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どんな分野?

 遺伝子は、生物の種を決定している要素。「遺伝子組み換え」とは人工的に遺伝子の一部を欠損させたり、別の種の遺伝子を組み込むバイオ技術の1つだ。従来の品種改良とは異なり、複数の遺伝子を組み合わせることで利点を伸ばしたり欠点を補ったりできることが大きなメリットといえる。厳しい気候でも育つ、病気や薬品に強い、腐敗しにくい、といった特徴をもつ農作物や、高い治療効果をもつ医薬品など、農業、環境から医療分野までさまざまな産業への応用が始まっている。
 しかし一方で、遺伝子組み換え作物が浸透することによる、地球環境や生物多様性への影響も指摘されており、安全性を確認するため、日本では開発や作付けに厳しい規制が設けられている。

活躍の舞台

 遺伝子組み換え技術の研究ジャンルは、幅広い学問系統にまたがっており、理学系統の「生物学」から、工学系統の「応用化学」「応用生物学」、農学系統の「農芸化学」、さらに医療・保健系統の「医学」「薬学」まで、さまざまな選択肢がある。
 最終的な開発目標となるモノや技術によって、主に食品の技術を研究するのが「応用生物学」「農芸化学」、新薬の開発をめざすのが「薬学」、治療技術を研究するのが「医学」というように、学科による若干の違いはあるが、基礎研究の部分では共通点が多い。
 大学によっては、総合的なバイオテクノロジーの研究施設を立ち上げ、複数の学部や学科を融合して、研究開発にあたるケースもある。こうした大学では、最先端の環境で充実した教育を受けることができる。

学問へのアプローチ

 遺伝子組み換え技術は、人類に突きつけられているさまざまな課題を画期的に解決できる可能性を秘めている。
 たとえば、効率的にたくさんの収穫量を得られる品種や、砂漠化や塩害にさらされた不良な土地でも栽培できる品種の開発は、地球上の人口増加に伴って深刻化する食糧問題を解決することが期待されている。そのほかバイオ燃料や新素材の開発によるエネルギー資源問題の解決、農薬や除草剤の使用量の削減による地球環境への配慮など、さまざまなメリットがある。
 しかし、生物の種を操作することには危険が伴ううえに、自然生態系への影響も懸念される。社会全体で明確な倫理基準を定めることにより、新しい技術を人間社会に役立てる道を慎重に探る必要がある。

このキーワードについて学べる学問分野

応用生物学

生命や生体の構造・機能を利用して、新しい物質の抽出や有用な生体的機能や技術を生み出す工学ジャンル。食糧や薬品の開発、医療技術まで広がる《バイオテクノロジー》の中核的存在

農芸化学

化学や生物学の知見を農業のいろいろな技術に応用する学問ジャンル。主として、農作物の生産量や品質の向上、貯蔵法、食品加工法などに関してバイオと化学の視点からアプローチする

生物学

生物の構造や営みに共通で見られる《法則性・普遍性》と、それがさまざまに分化して生みだす《多様性》を抽出。その神秘に満ちた<生命活動>を理論的に説明できる体系を打ち立てる

薬学

病気の治療、健康管理、衛生環境の視点から、医薬品をはじめとする「薬(くすり)」について、総合的に研究する学問分野。家庭用の洗剤や殺虫剤といった生活用薬剤や化学物質も対象

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