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ジェンダーとは?具体的な例や学べる学部、大学での研究を紹介

2024.06.03

カテゴリー:
ジェンダーレス制服で登校する女子高生

「ジェンダーってどういう意味?」「どういう問題があるの?」と疑問に思っている人もいるでしょう。ジェンダーとは、性別とは違い、社会や文化によって作られた「男らしさ」「女らしさ」といった概念を指します。たとえば、家事は女性がするもの。女子の制服はスカートに決まっている、などの考えです。

ジェンダー問題は、「男らしさ」「女らしさ」の概念に基づく差別や不平等につながるとして、問題視されています。本記事では、ジェンダー問題の事例や世界から見た日本の状況、ジェンダーが学べる学部や研究が盛んな大学などを解説しています。最後まで読めば、ジェンダーに関する疑問が解消し、自分の望む進路へ一歩近づけるでしょう。

ジェンダーについて学べる大学を知りたいという人は、ぜひ「スタビキ」を活用してみてください。ジェンダーの研究を行っている大学と、具体的な研究内容が分かるので、進路選びの参考になるはずです!

ジェンダーとは?生物学的性別(Sex)との違い

ジェンダーとは、社会や文化によって形作られた、男性や女性の役割や特徴のことを指します。たとえば「男の子は青、女の子はピンク」といった色の選択や「男性は仕事、女性は家庭」といった役割分担などがジェンダーの例です。

ジェンダーと生物学的性別(セックス)は、よく混同されがちですが、明確に異なる概念です。生物学的性別は、一般的に男性と女性の2つに分類され、生まれつき持っている身体的特徴、つまり染色体、ホルモン、生殖器などによって決定されます。

重要なのは、生物学的性別とジェンダーが必ずしも一致するとは限らないということです。個人のジェンダー・アイデンティティ(自分の性別に対する認識)は、生物学的性別と異なる場合があります。

また、ジェンダーは多様であり、男性と女性という2つの枠組みだけでなく、さまざまなジェンダー・アイデンティティが存在します。

生物学的性別とジェンダーの違いを理解することは、多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きられる社会を作るために重要です。

ジェンダーレス・ジェンダーフリー、LGBTQ+とは

ジェンダーに関する言葉を知ることは、多様性を尊重し、誰もが生きやすい社会を作るための第一歩だと言えるでしょう。ジェンダーに関連する言葉の意味をまとめました。

【ジェンダーレス】

ジェンダーレスとは、男女の区別をしない、または男女の区別を超越するという考え方です。服装やファッション、行動、言葉づかいなどで、男らしさ・女らしさにとらわれずに自由に表現することを指します。

性別に基づいた固定観念や役割分担を解消し、個人の個性を大切にする社会を目指す概念だと言えます。

たとえば、保母さんを保育士、看護婦を看護師と呼び変えていったり、学校の名簿表を男女混合にしたりといった変化は、ジェンダーレスの影響を受けた結果です。

【ジェンダーフリー】

ジェンダーフリーは、社会的・文化的に作られた性別の役割を取り払い、性別に関わらず個人の能力や適性に基づいて評価や機会が与えられるべきだという考え方です。

たとえば、「男らしさ」や「女らしさ」という枠組みにとらわれ、本人の適性や興味に合った進路選択が制限されたり、自由な服装の選択が阻まれたりすることは、ジェンダーフリーではない状態と言えます。

【LGBTQ+】

LGBTQ+は、性的マイノリティの多様性を示す言葉であり、理解と尊重を促すための表現として使われています。以下の単語の頭文字を取った言葉です。

  • レズビアン(女性同性愛者)
  • ゲイ(男性同性愛者)
  • バイセクシュアル(両性愛者)
  • トランスジェンダー(出生時の性別と自認する性別が一致しない人)
  • クエスチョニング(自分の性的指向や性自認に疑問や揺らぎを感じている人)
  • クィア(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的マイノリティを全部まとめて表す言葉)

「Q」は、「クエスチョニング」「クィア」という 2 つの言葉の頭文字をとっています。最後の「+」は、LGBTQの枠に収まらない多様な性的指向や性自認を表しています。「+」を含めることで、性の多様性がより広く表現されているのです。

参考:ジェンダー・フリーとは? 身近な具体例や課題、取り組み事例を紹介:朝日新聞SDGs ACTION! (asahi.com)

日本におけるジェンダー問題の具体例

女性のワンオペ育児の様子

日本におけるジェンダー問題の具体例として、以下の2つを紹介します。

  • 女性のワンオペ育児
  • 男女の給与水準の差

順番に紹介します。

女性のワンオペ育児

日本のジェンダー問題のひとつに、女性の「ワンオペ育児」があります。これは、育児の多くを母親が一人で担うことを指します。

日本では長らく、男性は仕事、女性は家庭という性別役割分担意識が強く、育児は母親の仕事だと考えられてきました。その結果、多くの女性が育児と家事に追われ、自分の時間を持てない状況に置かれています。

ワンオペ育児は、母親の心身の負担を大きくするだけでなく、父親と子どもとの関係性の希薄化や、女性のキャリア形成の妨げにもなっています。

この問題を解決するためには、男女ともに育児に参加できる環境づくりが必要です。育児休暇の取得促進や、保育サービスの充実、職場の理解と支援など、社会全体で子育てを支える仕組みが求められています。また、固定的な性別役割分担意識を解消し、男女が協力して育児に関われるような意識改革も重要です。

たとえばスウェーデンでは、1970年代から育休制度や保育施設整備に積極的に投資し、女性が仕事と家庭を両立できる環境を整えてきました。さらに、1990年代には男性の育休取得を促進。こうした「共働き・共育て」モデルにより、ワンオペ育児が解消され、高い出生率維持にもつながっています。

ワンオペ育児の解消は、日本のジェンダー平等のためには、避けて通れない問題でしょう。

男女の給与水準の差

ジェンダー問題の具体例として、男女の給与格差が挙げられます。

以下の図は、男女共同参画局が発表している、男性の給与水準を100とした場合の女性の給与水準です。

引用:男女間の賃金格差の推移|男女共同参画局

女性の賃金は男性の7割程度であることがわかります。この格差の原因としては、以下のような理由が考えられます。

  • 女性の勤続年数の短さ
  • 職場での男女の役割や仕事内容の違い
  • 女性管理職の少なさ

女性は結婚や出産を機に仕事を辞める、または一時的に休職するケースが多く見られます。

この結果、女性の平均勤続年数は男性よりも短くなる傾向にあり、キャリアアップの機会が限られるため、賃金が上昇しにくいのです。

育児休業制度の充実や職場復帰支援など、女性が長期的に働き続けられる環境整備が必要です。

また、男性は責任ある仕事を任され、女性は補助的な役割に留まることが多いです。この役割分担が、男女の仕事内容の違いを生み、結果的に賃金格差につながっています。日本企業の管理職に占める女性の割合は依然として低く、賃金格差の大きな要因となっています。

日本のジェンダー平等は遅れている

ジェンダー平等な海外の様子

世界の国々と比べて、日本のジェンダー平等は遅れていると言えます。

以下の図を見ると、日本の男女間の賃金格差は、平均をかなり下回っていることがわかるでしょう。

引用:男女間賃金格差(我が国の現状) | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

また、世界経済フォーラムが発表している男女格差を測る指標「ジェンダーギャップ指数」においても、146か国中116位という先進国の中でも非常に低い結果となりました。(2022年)アジア地域のなかでも韓国や中国、東南アジア諸国に後れを取っています。

日本社会には根強いジェンダー不平等が残っており、その解消に向けた取り組みが急務だと言えるでしょう。

参考:「共同参画」2022年8月号 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)

SDGsの目標としてのジェンダー問題

2030年までに達成を目指す国際目標であるSDGsの目標5では、ジェンダー平等の実現が掲げられています。世界中で女性や女の子に対する差別や暴力が根強く残る中、あらゆる場面での平等な権利と機会の確保が急務となっています。

世界的なジェンダー問題の一例は、以下のとおりです。

  • 児童婚
  • 教育格差
  • 女性への暴力
  • 政治参加の格差

女性が差別なく教育を受け、経済活動に参加し、意思決定に関われることは、社会全体の発展につながります。

参考:5.ジェンダー平等を実現しよう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会) (unicef.or.jp)

ジェンダー平等を目指す動きは世界中で起こっています。あなたもジェンダーについて深く学び、問題解決に貢献してみませんか?次の章では、ジェンダーの研究ができる学部を紹介します!

ジェンダーの研究がしたい人におすすめの学部

ジェンダー研究は、主に以下の学部で行われています。

  • 社会科学系統(社会学、経済学、法学、政治学など)
  • 家政学系統(家政学、被服学、児童学など)
  • 総合学際系統(教養学、国際関係学、人間科学)

社会科学系統の学部では、ジェンダー不平等の社会構造や賃金格差、ジェンダーに関する法律や政策など、社会におけるジェンダー問題を幅広く探究します。

家政学系統の学部では、家庭生活とジェンダーの関わりについて学びます。家事労働の分担や育児・介護の問題、ワーク・ライフ・バランスなど、家庭内のジェンダー役割を中心に探究します。

総合学際系統の学部では、文学、歴史学、人類学、生物学など、幅広い視点からジェンダーを捉え、学際的に探究します。専門的な講義を通してジェンダーについての理解を深められます。

最適な学部を選ぶためには、自分の興味のある研究を行っている大学・学部を選ぶのもポイントです。次の章では、再生可能エネルギーの研究に強い大学を紹介するので、参考にしてみてください!

ジェンダーの研究に強い大学3選と研究事例

ジェンダー平等への活動のイメージ

ジェンダー研究に強い大学とその研究事例を3つ紹介します。

  • 大妻女子大学 文学部
  • 立命館大学 産業社会学部
  • 目白大学 心理学部

それぞれ解説します。

大妻女子大学 文学部

大妻女子大学の「日本語文学における検閲とジェンダー」という研究では、大正・昭和時代の新聞・雑誌・小説の言葉づかいを分析し、興味深い事実を明らかにしました。

当時、検閲のために伏字(●で隠すこと)が使われていましたが、その使われ方には男女差があったのです。たとえば、男性に関することは伏字にされにくく、女性に関することは伏字にされやすい傾向がありました。

つまり、伏字は単なる検閲の道具ではなく、男女の扱いの違いを反映していたのです。そして、伏字で隠された部分は、当時の人々の間で暗黙のルールとして理解されていました。

この研究から、検閲と伏字が、社会における男女の立場の違いを表していたことがわかります。言葉の使い方ひとつをとっても、ジェンダー(社会的な性差)の問題と密接に関係していることが明らかになった研究です。

立命館大学 産業社会学部

立命館大学の研究者たちは、民主主義国で性的マイノリティの権利確立が進む中、スポーツの果たす役割と現状を調査しました。

スポーツは、身体能力を直接競うという特性上、男女平等の実現が難しい分野です。また、歴史的に男性的価値観を体現するものとして利用されてきました。

調査の結果、LGBTQと呼ばれる性的マイノリティのスポーツ参加について、興味深い事実が明らかになりました。レズビアンやゲイといった、心の性と体の性が一致するマイノリティの受け入れは徐々に進んでいます。

しかし、トランスジェンダー、特に男性から女性に移行した人たちは、スポーツの世界で取り残される傾向にあることがわかったのです。

この研究は、スポーツにおける性的マイノリティの受け入れと参加の現状を明らかにしています。誰もが平等にスポーツを楽しめる環境を作るには、まだ多くの課題や障壁があることを示しているのです。

目白大学 心理学部

目白大学の研究者たちは、トランスジェンダーの子どもを持つ親(とくに、女性から男性へ移行したFTM(Female ​to Male)の子どもの親)へのインタビュー調査を行いました。

調査の結果、FTMの子どもの親は、子どものカミングアウト以前から、子育てをめぐってさまざまな衝突や葛藤を経験していたことがわかりました。また、子どもとの関わりや家族のサポートが充実していればいるほど、親は自分自身の性に対する考え方を見直し、ジェンダーに悩む子どもを心理的に受け入れやすくなる傾向があることも分かりました。

この研究は、トランスジェンダーの子どもを持つ親の心理的プロセスを明らかにし、家族のサポートの重要性を示しています。多様な性のあり方を理解し、支え合う社会づくりに貢献する貴重な研究だと言えるでしょう。

ジェンダーの研究と言っても、大学や学部によってアプローチの方法はさまざまです。研究から大学を探せる「スタビキ」では、さまざまな研究を知ることができます。「ジェンダー」と検索してみると、ほかにも多くの研究が行われていることが分かります。ぜひ、自分の興味のある研究を探してみてくださいね!

ジェンダー平等の実現に向けて活躍する組織・団体・企業

ジェンダーに関連する企業や職種は、以下の通りです。

  • 非営利組織(NPO)・非政府組織(NGO)
  • 国際機関(国連女性機関や国際労働機関など)
  • 政府機関(男女共同参画局、厚生労働省など)
  • 企業の人事・ダイバーシティ推進部門
  • メディア・出版
  • 教育機関(小・中学校、高校、大学)

たとえばNPO法人「ジェンダーイコール」では、ジェンダーに関する知識や理解を深めるために、対象者に応じたアプローチで啓発活動を行っています。たとえば、学生向けには講演会、企業の方々へはセミナー、子育て中の親御さんにはワークショップなど、それぞれのニーズに合わせた形式で、ジェンダーリテラシーの向上を図っています。

以下のサイトでは、高校生メンバーによるジェンダー平等啓発のショートムービーを見ることができますよ!

4人の高校生メンバーが制作したジェンダー平等啓発のショートムービーを一挙公開! | gender= | ジェンダーイコール (gender-equal.com)

これらは一例ですが、ジェンダー関連の仕事は多岐にわたります。自分の関心や専門性を活かせる分野を見つけ、ジェンダー平等の実現に貢献することができるでしょう。

ジェンダーについて学べる大学はスタビキで検索!

日本は、賃金格差や男女の家事・育児時間の差など、ジェンダー不平等が根強く残っています。こうした問題の本質を理解し、解決のための知識とスキルを身につけるには、大学で学ぶと良いでしょう。ジェンダー研究の専門家から体系的に学べるだけでなく、社会学、経済学、法学など、さまざまな学問分野の視点からジェンダー問題を分析することができます。大学で培った知識とスキルは、卒業後、行政や企業、NPOなどでジェンダー平等の実現に向けて活かすことができます。日本社会のジェンダー問題解決のためには、こうした人材の活躍が不可欠です。

ジェンダーについて学んでみたいという人は、ぜひ「スタビキ」を活用してみてください。ジェンダー研究で有名な大学の一覧が分かります。また、気になる大学がある人は、大学名から検索して、その大学の研究を知ることもできます。気になる大学がジェンダー研究をしているか確認してみてください。

ジェンダーに関する研究を見てみよう

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