ディープラーニング(深層学習)とは?活用事例や研究ができる大学も紹介
2024.07.08

ディープラーニングは、人間の脳で行われる情報処理を参考に作られた、機械学習の手法のひとつです。画像などのデータから自動的に特徴を学習し、高度な認識や予測ができるようになります。
皆さんが普段使っているスマートフォンの顔認証や音声アシスタントなども、ディープラーニングを使っているんですよ。本記事では、ディープラーニングの仕組みについて分かりやすく解説します。また、ディープラーニングの実用例や研究ができる大学・学部についてもまとめたので、参考にしてみてください。
ディープラーニングの研究が盛んな大学を知りたい人は、スタビキをを活用してみてください。各大学で行われているディープラーニングの研究についても詳しく知れますよ!大学の詳細情報や就職実績なども合わせて確認できるため、ぜひ進路選びの参考にしてみてください。
目次
ディープラーニングとAIと機械学習の違い
AI=ディープラーニング、機械学習=ディープラーニングと勘違いされることが多いので、ディープラーニングについて説明する前に、これらの位置づけを確認しておきましょう。
ディープラーニングとは、AI(人工知能)のなかの機械学習の手法のひとつです。AIとは、コンピュータに人間のような行動をさせるための技術のことで、機械学習とはAI技術の一部です。
機械学習は大量のデータを学習することで、コンピュータ自身がデータに潜むパターンを見つけ出し、そのパターンを基に新しいデータに対して適切な判断を下せるようになる技術です。ディープラーニングは、機械学習の手法のひとつで、機械学習の発展形とも言われています。両者の違いは人間がどの程度関与するかという点にあります。
音声で操作できる懐中電灯を例に解説します。機械学習モデルの懐中電灯は「つけて」や「消して」といった特定の言葉に反応するよう、人間があらかじめ設定しておく必要があります。しかし、「もっと明るくして」や「少し暗くして」といった言葉には反応できません。新しい言葉を理解させるには、また人間が教える必要があるのです。
一方、ディープラーニングモデルの懐中電灯は、たくさんの人が懐中電灯に話しかける音声データを分析することで、自分で「明るさを調整する」という概念を理解します。そして、「もっと明るく」「ちょっと暗く」といった言葉にも反応できるようになります。さらに、「ここ暗いね」といった会話から、懐中電灯が必要とされている状況を推測し、明かりを照らしてくれるのです。
つまり、機械学習モデルの懐中電灯は人間が教えた言葉だけに反応するのに対し、ディープラーニングの懐中電灯は自分で学習し、状況に応じて適切な判断ができるようになるのです。
AIや機械学習については、以下の記事で詳しく解説しています。
AI(人工知能)研究ができる大学3選!AIの研究分野と活用事例も紹介 (gyakubiki.net)
ディープラーニングの仕組み
ディープラーニングとは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)を参考にした「ニューラルネットワーク」というものを用いて、コンピュータに高度な学習を行わせる技術です。
ニューラルネットワークは、以下の図のように、入力層、中間層、出力層の3つから構成されます。

ニューラルネットワークの仕組みは、以下のとおりです。
- 機械に何かを学習させるため、入力層に必要なデータを与える
- 中間層でデータを処理し伝達する
- 最終的な結果が出力層に出てくる
このとき中間層を増やすと、入力データから出力結果に至る過程が多くなり、層が深くなります。層が深くなることで、より複雑な問題にも対処できるようになるのです。
この仕組みを通販サイトの商品推薦システムを例に紹介します。あなたが過去に閲覧した商品情報が入力データとなり、ニューラルネットワークの中間層で処理が進みます。中間層では、閲覧商品の特徴分析、あなたの嗜好分析、他ユーザーの購買履歴との比較など、多角的な分析が行われます。中間層が多いほど、これらの分析がより深く、複雑になります。最終的に、あなたの好みにぴったりの商品が出力されます。まるで、あなたの嗜好をよく理解した店員さんが、さまざまな角度から吟味して商品を提案してくれるようなものです。中間層の数が、店員さんの思考の深さに相当するのです。
ディープラーニングの手法を用いることで、これまでの機械学習では扱いが難しいとされていた、複雑なデータをうまく処理できるようになりました。次の章では、具体的な例を見てみましょう。
ディープラーニングにできること・身近な例

ディープラーニングにできることの一例は、以下のとおりです。
- 音声認識
- 画像認識
- 自然言語処理
それぞれ身近な例を出して解説します。
音声認識
音声認識は、人間の声をコンピュータが理解できるように、テキスト情報に変換する技術です。音声認識の技術により、機械は人間の言葉を認識・理解できるようになり、音声によるコミュニケーションが実現できるのです。
音声認識の身近な例は、以下のとおりです。
- スマホの音声アシスタント(Siri、Google アシスタントなど)
- スマートスピーカー(Alexaなど)
- 文字起こし(データ入力、カルテの作成、議事録の作成)
- テレビの字幕作成
音声認識の研究は長い歴史を持ちますが、ディープラーニングの導入により、その性能は一気に向上しました。
たとえば、以前まではAIが方言を理解するのが難しかったのですが、ディープラーニングを繰り返すことで、高い精度で認識できるようになっています。
NTTでは、日本の7地域の方言をAIに学習させ理解できるようにしました。その結果、方言を使った言葉を理解し、文章化することに成功しています。たとえば、札幌の方言「したっけ(そしたら)」は、これまでのAIでは「下請け」と変換されていましたが、現在ではAIが意味を理解し、そのまま文章化できるようになっています。
参考:NTTのAI、仙台や広島の方言も聞きとれます – 日本経済新聞 (nikkei.com)
画像認識
画像認識技術は、画像に写し出された物体や風景の特徴的を分析し、それらを事前に学習したカテゴリーと照合することで、画像の内容を自動的に判別する技術です。
画像認識の身近な例は、以下のとおりです。
- 顔認証システム(スマホやドアロックなど)
- 車の自動運転(信号機や歩行者などの認識・検出)
- 不良品の検知(製造現場など)
- がん細胞の自動検出
- 農業用ロボット(自動収穫、農薬散布の効率化)
従来の機械学習の手法に比べ、ディープラーニングは複雑なパターンを捉える能力に優れており、画像認識の性能を飛躍的に向上させました。
機械学習では猫の子どもとライオンの子どもを見分けることができませんでしたが、ディープラーニングモデルは、高い精度で見分けられます。ディープラーニングでは、頭の形や尾の長さなど、複雑な特徴の組み合わせを学習するため、猫とライオンの子どもを見分けられるのです。
自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)は、人間が日常会話で用いる自然な言葉をコンピュータに認識させ、その意味内容を分析・理解させるための技術です。
音声認識と似ていますが、音声認識は音声データをテキストに変換するところまでを担うのに対し、自然言語処理は、変換されたテキストに対して処理するところまで行います。
たとえば、「明日の天気は晴れですか」という音声を正しくテキストに変換するのが音声認識、天気予報データを調べて「はい、明日は晴れの予報です」と適切な回答を返すのが自然言語処理というわけです。音声認識と自然言語処理はセットで使われることが多く、先ほど音声認識のところで紹介したAlexaなどのスマートスピーカーなどは、両方使われている例です。
自然言語処理の身近な例は、以下のとおりです。
- 機械翻訳(Google翻訳、翻訳アプリ)
- チャットボット(入力した情報にAIが回答するシステム)
- 文字変換予測
ディープラーニングによって、膨大なデータを分析し、言語の構造やニュアンスを捉えることで、AIは人間の言葉の使い方を深く理解できるようになりました。その結果、コンピュータはより人間に近い形で言葉を解釈し、自然な会話を交わすことができるようになっています。
ディープラーニングの活用事例

ディープラーニングは、さまざまな分野で活用されています。ここでは、以下の3つの事例を紹介します。
- 【製造】株式会社ブレインパッド×キューピー株式会社|不良品検知
- 【農業】AGRIST株式会社|収穫ロボット
- 【エンタメ】Mantra株式会社|漫画の自動翻訳
順番に解説します。
【製造】株式会社ブレインパッド×キューピー株式会社|不良品検知
株式会社ブレインパッドとキューピー株式会社は、食品の製造過程にディープラーニングを応用することで、異物の混入を防ぐシステムを構築しました。
このシステムの画期的なところは「良品のみを検出する」ことに成功した点です。従来は不良パターンを登録して仕分けをしていたのですが、ジャガイモなどは個体差が大きく品種もさまざまなため、不良パターンが多すぎて自動仕分けが難しかったようです。結果、人間による目視でのチェックが必要になり、作業員の負担となっていました。
ディープラーニングを活用した良品をベースとする原料検査機器の開発は世界初であり、実際の製造現場に導入したことが高く評価され、内閣府主催の第2回日本オープンイノベーション大賞を受賞しています。
参考:第2回日本オープンイノベーション大賞AIを活用した原料検査装置が農林水産大臣賞を受賞 | ニュースリリース | キユーピー (kewpie.com)
【農業】AGRIST株式会社|収穫ロボット
AIによるスマート農業を推進するAGRIST株式会社は、ピーマンやきゅうりなどの自動収穫ロボットを開発し、多くの農家で導入されています。
きゅうり自動収穫ロボットは、100グラム以上の良質なきゅうりを効率的に収穫するために、自動で移動しながら作業を行います。搭載されたカメラが捉えた画像をAIが解析することで、収穫すべききゅうりを識別し自動収穫が可能になりました。
自動収穫ロボットの導入により、農家の慢性的な人手不足解消や人件費の圧縮を実現しています。
【エンタメ】Mantra株式会社|漫画の自動翻訳
Mantra株式会社は、マンガに特化した機械翻訳技術を構築しています。自動翻訳する工程は以下のとおりです。
- 原稿から吹き出しを自動検出する
- 検出した文字を認識する
- 異なる言語へ翻訳する
ディープラーニングを活用することで、漫画特有のフォントでも正確に認識し、セリフ前後の文脈を判断しながら正確な翻訳が可能です。
2023年には、株式会社集英社が進めるマンガの多言語同時配信の支援を開始。集英社のプラットフォーム「MANGA Plus by SHUEISHA」では、「ONE PIECE」と「SPY×FAMILY」のベトナム語版の最新話が、日本と同時に配信されます。
ディープラーニングの研究をしたい人におすすめの大学・学部
ディープラーニングを学ぶなら、理学部や工学部の情報系学部で学ぶと良いでしょう。具体的には、データサイエンスやコンピュータサイエンスと名の付く学部・学科などがあります。
ディープラーニングを学べる大学の一例は、以下のとおりです。
- 立正大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科
- 京都女子大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科
- 大阪工業大学 情報科学部 データサイエンス学科
- 日本工業大学 先進工学部 データサイエンス学科
- 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科
ほかにもディープラーニングを学べる大学を知りたい人は、研究から大学を探せる「スタビキ」を活用してみてください!
ディープラーニングの研究3選

大学では、ディープラーニングについてどんな研究がなされているのでしょう?ここでは以下の大学におけるディープラーニングの研究を紹介します。
- 東京理科大学
- 関西大学
- 山口大学
東京理科大学
東京理科大学の研究「ブロックデザインのディープラーニングへの応用とその構成」を紹介します。
ディープラーニングでは、コンピュータに大量のデータを学習させて高度な判断を行わせますが、データが偏っていると「過学習」という問題が起きます。これを防ぐために、「ドロップアウト法」や「ドロップコネクト法」といった技術が使われ、学習の途中でニューラルネットワークの一部を無作為に取り除きます。
この研究では、「dropout design (DD)」と「spanning bipartite block design (SBBD)」という新しい方法を提案しました。これらの方法は、ニューラルネットワークの一部をバランスよく取り除くことができます。また、SBBDを使った場合、ある条件のもとで最も正確な予測ができることが数学的に証明されました。
この研究により、ディープラーニングの精度を高める新しい方法が提案され、その有効性が示されました。これにより、人工知能がより正確で信頼できるものになると期待されています。
関西大学
関西大学の研究「高潮モデル高度化と多数アンサンブル実験による確率的な巨大高潮リスクの将来変化予測」について紹介します。
この研究は、将来の巨大な高潮の発生確率を予測することを目的としています。高潮とは、台風などによって海水面が異常に高くなる現象です。
研究では、世界中の台風を確率的に予測するモデルを改良し、ディープラーニングを使って高潮の高さを予測するモデルなどを開発。これらの取り組みにより、将来の高潮災害に備えるための重要な情報が得られました。
山口大学
山口大学の「ディープラーニングによる胃癌の深達度診断」の研究では、ディープラーニングを用いて、内視鏡画像から胃の粘膜内癌と粘膜下層癌を見分ける内視鏡AIを開発しました。また、診断の正確さを比べた結果、AIと医師が協力した場合が最も高い精度を示し、AI単独や医師単独の診断よりも優れていることがわかりました。
この研究は、胃がんの種類を判断する際にAIが医師の助けになることや、医療現場でAIを活用することの有用性を示唆しています。AIと医師の協働は、今後のAI診断システム発展の鍵になると考えられ、医療分野でのAI活用の可能性を広げるものと期待されます。
ディープラーニングについて学べる大学はスタビキで検索!
ディープラーニングは、AIにおける機械学習の手法のひとつで、Alexaや車の自動運転など、私たちの身近なものにも広く活用されています。また、農業や製造、医療など、さまざまな分野に応用されており、これからますます発展が期待できる分野です。
ディープラーニングについて大学で学んでみたい人は、理学部や工学部の情報系学部、とくにデータサイエンスやコンピュータサイエンスと名の付く学部・学科に進むとよいでしょう。
大学で行われているディープラーニング研究について興味のある人は、スタビキを活用してみてください。各大学の研究一覧が確認できるので、進路選びの参考になるはずです!