テーマ 薬学・バイオ 公衆衛生
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どんな分野?
新型インフルエンザなど、新たな人類の脅威となっている感染症(伝染病)の多くは、20世紀後半から相次いで登場した。これらは未開拓の土地に生息していたウイルスや微生物が、開発によって人間社会に流れ出し、急速に進化したものだと考えられている。
「公衆衛生」の目的は、こうした感染症の発生と感染のしくみを解明すること。そのためには、最新バイオ技術が大きな武器となる。また、食事や生活習慣を改善し病気を未然に防ぐことにより、一般社会の人々の健康を守ることも公衆衛生の役目だ。
手強いウイルスを無力化する新しい医薬品を開発する、ウイルスの働きを抑える遺伝子を発見するなど、バイオ技術が役立つ可能性は計り知れない。
活躍の舞台
公衆衛生を学ぶには、医学科または保健・衛生学系の学科に進み「疫学」「予防医学」を専攻するのが一般的なコースだ。
大学では、まず基礎領域で、化学物質や生物(特に細菌やウィルスなどの微生物)についての幅広い専門知識と、実験・観察のための技法を学ぶ。
専門分野では、病原体の特定や発症のしくみを研究するとともに、病気がどのように伝わるか(感染のしくみ)、広く流行する原因はなにか(流行のメカニズム)、病気にかかりやすい人、重症化しやすい人は誰か(年齢・性別・職業・病歴)といったテーマについて医学・薬学のアプローチから研究する。
また、治療効果の検証や社会調査、アンケートやデータ分析、統計処理など、社会学、数理学的な手法からの研究も行う。
学問へのアプローチ
公衆衛生を専攻した人の進路としては、まず保健所や保健センターでの現場の仕事がある。さらに、医学の基礎知識と医師としての技術、高度な疫学の知識を備えることで、国の保健行政を司る厚生労働省の「医系技官」への道もある(ただし医師免許取得が条件)。
日本の医療現場では、人材やコスト、資材(薬品や治療器具)など、限られた医療資源を効率的に配分するシステムづくりが急務だ。医療技術の進歩は日進月歩だが、それを実際に患者に提供できなければ意味がない。高齢者医療、救急医療、小児医療など、さまざまな場面で適切な医療サービスを提供していく体制を作っていくことも、これからの公衆衛生の使命となる。
このキーワードについて学べる学問分野
保健・衛生・医療技術学
医療・福祉活動を医師と共に支える「保健衛生」「リハビリ」「医療技術」を研究する学問。衛生環境を整えて病気を予防したり、社会復帰を助けたりして国民の健康を守ることがテーマ
医学
人間の身体のしくみや生命活動を、健康との関係で科学的に捉え、人間の病気やケガのメカニズムを解明。その治療法と予防法を総合的に研究する学問。研究の進歩が著しい最先端科学
住居学
人間が生活を営む場所である「住環境」を、居ごこち(快適性)、美しさや清潔感(デザイン性)、使いやすさ(機能性)などの観点から検証。快適な住空間を実現するために総合研究する
社会科学系学際
資源枯渇、環境汚染、人口爆発、食糧不足、安全保障問題など現代的な大テーマに、従来の学問的枠組を超えてアプローチする新分野。「総合的な視点」「多彩なテーマ」がキーワード