テーマ 国際・コミュニケーション 宗教
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どんな分野?
国際情勢を理解するうえで、宗教はきわめて重要なキーワードのひとつだ。宗教が人民に紛争をもたらし、国の政治を動かすという状況は仏教と神道、キリスト教の習慣をすべて矛盾なく受け入れてしまう日本人の心情からはなかなか理解しにくい。しかし、世界に眼を向けるとイスラエルとパレスチナの対立による中東紛争、イスラム教原理主義に基づいた反西洋諸国の思想の広がりのほか、宗教の違いを理由とした紛争は今も絶えない。
宗教とは人間の思想や信条に関する事柄であり、感情的にも乗り越えることは難しいが、不毛な衝突を避けるためには思想の違いを対立につなげるのでなく、多様性を認める考え方を広めていく地道な努力が必要だろう。
活躍の舞台
宗教を専攻する学問としては、哲学の1ジャンルである「宗教学」がある。この学問には主に聖職者(僧侶や神職など)をめざして各宗派の教義や教典について研究する場合と、宗教を客観的に分析し人間と宗教という本質的な問題に迫るという2つのアプローチがある。
国際問題や社会情勢との関係では後者のアプローチが中心で、世界の民族が歴史のなかで積み重ねてきた「文化」や「習俗」としての宗教をあらゆる角度から学ぶ。たとえば「比較文化」「社会学」の手法でさまざまな宗教を比較したり、宗教の歴史、社会への影響について研究していく。そのほか宗教が生み出してきた美術・音楽・文学など、宗教文化を研究するジャンルもある。
学問へのアプローチ
アメリカ同時多発テロ以来、宗教的な対立に根ざした地域紛争が続発し、戦闘を避けて自国を離れる難民も各地で増えている。西欧諸国対イスラム教国という図式がよく持ち出されているが、実際に宗教対立をあおっているのは、(双方ともに)宗教に名を借りて紛争を望んでいる一部勢力に過ぎない。
日本人は西洋社会とは文化も異なり、歴史的な宗教対立の枠外にあったため、イスラム教国の人々には長らく敵対してきた西欧の人々よりも親近感をもたれるというメリットがある。国際機関においても中立的な立場からの日本の平和構築への役割が期待されている。さまざまな宗教をもつ人々が公平な立場で交流し、平和に共存できる国際社会のあり方を探ることが大きな目標となる。