AI(人工知能)研究ができる大学3選!AIの研究分野と活用事例も紹介
2024.05.27
スマートフォンの音声アシスタントや自動車の運転など、私たちの生活にも身近なものとなっているAI(人工知能)。そんなAIについて大学で研究してみたいと思っている人もいるでしょう。
AIの研究は主に、理学部や工学部の情報系学科で行われています。本記事では、AIに強い大学3選やAI研究で有名な企業を紹介するので、進路選びの参考にしてみてください。この記事を読めば、AIの基礎から最先端の研究までわかるので、大学でAIを学ぶイメージがわくはずです。
AI研究が盛んな大学を知りたい人は、スタビキを活用してみてください。AI研究を行っている大学を一覧で確認できます。各大学の研究内容についても詳しく知れるほか、大学の詳細情報や就職実績なども合わせて確認できるため、進路選びの参考になりますよ。
目次
AIの研究分野と活用事例
AIの研究分野として、以下の7つを解説します。
- アルゴリズム
- 音声認識
- 画像認識
- 自然言語処理
- 機械学習
- 推測・予測
- 感情分析
身近な活用事例についても紹介するので、参考にしてみてください。
アルゴリズム
アルゴリズムとは、問題を解決するためにコンピューターが使う、一連の手順や計算ステップのことです。
アルゴリズムは、与えられたデータから規則性やパターンを見つけて、効率的に処理を行い、最適解を出すための方法です。もっと効率的に良い答えが出すために、優れたアルゴリズムを開発するのがアルゴリズムの研究というわけです。たとえばカーナビはアルゴリズムを使って、出発地点から到着地点までの効率の良いルートを提示します。インスタグラムであなたが何か検索したときも、どの投稿が表示されるかはアルゴリズムによって計算されているんですよ。
音声認識
音声認識は、人間の発した音声を解析し、文字に変換する技術です。身近な例でいうと、スマートフォンのSiriやAmazon社のアレクサなどに搭載されています。
音声認識は、ほかにも以下のような場面で活用されています。
- 会議の議事録作成
- 診察時のカルテ記載
- コールセンターの電話応対
ただし、完ぺきに聞き取れるわけではないので、今後も性能を上げていく課題はあります。
画像認識
画像認識とは、画像に写っているモノや人をコンピューターに理解させる技術です。
ディープラーニング技術※の発達によって精度が飛躍的に進歩し、以下のようなサービスで使われています。
- スマートフォンの顔認証
- 自動運転の異常検知
- 検品業務
※ディープラーニングとは、人工知能が大量のデータから自動的に特徴を学習する手法
自然言語処理
自然言語処理とは、人間が日常のコミュニケーションで使っている言語(自然言語)をコンピューターが理解・生成するための技術です。ちなみに自然言語の反対は人工言語で、プログラミング言語などが挙げられます。
チャットボットや機械翻訳、chatGPTなどに活用されていますが、音声認識や画像認識ほど正確性は高くありません。今後も研究の余地がある分野です。
機械学習
機械学習とはAIの中核技術で、大量のデータをAIがみずから学習することを言います。
AIの主な役割はグループ分けです。たとえば、画像を見せて「これはゾウだ」「これはゾウではない」といったようにグループ分けをします。適切にグループ分けする方法をコンピューターに自動的に学習させる方法が機械学習です。AIが適切にグループ分けできるようになれば、新たなデータを見せたときに「これはゾウだ」と判別できるようになります。
機械学習の一例として、クレジットカードの不正利用防止が挙げられます。AIに過去の不正事例を学習させることで、決済時に不正を検知する仕組みです。この手法を採用することで、不正取引を早期に発見し、被害を最小限に抑えることができます。機械学習による不正検知は、大量のデータから不正パターンを自動的に抽出できるため、従来の手作業による不正チェックよりも高い精度が期待できます。
AIに大量のデータを学習させることで、新たなデータに対して、予測や判断ができるようになるのが機械学習です。
予測
AI予測とは、これまでのデータをAIに学習させ、未来を予測させる技術です。
たとえば、スーパーの売上予測や天気予報、病気の発症予測、将棋やチェスなどのゲームに使われています。
スーパーの売上予測なら、過去の売り上げや天気予報、近隣店舗の売上データなどを入れると、AIが明日の売り上げを予測してくれます。
感情分析
感情分析AIとは、人の表情や声、文章などから感情を読み取る技術です。導入先としてコールセンターが挙げられます。
オペレーターとお客さんの会話中のイントネーションや声の高さなどをAIに分析させることで、顧客の満足度やオペレーターのストレス度を測れます。将来的にはコールセンターに怒って電話してきたお客さんを、機械がなだめる時代がくるかもしれませんね。
まだ研究段階の分野ではありますが、機械も人間の気持ちが読み取れるようになってきています。人間にしかできないと思われていた個別対応も、AIが担える未来は遠くないかもしれません。
AIを活用するメリット
AIを活用するメリットには、以下のようなものがあります。
- 業務の効率化
- 人手不足の解消
- 人的ミスの減少
- コスト削減
- 安全性の向上
ここでは、農業で活用されているAIを例に解説します。
アメリカのブルー・リバー・テクノロジーは、レタス栽培のため、農薬散布用のロボットを複数とりつけた大型トラクタを開発しました。
レタス栽培には、こまめな除草と苗の間引きが欠かせないことから、このロボットは、雑草の判断と苗の密集状況を評価できる画像認識機能が搭載されています。これにより、雑草の生えているところのみに除草剤をまくことに成功。従来のラジコンヘリを使った畑全面への農薬散布に比べ、農薬の使用量を約90%もカットできました。
AIを活用することで、コストを削減しながら業務の効率化に成功した事例です。
参考:Welcome – Welcome | Blue River Technology
AIを活用するデメリットや課題
AIを活用するデメリットや課題には、以下のようなものがあります。
- 雇用の減少
- AIを扱える人材の確保
- サイバー攻撃のリスク
- AIのブラックボックス化
- 学習データの軽量化
AIの普及によって、多くの仕事がなくなると言われています。AIが仕事を奪うというより、AIを扱える人材がそうでない人の仕事を奪うという言い方が正しいのかもしれません。
AIを扱える人材とは、AIを開発する人はもちろん、AIの特性を理解して新たなビジネスを作ったり問題解決に取り組んだりする人を指します。日本では、こうしたAI人材の確保が急務と言われています。
サイバー攻撃のリスクが高まることも、AI活用のデメリットと言えます。たとえば、ログインの際のセキュリティ強化に使われる画像認識(画像の中から信号機を選べなど)は、AI技術によって簡単に破れることが指摘されています。
また、AIが出した答えは思考のプロセスが見えない、つまりブラックボックス化していることも問題です。人間のように思考の過程が見えないので、出された答えの正確性に疑問が残ります。なぜその判断・分類になったのか根拠を説明できるAIが求められており、研究・開発が進んでいます。
AIの課題として、学習データの軽量化も挙げられます。AIを活用するには、大量のデータをAIに学習させる必要がありますが、このデータを収集・解析していくことが負担となっているのです。データがなくてもAIが賢くなれるようデータの軽量化が課題となっています。
AIの研究をしたい人におすすめの学部
AIの研究は、主に理学部や工学部の「情報」系学科で行われていますが、AIを手段として他分野を学ぶ選択肢もあります。
最近は、バイオ(生物学)系、医療系、経済学系、社会学系(地域創生など)の学部・学科でも、AI分野を扱うケースも増えています。
AI研究を行っている大学を知りたい人は、スタビキを活用してみてください。各大学の教員(研究者)が、どのような研究を行っているかわかるので、どの大学なら「本当にやりたいことができるか」が見えてきますよ。
AI研究に強い大学3選
ここでは、AI研究に強い大学を3つ紹介します。
- 東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
- 近畿大学 工学部 情報学科
- 名城大学 情報工学部 情報工学科
東京理科大学 創域理工学部 経営システム工学科
東京理科大学の鈴木正昭教授は、原子力発電所で深刻な事故が起きた時に、プラントの損傷状況や使える設備・人員から、その後の最適な対応の仕方を示してくれるAIシステムの研究を行いました。安全性の向上を目指した研究の一例です。
東京理科大学の工学部では、ほかにも以下の研究室でAIに関する研究が行われています。
- データマイニング・機械学習(大和田研究室)
- 分散人口知能・ネットワークサービス・DX(西山研究室)
- 進化計算・知能システム(原田研究所)
参考:経営システム工学科|創域理工学部|教育/学部・大学院|ACADEMICS|東京理科大学 (tus.ac.jp)
近畿大学 工学部 情報学科
近畿大学の片岡多隆之教授は、3D画像と人工知能(AI)を駆使した「技能系自立学習型ロボット」に関する研究を中心に行っています。この研究では、作業現場で人間とロボットが効率よく一緒に働けることを目指しています。AIが最適な生産ラインと作業手順を継続的に学習する方法や、必要に応じて人手と自動化ラインを再構成できる方法を研究しています。
近畿大学では、ほかにも以下の研究室などでAIに関する研究が行われています。
- 電子知能システム研究室(竹田 史章教授)
- 経営情報システム研究室(片岡 隆之教授)
- 企業情報システム研究室(谷﨑 隆士教授)
- 計測工学研究室(廿日出 好教授)
- 知能情報処理研究室(出口 幸子教授)
名城大学 情報工学部 情報工学科
名城大学の野崎佑典助教授は、AIをさまざまなデバイスに実装していく際に、悪用してこようとする脅威への対策を研究しています。
悪用の例を自動車で説明すると、自動車の消費電力など外部から観測できる特性から、内部で使用されているAIモデルの構造や仕組みを推定・解読しようとする行為などです。このように、AIを実装するハードウェアごとの問題に対して対策をしています。
名城大学情報学部では、ほかにも以下の研究室でAIに関する研究が行われています。
- 幾何的アルゴリズムをはじめとする種々のアルゴリズムとその効率に関する研究 (山本研究室)
- マルチエージェント・ロボットシステム、防災・救助システムに関する研究 (高橋研究室)
- パターン認識とその応用技術の研究 (山田〈啓〉研究室)
- 機械学習・データマイニングの方法論および応用に関する研究(亀谷研究室)
参考:
研究室紹介|情報工学科(募集停止・2022年4月情報工学部誕生)|理工学部|名城大学 (meijo-u.ac.jp)
ハードウエアセキュリティで人の役に立つ | 名城大学 産官学連携・研究支援サイト(MRCS) (meijo-u.ac.jp)
AI研究に関するよくある質問
AI研究に関するよくある質問についてまとめたので、参考にしてみてください。
日本人で有名なAI研究者は?
中国の清華大学の学術論文検索サービス「AMiner」 は、影響力のある世界のAI研究者2000人「AI2000」を公表しました。
AI2000に選出された日本人8名の研究分野と所属をまとめました。
【音声識別分野】
氏名 | 所属 |
小野 順貴氏 | 東京都立大学 システムデザイン学部 情報科学科 教授 |
亀岡 弘和氏 | ・東京大学 大学院情報理工学系研究科 客員准教授 ・NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
中谷 智広氏 | NTTコミュニケーション科学基礎研究所 |
山岸 順一氏 | 国立情報学研究所 |
渡部 晋治氏 | ジョンズ・ホプキンス大学 |
【情報検索と推論】
氏名 | 所属 |
松尾 豊氏 | 東京大学 |
榊 剛史氏 | ・株式会社ホットリンク R&D部 ・東京大学 未来ビジョン研究センター 客員研究員 |
【コンピューターシステム】
氏名 | 所属 |
井上浩明氏 | NECデータサイエンス研究所 |
参考:AI 2000 AAAI/IJCAI领域学者排名 – AMiner
AI研究で有名な企業は?
影響力のある世界のAI研究者2000人が載っている「AI2000」において、所属の多い企業は、以下のとおりです。
- Microsoft
- NEC
- サイバーエージェント
- NTT
AI研究は、アメリカの大手IT企業がリードしています。日本からは、NECとNTT、サイバーエージェントのほか、研究機関として自然科学の総合研究所である理化学研究所がランクインしています。
最先端のAI研究はどんなもの?
最先端のAI研究は、さまざまな分野に活用されています。ここでは、2つの事例を紹介します。
【感想戦に基づく、ゲームAI の強化法】
東京大学では、将棋や囲碁などのゲームにおいて、感想戦に基づくゲームAIの強化研究を行っています
この研究では、人間のプレイヤーが行う「感想戦」という手法に着目しました。感想戦とは、ゲーム終了後に相手プレイヤーと対局の内容を振り返り、互いに助言し合うことで実力向上を図る取り組みです。
従来のゲームAIには、このような相互の検討プロセスがありませんでした。そこで本研究では、複数のゲームAIがゲームの手順を分析し、お互いにアドバイスを行うことで、AI同士で実力を高め合う新しい手法を提案しました。
具体的には、あるゲームAIがゲームを行った後、別のゲームAIがそのゲームの手順を分析し、より適切な手順を提示するといった相互アドバイスを行います。このプロセスを繰り返すことで、ゲームAIの戦術能力が向上することを実証しました。
上記のような研究がされているとご存知でしたか?研究から大学を探せる「スタビキ」ではさまざまな研究を知ることができます。「人工知能」と検索してみるとほかにも多くの研究がされていることがわかります。ぜひ、自分の興味のある研究がなにか探してみてください。
>>「スタビキ」で、ほかのAI研究も見てみる。
また身近となってきた生成AIの入門としては、下記の記事が参考になりますよ。
参考:【完全版】生成AI超入門!今すぐ使いたいAI活用テクニック大公開!|kyozon
【細胞の培養ができる人型ロボット】
出典:どう使う? ロボットと人工知能:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)
理化学研究所の高橋恒一博士は、ヒト型ロボット「まほろ」とAIを組み合わせることで、培養皿のなかで細胞を育てる実験の自動化に成功しました。まほろは腕があるため、人間と同じように実験器具を操作できます。また、細胞を顕微鏡で観察し、細胞の密度や増殖速度などを計算することも可能です。研究者が実験をする負担を減らせる可能性が出てきました。
参考:産総研TODAY (aist.go.jp)
AIについて学べる大学はスタビキで検索!
私たちの社会に大きな影響を与え始めたAI。コスト削減や業務の効率化などのメリットもあれば、雇用の減少やAIを扱える人材の確保など、課題も多いです。世界的にAI人材が求められているため、大学でAIについて学ぶことは将来的にも有利になるでしょう。
AI研究が盛んな大学に進学を考えている人は、ぜひスタビキを活用してみてください。AI研究で有名な大学の一覧が分かります。また、気になる大学がある人は、大学名から検索して、その大学の研究を知ることもできます。気になる大学がAI研究をしているか確認してみてください。