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再生可能エネルギーとは?導入事例やメリット、研究できる大学を紹介

2024.06.11

カテゴリー:
太陽光発電と風力発電

「再生可能エネルギーってどんなところで使われているの?」「再生可能エネルギーにデメリットってあるの?」と疑問に思っている人もいるでしょう。

再生可能エネルギーの身近な例としては、太陽の光をエネルギーに変換する太陽光発電があります。住宅の屋根や建物の壁面に設置された黒いパネルを見たことがある人は多いでしょう。再生可能エネルギーには他にも多くの種類があり、国も推進を進めていますが、解決すべき課題もあります。

本記事では、再生可能エネルギーの種類や導入事例、学べる学部や大学での最新の研究などを紹介しています。最後まで読めば、自分の進みたい進路へ一歩近づけるでしょう。

再生可能エネルギーについて学べる大学を知りたいという人は、ぜひスタビキを活用してみてください。再生可能エネルギーの研究を行っている大学と、具体的な研究内容が分かるので、進路選びの参考になるはずです!

再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーは、自然の力を利用して生み出されるクリーンなエネルギーのことです。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが代表的な再生可能エネルギー源であり、枯渇の心配がなく、環境への負荷が少ないのが特徴です。

化石燃料の使用によって引き起こされる地球温暖化や大気汚染などの問題を解決するために、再生可能エネルギーの導入が世界的に進められています。日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、再生可能エネルギーの普及拡大が重要な鍵となっています。

再生可能エネルギーの種類一覧

再生可能エネルギーとは、エネルギー源として枯渇することがなく、温室効果ガスを発生させないエネルギーです。再生可能エネルギーは主に以下の7つです。

  • 太陽光
  • 水力
  • 風力
  • 地熱
  • 太陽熱
  • バイオマス(生物由来の再生可能な有機資源)
  • 大気中の熱

経済産業省の資源エネルギー庁によると、日本の発電電力量における再生可能エネルギー使用量は20.3%で、世界第6位、太陽光発電においては世界第3位です。(2021年時点)

再生可能エネルギー使用量20.3%の内訳は以下のとおりです。

水力7.8%
太陽光8.3%
風力0.9%
バイオマス3.2%
地熱0.3%

参考:今後の再生可能エネルギー政策について|経済産業省 資源エネルギー庁

再生可能エネルギー導入のメリット

売電可能な太陽光発電

再生可能エネルギー導入のメリットは、以下の3つです。

  • 枯渇しない
  • 環境にやさしい
  • 地域の活性化につながる

再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然の力によって絶えず再生されるエネルギー源です。化石燃料とは異なり枯渇の心配がなく、将来にわたって安定的にエネルギーを供給できます。持続可能なエネルギー利用は、私たちの生活や経済活動を支える基盤となるでしょう。

また、再生可能エネルギーは、化石燃料の使用に伴う温室効果ガスの排出や、大気汚染を大幅に削減できるクリーンなエネルギーです。地球温暖化を抑制することにより、SDGsの達成に貢献し、健康的で快適な生活環境の維持につながると期待されています。

とくに、過疎化や高齢化が進み、経済的に厳しい状況にある地域にとって、再生可能エネルギーは大きな可能性を持っています。

これらの地域は、広大な土地や豊かな自然資源を持っているものの、産業の衰退や人口流出により経済が停滞しがちです。しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー設備を導入することで、これらの地域特有の資源を活かした新たな産業を生み出せる可能性があります。

そうすれば、関連する産業が発展し、新たな雇用が生まれます。たとえば、設備の製造、施工、メンテナンスなどに携わる地元企業の事業機会が拡大し、雇用が増加します。

再生可能エネルギーのデメリットや課題

再生可能エネルギーのデメリットや課題は、以下のとおりです。

  • 発電量の不安定性
  • 初期コストの高さ
  • 立地制約

太陽光発電や風力発電は、天候に大きく左右されるため、発電量が不安定になる傾向があります。安定的な電力供給を確保するためには、蓄電池などの技術との組み合わせが必要です。発電量の変動に対応するための電力系統の整備も重要な課題です。

また、再生可能エネルギー設備の導入には、初期コストが高くなる点もデメリットのひとつです。技術の進歩によって初期コストは徐々に低下しているとはいえ、欧州と比べると設備費用は2倍以上かかっています。その理由は、日本は山がちな地形が多く、平地が少ないため、設備の設置に適した場所が限られています。適地が限られている分、土地の価格が高くなったり、山間部や傾斜地に設備を設置する場合、整地や基礎工事などに追加のコストがかかったりします。

また、台風や地震などの自然災害のリスクが高いため、設備の耐久性を高めるための追加コストが必要となる場合もあります。

再生可能エネルギーの導入には、適切な立地条件が必要となる点も課題です。太陽光発電では日当たりの良い場所、風力発電では風況の良い場所が求められます。適地が限られているため、大規模な導入には制約があります。

再生可能エネルギーの抱える問題を解決するには、エネルギー貯蔵技術、低コスト化のための材料・製造プロセスの研究などが重要です。

また、再生可能エネルギー普及のための政策立案や社会実装に向けた知識も必要でしょう。理工学分野の専門性に加えて、経済学や社会学の視点を持つことが求められます。

再生可能エネルギーが学べる大学は「スタビキ」で検索してみてください!

参考:再エネのコストを考える|広報特集|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

日本の再生可能エネルギーへの取り組み

日本では、再生可能エネルギーの普及拡大に向けて、さまざまな取り組みが行われています。2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)は、再生可能エネルギーの導入を大きく後押ししました。FITとは、再生可能エネルギーで発電された電力を、国が定めた固定価格で一定期間、電力会社が買い取ることを義務づける制度です。この買取費用は、電気料金の一部である発電促進賦課金を通じて国民が負担しています。

2022年からは、FITに代わる新たな制度としてFIPが導入されています。FIPは、再生可能エネルギーで発電した電力を売る際に、市場での売電価格に加えて、国が一定の奨励金を上乗せして支払う制度です。

この奨励金によって、再生可能エネルギーで発電することがより魅力的になり、発電事業者は積極的に再生可能エネルギーに投資するようになります。

また、再生可能エネルギー設備の導入手続きを簡単にするために、電子申請システムの整備も進められています。電子申請システムを使えば、書類の作成や提出がオンラインで完結するため、時間と手間が大幅に節約できます。電子申請システムの整備は、再生可能エネルギー設備の導入をより円滑にし、普及拡大を後押しする重要な取り組みといえます。

今後も日本は再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、技術開発や制度設計、国民理解の促進などに積極的に取り組んでいく必要があります。

再生可能エネルギーの活用事例

バイオマス発電所

再生可能エネルギーが活用されている3つの事例を紹介します。

  • 太陽光発電|神奈川県藤沢市「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」
  • バイオマス|岩手県くずまき高原牧場
  • 地熱発電|鹿児島県霧島国際ホテル

順番に解説します。          

太陽光発電|神奈川県藤沢市「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」

藤沢市で進められている「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」は、太陽光発電や蓄電池、エネファームなどを備えた約1,000世帯の住宅を建設するプロジェクトです。再生可能エネルギーの利用率を30%以上とし、CO2排出量を1990年比で70%削減することを目標としています。パナソニックを中心とした企業グループが、環境に優しい持続可能なまちづくりを目指しています。

参考:Fujisawaサスティナブル・スマートタウン公式サイト|FujisawaSST (藤沢市) – 神奈川県藤沢市にうまれた『Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)』は、先進的な取り組みを進めるパートナー企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトです。

バイオマス|岩手県くずまき高原牧場

岩手県のくずまき高原牧場では、牛のふんを発酵させてメタンガスを取り出し、発電と熱回収を行っています。このシステムは、牛ふんを適切に管理することを主な目的として導入され、発電した電気と熱は施設内で使われています。環境に優しい取り組みとして、平成17年度の新エネ大賞で「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。

参考:18.畜産バイオガスプラント | くずまき高原牧場公式サイト (kuzumaki.jp)

地熱発電|霧島国際ホテル

鹿児島県の霧島ホテルでは、地下70~300mから取り入れた地熱蒸気を利用して発電を行っています。この発電方式では、イソペンタンという物質を媒体として用いることで、地熱蒸気でタービンを回して電気を作り出しています。イソペンタンを使った発電は、日本で初めての事例となります。この取り組みは、地熱エネルギーを効率的に活用した環境に優しい発電方法として注目されています。セパレータ(蒸気湿分分離器)で分離された熱水は、温泉として利用されていました。

参考:霧島国際ホテルにおける温泉熱等利活用事業の計画策定事業|環境省

再生可能エネルギーについて学びたい人におすすめの学部

再生可能エネルギーを学びたい学生

再生可能エネルギーが学べる主な学部は、以下のとおりです。

  • 理学系統
  • 工学系等
  • 農学系統
  • 社会科学系統

再生可能エネルギーは、幅広い分野で扱われる内容で、それぞれの分野によって異なる視点から学べます。たとえば、工学系統の学部では、再生可能エネルギーの実用化に向けた技術開発や設計、システム構築などを学びます。農学系統の学部では、バイオマスエネルギーの利用や再生可能エネルギーと農業の関わりについて学びます。

最適な学部を選ぶためには、自分の興味のある研究を行っている大学・学部を選ぶのもポイントです。次の章では、再生可能エネルギーの研究に強い大学を紹介するので、参考にしてみてください!

再生可能エネルギーの研究に強い大学3選と研究事例

再生可能エネルギーの研究に強い大学と研究事例3つを紹介します。

順番に解説します。

北見工業大学 工学部

北海道にある北見工業大学では、下水処理場のバイオガスを無駄なく利用するための新しいシステムの研究を行っています。

バイオガスは、下水処理の過程で発生する再生可能エネルギーのひとつです。しかし、バイオガスの発生量は季節によって変動するため、効果的な利用が難しいという課題がありました。

研究チームは、この課題を解決するために、計算解析を用いてバイオガスに含まれるメタンを効率的に利用するシステムを設計しました。具体的には、バイオガスをハイドレート化という技術で貯蔵し、必要なときに利用できるようにしたのです。

さらに、発電と同時に発生する熱を回収・再利用できるようにすることで、エネルギーの有効活用を図りました。

この研究成果は、下水処理場におけるバイオガスの効率的な利用を促進し、地域の再生可能エネルギーの有効活用に貢献することが期待されています。

立命館大学 理工学部

立命館大学では、「洋上直流システムにおける風力発電機へのMMCの適用に関する研究」が行われています。

洋上風力発電には、風車の中にたくさんの変換器があるのですが、それを小さくしてコストを下げたいという課題がありました。そこで、MMCという新しい変換器を使って、風車の中の変換器を1つにまとめる研究をしました。

実験では、MMCを発電機としてつなぎ、回転の速度を一定に保ちながら、力を変化させてみました。その結果、MMCを使った風力発電機がうまく動くことがわかりました。

この研究のおかげで、洋上風力発電の変換器を小さくしてコストを下げられる可能性が出てきました。

近畿大学 理工学部

近畿大学では、「光触媒によるバイオマスからの電子抽出とその利用」という研究を行っています。これは、植物などのバイオマス(生物資源)から、光触媒を使って電子を取り出し、その電子を利用して発電や化学品の製造などに活用しようとするものです。

バイオマスは、太陽光や風力と異なり、天候に左右されずに安定的に利用できる再生可能エネルギー源なので、安定したエネルギー供給が可能です。

バイオマスを利用することで、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

上記のような研究がされていると知っていましたか?研究から大学を探せる「スタビキ 」ではさまざまな研究を知ることができます。「再生可能エネルギー」と検索してみると、ほかにも多くの研究が行われていることが分かります。ぜひ、自分の興味のある研究を探してみてください。

再生可能エネルギーに関連する企業

洋上風力発電

再生可能エネルギーに関連する業界や企業を紹介します。

  • 電力会社
  • 再生可能エネルギー企業
  • 総合商社

順番に解説します。

電力会社

発電を主軸とする電力各社は、言うまでもなく再生可能エネルギー領域でも中心的な役割を果たしています。主な電力会社は、以下のとおりです。

電力会社各社は、2030年に向けて再生可能エネルギーの導入目標を設定し、あらゆる分野で再生可能エネルギーを主力電源化すべく尽力しています。とくに秋田県沖の洋上風力発電所建設では、複数の電力会社が参画する大規模プロジェクトが進行中です。

電気(電力)業界については、以下の記事で詳しく紹介しています。

電気(電力)業界の魅力は?現状や今後の動向、就職に役立つ学部・学科の選び方も紹介 (gyakubiki.net)

参考:秋田洋上風力発電株式会社 (aow.co.jp)

再生可能エネルギー企業

主な再生可能エネルギー企業は以下のとおりです。

エネオスやコスモなど、石油や天然ガスといった従来のエネルギー源を扱ってきた企業も、長年培ってきた知見を活用しながら、再生可能エネルギー事業へと舵を切っています。石油業界の多くの企業が、太陽光発電や風力発電といった再エネ事業に参入しており、エネルギー業界全体で再生可能エネルギーへのシフトが進んでいると言えるでしょう。

再生可能エネルギー企業の主な事業内容は、再生可能エネルギー発電所の建設に必要な調査や開発、運用です。また、発電した電力を電力会社に販売することで家庭への電力供給を行っています。各社の役割は異なりますが、再生可能エネルギーの普及に向けて協力しています。

総合商社

再生可能エネルギーを扱う主な総合商社は、以下のとおりです。

総合商社は、海外の石油・天然ガス開発、日本製タービンや発電機の輸出、現地での発電所建設など、国内外で発電事業に深く関与しており、再生可能エネルギー分野でも極めて重要な役割を果たしています。大手総合商社の多くが、日本各地で進行中の洋上風力発電所や太陽光発電所のプロジェクトに参画しており、再生可能エネルギー事業の推進に貢献しています。

再生可能エネルギーについて学べる大学はスタビキで検索!

再生可能エネルギーは、環境に優しく枯渇の心配がないというメリットがある一方で、安定供給の難しさやコストの高さといった課題もあります。

国を挙げて推進に取り組んでいるため、大学で専門的な知識や技術を身につければ、将来性のある業界で活躍できるチャンスが広がるでしょう。

再生可能エネルギーについて学んでみたいという人は、ぜひ「スタビキ」を活用してみてください。再生可能エネルギーの研究で有名な大学の一覧が分かります。また、気になる大学がある人は、大学名から検索して、その大学の研究を知ることもできます。気になる大学が再生可能エネルギーの研究をしているか確認してみてください。

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