学部・学科を系統別に紹介
目次
商学部とは
商学部は「どうすれば商品がよく売れるのか」を考え、実践的に学ぶ学部です。お店や企業の視点から、商品を売るための方法やお金の使い方を学びます。
具体的な学びの内容は、以下のとおりです。
- マーケティング
- 製品を消費者に届けるまでのプロセス
- 企業経営に必要な経営学、会計学、金融
消費者が望むものを理解し製品に反映させる方法
マーケティングとは、どのような製品が好まれ、どのような人がその製品を求めているのかを分析する活動です。マーケティングでは、市場調査・宣伝広告・販売促進などについて学びます。
製品を消費者に届けるまでのプロセス
製品が消費者に届くまでには、卸売業者や小売業者が仲介するなど、複雑な流通のプロセスを踏むのが一般的です。
この流通プロセスを効率的に管理することで、企業は商品を適切な価格と時期に消費者へ届けることができ、結果として企業の競争力向上につながります。
企業経営に必要な経営学、会計学、金融
会計学では、企業経営にとって重要な資金の流れを学びます。企業のさまざまな活動に関わる金額や利益を記録・計算する簿記の学習を基本とし、企業外部に情報を提供する財務会計や、企業内部に向けた管理会計のほか、商法や税法について学びます。
商学部と似た学部との違い
商学部、経済学部、経営学部はどれも社会学系統の学部です。人間にとって、よりよい社会の枠組みやルール、またお金やモノなどの動向を探ります。ただし、それぞれの学部でアプローチする視点が異なります。
【商学部・経済学部・経営学部の違い】
学部 | 学びの内容 | 向いている人 |
商学部 | どうすれば商品が売れるのか | ・ヒットする商品に興味がある人 ・好奇心旺盛な人 ・考え方が柔軟な人 |
経営学部 | どうすれば会社が利益を生み出せるのか | ・経営者を目指している人 ・リーダーシップのある人 ・チーム運営に興味がある人 |
経済学部 | どうすれば社会を豊かにできるか | ・経済活動や社会現象に興味がある人 ・数学が得意な人 ・論理的に考えられる人 |
商学部と経営学部の違い
商学部は「どうすれば商品が売れるのか」というモノに注目しますが、経営学部は会社に注目して「どうすれば会社が利益を生み出せるのか」を考えます。モノを販売している会社がどんな組織なのか、どういう風に会社を経営していくのか、経営の視点に立って考えるのが特徴です。
具体的な学びとしては、企業活動の管理や経営戦略などを学ぶ経営学のほか、病院や学校を含むあらゆる組織の運営に必要な経営管理、企業活動での資金の流れを研究する会計学を主軸に学びます。
経営学部に向いている人の一例は、以下のとおりです。
- 経営者を目指している人
- リーダーシップのある人
- チーム運営に興味がある人
経営学部については、以下の記事で詳しく解説しています。
商学部と経済学部の違い
商学部は「どうすれば商品が売れるのか」を研究する学問ですが、経済学部は「どうしたら社会を豊かにできるか」を考える学問です。経済学部は、お金が世の中でどうまわっていくのかを見る学問であり、大きな視点で社会をとらえる特長があります。経済学が世の中の役に立つ重要な学問であることは、ノーベル経済学賞という賞があることからも分かります。
具体的な学びとしては、個人や企業の経済活動を分析の対象とする「ミクロ経済学」と、国民総生産や物価、投資といった社会全体での経済の動きを捉える「マクロ経済学」があります。
- 経済活動や社会現象に興味がある人
- 数学が得意な人
- 論理的に考えられる人
経済学部については、以下の記事で詳しく解説しています。
商学部は文系?理系?

商学部は、一般的には文系に分類される学部です。学問系統でいうと社会科学系統に位置づけられます。ただし、理系の人でも商学部を目指すことは可能です。
理系のまま受験する場合は、数学の強みを活かしながら地歴などの文系科目を独学で補うことになります。たとえば慶應義塾大学商学部A方式では、英語・地理歴史・数学が受験科目となっています。
理系から商学部を目指すもう一つの方法として、文系に転向(文転)する方法があります。その場合は、高3の夏までには転向することをおすすめします。
商学部で行われている研究
商学部では、マーケティングや商品の流通など「商い」に関する幅広い分野で実践的な研究が行われています。ここでは、商学部で行われている研究として日本大学の研究を紹介します。
日本大学の商学部の研究「多国籍企業における市場導入の地理的範囲を考慮した製品ブランド編成の比較研究」では、企業がどのように世界中で商品を売っているのかについて、とても興味深い発見がありました。
大手企業は、売り出す商品(ブランド)を3つの方法で展開していることが分かりました。日清食品のブランドで例をあげます。
- 世界中で同じ商品を売る方法(例:世界80カ国以上で愛される「カップヌードル」)
- アジアやヨーロッパなど、特定の地域だけで売る方法(例:中国・香港・アメリカへの進出を果たした「ラ王」)
- 日本だけなど、一つの国でだけ売る方法(例:関東と関西で味が異なる「どん兵衛」)
この研究では、最近の企業は世界共通の商品に力を入れる傾向があるものの、実は地域限定や国限定の商品も大切だということを明らかにしました。なぜなら、これらの限定商品が将来、世界展開するための重要な足がかりになるからです。
このように商学部では、企業が実際に行っている商品戦略について、深く研究していきます。
ほかにも各大学の商学部で行われている研究を知りたい方は、スタビキを確認してみてください。
スタビキで商学部の研究を見てみる
商学を学ぶメリット

商学部の魅力は、将来の仕事に直接活かせる知識が学べることです。「なぜあの商品はヒットしたのか」「どうすれば消費者は商品を買いたくなるのか」など、実際のビジネスの成功例や失敗例から実践的に学べます。
また、新商品の開発方法や売り方、会社のお金の管理など、企業で働くうえで必要な知識を幅広く身につけられるのもメリットです。商学部で学んだことは、将来どんな仕事に就いても必ず役立つスキルと言えるでしょう。
さらに、商学部では学びを活かしてさまざまな資格を取得できるのも魅力の一つです。
商学部で取得を目指せる資格
商学部での学びは、以下の資格取得に役立ちます。大学によっては、資格取得講座を開講している場合もあるため、在学中に挑戦しやすいでしょう。
取得を目指せる資格 | 主な就職先 |
公認会計士 | 監査法人 |
日商簿記 | ・一般企業の経理部門 ・コンサルティング会社 |
税理士 | ・税理士法人 ・税理士事務所 |
ファイナンシャルプランナー | ・銀行 ・証券会社 ・生命保険会社 |
証券アナリスト | ・証券会社 ・資産運用会社 ・銀行 |
不動産鑑定士 | ・不動産鑑定事務所 ・銀行 ・コンサルティング会社 |
中小企業診断士 | ・コンサルティング会社 ・民間企業の経営・戦略部門 ・士業系の事務所 |
これらの資格には、大学の特定科目の単位を取得すると試験の一部が免除されるものや、単位取得と申請だけで取得できるものもあります。ただし、多くは別途試験に合格する必要があるため注意してください。
商学部に向いている人
商学部に向いている人の特長は、以下のとおりです。
- ヒットする商品に興味がある人
- 好奇心旺盛な人
- 考え方が柔軟な人
それぞれ解説します。
ヒットする商品に興味がある人
スーパーやコンビニで「どうしてこの商品がよく売れているんだろう?」「なぜこの商品は棚の一番目立つところに置いてあるんだろう?」と考えることが好きな人は、商学部に向いています。人気商品の裏側にある工夫や、お客様の心をつかむ戦略に興味がある人は、商学部での学びを楽しめるでしょう。
好奇心旺盛な人
個人的には興味の無いジャンルでも世の中で流行しているものに興味がある人は商学部に向いています。例えば「男性向けコスメ」や「VTuber」などについて、知らないままにせず調べてみる人です。
世の中のトレンドや企業の動き、新しい技術やサービスなど、変化し続けるビジネスの世界に好奇心を持って飛び込める人は、商学部での学びを楽しめるでしょう。
考え方が柔軟な人
「これまでと違うやり方があるかも」「別の視点から見るとどうだろう」と、物事を柔軟に考えられる人は商学部に向いています。
たとえば、売れない商品があったとき、値下げだけでなく、商品の見せ方や売り場の工夫など、さまざまな改善方法を考えられる人は、ビジネスの学びを楽しめるでしょう。
商学部の主な就職先

商学部の主な就職先には以下のとおりです。
- メーカー
- 商社
- 販売・サービス
- 貿易
- 流通
- 運輸業
これらの業界では、商学部で学ぶ「商品開発」「マーケティング」「販売戦略」などの知識を直接活かすことができます。そのため、商学部生の特性を活かせる人気の就職先となっています。
商学部の知識を活かせる職種
商学部の知識を活かせる職種は、以下のとおりです。
- マーケティング職
- 企画職
- 経理・財務職
- 営業職
これらの職種は、商学部で学ぶ「商品の売れる仕組み」「企業の運営方法」「会社のお金の動き」などの知識を直接活かすことができます。とくに、商品企画やマーケティングでは、消費者心理や市場分析など、商学部での学びが大きな強みとなります。
商学部のある大学
商学部のある大学の一例は、以下のとおりです。
ほかにも商学を学べる大学を知りたい人は、逆引き大学辞典の「系統別学問内容リサーチ」からチェックしてみてください。
商学部に属している主な学科

商学部に属している主な学科は、以下のとおりです。
- 商学科
- 会計学科
- マーケティング学科
それぞれ解説します。
商学科
商学科は「商品を売り買いする」という活動を、社会の仕組みという大きな視点から学ぶ学科です。物流や貿易、金融、保険など、商品やサービスが取引されるさまざまな場面について理解を深めます。さらに、近年注目される知的財産権の取引なども含め、ビジネス社会の基本となる幅広い知識を学べます。
会計学科
会計学科では、簿記から財務会計・管理会計まで、基礎から応用へと体系的に会計学を学び、企業環境の変化に対応した専門知識を身につけます。
また、公認会計士や税理士などの資格取得に向けた支援も行い、実社会で活躍できる会計のプロフェッショナルを育成します。
マーケティング学科
消費者のニーズと流通システムの仕組みや構造を分析・理解する力を身につけることができます。理論と実践を組み合わせ、マーケティング戦略やブランド戦略、流通など、社会のニーズに応える知識とスキルを体系的に学ぶ学科です。
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商学部では、商品やサービスをどうやって売っていくかを学べます。ヒット商品に興味がある人や好奇心旺盛で柔軟な発想ができる人には向いているでしょう。卒業後は、メーカーや商社、販売・サービス業など、さまざまな業界で活躍できます。また、在学中に取得した資格を活かして、マーケティングや企画、財務など、ビジネスの第一線で力を発揮することも可能です。
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