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ポジティブ心理学とは?大学での研究事例やおすすめの学部も紹介

2024.06.28

カテゴリー:
ポジティブな女子高生たち

ポジティブ心理学と聞くと「何事もポジティブに考えましょうってこと?」と思う人もいるでしょうが、それはポジティブシンキングですね。
ポジティブ心理学とは、幸せになる方法を研究する学問のことです。ポジティブ心理学では、統計学や脳科学などを活用し、幸せに効果があると実証されている方法を提唱しています。したがって、ポジティブ心理学を学び実践すれば、高い確率で幸せになれるのです。
本記事では、ポジティブ心理学における幸せの定義や実生活での活かし方、大学での研究事例について解説しています。

ポジティブ心理学について学んでみたいという人は、ぜひスタビキを活用してみてください。ポジティブ心理学の研究で有名な大学の一覧が分かります。また、気になる大学がある人は、大学名から検索して、その大学の研究を知ることもできます。気になる大学がポジティブ心理学の研究をしているか確認してみてください。

ポジティブ心理学とは

ポジティブ心理学は、1998年にアメリカの心理学者マーティン・セリグマン教授が提唱した新しい心理学の分野です。
ポジティブ心理学の特長は、人のポジティブな面に焦点を当てている点です。従来の心理学では、うつ病や精神疾患などマイナスな状態にある人をいかに普通の状態にもっていくかに焦点を当てていました。しかし、ポジティブ心理学では、普通の状態の人が幸せになるにはどうすればいいかを研究する学問なんです。

ポジティブシンキングとポジティブ心理学の違い

ポジティブ心理学と混同されがちなのが、ポジティブシンキングですが、両者はまったく異なるものです。両者の違いを一言で言うと、ポジティブシンキングは思考方法、ポジティブ心理学は科学ということです。

ポジティブシンキングは「楽観的に考えよう」とか「プラス思考が大切」のような、物事の良い面を見ようとする個人の考え方で、科学的な根拠はありません。一方、ポジティブ心理学は、統計学や脳科学といった信頼できる方法を使って、幸せになる方法を研究する科学的な学問なんですね。

ポジティブ心理学における幸せとは

ポジティブ心理学は、人を幸せな状態にするにはどうすればいいか考える学問なので、まずは幸せの定義をはっきりさせておく必要があります。

ポジティブ心理学における幸せとは英語で言う「happiness(ハピネス)」ではなく「well-being(ウェルビーイング)」を指します。日本語にするとどちらも幸福ですが、両者のニュアンスの違いは、以下の通りです。

  • happiness(ハピネス):一時的な喜びや快楽
  • well-being(ウェルビーイング):長続きする充実感・満足感

happiness(ハピネス)の幸福は、たとえば新しい服や靴を買った時の高揚感やSNSで「いいね!」をたくさんもらえた時のうれしさなどが挙げられます。こうした幸せは、みなさんも経験があるかもしれませんが、あまり長続きしないと言われています。
宝くじと幸せに関するある研究では、当選者の幸福度は数ヶ月後にはすでに当選前と変わらなかったとか。

ポジティブ心理学における幸せwell-being(ウェルビーイング)は、瞬間的な幸せではなく、長続きする満足感を指します。ではこのwell-being(ウェルビーイング)はどのようにして感じることができるのでしょう。次の章で詳しく解説します。

ポジティブ心理学の5つの要素「PERMA」

趣味に没頭している男子高生

ポジティブ心理学における幸せwell-being(ウェルビーイング)は、5つの要素「PERMA」で構成されています。「PERMA」は以下の単語の頭文字を指しており、それぞれを満たすことで、well-being(ウェルビーイング)な状態になれるとされています。

  • ポジティブ感情(Positive Emotions)
  • エンゲージメント(Engagement)
  • 関係性(Relationships)
  • 意味・意義(Meaning)
  • 達成(Accomplishments)

それぞれ詳しく解説します。

ポジティブ感情(Positive Emotions)

嬉しい、面白い、楽しい、感謝、希望などのポジティブな感情を抱くと、幸せを感じやすいとされています。とはいえ、なかなかポジティブな感情になれないという人は、意図的にポジティブな感情を増やすことができます。

たとえば「3つの良いこと」という方法があります。毎日寝る前に、その日にあった良いことを3つ思い出して、日記に書く方法です。「美味しい夕飯が食べられた」「友達と楽しく話せた」など、些細なことでもかまいません。書き出すことで、ポジティブな出来事に目を向ける習慣がつくそうです。

没頭(Engagement)

何かに没頭することも、幸せを感じる要素のひとつです。没頭は、フロー状態とかスポーツの世界ではゾーンと呼ばれたりしますね。みなさんも遊びや勉強に夢中になって、あっという間に時間が過ぎていたという経験があるのではないでしょうか。

何かに没頭している状態のときは、集中力が高まり生産性が向上するほか、ネガティブな感情を抑制する効果もあるとされています。

金沢工業大学の塩谷教授によると、以下の要素を組み合わせることで、没頭できる環境は作り出せるそうです。

  • ルールが明白であること
  • フィードバックが即座にあること
  • 取り組んでいる課題が自分の実力より少しハイレベルであること

ついはまってしまうゲームは、これに当てはまっていますよね。これを勉強に適用すると、以下のように自分に小テストを課すという方法がありますね。

  1. 新出英単語30個を5分間で覚えテストをする(ルールが明白)
  2. その場で答え合わせをして何問正解したか確認する(フィードバック)

ポジティブ心理学を活かせば、没頭できる環境は作り出せます。ぜひ、勉強やスポーツをするときに活用してみてください!

ほかにも勉強に没頭する方法は以下の記事で紹介しているので、参考にしてみてください。

勉強に集中できない!受験勉強に集中できない理由と集中できる方法 (gyakubiki.net)

高校生が集中して勉強できる場所8選!集中できる条件や利用時の注意点も紹介 (gyakubiki.net)

関係性(Relationships)

親や友人、先生などと良好な関係を築くことは幸せに大きく影響します。良い人間関係を築けていれば学校に行くのが楽しいですよね。人間関係をよくするには、互いに援助できる関係性を築くことが大事です。助けてもらうだけではなく、自分も周りの人に何かを与えられないか考えてみましょう。

また、カリフォルニア大学のゲーブル博士によると、相手の良い報告を一緒に喜ぶことが、良い人間関係を築くポイントだそうです。たとえば友達が「昨日、テニスの試合で勝ったんだ」と話してきたとき、「すごいねー!よかったね!私も昨日ね~」と話していないでしょうか?良い関係を築くためには、もっと積極的な反応をするべきですし、自分の話題にすり替えてしまうのはNGです。「どんな工夫をして勝ったの?試合相手は?」など、関心を持って質問してみると良いでしょう。

参考:絆を強める!積極的建設的反応 | 一般社団法人ウェルビーイング心理教育アカデミー (wellbeing-education.org)

意味・意義(Meaning)

生きている意味や自分の存在意義といった人生の意味を見出せると、幸福感が上がると言われています。

自分の存在意義を見出すのは簡単ではありませんが、自分と自分を取り巻く大きな世界との関わりを意識することで見出せる可能性が高まります。たとえば、「ボランティア活動を通じて地域社会に貢献する」とか「部活動で新しいことにチャレンジして、チームを引っ張っていく」といった活動です。つまり、社会や世界など、自分より大きな存在に貢献することで、自分の人生に意味を見出すことができるというわけです。

達成(Accomplishments)

ポジティブ心理学では、達成感や自己実現が幸福感に大きく影響すると考えられています。自分の目標に向かって努力し、それを達成したときの喜びは、人生の満足度を高めてくれるでしょう。

たとえば、勉強で良い成績を収めたり部活動で優勝したりするのも立派な達成ですが、それだけではありません。自分の興味関心に基づいて、新しいことにチャレンジすることも大切な達成です。絵を描くことが好きな人が、コンクールに応募して入賞する。料理が得意な人が、家族に美味しい料理を振る舞うなど、そういった自分の情熱を実現させることも、達成感につながります。

ポジティブ心理学を学ぶメリット

ポジティブ心理学を学ぶメリットには、以下のようなものがあります。

  • 気持ちの切り替えがスムーズになり、逆境に強くなる
  • 良い人間関係を築ける
  • 勉強や仕事のパフォーマンスが上がる

ポジティブ心理学を学べば物事の良い面に気が付きやすくなるため、ネガティブな感情に支配されにくくなります。ネガティブな感情を抱いたときも、ありのままを受け止め、上手に切り替えられるようになるので、逆境に強くなるとも言われています。

また、ポジティブ心理学では、他者への共感や感謝、親切な行動を重視します。これらのスキルを身につけることで、友人や家族などとのコミュニケーションが円滑になるでしょう。

さらに、ポジティブ心理学を学ぶと、さまざまな課題においてより優れた成果を上げられると言われています。実際に、喜びや楽しさを感じることで、数学のスコアや作業パフォーマンスが向上したというデータも報告されています。

参考:Chapter9 パフォーマンス向上を促す職場をつくる|必読シリーズ|グローバル人材育成|IIBC (iibc-global.org)

ポジティブ心理学関係の資格

ポジティブ心理学関連の資格には、以下のようなものがあります。

  • ポジティブ心理カウンセラー
  • ポジティブ心理学実践インストラクター
  • ポジティブ心理療法士
  • マインドフルネスカウンセラー
  • ポジティブ感情カウンセラー
  • ポジティブキャリアカウンセラー

ちなみに、ポジティブ心理学関連の資格に国家資格はなく、すべて民間の資格です。

ポジティブ心理学の資格勉強は、自分自身の人生をより豊かにする機会になります。また将来的に、心理カウンセラー臨床心理士心理学者などの専門家を目指す場合も、学んでおくと信頼性が高まり、現場で活かしやすいでしょう。

ポジティブ心理学を学びたい人におすすめの学部

ポジティブ心理学は大学の「心理」と名の付く学科で学べます。ポジティブ心理学が学べる大学・学部の一例は、以下のとおりです。

ポジティブ心理学の研究が盛んな大学と研究事例

職場全体で感謝し合うオフィス

ポジティブ心理学の研究が盛んな大学として、以下の3つを紹介します。

  • 東京大学
  • 和光大学(東京都)
  • 京都女子大学

順番に解説します。

東京大学

東京大学の「職場における感謝法プログラムの開発とその効果検討」の研究を紹介します。

この研究は、職場で感謝の気持ちを伝え合うことの効果を、いくつかの方法で調べました。
その結果、感謝されることと仕事への熱心さには関係があることがわかりました。また、感謝の気持ちを言葉にして伝える練習は、ストレスや不安、落ち込みなどの心の健康を改善するのに役立つことも明らかになっています。

さらに、職場全体で感謝し合う雰囲気があると、仕事へのやる気にもいい影響を与えるという結果が出ています。

和光大学

和光大学の「臨床ポジティブ心理学にもとづく若年層自殺予防プログラムの開発」の研究を紹介します。
この研究では、自殺を防ぎ、人々を生かし続けるためにはどのような心理的な特性が必要なのか、そしてその特性を育むことで自殺のリスクを減らせるのかを探ろうとしました。

インターネット調査(2000人対象)の結果、人と積極的に関わることができる「結」、愛し愛されることができる「愛」、リスクを恐れない「危」といった強みの特性が、自殺の考えと関係していることが分かりました。また、感謝の気持ちを数える練習(225人対象)を行った結果、この練習にしっかり取り組むことは、練習後の自殺の考えや抑うつ感の低さと関連していました。

研究の結果、人とのつながりを大切にし、愛し愛される関係を築き、リスクを恐れずに生きる強さを持つことが自殺防止に重要だということが分かりました。また、感謝の気持ちを持つことも、自殺を防ぐために大切だと示されました。

京都女子大学

京都女子大学の研究「長期縦断研究に基づく認知機能の低下防止に関わるポジティブ神経心理学的モデルの構築」について紹介します。

この研究は、お年寄りの社会とのつながりとポジティブ心理学的な要因、認知機能の関係を調べました。住民健診に参加した168名のお年寄りを対象に、認知機能検査とアンケート調査を行った結果、人生の意味を感じているお年寄りは、そうでない人より認知機能が高いことが分かりました。また、人生の意味を低く感じているお年寄りのなかでも認知機能が維持されていたのは、社会とのつながりが強い人たちだったということです。

つまり、お年寄りの認知機能を保つには、社会とのつながりと人生の意味を感じることが大切だということが示されました。

ポジティブ心理学について学べる大学はスタビキで検索!

ポジティブ心理学は、幸せに生きるために必要な要素を提案してくれます。学びを実践することで、良い人間関係を築けたり、勉強やスポーツなどでパフォーマンスを発揮しやすくなったりと、日常生活に活かしやすいのもメリットです。

ポジティブ心理学について学んでみたいという人は、ぜひスタビキを活用してみてください。ポジティブ心理学の研究で有名な大学の一覧が分かります。また、気になる大学がある人は、大学名から検索して、その大学の研究を知ることもできます。気になる大学がポジティブ心理学の研究をしているか確認してみてください。

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